原爆が投下された広島で生き抜く少年の姿を描いた漫画「はだしのゲン」のアラビア語版がエジプトで出版され、23日、記念の催しが開かれました。
漫画「はだしのゲン」は、原爆によって破壊された広島でたくましく生き抜く少年の姿を描いた作品で、これまでに世界の21の言語に翻訳されています。
今回、初めてのアラビア語版の第1巻がエジプトで出版され、23日、首都カイロの書店で記念の催しが開かれました。
翻訳に当たったのは、カイロ大学で日本語を教えているマーヘル・シリビーニ教授で、作者の中沢啓治さんについて、「自分の幼いころの被爆体験を基にこの作品を描いた」と説明しました。
シリビーニ教授は、広島に留学していた経験から、被爆の実相を広く伝えようと翻訳を決意し、今後2年ほどかけて全10巻の翻訳を完成させたいとしています。
中東では、核保有国のイスラエルや核開発を進めるイランに対抗するために、エジプトやサウジアラビアでも核兵器の保有を主張する声が根強いうえ、核兵器がテロリストの手に渡ることも懸念されています。
シリビーニ教授は「原爆の悲惨さは絵で見てこそ伝わります。中東で戦争が起きている今だからこそ、若い世代が読んで平和について考えてほしい」と話していました。
NHKNEWSWEB
広島の少年を主人公に、戦争や原爆の悲惨さを描いたロングセラー漫画「はだしのゲン」がアラビア語に翻訳され、昨年12月、エジプトで出版された。
国際交流基金によると、今年度の翻訳出版助成事業として出版され、カイロ大文学部日本語日本文学科のマーヒル・シリビーニー教授が翻訳した。教授は1980年代後半から数年間、広島大大学院文学研究科に留学していた。
版元は、エジプトの出版社サナベルで、翻訳料や製本、印刷代の一部の助成を受けた。助成額は約110万円。今回は全10巻のうち、第1巻のみ出版され、発行部数は3000部。【中村美奈子/デジタル報道センター】
毎日新聞