源氏イラスト訳【若紫330】無礼
「あなかしこ。もののついでに、いはけなくうち出できこえさせたまふな」
など言ふも、それをば何とも思したらぬぞ、あさましきや。
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【源氏物語イラスト訳】
「あなかしこ。もののついでに、
訳)「ああ恐れ多いこと。何かのついでに、
いはけなくうち出できこえさせたまふな」など言ふも、
訳)父宮に軽々しく口に出し申し上げなさるな」などと言うにつけても、
それをば何とも思したらぬぞ、あさましきや。
訳)そのことを何とも分かっていらっしゃら ないのは、驚きあきれるばかりだなぁ。
【古文】
「あなかしこ。もののついでに、いはけなくうち出できこえさせたまふな」
など言ふも、それをば何とも思したらぬぞ、あさましきや。
【訳】
「ああ恐れ多いこと。何かのついでに、父宮に軽々しく口に出し申し上げなさるな」
などと言うにつけても、そのことを何とも分かっていらっしゃら ないのは、驚きあきれるばかりだなぁ。
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■【あなかしこ】…おお、恐れ多い
■【もの】…何か
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【ついで】…ついで。機会
■【に】…時の格助詞
■【いはけなく】…ク活用形容詞「いはけなし」連用形
※【いはけなし】…子供っぽい。ここでは無分別にも、軽々しく、の意
■【うち出で】…ダ行下二段動詞「うち出づ」連用形
※【うち出(い)づ】…口に出して言う
■【きこえ】…ヤ行下二段動詞「きこゆ」未然形
※【きこゆ】…謙譲の補助動詞(女房⇒兵部郷宮)
■【させ】…尊敬の助動詞「さす」連用形
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(女房⇒若紫)
■【な】…禁止の終助詞
■【など】…引用の副助詞
■【言ふ】…ハ行四段動詞「言ふ」連体形
■【も】…強意の係助詞
■【をば】…~を(強調)
※【を】…対象の格助詞
※【ば】…係助詞「は」の濁音化
■【何とも】…何ということも
※【と】…引用の格助詞
※【も】…強意の係助詞
■【思し】…サ行四段動詞「思す」連用形
※【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬(作者⇒若紫)
■【たら】…存続の助動詞「たり」未然形
■【ぬ】…打消の助動詞「ず」連体形
■【ぞ】…強意の係助詞
■【あさましき】…シク活用形容詞「あさまし」連体形
※【あさまし】…驚き呆れる。困ったことだ
■【や】…詠嘆の間投助詞
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若紫と一夜を過ごした光源氏――。
なぜ、惟光をよこして、
自分は来なかったのでしょうか――?
もちろん、宮中から呼び出しがあったというのは、本当だと思います。
光源氏の最愛の女性は、藤壺宮。
もちろん、若紫のことも、愛しいと思っているでしょうが、
宮中からの呼び出しに、
藤壺宮と同じ空間にいられることを優先させてしまったのかもしれません。
でも、若紫の家からすると、
何とも納得がいかない、無礼な仕打ちですよね~。