エンドア/魔空の妖精(1985) | つぶやキネマ

つぶやキネマ

大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

エンドア/魔空の妖精(1985)

 

 「森の月」と呼ばれる惑星エンドアに不時着した地球人のシンデル(オーブリー・ミラー)の一家は、危機から救ってくれた惑星の住人イウォーク族の村で平和に暮らしていた。父のジェレミット(ポール・グリーソン)は地球へ帰還するために宇宙船の修理を続けていたが、辺境の地に城を構え強大な軍隊マローダーズを率いる邪悪な王テラク(カレル・ストライケン)は、宇宙船のエネルギー発生装置を狙って村を襲撃、シンデルの母カタリーンと兄メイス(エリック・ウォーカー)はマローダーズ兵士によって殺害され、テラクの脅迫に屈しなかった父ジェレミットも殺されてしまう。シンデルとイウォーク族のウィケット(ワーウィック・デイヴィス)はマローダーズ兵士の追撃を逃れていたが、テラクの部下の魔女シャラル(シアン・フィリップス)に発見され捕虜になってしまう。護送車で城へ運ばれる途中、床板を外して護送車から脱出したシンデルとウィケットは、高速で走り回る小猿ティーク(ニキ・ボテロ)と出会い深い森の奥の小屋へ案内される。その小屋の住人は惑星エンドアに36年前に墜落した老人ノア(ウィルフォード・ブリムリー)で、仲間を失って以降はティークとこの小屋で暮らし、森の奥に隠した宇宙船の修理を続けていたのだった。村の襲撃で奪ったエネルギー発生装置を魔法の力の源であるパワー・クリスタルと信じ、装置からパワーを取り出す秘密をシンデルが知っていると考えたテラクは、シンデルを捜し城へ連れてくるように魔女シャラルに命じるのだった…というお話。

 

 1984年にテレビ映画として制作、アメリカ以外の国々では劇場公開された「イウォーク・アドベンチャー(1984)」の約半年後に制作された続編で、前作同様にアメリカ以外の国々では劇場公開された。Sci-Fi映画の要素がほぼ皆無な魔法や妖精が登場するファンタジーだった前作にひどく落胆したのに、ビデオ発売まで待てないという気持ちから懲りずに再び劇場へ足を運んだのだが、前作同様に光線銃を打ち合うファンタジーで、外伝はもういいからジョージ・ルーカスが全9部作になると宣言したシリーズの残り6部の製作を早く再開してくれと思ったもんです。

 何より驚いたのは、前作で大きな犠牲を払って助け出した両親と兄のメイスが作品の冒頭で殺害されシンデルちゃんがいきなり孤児になってしまった事(注1)。さらにイウォークたちが冒頭で捕虜になってしまうので、結果的にシンデルちゃんとウィケット中心になり、ストーリー展開も整理されてシンプルになった事で映画としての完成度はわずかに上がっているのだが、このご都合主義的な設定は前作が好きだった年少のファンたちにはどのように映ったのだろう。

 シンデルちゃんを演じたオーブリー・ミラーは、前作では指示された通りに動いて台詞を言うのがやっとだったのが、約半年で身長も伸びて動作も機敏になり、演技も少し出来るようになって台詞も前作より流暢に喋れるようになっていた。さらに、物語中盤で老人ノアを加えた事でシンデルちゃんとウィケットが動き回るだけで単調になっていた展開に広がりが加わった。ノアを演じたウィルフォード・ブリムリーは「チャイナ・シンドローム(1979)」「遊星からの物体X(1982)」」「コクーン(1985)」等の遅咲きの俳優さんで、その存在感で後半はほとんどノアが中心になり「軒を貸して母屋を取られる」状態になってはいるが、映画としてはこちらが正解だろう(注2)。

 演出やカメラワークも前作よりわずかだが映画的になっていて、イウォークたちが冒頭で捕虜になりクライマックスまでほとんど登場しない事で、前作では映画的リズムの妨げになっていたテディーベアのぬいぐるみが画面内をウロウロする映像が少なめなのも、作品のクオリティを上げるのに貢献している。冒頭のマローダーズ兵士による襲撃やクライマックスの戦闘アクションも演出や編集が前作より映画的で、本作の大きな見所なのだが、この戦闘アクション・シーンの演出は第二班監督のジョー・ジョンストンによるのではと妄想している(注3)。

 前作では悲惨な出来だったストップモーション・アニメーションもわずかに改善され、護送車を引く怪物の動きやデザインは悪くない。物語中盤でシンデルちゃんを捕獲して飛び立つ翼竜はデザインが1960年代のセンスな上に動きも最悪でがっかりさせられる。顔がよくわかるバストショット(?)はパペットで撮影されたようだが、飛行する場面のフルショットの時は掴んでいるシンデルちゃんもストップモーション・アニメーションで描かれていて意欲を感じたが残念な結果に…せめて翼竜のデザインは他の怪物とコンセプトを統一して欲しかったよね。ラストでは宇宙船が飛び立つ場面もあるので前作よりは特撮の予算が多かったのだろう。

 高速で走り回る小猿ティークは着ぐるみとパペットで、高速移動はコマ落としで表現されている。アップで台詞を喋る場面が多いテラクは顔に特殊メイクが施されているが、造形そのものは悪くないものの表情に乏しく口の動きも不自然で「猿の惑星シリーズ」を思い出した。マローダーズ兵士たちは一部を除いて造形されたマスクをかぶっているだけだが、過去の映画で撮影に使われたガラクタ小道具を寄せ集めたような感じの衣装は何気に凝っていて、低予算のTVムービーとしてはナカナカ良い(注4)。

 学芸会を見ているようだった前作に比べると、ストーリーもそれなりに面白くアクションも多めで、クライマックスでは「スター・ウォーズ」の外伝らしさもあって、これはこれでアリなのかなとも思ったが、この時は旧三部作の「特別編」まで12年、新シリーズ再開まで14年も待たされるとは思わなかったのだ…本作とほぼ同時にアメリカとカナダで放映が開始された2本のアニメーション・シリーズ「スター・ウォーズ ドロイドの大冒険(1985~1986)」「イウォーク物語(1985~1987)」もあるのだが、「スター・ウォーズ」なら何でも見たいというファン以外にはおオススメしません。

 

●スタッフ

脚本・監督: ケン・ウィート、ジム・ウィート

原案・製作総指揮: ジョージ・ルーカス

製作: トーマス・G・スミス

撮影    : イシドア・マンコフスキー

音楽: ピーター・バーンスタイン

 

●キャスト

オーブリー・ミラー、ワーウィック・デイヴィス

エリック・ウォーカー、ポール・グリーソン

ウィルフォード・ブリムリー、ニキ・ボテロ

ダニエル・フリッシュマン、トニー・コックス

パム・グリッズ、カレル・ストルイケン

シアン・フィリップス

 

◎注1; 

前作で、仲間たちと力を合わせ苦難を乗り越えた末に巨人ゴラックスから助け出した両親と、前作では主役の一角だった兄のメイスが冒頭で殺害されてしまったのには”なんじゃそりゃ”という気分だった…物語を面白くするために重要なキャラクターを簡単に殺してしまうのは、シリーズを追っていくとジョージ・ルーカスの作劇法の得意技な事がわかって来るけどね。

 脚本・監督のケン・ウィートとジム・ウィートは兄弟で、1979年に脚本家として劇場映画デビュー、「ザ・フライ2/二世誕生(1988)」で脚本を、「ピッチブラック(2000)」では原案・脚本を担当しているが、監督作は本作も合わせて3本で活躍の場はB級映画やTVムービーが中心だったようです。ちなみに、この”なんじゃそりゃ”気分には「エイリアン3(1992)」で再び襲われる事に…。

◎注2; 

主演のオーブリー・ミラーは結局このシリーズ2本のみで女優業を引退、今回は見せ場ゼロだったエリック・ウォーカーは本作の後はTV界を中心に活躍、「レス・ザン・ゼロ(1987)」「ニューマン(1991)」等の劇場映画にも出演している。

 前作に引き続きウィケットを演じたワーウィック・デイヴィスは、その後も「スター・ウォーズ・シリーズ」の常連となり、「ウィロー(1988)」では着ぐるみなしで主演、俳優業と合わせて小人症の俳優のエージェント会社を経営。

 ノアを演じたウィルフォード・ブリムリーは、カウボーイやロデオ選手、ボディーガード等の様々な職業を経験した後にジョン・ウェイン主演の「勇気ある追跡(1969)」で俳優デビュー。上記した以外にも「出逢い(1979)」「ブルベイカー(1980)」「カントリー(1984)」「 ホテル・ ニューハンプシャー(1984)」「レモ/第1の挑戦(1985)」等に出演、TVドラマ・シリーズ「頑固じいさん孫3人(1986~1988)」で人気スターになっています。

 魔女シャラルを演じたシアン・フィリップスは、舞台女優から1958年にTV女優としてデビュー後「史上最大の作戦 (1962)」で劇場映画に進出、「悪魔のような恋人1969」、カシオペアを演じたレイ・ハリーハウゼンの「タイタンの戦い(1981)」、デヴィッド・リンチ監督の「砂の惑星(1984)」ではベネ・ゲセリットの教母を演じています。「ベケット(1964)」「チップス先生さようなら(1969)」「マーフィの戦い(1971)」で共演しているピーター・オトゥールの元夫人でもあります。

 マローダーズの王テラクを演じたカレル・ストライケンは、ビー・ジーズ主演のミュージカル「 サージャント・ペッパー(1978)」で俳優デビュー、長身と特徴的な御面相で「イーストウィックの魔女たち(1987)」「アダムス・ファミリー(1991)」「アダムス・ファミリー2(1993)」等で活躍、デヴィッド・リンチのカルトTVシリーズ「ツイン・ピークス(1990~1991)」ではカイル・マクラクラン演じるでいる・クーパー捜査官の夢枕に謎の巨人として立ってます…本作では特殊メイクで顔がわかりませんが。

 前作で両親を演じたガイ・ボイドとフィオヌラ・フラナガンは降板し、本作では父ジェレミットをポール・グリーソンが演じてますが、出演場面が少ないので言われないとわからないレベル…母カタリーンは倒れてるだけで顔も映らないので、おそらく衣装を着た女性スタッフかと。

◎注3; 

 前作でも美術監督を務めていたジョー・ジョンストンは、本作では第二班監督を兼任し戦闘アクション・シーン等で手腕を発揮しています…戦闘シーンには一部「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐(1983)」の没カットが使用されているようだ。ジョー・ジョンストンは、南カリフォルニア大学で映画制作を学び、「スター・ウォーズ(1977)」に特撮スタッフとして参加、以降はILM(ジョージ・ルーカス設立の特撮工房)で主にストーリーボード(絵コンテ)・アーティストとして活躍、「ミクロキッズ (1989)」で劇場映画監督デビュー、その後も映画監督として「ロケッティア(1991)」「ジュマンジ (1995)」「遠い空の向こうに(1999)」「ジュラシック・パークIII(2001)」「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(2011)」等で大活躍、傑作アニメーション「アイアン・ジャイアント(1999)」ではメカ・デザインを担当している。

◎注4; 

 ストップモーション・アニメーションの監修は前作に引き続きフィル・ティペットが担当しているが、今回も大まかな指示をしただけで若手に丸投げした感じ。泣きたくなる完成度の翼竜のデザインだけでもしっかりチェックして欲しかった…リテイクする時間はなかったとは思うけど。

 小猿ティークとテラクの特殊メイクを担当したのはILMのスタッフのケヴィン・ブレナン。造形は悪くなかったが撮影も含めて表情があと一歩な感じなのが残念。

 雰囲気が最高だったマローダーズ兵士たちの衣装を担当したのは前作も衣装担当だったマイケル・ベッカー。本作のあとは劇場映画の衣装担当にも進出し「ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀(1986)」「メジャーリーグ(1989)」「氷の微笑(1992)」「ジョイ・ラック・クラブ(1993)」「雲の中で散歩(1995)」等の作品に参加しています。

 

 

★Facebook「Teruhiko Saitoh」

https://www.facebook.com/#!/teruhiko.saitoh.3