イウォーク・アドベンチャー(1984) | つぶやキネマ

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イウォーク・アドベンチャー(1984)

 

 辺境の惑星エンドアに不時着した地球人夫婦のジェレミット(ガイ・ボイド)とカタリーン(フィオヌラ・フラナガン)は、深い森の中ではぐれてしまった14歳の息子メイス(エリック・ウォーカー)と4歳の娘シンデル(オーブリー・ミラー)を探していたが、この惑星に住む巨人ゴラックスが現れたために捜索を断念してゴラックスの追跡を逃れる。この惑星の住人であるイウォーク族のディージ(ダニエル・フリッシュマン)はなかなか帰宅しない息子のウィーチー(デビー・リー・キャリントン)とウィドル(トニー・コックス)を探しにハング・グライダーで飛び立ち、崖で立ち往生していた2人を発見し救出。捜索の途中にディージが上空から見た光る物体を帰路の森の中で発見するが、それは墜落した宇宙船で、隠れていたシンデルと銃を持って現れたメイスを捕獲し家へ連れ帰った。シンデルは体調を崩していたがディージの妻ショードゥー(パム・グリッズ)と末の息子ウィケット(ワーウィック・デイヴィス)の看病で回復、メイスとシンデルは両親を捜すためにディージ一家が寝ている隙に森へ出発するが、巨大な獣ボラに襲われ巨木の穴に逃げ込む。ボラは兄妹を捜しに来たディージ一家によって倒されるが、メイスはボラの装飾品に父ジェレミットの生命モニターを発見し両親が生存していることを確信、村の長老で呪術師のログレイ(ボビー・ベル)によって両親が巨人ゴラックスに捕らえられていることを知った兄妹は救出に向かおうとするが、それを見たディージは息子たちや仲間とキャラヴァンを組んで救出に向かう事を提案する…というお話。

 

 「スター・ウォーズ(1977)」の世界的大ヒットを受けてシリーズが全9部作になる事をぶち上げたジョージ・ルーカスは、テレビ放映用のアニメーション・シリーズや「外伝」的作品の構想も持っていて、シリーズ全9部作の中間3部作が完結した後に最初に着手したのが本作だったようだ。「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(1983)」(現在は「ジェダイの帰還」に改題)で活躍したイウォーク族を中心にした物語は、デス・スターを守っているシールド発生装置の破壊のために反乱同盟軍がエンドアに侵攻する以前と言う設定で、1984年にテレビ映画として制作、アメリカ以外の国々では劇場公開された。

 「ジェダイの復讐(1983)」は作品としての完成度も低く、映画史に刻まれるシリーズ完結編(当時)としては期待していたのとは大きく違っていた。特にテディベアのようなイウォーク族のデザインや描写には酷く落胆したのだったが、そのイウォーク族を中心にしたストーリーと聞いていたのにもかかわらず、公開されたら劇場に足を運んでしまった。その結果再び落胆を味わうことになったのだが、Sci-Fi映画の金字塔とも言えるシリーズの派生作品なのに、魔法や妖精が登場するファンタジーだったのにはホントにがっかり(注1)。

 捕らわれた両親を助けるために謎の巨人との対決に向かうというストーリーは、ディズニーの「ミッキーの巨人退治(1938)」「ファン& ファンシーフリー(1947)」の一編「ジャックと豆の木」そのままで、巨大さを強調する場面では2作品にそっくりな画面構成や演出も登場する(注2)。

テレビ・ムービーというのを考慮しても、凡庸な演出とカメラワーク、安普請のセットの中をテディベアの着ぐるみが動き回るのを延々と見せられるという、大人の映画ファンには拷問に近く、演技の出来ない子役がメインになると映画としてのリズム感が完全消滅してイライラさせられる(注3)。

 楽しみにしていた特撮場面も「スター・ウォーズ(1977)」の大ヒットに便乗して量産されたB級Sci-Fi映画群と大差なく、巨人ゴラックスは着ぐるみだし、巨大獣ボラのストップモーション・アニメーションの動きも最悪だし、アニメーションで描かれた妖精さんも魅力ゼロ(注4)。

 ロケ撮影された風景は悪くないのだが、合成されるマットアートの出来が悪くて台無しなのがなんともナサケナイ。シンデルちゃんを乗せた馬が暴走する短いシーンは画面構成や編集も映画的でなかなか良かったのだが、このシークェンスはおそらくスタント・コーディネーターのマイケル・キャシディ主導で撮影されたと思われる…馬が走るのはハリウッドの伝統だからね。

 巨大な蜘蛛の巣が後半に登場するのだが、深い谷に張られた蜘蛛の巣は化粧を施した(笑)太いロープで、それをキャラヴァン隊が恐々渡っていく。演出やカメラワーク次第ではスリリングな場面になったはずなのだが、子供が公園の遊具で遊んでいるような映像でガッカリ。監督のジョン・コーティーは、こういう題材には向いていなかったのだろう。

 

●スタッフ

監督・撮影: ジョン・コーティ

原案・製作総指揮: ジョージ・ルーカス

脚本: ボブ・キャロウ

特撮: デニス・ミュレン、フィル・ティペット

音楽: ピーター・バーンスタイン

 

●キャスト

エリック・ウォーカー、ワーウィック・デイヴィス

オーブリー・ミラー、ダニエル・フリッシュマン

デビー・リー・キャリントン、トニー・コックス

パム・グリッズ、ボビー・ベル

ガイ・ボイド、フィオヌラ・フラナガン

バール・アイヴス(ナレーション)

 

◎注1; 

Sci-Fi的なのは破壊された小型宇宙船と光線銃ぐらいで、全体的には同時期に量産されていたB級ファンタジー映画の雰囲気なのだが、呪術師のログレイの魔法やアニメーションを中心してに描かれた光る妖精の描写も不徹底で、完全な子供騙しなのがなんだなあという感じ。ジョージ・ルーカスの名前で製作するんだから、もう少しちゃんとしたものを作らなきゃいけないと思うのだが、この辺りがファンや批評家から”守銭奴”と呼ばれるようになる要因なんだよね。

◎注2; 

巨人ゴラックスの登場場面の撮影にあたって参考にしたと思われる、ディズニーの短編アニメーション「ミッキーの巨人退治(1938)」とオムニバス長編「ファン& ファンシーフリー(1947)」(日本公開タイトルは「子ぐま物語」)の一編「ジャックと豆の木」は、どちらも後のファンタジー映画に大きな影響を与えた記憶に残る楽しい名作なので、不謹慎だがいっその事もっとパクれば良かったのにと思ってしまった。

◎注3; 

監督と撮影監督を兼任したジョン・コーティはテレビ・ムービー「不思議な村(1971)」「ジェーン・ピットマン/ある黒人の生涯(1974)」等で注目され劇場映画に進出し「愛のファミリー(1977)」「続ある愛の詩(1978)」を監督、ロバート・レッドフォード主演「候補者ビル・マッケイ(1972)」には撮影監督として参加している。本作への起用は、超能力者が住む村を描いた「不思議な村(1971)」を見たジョージ・ルーカスが決めたと思われます…ちなみにこの作品の製作総指揮はフランシス・フォード・コッポラで、日本では「SF超能力者の村・消滅惑星ザイラスの秘密」という別名での放映もあったようだ。

 メイスを演じたエリック・ウォーカーは、マーク・ハミルの少年期みたいな感じで、キャスティングでも”スター・ウォーズ”っぽさを出そうとしたのかも。

 シンデルを演じたオーブリー・ミラーは撮影当時5歳でオーディションで選ばれたようだが演技経験はゼロ。指示されたとおりに動いて台詞を言うのがやっとという感じで、彼女の登場場面は作品のリズムが完全に停滞してしまう…彼女が台詞を言うのを待っている感じなんだよなぁ。

 父のジェレミットを演じたガイ・ボイドはTV界を中心に活躍していた俳優さんで「死霊の谷(1976)」「ストリーマーズ/若き兵士たちの物語(1983)」「パシフィック・ハイツ(1990)」等の劇場映画にも出演。母カタリーンを演じたフィオヌラ・フラナガンもTV界出身で「新・刑事コロンボ/殺意のキャンバス(1989)」「ジェシカおばさんの事件簿/ケルトの秘宝(2003)」等のTVムービーのゲスト出演が中心。「栄光のエンブレム(1986)」「アザーズ(2001)」等の劇場映画にも出演しています。

 「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(1983)」でもウィケットを演じたワーウィック・デイヴィスは、その後も「スター・ウォーズ・シリーズ」の常連となり、本作の続編「エンドア/魔空の妖精(1985) 」「スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス(1999)」や、シリーズ再開作品「スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)」「スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017)」、そして「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け(2019)」ではなんとウィケット役、派生作品の「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016)」「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)」にも出演。ジョージ・ルーカス製作総指揮、ロン・ハワード監督の「ウィロー(1988)」では着ぐるみなしで主演、「ラビリンス/魔王の迷宮(1986)」「エクスカリバー(1997)」「銀河ヒッチハイク・ガイド(2005)」等の劇場映画に出演、「ハリー・ポッター・シリーズ」は全作に出演しています。

◎注4; 

 巨人ゴラックスが出来の悪い着ぐるみだったのには本当にがっかり、演技や動作もイマイチだったので中の人は誰なのかと思ったら特撮スタッフのジョン・バーグが演じていた…専門の俳優さんを雇えなかったようだ。ストップモーション・アニメーションで描かれる巨大獣ボラも情けなくなる完成度。両者に共通するのは、何かでNGになったキャラクターの使い回しではと思えるくらいデザインが悪く悪役としての魅力が無い事…人形は顔が命デス。特撮を担当したのはジョージ・ルーカスの特撮工房ILMで、当時の中心人物だったデニス・ミュレンや、ストップモーション・アニメーションの世界ではレイ・ハリーハウゼンの後継者と言われていたフィル・ティペットが名を連ねているのだが、当時の技術レベルを考えてもキャリアの汚点と言えるぐらいの悲惨な出来であります。おそらく二人は同時期に製作されていた「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説(1984)」の方にかかりっきりで、本作は簡単な指示を出しただけで若手のスタッフに丸投げしたのではないかと妄想している。

 

 

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