源氏イラスト訳【若紫275】宿縁
「何か、かう繰り返し聞こえ知らする心のほどを、つつみたまふらむ。その言ふかひなき御心のありさまの、あはれにゆかしうおぼえたまふも、契りことになむ、心ながら思ひ知られける。
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【源氏物語イラスト訳】
「何か、かう繰り返し聞こえ知らする心のほどを、つつみたまふらむ。
訳)「どうして、このように繰り返して適当な言葉で申し上げる心のうちを、気兼ねなさるのだろうか。
その言ふかひなき御心のありさまの、
訳)そのどうしようもないほど幼いお心の様子が、
あはれにゆかしうおぼえたまふも、
訳)しみじみ愛しく会いたいと思われなさるのも、
契りことになむ、心ながら思ひ知られける。
訳)宿縁が特別なものと、勝手な考えながら 自然と身にしみてくるのだよ。
【古文】
「何か、かう繰り返し聞こえ知らする心のほどを、つつみたまふらむ。その言ふかひなき御心のありさまの、あはれにゆかしうおぼえたまふも、契りことになむ、心ながら思ひ知られける。…」
【訳】
「どうして、このように繰り返して適当な言葉で申し上げる心のうちを、気兼ねなさるのだろうか。そのどうしようもないほど幼いお心の様子が、しみじみ愛しく会いたいと思われなさるのも、宿縁が特別なものと、勝手な考えながら 自然と身にしみてくるのだよ。…」
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■【何】…どうして
■【か】…反語の係助詞
■【かう】…このように(「かく」のウ音便)
■【聞こえ~】…~申し上げる
※【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(光源氏⇒若紫)
※【言ひ知る】…適当な言い方を知っている
■【する】…使役の助動詞「す」連体形
■【心のほど】…心の中。気持ち
※【の】…連体修飾格の格助詞
※【ほど】…程度
■【を】…対象の格助詞
■【つつみ】…マ行四段動詞「包む」連用形
※【つつむ】…気兼ねする。遠慮する
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒少納言の乳母)
■【らむ】…現在の原因推量の助動詞「らむ」連体形
■【その】…指示連体詞
■【いふかひなき】…ク活用形容詞「言ふかひなし」連体形
※【いふかひなし】…どうしようもない。とるに足りない
■【御―】…尊敬の接頭語(光源氏⇒若紫)
■【の】…連体修飾格の格助詞
■【ありさま】…様子
■【の】…主格の格助詞
■【あはれに】…ナリ活用形容動詞「あはれなり」連用形
※【あはれなり】…しみじみ愛しい
■【ゆかしく】…シク活用形容詞「ゆかし」連用形
※【ゆかし】…見たい。聞きたい。知りたい
■【おぼえ】…ヤ行下二段動詞「おぼゆ」連用形
※【おぼゆ】…思われる
■【たまふ】…尊敬の補助動詞(光源氏⇒若紫)
■【も】…強意の係助詞
■【契り(ちぎり)】…前世からの因縁。宿縁
■【ことに】…ナリ活用形容動詞「ことなり」連用形
※【ことなり】…特別だ
■【なむ】…強意の係助詞
■【心ながら】…我ながら。勝手な考えながら
■【思ひ知る】…身にしみてわかる
■【れ】…自発の助動詞「る」連用形
■【ける】…詠嘆の助動詞「けり」連体形
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少納言の乳母が、若紫を引き取るという光源氏の申し出を
恐縮して断りそうになっているのを受けて
光源氏が放ったセリフです。
話題の内容は「若紫」なのですが、
それを気兼ね(=つつみ)している少納言の乳母にまで
敬意が払われていて、面白いですね。