メイフィールドの怪人たち(1989) | つぶやキネマ

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大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

メイフィールドの怪人たち(1989)

 

 レイ・ピーターソン(トム・ハンクス)は、妻のキャロル
(キャリー・フィッシャー)と息子デイヴ(コリィ・ダンジ
ガー)と愛犬ヴィンスと共に、郊外の閑静な住宅地メイフ
ィールド・プレイスで暮らしていたが、隣の古ぼけた家に
引っ越して来たクロペック一家が1ヶ月以上経っても挨拶
も無く全く姿を見せず、さらに毎晩地下室で作業をしてい
て大きな音と振動と共に明かりが点滅している事に不信感
を抱いていた。1週間の休暇を取ったレイに、キャロルは
家族で湖へ遊びに行こうと提案するが、レイは渋滞や行っ
た先でのトラブルが嫌だから家でのんびり過ごしたいと主
張する。隣に住む親友のアート・ワインガートナー(リック
・デュコモン)は、妻のスザンヌ(パトリカ・ダーボ)が里帰
りした事でレイの家に入り浸り、レイ同様に謎のクロペッ
ク一家に興味津々だった。以前住んでいたナップ一家もか
なりの変人だったが、クロペック一家はそれを上回る奇妙
さで、デイヴも夜中に裏庭で3人の男が穴を掘っているの
を目撃していた。向かいに住む元軍人のマーク・ラムズフ
ィールド少尉(ブルース・ダーン)は毎朝芝生の庭に星条旗
を掲げるのを日課にしていたが、突き当たりの家に住むウ
ォルター・セズニック(ゲイル・ゴードン)の飼い犬クイニ
ーが芝生に糞をして行く事でいつも喧嘩になって妻のボニ
ー(ウェンディ・シャール)が止めなければクイニーを殺し
かねない勢いだった。マークの隣の家に住むリッキー・バ
トラー(コリー・フェルドマン)は、ペンキ塗りの仕事そっ
ちのけでそんなマークの騒ぎと若奥さんのボニーの色っぽ
い姿を楽しんでいた。ガレージの前でレイと話していたア
ートは、クロペック家の玄関ポーチに怪しい風体の男が出
て来たのを発見し、気がついた近隣住民たちもその姿に息
を呑む。男はすぐに家の中へ入ってしまったが、リッキー
にけしかけられたレイがアートを連れて挨拶しに行く事に
なり、ドアをノックすると壁の穴から蜂の大群が飛び出し
ふたりは退散する。その晩クロペック家を監視していたレ
イとアート、マークの3人は玄関ポーチにいた男がガレー
ジから車を出しトランクに入っていた黒いゴミ袋を集積所
のゴミ缶に出すのを目撃、深夜にレイは家の2階の窓から
クロペック家の裏庭で雷雨の中3人の男が穴を掘っている
のを目撃する。アートとマークが翌朝ゴミを調べたが何も
出て来なかった事から、深夜に裏庭に埋め直したのではと
推理、ボニーは泥だらけで彷徨っていたクイニーを発見し、
飼い主のウォルターを心配してこっそり家に入ったレイた
ちは、争ったような形跡があるもののウォルターの姿は無
く、キッチンにカツラだけが残されている事に驚く。郵便
受けにクイニーを預かっているというメモを残していたレ
イは、ポーチに現われたのとは別の男がクロペック家の窓
にいるのを見つけて声をかけるが、男は答えず黙って窓を
閉めてしまう。翌朝アートとマークは「全部見たぞ」と書
いたメモをクロペック家のドアの下から入れ逃げ帰り、そ
れを聞かされたレイはウォルターの郵便受けにメモを残す
所をクロペック家の男に見られた事を話し、自分が疑われ
るとアートに喰ってかかるが、その時クロペック家との境
のフェンスの下を掘っていたヴィンスが何かくわえて来る。
それは人間の大腿骨だった...というお話。ユニバーサル映
画のロゴ・マークの地球儀からメイフィールド・プレイス
の上空までカメラが寄って行く導入部は、チャールズ・イ
ームズとレイ・イームズ夫妻が1977年に製作した短編映画
「パワーズ・オブ・テン」みたいでニヤニヤしてしまった
が、屋根より少し高いぐらいの位置からはカメラが横に向
いて移動しながら住宅街を進みクロペック家の前で止まる
までは精巧なミニチュアで撮影されていて、前の部分とス
ムーズに繋がっているのには感心してしまった。「未知と
の遭遇(1977)」「ポルターガイスト(1982)」「E.T.(1982)」
等でも描かれていた"Suburbia(郊外居住者)"を痛烈に皮肉
った内容なのだが、近隣の噂話や隣近所の悪口・嫉妬等は
世界中何処にでもある訳で、マークがウォルター家の芝生
が綺麗なのをうらやましがるあたりはその典型であります。
最初は暇を持て余している男たちの近所の噂話だったのが
妄想が加熱して大惨事になるというあたりは、実際にあり
そうで恐い。我が国でも、何か事件が起きて容疑者の近隣

住民たちの証言が報道されると、「何でそこまで赤の他人
について詳しいの」と思う事が良くあります。その証言を
聞いていると"容疑"の段階にも関わらず犯人に間違いない
と思えてくるのが恐いですな...松本サリン事件を思い出し
ちゃうよね。本作もそんな感じで、ジワジワとクロペック
家の怪しさが増して行くのだが、そもそもメイン・キャラ
クターたちがまともじゃないので、妄想なんだろうなぁと
思いながら観ていると、レイの妻のキャロルがちゃんと挨
拶に行こうと言い出し、クロペック家の3人がきちんと登
場した段階で、こいつらやっぱり怪しいと思わされてしま
うから困ったモノなのだ。しかし素人探偵たちの行動はエ
スカレートして行って、ほとんど異常者のように観えて来
るし、留守になったクロペック家に潜入し、核心に近づい
たと興奮したレイとアートが裏庭を掘り返し地下室をあさ
る姿は、何故彼らはそこまで真相究明に熱心なのかがイマ
イチ伝わって来ない。この辺りも、もう少しジワジワとサ
スペンスを盛り上げるような展開にして欲しかった感じだ
し、戻って来たクロペック一家との争いも観たかった気も
する...家を爆破しちゃうのはさすがにやり過ぎだよね。ラ
ストのどんでん返しも一応辻褄は合っているが、ウェルナ
ー・クロペック医師(ヘンリー・ギブソン)の告白ではなく、
誰かが真相を突き止めるとか、映像的な面白さを加える等、
もう少しスマートに展開出来なかったかという感じで、ド
タバタしたイメージのまま終わってしまうのが惜しい。レ
イとアートがクロペック家の玄関をノックすると家屋番号
の"669"の"9"が回転し、「オーメン(1976)」で有名になっ
た「新約聖書/ヨハネの黙示録」に記されている獣の数字
"666"になってしまうのには不覚にも笑ってしまった。

 

●スタッフ
監督:ジョー・ダンテ
製作:マイケル・フィネル、ラリー・ブレズナー
脚本:ダナ・オルセン
撮影:ロバート・スティーヴンス
音楽:ジ ェリー・ゴールドスミス

 

●キャスト
トム・ハンクス、キャリー・フィッシャー、
ブルース・ダーン、リック・デュコモン、
コリー・フェルドマン、ウェンディ・シャール、
ヘンリー・ギブソン、ブラザー・セオドア、
コートニー・ゲインズ、ゲイル・ゴードン、
コリィ・ダンジガー、ディック・ミラー、
ロバート・ピカード

 

◎注1; レイを演じたトム・ハンクスは、ちょうど波に乗り
始めた頃なのでナカナカ快調で「こういうヤツ居るよね」
感が素晴らしい。義父に貰った工具箱を嬉々としてアート
に見せようとする場面の自然さには思わず笑ってしまった。
そのレイの妄想を加速させるのが、アートの話す子供の頃
ドラッグ・ストアで起きた一家惨殺事件や、リッキーが話
すホラー映画「センチネル(1977)」、レイが深夜に見てい
るテレビに映し出される「悪魔の追跡(1975)」「エクソシ
スト(1973)」「悪魔のいけにえ2(1986)」等を取り上げて
いるあたり、ジョー・ダンテ監督のマニアックな一面が現
われていて楽しいです。本作中最大の問題児(オトナだけど
ね)はアートで、彼がいなければこの大騒動は起きなかった
とも言える...それだと殺人事件も明るみに出ないのだが。
そのアートを演じたリック・デュコモンは、アメリカでは
人気があったようだが我が国ではまったく人気が出なかっ
た。厚かましく破天荒で無責任で気分屋という、近所に居
たら絶対付き合いたくないハチャメチャな男を上手く演じ
ていてある意味凄いです。ベトナム帰還兵マークを演じた
ブルース・ダーンは、いつも通りのブルース・ダーンで、
演技というより本人そのもののような感じが素晴らしい。
子供っぽい夫レイにウンザリしながらも優しく接している
妻キャロルをキャリー・フィッシャーが好演、本作中唯一
の常識人でまとものなのは彼女だけという役柄がピッタリ
で、冷静で可愛い奥さんな感じが素敵です。近所の悪ガキ
の典型リッキーを演じたコリー・フェルドマンは、子役か
ら俳優への転身期では あるものの絶好調で、レイたちの楽
しいドタバタを観賞するため友人やガールフレンドを家に
招待するというあたり、私生活でもやってそうなのが面白
い。マークの若い妻ボニーを演じたウェンディ・シャール
は、TVシリーズ「レストランは大騒ぎ(1980~1982)」の
ウェイトレス姿が可愛くてファンになって、「クリーチャ
ー(1985)」「インナースペース(1987)」等での活躍も楽し
ませてもらったが、本作では少しオネーさんになっていて、
短めのネグリジェや水着のような衣装なのが嬉しい...ちょ
っとトロい感じも素敵です。ウェルナー・クロペック医師
を演じたヘンリー・ギブソンは、「ロング・グッドバイ(19
73)」「ナッシュビル(1975)」「ブルース・ブラザース(19
80)」等で活躍した名傍役で、本作のようなちょっと狂った
感じはホントに上手い。それだけにラスト・シーンはもう
少し見せ場が欲しかった感じです。ジョー・ダンテ監督作
品の常連のディック・ミラーが本作でもゴミ収集人ヴィッ
クとして登場、いつも通り理屈をこね回して笑わせてくれ
ます。パロディ満載のジェリー・ゴールドスミスの音楽が
楽しくてニコニコですが、自作のパロディまで繰り出すあ
たりは、巨匠のフットワークの軽さに吃驚であります。

 

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