源氏イラスト訳【若紫325】名残
なごりも慰めがたう泣きゐたまへり。行く先の身のあらむことなどまでも思し知らず、ただ年ごろ、立ち離るる折なう、まつはしならひて、今は亡き人となりたまひにける、と思すがいみじきに、
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【源氏物語イラスト訳】
なごりも慰めがたう泣きゐたまへり。
訳)その後も寂しさは慰めようがなく泣き沈んでいらっしゃった。
行く先の身のあらむことなどまでも思し知らず、
訳)将来のわが身がどうなるかというようなことなどまではお分りにならず、
ただ年ごろ、立ち離るる折なう、まつはしならひて、
訳)ただ長年、離れる時がなく、一緒にいるのが常であって
今は亡き人となりたまひにける、と思すがいみじきに、
訳)今は故人となりなさってしまったなぁ、とお思いになるのがひどく悲しいので、
【古文】
なごりも慰めがたう泣きゐたまへり。行く先の身のあらむことなどまでも思し知らず、ただ年ごろ、立ち離るる折なう、まつはしならひて、今は亡き人となりたまひにける、と思すがいみじきに、
【訳】
その後も寂しさは慰めようがなく泣き沈んでいらっしゃった。将来のわが身がどうなるかというようなことなどまではお分りにならず、ただ長年、離れる時がなく、一緒にいるのが常であって、今は故人となりなさってしまったなぁ、とお思いになるのがひどく悲しいので、
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■【なごり】…余情。その後の影響
■【も】…強意の係助詞
■【―がたし】…~できない。~しようがない
■【ゐ】…ワ行上一段動詞「ゐる」連用形
■【たまへ】…ハ行四段動詞「給ふ」已然形
※【給ふ】…尊敬の補助動詞(作者⇒若紫)
■【り】…完了の助動詞「り」終止形
■【行く先】…将来
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【身】…わが身
■【の】…主格の格助詞
■【あら】…ラ変動詞「あり」未然形
■【む】…婉曲の助動詞「む」連体形
■【など】…引用の副助詞
■【まで】…限度の副助詞
■【も】…強意の係助詞
■【思し知る】…お分かりになる
※【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬(作者⇒若紫)
■【ず】…打消の助動詞「ず」連用形
■【年ごろ】…長年の間
■【立ち離るる】…ラ行下二段動詞「立ち離る」連体形
■【折(をり)】…時
■【なう】…ク活用形容詞「なし」連用形ウ音便
■【まつはす】…付き従う。ずっと一緒にいる
■【ならふ】…習慣となる
■【て】…単純接続の接続助詞
■【今は】…今となっては
■【亡き人】…亡くなった人。故人
■【と】…変化の結果の格助詞
■【なり】…ラ行四段動詞「なる」連用形
■【たまひ】…ハ行四段動詞「たまふ」連用形
※【たまふ】…尊敬の補助動詞(若紫⇒故尼君)
■【に】…完了の助動詞「ぬ」連用形
■【ける】…詠嘆の助動詞「けり」連体形
■【と】…引用の格助詞
■【思(おぼ)す】…「思ふ」の尊敬(作者⇒若紫)
■【が】…主格の格助詞
■【いみじき】…シク活用形容詞「いみじ」連体形
※【いみじ】…ひどく悲しい
■【に】…順接の接続助詞
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若紫の心情部分です。。。
地の文で「たまひ(たまふ)」が出て来たら、
基本的には「作者(紫式部)からの敬意表現ですが、
今回は、若紫の心情部分、ということで
【若紫からの敬意表現】としました。
こういった、心情の間接会話的な部分は、
なかなかわかりにくいと思うので、
見分けがつく範囲で、識別していきましょうね。