【夕顔338-2】敬意方向の極意☆3つのヒケツ☆
江戸時代初期に描かれた「盛安本源氏物語絵巻」の、夕顔の死の場面を描いた絵巻がフランスで見つかったとか。
(Yahoo!ニュースより)
源氏物語イラスト解釈
【これまでのあらすじ】
天皇(桐壺帝)の御子として産まれ、容姿・才能ともすぐれていた光の君は、幼くして母(桐壺更衣)を亡くし、臣籍に降下、「源氏」姓を名のり、左大臣の娘葵(あおい)の上を正妻にもらいました。一方、帝の後妻である、亡き母によく似た藤壺宮(ふじつぼのみや)への恋慕、そして、中流の女空蝉(うつせみ)との一夜限りの情事、プライドの高い六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)との逢瀬…。光源氏は尽きせぬ恋を重ねていくのでした。
ただ今、「4.夕顔」の巻です。17歳の光源氏は、五条にひっそり住まう夕顔の君に恋をし、彼女を廃院に誘いますが、夕顔は物の怪に襲われ急死してしまいました。部下の惟光(これみつ)の助けを借りながら夕顔の葬儀を終え、光源氏は失意に沈んでいます。ある夕暮れ時、右近(夕顔の侍従)を呼び寄せて、亡き夕顔の話をします。
【今回の源氏物語】
「…『なほざりにこそ紛らはしたまふらめ』となむ、憂きことに思したりし」と聞こゆれば、
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☆ 古文オリジナル問題~敬語の敬意方向~☆
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「…『なほざりにこそ紛らはし①たまふらめ』となむ、憂きことに②思したりし」と③聞こゆれば、…」
問)傍線部①②③の敬語の説明として間違っているものをすべて選べ。
1.①は、尊敬の補助動詞である。
2.①は、右近から光源氏に対する敬意表現である。
3.②は自動詞で、「思ふ」の尊敬語である。
4.②は、右近から夕顔に対する敬意表現である。
5.③は自動詞で、「聞く」の謙譲語である。
6.③は、右近から光源氏に対する敬意表現である。
「すべて選べ」という問題は、
現行のセンター試験では出題されませんが、
今後、大学入試共通テストなどでは出題されるし、
国公二次や、私大入試でも多い形です。
敬語を理解する3ステップは、
1月14日の記事でも説明したとおり、
1.まずは敬語の種類を覚える
2.本動詞か、補助動詞かを判別する
3.敬意方向を確認する
の手順で確認します。
その中で、特に重要なのが、
今回ポイントの、敬意方向です。
「…『なほざりにこそ紛らはし①たまふらめ』となむ、憂きことに②思したりし」と③聞こゆれば、…」
①と②は、右近の会話文中なので、
基本的に、右近からの敬意表現です。
しかしながら、①は、
『 』があることに注意してください。
右近の会話文中ではありますが、
実際にこの言葉を言ったのは、夕顔。
つまり、間接会話文なのです。
なので、
1.①は、尊敬の補助動詞(○)である。
2.①は、右近から(×:夕顔から)光源氏に対する(○)敬意表現である。
3.②は自動詞(○)で、「思ふ」の尊敬語(○)である。
4.②は、右近から(○)夕顔に対する(○)敬意表現である。
このように、会話文中でも安心せず、
引用の格助詞「と」の有無を
きちんと確認していきましょうね♪
また、③の直前には、
…」と ←があるので、
ここで右近の会話が終わって、地の文となります。
「…」と③聞こゆれば、…」
「聞こゆれ」が、ヤ行下二段活用であり、
基本形「聞こゆ」の重要古語であることも
きちんと見分けられように、ね。
【きこゆ(聞こゆ)】
【自動詞:ヤ行下二段活用】
①(自然に)耳に入る。聞こえる
②人の耳に入る。世間で評判になる
③わけがわかる。理解できる。想われる
【他動詞:ヤ行下二段活用】
①申し上げる(「言ふ」の謙譲語)
②手紙で申し上げる。お手紙をさし上げる
③(世間の人が、その方の名を)からと申し上げる
【補助動詞:ヤ行下二段活用】
…(動詞の連用形について)お~申し上げる。お~する
*『全訳古語例解辞典(小学館)』より
「聞」という漢字なので、
「聞く」の敬語と勘違いしてる受験生も多いかと;
大丈夫ですかー?
5.③は自動詞で、「聞く」の謙譲語(×:「言ふ」の謙譲)である。
6.③は、右近から(×:作者から)光源氏に対する敬意表現である。
さあ、正答できたかな?
【解答】…2・5・6