源氏イラスト訳【若紫367】滂沱
とてもかくても、頼もしき人びとに、後れたまへるが、いみじさ」と思ふに、涙の止まらぬを、さすがにゆゆしければ、念じゐたり。
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【源氏物語イラスト訳】
「…とてもかくても、頼もしき人びとに、後れたまへるが、いみじさ」
訳)「…とにもかくにも、あてにすべき身内の方々に、先立たれなさったことの、ひどくお気の毒なこと」
と思ふに、涙の止まらぬを、
訳)と思うと、涙が止まらないのを、
さすがにゆゆしければ、念じゐたり。
訳)そうはいってもやはり不吉なので、我慢していた。
【古文】
「…とてもかくても、頼もしき人びとに、後れたまへるが、いみじさ」と思ふに、涙の止まらぬを、さすがにゆゆしければ、念じゐたり。
【訳】
「…とにもかくにも、あてにすべき身内の方々に、先立たれなさったことの、ひどくお気の毒なこと」と思うと、涙が止まらないのを、そうはいってもやはり不吉なので、我慢していた。
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■【とてもかくても】…ともかくも
■【頼もしき】…シク活用形容詞「頼もし」連体形
※【頼もし】…あてにする
■【人びと】…ここでは、亡くなった尼君などをさす
■【に】…対象の格助詞
■【後(おく)れ】…ラ行下二段動詞「おくる」連用形
■【後る】…先立たれる
■【たまへ】…ハ行四段動詞「たまふ」已然形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(少納言乳母⇒若紫)
■【る】…完了の助動詞「り」連体形
■【が】…連体修飾格の格助詞
■【いみじさ】…ひどく気の毒なこと
■【と】…引用の格助詞
■【思ふ】…ハ行四段動詞「思ふ」連体形
■【に】…順接の接続助詞
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【とまら】…ラ行四段動詞「とまる」未然形
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【を】…対象の格助詞
■【さすがに】…そうはいってもやはり
■【ゆゆしけれ】…シク活用形容詞「ゆゆし」已然形
※【ゆゆし】…不吉だ
■【ば】…順接確定条件(原因・理由)の接続助詞
■【念じ】…サ変動詞「念ず」連用形
※【念ず】…がまんする
■【ゐ】…ワ行上一段動詞「ゐる」連用形
■【たり】…完了の助動詞「たり」終止形
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「滂沱(ぼうだ)の涙」ということばがあります。
少納言の乳母(めのと)は、若紫や自分たちの境遇を思いやると、涙が止まらずに、流れ落ちてくるのでしょうね。