スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(2005) | つぶやキネマ

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スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(2005)

 

 遠い昔、遥か彼方の銀河系で…。勃発から約3年が経過した分離主義勢力とのクローン戦争は銀河共和国が優位に立っていたが、首都コルサントに潜入したグリーヴァス将軍(マシュー・ウッド)によってパルパティーン最高議長(イアン・マクディアミッド)が拉致されてしまう。コルサントの上空では両軍入れ乱れて激しい艦隊戦が展開されていたが、最高議長救出の指令を受けたオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)とアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)のジェダイ・スターファイターがグリーヴァス将軍の旗艦インビジブル・ハンドに突入し捕らえられている最高議長を発見、シスの暗黒卿ドゥークー伯爵(クリストファー・リー)をアナキンに倒され、二人のジェダイ騎士と対峙したグリーヴァス将軍は不利を悟って脱出カプセルで逃亡、大破したインビジブル・ハンドをアナキンが操ってコルサントへ不時着し最高議長を無事救出した。

 アナキンは極秘結婚をした妻パドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)から妊娠を知らされるが、それ以来パドメが出産で死亡する悪夢にうなされようになり、母を失った悲しみを繰り返したくないという思いを募らせる。

 ジェダイ評議会は分離主義勢力を陰で操っているのがシスの暗黒卿ダース・シディアス(イアン・マクディアミッド)であると確信し、戦時を理由に権力の座に居座るパルパティーン最高議長にも疑惑の目を向け始めていた。それを感じ取った最高議長は親しいアナキンにジェダイ評議会の考えを探るように依頼、対するジェダイ評議会はアナキンに最高議長の内偵を指示、アナキンは板挟みになった事や評議員には選ばれながらジェダイ・マスターへの昇格が認められない事に強い不満を抱き、パドメの死亡の悪夢と合わせて精神的に追い詰められていたが、最高議長の巧みな話術によってシスのダークサイドなら死の運命をも超越出来るという考えを植え付けられる。

 ジェダイ・マスターたちはクローン戦争終結を目指して各地で戦っていた。惑星キャッシークではヨーダ(フランク・オズ)が指揮をとり、惑星ウータパウではオビ=ワンがグリーヴァス将軍と対決していたが、多くの悩みを抱えたアナキンは首都コルサントで最高議長の内偵を続けていた。アナキンの苦悩を察知していた最高議長は妻パドメを救うためダークサイドへ転向するよう進言、パルパティーンこそがシスの暗黒卿ダース・シディアスであると悟ったアナキンから報告を受けたメイス・ウィンドゥ(サミュエル・L・ジャクソン)はジェダイ・マスター3人と最高議長逮捕に向かうが、3人は正体を現したシスの暗黒卿に瞬時に倒されてしまう。メイス・ウィンドゥはライトセイバーによる闘いでシスの暗黒卿を圧倒し追い詰めるが、待機命令を無視して現れたアナキンによって両腕を切り落とされ絶命、妻パドメへの思いからジェダイを裏切りシスの暗黒卿を救ってしまったアナキンはダース・シディアスの弟子となりダース・ヴェイダーと命名されるのだった…というお話。

 

 新三部作(当時)の完結編に当たる本作は、前2作の惨状を目にしていたので期待しない事にしていたのだが、上映中は失望と落胆に終始する結果となった。共に人生を歩んだような感もあるシリーズもとうとう完結かという感慨はあったものの、予想していた通り傑作と呼ぶには程遠い凡作で、観賞後に少しばかり怒りがこみ上げて来たのを記憶している。この新三部作を完全に自己資本のみで製作したルーカスの労をねぎらうという意味では、第1作公開から28年という長い年月をかけスカイウォーカー家の悲劇の物語を完結させた事は評価してるんだけどね…当初計画していた九部作にはならなかったが(当時)。

 本作が傑作になり得なかった最大の原因は、長編3本ぶんぐらいのエピソードを詰め込んだおかげで派手で賑やかにはなったが、今回もストーリーを追うだけのダイジェストのようになってしまった事だろう。メイン・ストーリーそのものは悪くないのだが、全体的に思いつきを羅列しただけの脚本に加えて、各キャラクターに感情移入させるために必要な描写が不備なシナリオと演出不在で全く足りていないのだ。三部作の完結編としての重要ポイントについてはもう少しちゃんと描いてくれると思っていたんだけどなぁ(注1)。

 そんな感じで絶対必要な描写が省略されているにもかかわらず、ストーリー上は無くても良いような陳腐なエピソードも目立つ。人気キャラクターの活躍場面を描きたかったのは理解出来るが、エピソードや展開をしっかり精査したというよりも思い付きレベルのエピソードのつるべ打ちばかりでゲンナリさせられる。(注2)。

 そして今回も旧三部作で散々語られたジェダイ騎士団の強さや素晴らしさがまったく描かれないだけでなく、ジェダイ騎士やフォースについての設定がストーリー展開に合わせてコロコロ変わるのも困ったもんなのだ。ジェダイ・マスターNo.2のメイス・ウィンドゥの強さを示すエピソードがあっても良かったし、ヨーダとダース・シディアスの対決の結末も、もう少し説得力が欲しい(注3)。

 その他のキャラクターの設定もフラフラしていて一貫性に欠ける。特に前作ではアナキンとのトホホな恋愛劇を繰り広げファンを落胆させたパドメはラストを除くとストーリー展開にほとんど絡まないのだ。レイアの育ての親になるベイル・オーガナ元老院議員(ジミー・スミッツ)も描写不足で旧三部作からの熱心なファン以外には「こいつ誰?」だったのではないだろうか(注4)。

 

 第1作公開から新作が公開されるたびに一喜一憂して来たとはいえ、ファンはシリーズ完結まで観たい、生きていたいと思っていたのは間違いない。この新三部作を観てわかった事は、荒唐無稽なSci-Fi活劇のシリーズが何故世界中の映画ファンの心をつかんだか、何が多くの人々を惹きつけるのか、その魅力の源をクリエイターであるルーカス本人がよく理解していなかったのではという事だ。新三部作は、新規のファンを獲得しようとしたルーカスの見当違いの画策が災いして、昔からのファンが期待していたのとは別の方向に行ってしまったのではと考えている。

 新旧三部作、シリーズ6作品を通して観ると色々矛盾が噴出してしまうのが本当に残念でならないが、それがこのシリーズの運命だったのだろうと諦めていた。それがまさかのまさか、10年後にファンが全く予想していなかった形でシリーズが再開される事になろうとは…。

 

●スタッフ

製作総指揮・原案・脚本・監督:ジョージ・ルーカス

製作:リック・マッカラム

撮影:デヴィッド・タッターサル

特撮:ILM

音楽:ジョン・ウィリアムズ

 

●キャスト

ユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、

ヘイデン・クリステンセン、イアン・マクダーミド、

クリストファー・リー、サミュエル・L・ジャクソン、

アンソニー・ダニエルズ、ケニー・ベイカー、

ジェームズ・アール・ジョーンズ、

フランク・オズ、テムエラ・モリソン、

ジミー・スミッツ、ピーター・メイヒュー、

ブルース・スペンス

 

◎注1; 

ルーカスが細心の注意を払って丁寧に描かなければならなかったのはいくつかあるが、まずは前作から繰越の大きな謎、クローン軍団の依頼主がシスであった事と何故そんな依頼をしたかという動機の考察、シスが議会をコントロールしているというドゥークゥー伯爵の発言の調査、特に後者からは疑惑がまず独裁化が顕著な議長に向けられても良いはずだが調査したというような描写もない。強力な武器を装備した巨大な軍隊を共和国に誕生させようとしたシスの暗黒卿の狙いからは陰謀の匂いしかしないのに。こういうミステリアスで面白い部分は放置したまま賑やかなだけのアクションばかり見せられても困ってしまう。

 そして、パルパティーンの正体がシスの暗黒卿ダース・シディアスであると発覚するというシリーズ屈指のドラマチックな場面を愚かにも本人の自白のような形にしてしまった事。そしてその告白を受けたアナキンが猪突猛進だったこれまでとは別人のように冷静でシスの暗黒卿を捕らえようともせずに放免したままメイス・ウィンドゥへ報告へ向かってしまうという信じられないような展開…師や先輩の命令を無視したり従ったりするアナキンの基準が曖昧過ぎて観客としては戸惑うばかり。他に良いアイデアが浮かばなかったのかもしれないが、ここは展開も含めてもっと手際よく処理すべき場面だったのではないだろうか…パルパティーンを密かに調査していたジェダイ騎士がパルパティーン=ダース・シディアスの証拠を掴んだとかね。

 それに関連するのが、シスの暗黒卿が生命を操れるというパルパティーンの話。噂レベルでも聞いた事がないようなシスの秘術をジェダイ騎士でもない最高議長が何故知っているのか不思議なはずだが、何の疑問も抱かないジェダイ騎士アナキン。シスへの転向のきっかけになる、その秘術への執着もパドメが出産で亡くなるという「悪夢」だけというのも少々弱い。ここはパドメが度々生命の危機にさらされていたという描写が必要だったのではないだろうか。そしてシスの秘術については第三者、ドゥークゥー伯爵のようなシスの暗黒卿によってもたらされアナキンが徐々に洗脳されていくような展開にして欲しかった。

 新三部作の完結編の最大の転換点でもあるアナキンがダークサイドへ落ちる瞬間の描写も何だかなぁという感じ。メイス・ウィンドゥの待機命令を無視して議長執務室へ駆けつけたアナキンが、危機に瀕しているシスの暗黒卿を救うためにライトセイバーを抜くというのは良しとしても、いきなりメイス・ウィンドゥの腕を切り落としてしまうのはどうなんだろうか。シスの秘術を守りパドメを救いたいという強い思いから、ダース・シディアスを倒そうとするメイス・ウィンドゥへの怒りが爆発、ジェダイ騎士である事を捨てたアナキンがシスの暗黒卿を追い詰めた最強戦士メイス・ウィンドゥと互角に渡り合っている隙にダース・シディアスが復活、シスのパワーでメイス・ウィンドゥは倒されアナキンは再び腕を切り落とされ生命の危機に、そしてジェダイを裏切ったアナキンに対するダース・シディアスの悪魔の誘い…みたいな突然のダークサイド転向も納得出来る展開が欲しかった。

 そして多くのジェダイ騎士たちの犠牲とジェダイ騎士団の崩壊を代償に守ったシスの秘術=パドメの命なのに、意味不明な嫉妬心と疑念からパドメに瀕死の重傷を負わせてしまう単細胞アナキン。ここの心情の変化も観客を納得させるような描写が足りない。

 アナキンとオビ=ワンの対決は、ルーカスのご都合主義が顕著。CGを多用したために一見激しさは増しているもののリアルな殺陣の雰囲気は希薄になり、編集やカメラワークが原因で動きの少ない室内の闘いがダラダラ続きうんざりさせられる。その後の、溶岩流が荒れ狂う足場の悪い外部での戦闘はそれなりに良かったが、ドロイドに乗ったりして溶岩流を流れていくあたりから怪しくなり、ここまではオビ=ワンを圧倒する勢いだったのに、唐突に手足を切り落とされてしまうアナキン。決着の理由は、ライトセイバーの対決はポジショニングが重要という事らしいのだが、シリーズで度々語られてきたフォースの暗黒面の強さの理由やシスの弱点みたいな描写も欲しいトコロ。

 この決着によって本当の意味でダースベイダーが誕生するのだが、ここでもルーカスのご都合主義が全開。新たな若くて強い弟子を獲得するために一番弟子ドゥークゥー伯爵の首を切り落とさせた冷酷非道なダース・シディアスなのに、何故かダースベイダーには執着し左腕と両足切断され全身火傷を負った新たな弟子を義手・義足や生命維持装置をつけてまで生かそうとしたのは不自然だし、納得できる理由が欲しい…アナキン誕生の秘密と関係があるとかね。ここはアナキン敗北の報告を受けたダース・シディアスは諦めて次を探そうと思っていたが、瀕死のアナキンは惑星ムスタファー住人に発見され治療を受け帰還するとした方が自然…その方がダースベイダーの生命維持装置の古臭さも納得出来るよね。

 

◎注2; 

冒頭のパルパティーン救出に向かうオビ=ワンとアナキンのジェダイファイターが小型のドロイド軍に襲撃され危うく機体を破壊されそうになる場面とか、インビジブル・ハンドに潜入したオビ=ワンとアナキンのエレベーター内のドタバタや、気絶したオビ=ワンとパルパティーンを抱えたアナキンがエレベーター・シャフトで危機に陥る場面、待機させられていたR2-D2がオイルを吹き出して(新機能)B2スーパー・バトル・ドロイドを撃退する場面、ヨーダとオビ=ワンがジェダイ聖堂に潜入する際のクローン・トゥルーパーとの戦闘場面とかはホントに要らないよね。惑星キャシークでのウーキー軍の戦闘場面も無駄に長いし…この場面はスティーヴン・スピルバーグが演出したと噂されていたが都市伝説だったようだ。ライトセイバーの剣戟アクション場面の構成には参加したようだが、これも本人の談ではなくメイキング本執筆者のJ・W・リンズラーの発言。

 観賞中はわからなかったがルーカス本人や家族が小さな役で登場していて、そんな個人的趣味や遊びなんかよりも必要な場面をちゃんと描けよと説教したくなる。

 

◎注3; 

本作でも前作同様にオビ=ワンの強さがコロコロ変わる。今回もオビ=ワンはドゥークゥー伯爵に簡単に戦闘不能にされるのだが、これはドゥークゥー伯爵との一騎打ちでアナキンが勝利する場面を見せたいだけだったようだが、そんなポンコツなオビ=ワンがグリーヴァス将軍との戦いでは何故か強さを発揮する。新登場のキャラクターの中では抜群の存在感だったグリーヴァス将軍は、ほとんど活躍せずにオビ=ワンに倒されてしまうのも勿体ないよね…彼の活躍は「スター・ウォーズ クローン大戦(2003)」を観ろという事だったようだ。

 暗黒面に入り圧倒的な力をつけたアナキンの描写が無いのも物足りない感じだし、ヨーダとダース・シディアスの対決場面やヨーダの敗戦の理由ももう少し説得力のある展開が欲しかった…皿の投げ合いなんて夫婦喧嘩じゃあるまいし。

 ジェダイ騎士団の崩壊もあっさりし過ぎで、不意打ちとはいえ歴戦のジェダイ騎士たちがクローン兵に次々と倒されてしまうのも何だかなぁという感じ。クローン兵を率いたアナキン=ダースベイダーがジェダイ聖堂を襲撃する場面も、銀河の歴史を揺るがす大事件なのにあっさりし過ぎ。この場面こそが暗黒面に堕ちたアナキンの見せ場だったはずなんだが。

 

◎注4; 

アナキンが暗黒面に堕ちるきっかけとなる重要なキャラクターなのに、本作ではパドメの見せ場が皆無に近い。徐々に変わっていくアナキンに対する心情の変化も描かれないし、何より魅力的なヒロインとしての描写が足りない。前作までの能動的なパドメは影を潜め、ただ狼狽えている受動的な女性でしかないのだ…ルーカスの女性観が現れているのかも。

 パドメの死と双子の誕生も、瀕死のパドメが出産し命名するまで生きているのも都合が良過ぎ…悲劇性を強調するために皮肉にもアナキンに負わされたダメージによってアナキンの予知夢通り出産に耐えられなかったとしたかったんだとは思うが。

どうしても命名する場面が欲しかったのなら、ドロイド医師から男女の双子と告げられた瀕死のパドメが二人の名前を残して絶命、その後にドロイド医師によって双子が誕生するという自然な展開でも良かったよね。

 

 

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