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源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を賜り、左大臣の娘葵(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬、物の怪による夕顔の急死…。光源氏の恋は成就することなく、尽きせぬ恋慕を重ねていくのでした。
ただ今、第五帖「若紫の巻」です。夕顔が亡くなった翌年、光源氏18歳の3月(春)に、瘧病にかかって、その加持祈祷のために、北山に訪れます。そこである僧都の屋敷を垣間見ることとなります。
【今回の源氏物語】
簾すこし上げて、花たてまつるめり。中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。
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☆ 古文オリジナル問題~「たてまつる」~☆
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簾すこし上げて、花たてまつるめり。中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。
問)傍線部の敬語説明として最も適当なものを、次の中から1つ選べ。
1.作者から光源氏への尊敬語
2.作者から尼君への謙譲語
3.作者から御花への尊敬語
4.作者から仏様への謙譲語
5.作者から御簾への丁寧語




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このアプローチが効率的に行えるよう
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この「イラスト解釈」のカテゴリでは、
古典文法を鍛えていきましょう♪

大学入試共通テストのプレテストをみると
資料A・Bの読み比べなど
複眼的思考力を問うものも多く出ていましたが
私は、上のような識別問題も
まだまだ出題される傾向があると思います。
٩(๑•̀o•́๑)و ☆
文法事項でも、今回の敬語の識別は
チョームズに感じる人もいると思いますが…

上のような問題を何度も解き重ねて
ポイントをつかんでいきましょう!


今日のポイントはここ☆



【たてまつる】
【他動詞:ラ行四段活用】
①【「与ふ」の謙譲】差し上げる。献上する
②(人を人のもとへ)参上させる
③【「食ふ」「着る」の尊敬】召し上がる。お召しになる
④【「乗る」の尊敬】お乗りになる
【補助動詞:ラ行四段活用】
①【謙譲】~申し上げる。お~する
②(人のもとへ、使者を)差し上げる。お伺いさせる
*Weblio古語辞典より
本動詞の「たてまつる」は
尊敬語と謙譲語の両方の意があります。
1.作者から光源氏への尊敬語
2.作者から尼君への謙譲語
3.作者から御花への尊敬語
4.作者から仏様への謙譲語
5.作者から御簾への丁寧語

選択肢をみると
すべて「作者から」となっています。
そう。
地の文は作者からの敬意表現でしたね。


そして、
今回のポイント「たてまつる」の意味です。

もしも「たてまつる」が尊敬語なら
④の場合ですね。
しかし、この場合は
目的語が決まっています。
●飲食物を⇒たてまつる(召し上がる)
●お着物を⇒たてまつる(お召しになる)
●車・輿に⇒たてまつる(お乗りになる)

この場合が、尊敬語の「たてまつる」です。
しかし、今回の文脈では
●花を⇒たてまつる
ですよね。

つまり、この目的語とのつながりでは
「たてまつる」は尊敬語にはなり得ません。

1.作者から光源氏への尊敬語
2.作者から尼君への謙譲語
3.作者から御花への尊敬語
4.作者から仏様への謙譲語
では、いったい誰に対しての敬意なのでしょうか?


謙譲語は
動作の受け手に対する敬意表現です。
なので
2.作者から尼君への謙譲語
4.作者から仏様への謙譲語
花を「たてまつる」主語である尼君への敬意ではないはずです。

じゃあ、目的語の「お花」に対する敬意なの?

謙譲語は
あくまで動作の受け手(客体)に対する敬意表現。
目的語に対するかどうかは
文脈判断してくださいね!

花を―仏様に―お供えしている
という、S+V+O+O構文の文脈です。
なので、動作の受け手(客体)は
「花」と「仏」です。
あとは、文脈判断と常識で考えてくださいねっ!


【答え】…4
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