源氏イラスト訳【若紫276】立
「…なほ、人伝てならで、聞こえ知らせばや。
あしわかの浦にみるめはかたくともこは立ちながらかへる波かは
めざましからむ」とのたまへば、
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【源氏物語イラスト訳】
「…なほ、人伝てならで、聞こえ知らせばや。
訳)「…やはり、人を介してではなくて、直接お知らせ 申し上げたい。
あしわかの浦にみるめはかたくとも
訳)葦の生えた若の浦(=和歌も詠めないほどの若紫)に海松布(みるめ)ではないがお逢いするのは難しいとしても、
こは立ちながらかへる波かは
訳)私は立ったまま、打ちつける波のように帰れようか、いやこのまま帰れません。
めざましからむ」とのたまへば、
訳)目に余ることだろう」とおっしゃると、
【古文】
「…なほ、人伝てならで、聞こえ知らせばや。
あしわかの浦にみるめはかたくともこは立ちながらかへる波かは
めざましからむ」とのたまへば、
【訳】
「…やはり、人を介してではなくて、直接お知らせ 申し上げたい。
葦の生えた若の浦(=和歌も詠めないほどの若紫)に海松布(みるめ)ではないがお逢いするのは難しいとしても、
私は立ったまま、打ちつける波のように帰れようか、いやこのまま帰れません。
目に余ることだろう」とおっしゃると、
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■【なほ】…やはり
■【人伝(ひとづ)て】…人を介して
■【なら】…断定の助動詞「なり」未然形
■【で】…打消接続の接続助詞
■【聞こゆ】…「言ふ」の謙譲語(光源氏⇒若紫)
※【言ひ知る】…適当な言い方を知っている
■【せ】…使役の助動詞「す」未然形
■【ばや】…希望の終助詞
■【あし】…「葦」と「悪し」を掛けている
■【わかの浦】…「わかの浦」(地名)を若紫に見立てている
■【に】…場所の格助詞
■【みるめ】…海藻の「海松布みるめ」と「見る目」を掛けている
■【は】…取り立ての係助詞
■【かたく】…ク活用形容詞「かたし」連用形
※【かたし(難し)】…むずかしい
■【とも】…~としても(逆接仮定条件の接続助詞)
■【こ】…これ。私をさす
■【は】…取り立ての係助詞
■【立ち】…タ行四段動詞「立つ」連用形
■【ながら】…継続(逆接)の接続助詞
■【かへる】…帰る。波が立ち帰ると自分が帰るのを掛けている
■【かは】…反語の係助詞
■【めざましから】…シク活用形容詞「めざまし」未然形
※【めざまし】…目に余る
■【む】…推量の助動詞「む」終止形
■【と】…引用の格助詞
■【のたまへ】…ハ行四段「のたまふ」已然形
※【のたまふ】…「言ふ」の尊敬(作者⇒光源氏)
■【ば】…順接確定条件の接続助詞
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光源氏が、このまま帰らされるであろうことを憤り
思いにまかせてぶちまけた和歌です。
「立ちながらかへる」の部分――
これ、あまりにも、
あからさますぎません?