スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019) | つぶやキネマ

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140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019)

 

 遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。

ファースト・オーダーの最高指導者となったカイロ・レン(アダム・ドライバー)は、火山の惑星ムスタファーのダース・ベイダーの城跡でシスのナビゲーターであるウェイファインダーを手に入れ銀河系の奥深くへ向かう。惑星エクセゴルのシスの寺院ではエンドアの戦いで敗れた銀河帝国の皇帝パルパティーン=ダース・シディアス(イアン・マクダーミド)がクローンとして生存していて、シスのフォースでスノークを創造しファースト・オーダーを組織、カイロ・レンをダークサイドへ誘い込んだと告げる。さらに、シスの脅威となるレイ(デイジー・リドリー)を殺し、惑星破壊兵器を搭載したジストン級スター・デストロイヤーの大艦隊「ファイナル・オーダー」の指揮を執ってレジスタンスを壊滅させれば銀河帝国の皇帝の地位を与えると約束する。

 ミレニアム・ファルコンで巨大な氷塊の採鉱植民地シンタ・グレイシャー・コロニーに向かったポー・ダメロン(オスカー・アイザック)とフィン(ジョン・ボイエガ)は、レジスタンスの協力者ブーリオ(エイダン・クック/パトリック・ウィリアムズ) と接触しファースト・オーダーの機密情報の入ったデータファイルを入手、TIEファイター編隊の追撃を振り切ってレジスタンスのエイジャン・クロス基地に帰還する。

 レイはレイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)の指導でジェダイ騎士の修行を続けていたがカイロ・レンとフォースで繋がっている事に苦悩していた。ミレニアム・ファルコンが持ち帰ったデータファイルにはファースト・オーダー内のスパイが残したパルパティーンの生存情報があり惑星エクセゴルでスター・デストロイヤーの大艦隊が組織されている事も判明する。シスのウェイファインダーがあれば惑星エクセゴルの座標がわかる事をルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)が残した書物から発見したレイは、ルークが書き残していた砂漠の惑星パサーナにウェイファインダー手がかりを求めて、ポーやフィンと共にミレニアム・ファルコンで飛び立つ。

 惑星パサーナでは42年に一度行われるアキ=アキ族の先祖の祭りが開催されていたが、カイロ・レンはフォースでレイの居場所を察知しレン騎士団とファースト・オーダー部隊を率いてパサーナに向かう。ファースト・オーダー部隊の襲撃を察知し祭りに紛れて姿を隠そうとしたレイたちはランド・カルリジアン(ビリー・ディー・ウィリアムズ)に出会い、ランドから隠遁中のルークと共に密かにシスの本拠地を捜索していた事を知らされる。ファースト・オーダー部隊の追撃を逃れたレイたちは砂漠の流砂の下で無残な姿となったシスの暗殺者オーチとウェイファインダーのありかを示すダガーナイフを発見、砂漠に放置されていたオーチの宇宙船で脱出をしようとした時チューバッカがレン騎士団に捕まってしまう。そこへカイロ・レンの搭乗するTIEサイレンサーが接近、レイはライトセイバーでTIEサイレンサーを破壊しチューバッカが乗せられた輸送船をフォースで止めようとするが誤ってフォース・ライトニングで破壊してしまう。失意のレイは、惑星キジーミにいる旧友ならC-3POのブロックされた記憶装置に残っているダガーナイフに書かれていたウェイファインダーのありかを解読可能というポーの言葉に従って仲間と共にオーチの残した宇宙船でキジーミに向かう…というお話。

 

 前作「スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017)」の惨状ではレイ三部作の完結編も期待出来ないだろうと諦めていたが、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)」を大成功に導いた製作・監督・脚本のJ・J・エイブラムスがシリーズに復帰し製作・監督をするという報道で、軌道修正が成功すれば前作に落胆した世界中のファンも納得出来る完結編が観られるかもという期待感が高まったのだった(注1)。

 結果としては熱烈ファンの間でも賛否両論、個人的には気になる点も幾つかあったものの、あの惨状からよくぞここまで持ち直したという感じ。シリーズの世界観を守ったストーリー展開や映像・サウンドが心地良いし、主演俳優たちはみんな前作とは別人が演じているかのように生き生きしている。J・Jが復帰したただけでこんなにも違うのかと吃驚…つまり”そういう事”だったんだよね(注2)。

 幾つかの気になる点を除けば、約42年に渡って描かれた映画史に残る全9部作となった大河Sci-Fiシリーズの堂々たる完結編になっていてホッとしたが、何より嬉しかったのは「スカイウォーカー家の悲劇」がハッピーエンドで終わった事が嬉しい(注3)。

 シリーズ恒例の画面奥に流れるタイトルでシスの暗黒卿ダース・シディアス=パルパティーンの生存が告げられ、続いてカイロ・レンがウェイファインダーを見つけてシスの本拠地を発見し、パルパティーンからシスの大艦隊が組織されている事を知らされる冒頭からワクワクが止まらない。スパイから情報を入手したポー・ダメロンとフィンがミレニアム・ファルコンでTIEファイター部隊の追撃を逃れる場面は「これがスター・ウォーズだ」と言わんばかり(注4)。

 基地でジェダイの修行中だったレイと前作では別行動のままだったBB-8との微笑ましい関係も復活、疑問を持たずに修行を続けるようにと諭すレイアに対しめっちゃ可愛い笑顔で「はいマスター」とレイが答えるあたりでこみ上げてくるものが…。そしてレイと帰還したポー・ダメロンとフィン、主役トリオのチューバッカをも巻き込んでの言い争いも楽しい(注5)。

 前作でフォースを使うと命をすり減らすという謎の理由で死亡してフォースと一体化したルークも再登場、シリーズの世界観やジェダイの設定から逸脱していて陳腐だったルークの隠遁の理由も、シスの本拠地を捜索していたと軌道修正、そしてルークがシスの本拠地を示すウェイファインダーについて調べていた事が明かされ、ベン・ソロのシス転向に落胆して隠遁していただけではなかったという真相がわかる…姿を隠した理由としてはこっちの方が自然だよね(注6)。

 惑星パサーナのアキ・アキ祭りの場面ではルーク三部作の「スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980)」「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(1983)」で大活躍したランド・カルリジアンの登場に思わず拍手…すっかりおじいさんなのに当時の雰囲気そのままなのが嬉しい。続く新型(?)のストームトルーパーも登場するパサーナでのスピード感満点の追跡劇、そして流砂に飲まれた先でダガーナイフ発見、さらに全シリーズ通しても初登場であり本作の最も重要な場面と言っても良いレイの「癒しの力」(注7)。

 カイロ・レンの搭乗するTIEサイレンサーをレイがライトセイバーで切り裂き撃墜する場面では、こんなに凄いの初めてと再び拍手を。惑星キジーミでシス言語の解読のために記憶を失う事になったC-3POの仲間に向けた別れの台詞…シリーズを通して最強のお笑い担当だったアンソニー・ダニエルズにシリーズ最高の名場面・名台詞を用意したJ・Jとクリス・テリオにも拍手(注8)。

 フォースで繋がったレイとカイロ・レンの対決場面では衝撃的なレイの誕生の秘密が明かされ、ウェイファインダーが隠されているデス・スターの残骸がある惑星エンドアの衛星ケフ・ビァでは新しい仲間たちとの出会い。そしてレイとカイロ・レンの波しぶきを浴びながらの最後の対決、そしてそしてレイの「癒しの力」再び…ここでの特別ゲストの登場には涙腺崩壊(注9)。

 戦いに疲れ惑星オク=トーのテンプル・アイランドに逃げたレイの前に現れたルークが「帝国の逆襲」では出来なかったアレを披露…前作の根暗なボンクラさ加減は皆無。フォースと一体化したレイアの後を受けてレジスタンスの指揮官となり戦力不足の不安を口にするポーに語るランドの名台詞…ルーク三部作を支えていたのがこれなのだよと前作のお調子者監督に言いたい。

 そしてレジスタンスによるシスへの総攻撃、レイとパルパティーンの壮絶な対決、レイとカイロ・レンの悲恋の結末、そしてルークが育った惑星タトウィーンのラーズ家の跡地を訪れルークとレイアのライトセイバーを埋葬し凛々しい姿でレイ・スカイウォーカーと名乗るレイに落涙…素晴らしいラスト・シーンでした(注10)。

 そしてそして、ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ/ファントム・メナス(1999)」で唐突にぶち上げてファンを驚愕させたルーク三部作には影も形もなかった「ジェダイの伝説」という代物、ルーカスが9部作の予定を6作で打ち切ってしまったために回収されないままだった伏線「ジェダイの伝説で予言されたフォースにバランスをもたらす存在」についても、劇中では明言はされていないが一応の結論が用意されていた。賛否はあると思うが個人的には高く評価したい(注11)。

 全9部作の完結編としては不満な点も無くはないのだが、前作の惨状を乗り越えディズニー側からの無理難題を上手くクリアして完成にこぎつけたJ・Jたちスタッフに賞賛を送りたい。

 ディズニーとルーカス・フィルムは「スター・ウォーズ」正史の劇場版新シリーズ開始と、スピンオフ・シリーズの製作継続を発表しているが、実写作品やアニメーション作品以外にも小説やコミック等膨大な数のネタがあるので、続けようと思えばいくらでも続けられるとは思うが映像化する意味のある作品になるかどうかは疑問。「イウォーク・アドベンチャー(1984)」「エンドア/魔空の妖精(1985)」等のトホホなスピンオフも多数あるし、レイ三部作や「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)」でのドタバタを考えるとちょっと心配…劇場作品2作・配信専用ミニ・シリーズ3作が公開されたスピンオフ・シリーズは「何でもあり」になりそうだしね。結構な年齢になりさすがに全部に付き合っている時間も無いので、長年のファンとして気分的には本作で一応の完結としたいトコロ。

 「スター・ウォーズ」劇場版の最新作は「ジョジョ・ラビット(2019)」「ソー: ラブ&サンダー(2022)」の脚本・監督タイカ・ワイティティが担当する予定、ワイティティはスピンオフ・シリーズ「マンダロリアン」の1エピソードも監督していて、過去のストーリーやキャラクターにとらわれない物語世界をと構想を語っている…ジェダイとシスの攻防の物語はもう描きようがないだろうから全く別のモノになるのだろうね。

 スピンオフ・ミニ・シリーズは配信専用なのだがBlu-rayも発売して欲しいのだよ…手元に置きたい派なので。

 

●スタッフ

製作総指揮・製作・

ストーリー原案・脚本・監督:J・J・エイブラムス

原案:ジョージ・ルーカス

ストーリー原案・脚本:クリス・テリオ

ストーリー原案:コリン・トレボロウ、デレク・コノリー

製作総指揮:カラム・グリーン、トミー・ゴームリー、

ジェイソン・マクガトリン

製作:キャスリーン・ケネディ、ミシェル・レイワン

撮影:ダニエル・ミンデル

特撮:ILM

音楽:ジョン・ウィリアムズ

 

●キャスト

デイジー・リドリー、アダム・ドライヴァー、

ジョン・ボイエガ、オスカー・アイザック、

キャリー・フィッシャー、マーク・ハミル、

アンソニー・ダニエルズ、イアン・マクダーミド、

ビリー・ディー・ウィリアムズ、ヨーナス・スオタモ、

ルピタ・ニョンゴ、ドーナル・グリーソン、

ケリー・マリー・トラン、ケリー・ラッセル、

ナオミ・アッキー、リチャード・E・グラント、

ビリー・ラード、ドミニク・モナハン、

ワーウィック・デイヴィス、デニス・ローソン、

ジェームズ・アール・ジョーンズ、フランク・オズ、

ユアン・マクレガーヘイデン・クリステンセン、

リーアム・ニーソン、サミュエル・L・ジャクソン、

アンディ・サーキス

 

◎注1;

 当初はレイ三部作すべての製作総指揮を担当する予定だったJ・J・エイブラムスが、ディズニー側の決定で解雇同然に降板させられライアン・ジョンソン監督と製作のラム・バーグマンに”丸投げ”のような形で完成した「最後のジェダイ」は、想定していた収益に届かずディズニー側も失敗作と認めざるをえなかった。そんなJ・Jがシリーズに監督として復帰したのにはいろいろ複雑な事情があったようだ。

 レイ三部作の完結作となる本作は「ジュラシック・ワールド(2015)」のコリン・トレヴォロウとデレク・コノリーによって脚本執筆が開始されたがルーカスフィルムのキャスリーン・ケネディと意見が対立して降板、何人かの後継候補の中からキャスリーン・ケネディの強い要望でJ・Jが監督する事になったようだ…ライアン・ジョンソンも候補だったという話もあったようだが前作の失敗を招いた張本人だからおそらくデマだろう。

 明言はされていないが、コリン・トレヴォロウはシリーズとしてしっかり構築されファンにも浸透している世界観を無視して自分流の「スター・ウォーズ」にしたかったようだ。ライアン・ジョンソンと同様にシリーズの続編としてストーリーを紡ごうとしないのでは結果が見えている。製作中だった「ハン・ソロ」でも監督のフィル・ロードとクリス・ミラーが世界観を独自のモノに変えようとして製作が迷走してしまっていた。キャスリーン・ケネディは本作もシリーズとしての流れが壊された完結編になるのではと危惧したのではないだろうか。

 J・Jは最初は断るつもりだったが(グビにされたんだしね)自身の製作会社バッド・ロボット・プロダクションズの共同経営者で妻のケイティ・マクグラスに勧められて考え直したという。脚本は白紙に戻された上に公開日は決まっているというかなりタイトなスケジュールだったが、「アルゴ(2014)」「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生(2016)」等の脚本家のクリス・テリオを筆頭に「スター・ウォーズ・シリーズ」を愛する実績のあるスタッフを招集し完全な仕切り直しとなった…コリン・トレヴォロウとデレク・コノリーが執筆していた脚本からアイデアの一部が採用されたため彼らはストーリー原案とクレジットされている。

 「帝国の逆襲」の監督アーヴィン・カーシュナーや「ジェダイの復讐」の監督リチャード・マーカンドは、独自性を主張しようとせずシリーズを紡ぐ職人に徹して監督に当たっていた…それでも個性は作品に表れているんだよね。昔は彼らのような与えられた仕事をキッチリこなす技術を有する職人監督が大勢いたのだが、近年は自己主張が強いだけの監督ばかりでこういう職人タイプが本当に少ないのが困ったもんなのだ。

 

◎注2;

 全体的な印象としては、前作の脚本・監督ライアン・ジョンソンによってズタズタにされた設定や世界観を、何とか元の路線に引き戻し各キャラクターを魅力的に掘り下げつつ面白いストーリーを組み立てて完結に漕ぎ着けたという感じを強く持った…悲惨な内容になった前作の後始末を労いたいですな。J・Jは降板させられたために当初から考えていた第2作以降の構想はライアン・ジョンソンには伝えなかったようで、前作が迷走してしまった事に責任を感じていたようだ。

 本作の製作陣にとっては、前作の後始末(尻拭い)をしなければならなかっただけではなく、前作完成後にキャリー・フィシャーが亡くなってしまったという最大の難関が待っていた。J・Jはレイ三部作について、第1作はハン・ソロ、第2作はルーク、第3作はレイアが中心になるストーリーと考えていて、キャリー・フィシャーとも第1作撮影中にそんな会話をしていたそうだ。ゼロからのストーリー作りと脚本執筆にあたり、J・Jはレイアの登場は不可欠だが代役を立てる事やCGでの再現はしたくないという考えをスタッフに伝えると、第1作の時に撮影した大量の未使用フッテージが使えるのではというアイデアが出され、本作で使えそうな未使用フッテージを探しリストアップするチームが設置され丁寧な作業が行われた。そしてフッテージを生かして考案された画面構成を元に脚本家クリス・テリオとの連携でストーリーが構築されパズルのようにレイアの登場場面を完成させたという。そんな事情でキャリー・フィッシャーの出演場面は決して多くはないが重要な役としてストーリーに違和感なく組み込まれ、前作の「フォースで宇宙空間から帰艦」というトンデモ場面の言い訳(尻拭い)的場面としてルークとのジェダイの修行シーンも登場。その場面は第1作からレジスタンス隊員コニックスとして出演しているキャリー・フィシャーの実の娘ビリー・ラードがマスクを付けて演じています…最後にフェイスガードを上げて見えるレイア顔は「ジェダイの復讐」出演時の顔をCGで貼り付けている。

 母はハリウッドのスター女優・歌手のデビー・レイノルズ父は歌手のエディ・フィッシャーという家庭に生まれたキャリー・フィッシャーは「シャンプー(1975)」で劇場映画デヴューし「スター・ウォーズ(1977)」でプリンセス・レイアを演じ世界的に注目され、その後は「ブルース・ブラザース(1980)」「ハンナとその姉妹(1986)」「メイフィールドの怪人たち(1989)」「恋人たちの予感(1989)」等で活躍、映画の脚本監修やグラミー賞授賞式の脚本等の裏方として女優以外でも活動し、「ハリウッドにくちづけ(1990)」で脚本家としてデヴュー。「最後のジェダイ」の撮影終了後の2016年12月27日に心臓発作で亡くなった…ちなみに母のデビー・レイノルズも翌日死去している。

 そんなゼロからのストーリー作りと脚本執筆の過程でレイの生い立ちについても描く必要があるという事になり、そこでシスの暗黒卿ダース・シディアス=パルパティーンの復活というアイデアが生まれ、この段階で当初の構想からは大きく変更されたらしい…脚本執筆にあたってはシリーズとしての連続性も重視して前作でボロボロになった設定や世界観を無視せずに何とか軌道修正・修復しようと苦労しているのが伝わって来る。批評家たちからは「フォースの覚醒」と同様にシリーズ定番が多すぎで新しさがないと批判されたが、そんなのシリーズものなんだから当たり前だし、新機軸をもっとプラスしろと言うのなら脚本も完成していない段階で公開日を決めてしまうディズニー側を責めるべき。「ジェダイの復讐」で死んだはずのパルパティーン再登場についても批判的で「ネタ切れか」と揶揄する批評家もいたようだ。「ジェダイの復讐」ではデス・スターの奈落に落下して行っただけで、ルーカスも意図的に生死が曖昧な結末にしている。映画ファンの友人に「シスが滅んだ事をはっきりと描いていない」と生存を力説をしていたぐらいだったので個人的には無問題…ルーカスも結果的に放棄してしまった最後の三部作でパルパティーンを復活させる予定だっただろうと妄想している。

 ファンの多くは、前作で消化不良のままだった伏線や新しく提示された謎の部分がキッチリ回収されていないあたりが不満だったようだ。個人的にはあっさり台詞で処理されたスヌークの正体、ルークのライトセイバーが何故どのようにしてマズ・カナタの手に渡ったか、カイロ・レンが暗黒面に堕ちた詳しい理由等々について描いて欲しかった…上映時間があと30分ぐらいあればもっと色々描けたはずなんだが。

 前作と大きく違うのはレギュラー・キャストがみんな表情が明るく生き生きとしている事で、メイキング等でわかるのは自分が出ない場面でも撮影を見学したりして実に楽しそうなのだ…レイ三部作でハックス将軍を演じたドーナル・グリーソンが前作の撮影現場は雰囲気が違ったと語っている。スタッフたちも前作では発言に気をつけてる雰囲気が観ていても解るほどだったが、今回はみんなリラックスしていて積極的に話しているし再びJ・Jと仕事が出来るのが嬉しくてしょうがない感じ。特にスタント・コーディネーターのユーニス・ハットハートや第二班監督のヴィクトリア・マホーニーのスタッフ・キャストを鼓舞し撮影現場を盛り上げるポジティブな明るさにはニコニコしてしまう…そんなスタッフたちの関係性が本作の完成度にもしっかり反映されていると感じますね。

 

◎注3;

 ジョージ・ルーカスがアナキン三部作でシリーズは終了とした結果、ルーク三部作の「ジェダイの復讐」がシリーズ完結編となったが、ルークがジェダイ騎士となりアナキン=ダースベイダーがジェダイ騎士に戻ってシスの暗黒卿を倒すという一応のハッピーエンドとはなっているものの、シリーズ完結編としては色々中途半端な感じがしていた…アナキン三部作の完成度にも問題があったしねぇ。

 シリーズ再開で今度こそは大河Sci-Fiシリーズとして納得の出来る完結編が観られるかもと楽しみにしていたが、前作観賞後にひどく落胆しこんな体たらくではレイ三部作も期待出来そうもないと諦めていたが、色々放置されたままの伏線もそれなりに回収されたし、今回はシスの暗黒卿パルパティーンの死とシスの終焉もきちんと描かれていて、銀河に平和が訪れスカイウォーカー家に新たな家族が加わるという素晴らしいハッピーエンドだった…ラストシーンでは不覚にもいい歳して落涙してしまったのは内緒だ。

 

◎注4;

 冒頭のシーンでシスの暗黒卿の頂点として君臨するため迷いが吹っ切れたかのような鬼気迫るカイロ・レンの演技が素晴らしいアダム・ドライヴァー、スパイク・リーやリドリー・スコット等の名監督たちから引っ張りだこで「監督キラー」と呼ばれているが、今回もルークの弟子でありハン・ソロとレイアの息子ベンとして暗黒面の誘惑との間で揺れ動く姿を上手く演じていて、復活したパルパティーンを前にしても臆する事のない迫力で圧倒、後半で父ハン・ソロと対峙する時の繊細な若者としての姿、立ちはだかるレン騎士団との対決で見せる余裕の表情、レイと共にパルパティーンを倒す決断をした時の真摯な感じ、ラストのフォースと一体化する時の穏やかな佇まい等、多くの監督からオファーが殺到しているというのもうなづけるのだ。

 そして前作ではほとんど描かれなかった高速チェイス・シーンの登場…このシリーズの大きな魅力の一つがこのスピード感なのだよ。特にミレニアム・ファルコンの活躍するチェイス・シーンはやっぱり燃える。さらに前作とは打って変わってオスカー・アイザックとジョン・ボイエガの二人の生き生きとした演技や台詞回しもメリハリが効いていて実に楽しい。前作ではほとんど描かれなかったこの二人の絡み具合の明るさが本作のトーンを象徴しているとも言えるのだ。

 

◎注5;

 凡作に終わった前作でもアダム・ドライヴァーと共に熱演していたデイジー・リドリー、本作ではレイの出生の秘密が判明、カイロ・レンとの最終対決、そしてパルパティーンとの対峙等、演技者として数多くの複雑な表現を要求されているが、その期待に見事に答えていて素晴らしい。

 ジェダイ騎士としての凛とした佇まい、仲間たちと交わすとびっきりの笑顔、アキ・アキ祭りに集う惑星パサーナの人々への優しい眼差し、自らのパワーに対する戸惑い、闘いに向かう時の鬼気迫る表情等々、銀河最強のフォースの使い手となったジェダイとシスのハイブリッド戦士を圧倒的な存在感で演じていて、大河Sci-Fiシリーズの最終三部作の主演女優として申し分のない大活躍…第1作を見た時から彼女のキャスティングが新たな三部作を大成功へ導いてくれると確信していたんだけどね。

 前作では出演場面が多かったにもかかわらず脚本・演出の不備でボンクラ野郎にしか見えなかったジョン・ボイエガだが、本作では第1作で見せてくれた新鮮な演技に戻っていて、ストーリーに熱いパワーを与える存在に。新キャラクターの元ストームトルーパーのジャナを演じたナオミ・アッキーとのコンビネーションも素晴らしく、お互いの境遇を語り合う場面はしっとりとした演技も上手い事を証明している。

 前作でも熱演していたがポンコツ監督によってキャラクターとして損な役柄に回されたおかげで、あまり印象に残らずお気の毒だったオスカー・アイザック、本作では前歴が明らかになる場面や小ネタのギャグも用意され幅広い演技力を見せてくれる。新キャラクターのゾーリを演じたケリー・ラッセルとの場面では台詞では語られない二人の過去の関係性が伝わって来る…ラストシーンでの言葉にしないでもお互いの気持ちを理解し合える感じとか最高です。

 前作では失敗作としての全責任を押し付けられてしまった感のあるローズ・ティコを演じたケリー・マリー・トランだが、本作では出番は多くないものの一応出演を果たしている…シリーズとしての連続性を考慮したJ・Jの配慮だったと思われる。こじんまりとしていた演技や台詞回しも改善され表情も生き生きとしていて作品の良いアクセントになっている。

 メイキングでは、そんなケリー・マリー・トランと前作で意気投合し仲良くなったと嬉しそうに話していたのがレジスタンス隊員コニックスとして出演しているキャリー・フィシャーの実の娘ビリー・ラード、その二人と共演場面が多かったのがレジスタンスの兵士ボーモント・キンとして出演している「ロード・オブ・ザ・リング/フロド三部作」でメリーを演じていたドミニク・モナハン…個性的な顔立ちなのですぐにわかった。

 魅力たっぷりなキャラクターだったのに前作では冷遇され見せ場ゼロだったマズ・カナタにも、フォースと一体化するレイアを看取るという重要な役割が与えられている。第1作では演じるルピタ・ニョンゴの演技や表情をキャプチャーしてCGに置き換えられていたが、本作では精巧なメカを組み込んだ実物大フィギュアも造られ実写撮影が行われている…彼女の過去を描くスピン・オフとか面白そうなんだが。

 レイ三部作のレギュラーとしてファースト・オーダーのボンクラ将軍ハックスを演じたドーナル・グリーソン。彼もアダム・ドライヴァーと同様に若手俳優として引っ張りだこで、本作の上手いボンクラ演技からはちょっと頼りない好青年役が多いのも頷けるのだ。本作でも、独善的な最高指導者カイロ・レンに対する恨み(嫉妬)から〇〇になり、偽装のために足を撃たれたのにあっさり見破られて銃殺という情けなさ…「エクスマキナ(2014)」ではオスカー・アイザックと共演してます。

 ハックス将軍を銃殺するプライド将軍を演じたのはベテラン俳優のリチャード・E・グラント。オスカー候補にもなった演技派の名優なのに、メイキングではシリーズ初出演に歓喜する姿やNG連発する姿が…司令室のセットのボタンを押したがるお茶目な姿には爆笑させてもらいました。

 本作で再びパルパティーン=ダース・シディアスを演じる事になった名優イアン・マクダーミド、復活に際しては「ジェダイの復讐」よりも特殊メイクが強めに施されているので言われないと誰だかわからない…アナキン三部作のような素顔に近い場面は皆無だからね。しかし声のトーンや台詞回しは以前と変わらず迫力たっぷりでメイキングではJ・Jやスタッフに「怖いかい?」と戯けてみせる余裕も。

 他にも特別ゲストとして、「ジェダイの復讐」でイウォーク族のウィケットを演じていたワーウィック・デイヴィスが息子のハリソン・デイヴィスと出演…二人とも着ぐるみ姿なのでホントの隠しゲスト。ちなみにワーウィック・デイヴィスは「イウォーク・アドベンチャー」「エンドア/魔空の妖精」を筆頭に「ウィロー (1988)」「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016)」「ハン・ソロ」等、そして本作までジョージ・ルーカス関連作品ほぼ皆勤賞。他にも「ハリー・ポッター・シリーズ」ではフリットウィック教授等様々な役で出演してます。

 ルーク三部作で反乱軍のXウイング・ファイターのパイロットのウェッジを演じたデニス・ローソンも出演、メイキングでは「歳を重ねたので元帥とか将軍役かと思ったら今回もオレンジ色のツナギを着たパイロットだった」と苦笑していました。同じくルーク三部作でオビ=ワン・ケノービを演じたアレック・ギネスの孫娘サリー・ギネスもファースト・オーダーの士官として出演していてメイキングでは「暗黒面に堕ちた」と笑わせてくれます。

 そして極め付けは、惑星キジーミの酒場のバーテンダーのオマ・トレスを演じている映画音楽の巨匠ジョン・ウィリアムズ。ワン・カットのみの出演ながら、そのセットには彼が音楽を担当した数多くの作品にまつわる小道具のミニチュアが並べられているという豪華さ。酒場には他にも廃品としてシリーズに登場したキャラクターや小道具類が多数置かれています…何故かJ・Jの製作会社バッド・ロボットのマスコットも登場。メイキングには、ジョン・ウィリアムズの指揮するオーケストラの録音にJ・Jやメイン・スタッフ、マーク・ハミルやキャスリーン・ケネディのパートナーのフランク・マーシャルが感激しながら見守る姿も…ジョン・ウィリアムズから「レイのテーマ」の譜面を贈られ涙するデイジー・リドリーが可愛い。

 

◎注6;

 ルークの性格を全く正反対に変えられジェダイの設定もグダグダにされてしまった前作の脚本や演出に公然と異を唱えていたマーク・ハミルだったが、「ライトセイバーを粗末にするな」「ジェダイも間違いを犯す」という前作の言い訳的なセリフもあったもののジェダイ・マスターとして復活、ジェダイの修行中だった「帝国の逆襲」では不可能だったXウイング・ファイターの浮上を見せてくれる…ポンコツな前作を無視しても良かったのにシリーズとしてのストーリー上のつながりを重視し良質なアイデアに変換した本作のスタッフに拍手。ウェイファインダーを失った失意のレイを勇気付けジェダイ・マスターらしいアドバイスを与えるという重要な役ではあったがファンとしては少し物足りない…もう少し活躍させても良かったのにとは思ったけどね。

 マーク・ハミルは大学時代からテレビ俳優として活動していたが劇場映画デヴュー作「スター・ウォーズ」の世界的大ヒットで一躍人気スターとなり、シリーズと並行して「コルベット・サマー(1978)」「最前線物語(1980)」に出演、ブロードウェイの舞台にも進出し「エレファント・マン」「アマデウス」等に出演、映画版「アマデウス(1984)」のオーディションも受けたがルーク・スカイウォーカーのイメージが強過ぎると門前払いされてしまう。ルークはマーク・ハミルの人格・性格等が強く反映されたキャラクターだった事に端を発するのだが、その後も「風の惑星/スリップストリーム(1989)」「光る眼(1995)」等に出演するが映画俳優としては苦戦する事に…大ヒット・シリーズに出演した事でイメージが固まり演技者としての本来の魅力で勝負出来なくなったのが本当に気の毒だった。その後は映画の小さな役や舞台俳優・声優としての活動が中心になり「風の谷のナウシカ(1984)」「天空の城ラピュタ(1986)」の英語版にも出演…「キングスマン(2014)」に特別出演しているがあっという間に爆死してしまう。

 マーク・ハミルは高校3年の時に父親の仕事の関係で神奈川県横浜市に住んでいたそうで、本作のメイキングでも惑星キジーミのセット・デザイナーを訪れ日本家屋の屋根の形に似ていると語っている…特殊メイク等にも興味津々で「スター・ウォーズ」の時は、撮影の無い日はヨーダ等を製作したスチュアート・フリーボーンの工房に入り浸っていたらしい。

 

◎注7;

 ビリー・ディー・ウィリアムズは1959年の「The Last Angry Man(1959)」で劇場映画デヴュー、「ビリー・ホリディ物語/奇妙な果実(1972)」「マホガニー物語(1975)」等に出演後「帝国の逆襲」でランド・カルリジアンを演じて大ブレイクし「ナイトホークス(1981)」「バットマン(1989)」等のメジャー作品に出演したものの、マーク・ハミル同様にランド役のイメージが強すぎたのか以降はB級映画が中心に。本作では年を重ねて存在感がさらに増した感じで、シリーズ全9作のテーマとも言える名台詞も用意されています…キャスト・スタッフにも彼のファンが多かったようでランドを演じる彼に興奮している様子が微笑ましかった。

 パサーナでの追跡劇は冒頭のミレニアム・ファルコンによるそれと同様にこれぞ「スター・ウォーズ」という感じ。そのスピード感に加えて飛行タイプのストームトルーパーの登場に拍手喝采、BB-8の活躍で危機を回避するあたりも嬉しい。

 シリーズ初登場となるレイの「癒しの力」は、「ルーク三部作」「アナキン三部作」では回収されず放置されたままの設定「フォースのバランス」に関連していて、本作の結末につながる大きな伏線にもなっていて大興奮でした…こういう新機軸は大歓迎なのだよ。

 

◎注8;

 予告編でも紹介されていたレイとカイロ・レンのTIEサイレンサーの対決、予想外のレイの荒技の登場に心の中で「すげえ」と叫びました。レイがジェダイ騎士として強さを増しているのを見せつつ、チューバッカが捉えられた輸送船を止めようとして感情が高まりシスのフォース・ライトニングで破壊してしまう場面では、ベン・ソロ同様に暗黒面に取り込まれてしまうのではという不安感を観客に抱かせてしまうあたりが実に上手い。

 ボヤキ担当としてシリーズ全作に登場する事となったC-3POには惑星キジーミでシリーズ屈指の名場面・名台詞が用意されていて胸が熱くなります…シリーズ功労者に対するJ・Jやクリス・テリオの「愛」を感じますね。シリーズ全作に出演した唯一の俳優としてC-3POを演じた(ファントム・メナスでは声のみ)アンソニー・ダニエルズは、イギリスの演劇学校を卒業しラジオ・ドラマや舞台を中心に活動していたがルーカスからのご指名で第1作に出演する事に。以降はラルフ・バクシ監督のアニメーション「指輪物語(1978)」で声優をやったぐらいで劇場映画出演は「スター・ウォーズ・シリーズ」のみという異色俳優であります…現在はイギリスで政治家として活躍中。アンソニー・ダニエルズの演技や台詞回しが物語に潤いを与え場面を豊かにしていたのは確実で、共演者たちもマスク越しで表情を変えられないのにチョットした仕草で感情や言いたい事を表現する演技力を高く評価していた。そんなC-3POを40年に渡り演じた名優に最大級の拍手を送りたい。

 

◎注9;

 レイとカイロ・レンのフォースで繋がった状態での対決はなかなか良かったし、繋がってはいるが相手の居る場所まではわからないというあたりが面白い。デス・スターの残骸に潜入したレイが破壊されたパルパティーンの玉座を発見するあたりはワクワクが止まらない…セットが出来た時にみんなが座りたがって困ったと美術スタッフが語っていたのが笑えます。隠し部屋の中で暗黒面のレイとの対峙場面は「帝国の逆襲」でルークがダースベイダーのマスクの中に自身の顔を見る場面の再現だが、暗黒面の折りたたみ式のライトセイバーとの対決をもう少し見てみたかったかも。レイとカイロ・レンの最後の対決は、最初は互角に見えたが暗黒卿としてシスの頂点に立ったカイロ・レンの強さに徐々に圧倒されて行くサスペンスがたまらない。そんな状況なのにフィンを危険から遠ざけようとするレイの優しさ、母レイアの死を感じ取って我に帰るカイロ・レン=ベン・ソロ、予期せぬ形で対決に決着がつき致命傷を負ったカイロ・レンにレイの「癒しの力」が…こんな素敵な決着が待っていたとは。この素晴らしい対決シーンの撮影で、水はかからないとスタッフから説明されていたのにびしょ濡れになったデイジーが笑いながらスタッフの名前を叫ぶシーンがメイキングに残っています。

 ハリソン・フォードの出演は予想していなかったので正直吃驚、エンド・クレジットにも名前がないシークレット・ゲスト扱いなのだが、重要な役での出演には思わず拍手…レイアの死やベン・ソロの帰還にはハン・ソロの登場は必然だったよね。欲を言えばレイ三部作では完全にすれ違いだったマーク・ハミルとの共演場面も見たかったけどね。

 

◎注10;

 ルークがXウイング・ファイターをフォースでサルベージするシーンは、前作では海中に水没していた事から思いついたそうで、シリーズの連続性を重視して凡作に終わった前作の描写を無視せずにピックアップしたJ・Jやクリス・テリオを賞賛したい。

 レイアの後を受けてレジスタンスの司令官となり不安を募らせるポーにランドが語るセリフは、このシリーズが何故世界中の映画ファンから支持されたかの本質を捉えていて素晴らしい。ルーク三部作にはSci-Fi映画としての要素が満載だったが、実は青春映画の要素も詰まっていて、若者たちの希望・苦悩・出会い・友情・別れ・絆が描かれていた。クリエイターであるルーカスも関連グッズが爆売れした事に浮かれ過ぎて、この「支持された本当の理由」には気づいていなかったようだ。ルーカスの自己満足が炸裂していたアナキン三部作ではそういった要素や描写は皆無に近い…色々盛り込み過ぎてダイジェストみたいな駆け足ストーリーだったからね。

 エクセゴルのシス艦隊への総攻撃は「ジェダイの復讐」を想起させる展開で、スター・デストロイヤーの甲板(?)をレジスタンスの騎馬隊が駆けるという驚愕の場面が登場、「酸素は?」とか「重力は?」といった数々の疑問が前作並みに噴出したが個人的にはギリギリ許容範囲…イウォークたちのエンドアの戦いを意識したようだがもう一工夫欲しかった感じ。

 それと並行してレイとパルパティーンの壮絶な対決が描かれるのだが、巨大な遺跡とかシスの一族(?)が集うコロシアム的な場面はちょっとうーんと思ってしまった。祖父パルパティーンと孫娘レイの対決、駆けつけたベン・ソロとレン騎士団の戦い、ピンチに陥ったベン・ソロへライトセイバーをフォースを介して渡すレイ、アナキンの孫とパルパティーンの孫というシスの末裔でもある二人の共闘、二人のフォースを吸収し完全復活を遂げたパルパティーンをシスとジェダイのハイブリッドで最強の騎士となったレイが倒すという最高の結末…今回はパルパティーンが完全に消滅する描写有り。そしてジェダイへ帰還したベン・ソロの「癒しの力」と三部作の根幹でもあったレイとベン・ソロの悲恋の結末…ジェダイに帰還したとはいえ大量殺戮を行い父をも殺害してしまったベン・ソロの贖罪はこれしかなかったのだろうと思わせてくれる。

 本作のラストで「レイ・スカイウォーカー」と名乗るシーンでは不覚にも落涙…メイキングではデイジーご本人も台詞の後に涙を流しているが、それを見たJ・Jの感極まって言葉に詰まっている姿が微笑ましい。レイがルークの生家跡を訪ねる場面の撮影で、スロープを滑り降りるのを怖がるデイジーが可愛い…スタント・コーディネーターのユーニスが「激しいアクションをこなして来たのに」「弱々しいレイの姿を写すな」と笑っていたのが素敵でした。デイジー・リドリーはオフの時の今風の普通のお嬢さんな姿もなかなか素敵なので、女優としての今後の活躍も期待出来そうです。

 

◎注11;

 「ファントム・メナス」でリーアム・ニーソンが演じるクワイ=ガン・ジンによって語られた「フォースにバランスをもたらす存在」というルーク三部作では影も形もない初登場の設定。ルーカスの構想では生命を操る暗黒面の力によって生まれたアナキンがその「選ばれし者」だったようだが「スター・ウォーズ エピソード3/ シスの復讐(2005)」で一応のシリーズ終了宣言したにもかかわらず明快な結論は描かれていない…ルーク三部作とアナキン三部作の映画化は前後していたし当初は全9部作の予定だったからね。その点に注目したJ・Jとクリス・テリオが本作で生み出したのがレイの「癒しの力」で、生命を操るシスの暗黒卿とジェダイ騎士のハイブリッドとなったレイこそが「フォースにバランスをもたらす存在」だったという、過去作では宙ぶらりんの状態だった設定の明確な回収がシリーズ完結編で用意された。このあたりについては批評等でも語られていなかったように記憶しているが、中間部が凡作という混乱の末に完結したレイ三部作で最も評価されるべきポイントではないかと考えている。古典的な勧善懲悪のストーリーとしてバランスが保たれたのが何より素晴らしいよね..「シリーズにバランスをもたらす一編」ですな。シニカルな作品を好む批評家や映画ファンたちには、こういう王道の結末が気に入らなかったようだけどね。

 

◎反省; 

 「つぶやキネマ」なのに長文で失礼。

 

 

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