スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル(1978) | つぶやキネマ

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スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル(1978)

 

 ハン・ソロ(ハリソン・フォード)とチューバッカ(ピーター・メイヒュー)は、帝国軍のスター・デストロイヤーの追跡をかわしながらミレニアム・ファルコンでウーキーの故郷の惑星キャッシークに向かっていた。キャッシークのツリー・ハウスでは、チューバッカの妻のマーラ(ミッキー・モートン)と息子のランピー(パティ・マロニー)、父のイッチー(ポール・ゲイル)が、生命の日を祝うためチューバッカの帰宅を待っていた。チューバッカがなかなか到着しない事を心配したマーラは、ルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)とR2-D2に連絡をとるが、ルークも二人の現在地を知らず帝国軍の追跡から逃れるために迂回しているのではと答える。困り果てたマーラは、惑星キャッシークの商人ソーン・ダン(アート・カーニー)と連絡を取るが、やはり二人の消息はわからなかった。惑星タトゥイーンの軌道上のスター・デストロイヤーでは、デス・スターを破壊した反乱軍の捜索に執念を燃やすダース・ヴェイダー(ジェームズ・アール・ジョーンズ)がキャッシークの包囲を指令、その頃ハン・ソロとチューバッカはキャッシークの近くで現れた4機のTIEファイターと交戦中だった。そしてマーラたちのツリー・ハウスには、生命の日の贈り物を持ってソーン・ダンが訪れ、不安を募らせたマーラは反乱軍基地のプリンセス・レイア・オーガナ(キャリー・フィッシャー)とC-3PO(アンソニー・ダニエルズ)に連絡するが協力は得られなかった。その時、宇宙船が到着した音に気づいたランピーはチューバッカとハンが帰還したと興奮するが、ドアが開いて現れたのはブラスターを構えた二人のストームトルーパーと二人の帝国軍士官だった…というお話。

 

 1977年5月25日に全米各地で公開された「スター・ウォーズ(1977)」の大ヒットを受けてメイン・キャスト出演で製作され、1978年11月17日にCBSネットワークで放映されたテレビ・スペシャルなんだが、日本では何故か「スター・ウォーズ(1977)」の公開が1年遅れの1978年6月24日(先行上映)になる。その約半年後の全米放映という事で映画雑誌や本編公開後に大量に出版されたスター・ウォーズ関連書籍や雑誌でかなり話題になっていた。しかし、放映後は一転して批判的な記事が続出し、結局「スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル」の日本での放映は見送られてしまった。

 第1作を製作するにあたってジョージ・ルーカスは、元々が低予算だったために20世紀フォックスとプロデューサー・監督・原作・脚本のギャラとしてはかなり格安の15万ドルで契約、その代わりに配給権以外の「スター・ウォーズ」の著作権、続編の映画化権、キャラクターの商品化権等、ほぼすべての権利を手中にした。その結果、第1作公開後はサントラ・レコードやおもちゃ、キャラクター・グッズの莫大な売り上げで、あっという間にハリウッドでトップクラスの富豪にのし上がり、続編の映画化も決定、ジョージ・ルーカスは「スター・ウォーズ・シリーズ」は全9部作になると発表した。その後も関連グッズやメイキング映像のビデオ等を次々と商品化したために、映画関係者や批評家からは「何でも金にする」と揶揄されていたが、「スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル」は、あまりに悲惨な作品の完成度と視聴者にも不評だった事から商品化せずに封印、ジョージ・ルーカス自身の記憶からも「無かった事」にしてしまった(注1)。

 

 チューバッカの家族が登場と聞いた時点で嫌な予感はしていたのだが、いきなりダイニング・キッチンにエプロン姿で立つチューバッカの妻マーラを観てひどく落胆、これは観てはいけない作品だったと後悔。その後はチューバッカの家族や帝国軍兵士が繰り広げるショート・コントの合間に、テレビ電話(?)やビデオ通信機器等でルークやレイア、ソーン・ダンと連絡を取る様子や、かなりスケールダウンしたタトゥイーンのカンティーナの場面などが挿入される。さらに最悪だったのが、チューバッカの家族の娯楽として、ホログラム風の曲芸団の映像、4本腕のロボット・シェフのゴーマンダ( ハーヴェイ・クレルマン)の料理番組、当時TVスターとなっていたダイアン・キャロルの歌、ロックバンドのジェファーソン・スターシップの演奏映像、「帝国の逆襲(1980)」で人気キャラクターになる前の賞金稼ぎボバ・フェットが初登場するアニメーション(注; 2)を観せられたりして、テレビのバラエティ番組とはいえセンスの欠片も感じられない作品で、あまりにも残念な結果に終わっている…これならマーク・ハミルがゲスト出演した「マペットショー/Episode 417(1980)」の方が10万倍くらい面白い。

 特撮場面やダース・ヴェイダーの映像は「スター・ウォーズ(1977)」のフッテージが、チューバッカの邸の外観は入り口付近のみセットが作られ全体像はラルフ・マッカリーのコンセプト・アートをそのまま使用。新たに組まれたセットはチューバッカ邸のリビング・キッチンと子供部屋の2部屋とカンティーナぐらいで、ルークの作業場やソーン・ダンの店、レイアのアジト等は他の作品のセットや小道具類の流用ではないかと思われる。ラストのウーキー族が集う「生命の木」の場面は、広いスタジオに

セットが組まれ数多くの着ぐるみが製作されたようだがこちらも大道具や小道具の一部は流用のようだ…盛大にスモークが焚かれていて細部は良くわからないのだよ。このラストではレイアが歌う場面があるのだがキャリー・フィッシャー本人の歌声かどうかは未確認。こんな感じでテレビのバラエティ番組としてはそれなりの予算がかけられているにもかかわらず凡作に終わったのは、「スター・ウォーズ」の世界観や人気の秘密を全く理解していないスタッフの、作品に対する愛情の欠落が原因だろう。

 

●スタッフ

監督: デヴィッド・アコンバ、スティーヴ・ビンダー

製作: ジョー・レイトン、ジェフ・スターシュ、

ケン・ウェルチ、ミッツィ・ウェルチ

脚本: パット・プロフト、レオナルド・ロップス、

ブルース・ヴィランチ、ロッド・ウォレン、

ミッツィ・ウェルチ

撮影: ジョン・B・フィールド

音楽: イアン・フラサー、ジョン・ウィリアムス

 

●キャスト

マーク・ハミル、ハリソン・フォード、

キャリー・フィッシャー、アンソニー・ダニエルズ

ピーター・メイヒュー、ジェームズ・アール・ジョーンズ、

アート・カーニー、ハーヴェイ・クレルマン、

 

◎注1; 

アメリカで映画のビデオが続々発売されるようになった頃、「スター・ウォーズ」の映像商品としては初のオフィシャル作品である「メイキング・オブ・スター・ウォーズ(1979)」が発売され、レコード店の輸入ビデオ・ソフトのコーナーに並んでいたので即購入。当時は珍しかった撮影風景やミニチュア特撮の裏側、グッズの製造過程や公開後の反響などが収録されていた。当時の輸入ビデオは国内の販売価格が高額だったために、それを無許可レンタルする違法レンタル店も乱立、手書き文字の日本語字幕が入っているものもあった。そんなレンタル店に、どうやって入手したのかは不明だが「スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル」も棚に並んでいて、他の作品よりも高額な上に店内のモニターで流されていたデモは家庭用ビデオで録画した物から複数回ダヴィングを繰り返したのが明らかなヒドい画質で、作品そのものの悪評も知っていたので借りるのを止めた思い出があります。アメリカのマニア市場(当然ながら海賊版)では画質の良いものが高額で取引されていたが、かなり後になって比較的画質の良いものを友人から入手、内容は噂通りで見なければよかったと激しく後悔。現在は複数の動画サイトで視聴可能だが、観賞にはそれなりの覚悟が必要、若きスターたちの姿を観れれば幸せというファンなら楽しめるかもしれませんが、「スター・ウォーズ・シリーズ」の熱烈なファンには逆にオススメしません。

 

◎注2; 

ザ・ビートルズのテレビ・アニメーション・シリーズ「ザ・ビートルズ(1965~1969)」や「 イエロー・サブマリン(1968)」等のクライヴ・スミスが監督した、賞金稼ぎボバ・フェットが初登場するアニメーションは、フランスで刊行されていたSci-Fi・ホラー漫画雑誌「Metal Hurlant(米国版はHeavy Metal)」で活躍していたフランス人漫画家メビウス(ジャン・ジロー)の影響を強く受けた作風で、ボバ・フェットとルークやハンとレイアの初めての出会いが描かれます。「スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル」では唯一の見せ場と言っても良いのだが、過度な期待は禁物です。

 

スター・ウォーズ・ホリデー・スペシャル(1978)

 

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