スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017) | つぶやキネマ

つぶやキネマ

大好きな「映画」について「Twitter」風に
140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★

 

スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017)

 

遠い昔、はるか彼方の銀河系で…。

 ハックス将軍(ドーナル・グリーソン)が率いるファースト・オーダー艦隊は惑星ディカーのレジスタンスの拠点を急襲、スター・デストロイヤーの大艦隊に対してポー・ダメロン(オスカー・アイザック)がXウイング単機で対峙しレジスタンスの艦隊が基地から撤退するための時間を稼ぎファースト・オーダーの巨艦ドレッドノートのキャノン砲を破壊。しかしドレッドノート爆撃のために出撃したレジスタンスのスターフォートレスは次々と撃墜され、最後に残った一機の銃撃手のペイジ・ティコ(ベロニカ・グゥ)の自己犠牲によってドレッドノートを撃沈する。その隙に残ったレジスタンスの艦隊と戦闘機部隊はハイパースペースへと逃げ込むが、レジスタンスの旗艦に戻り指揮官のレイア・オーガナ将軍(キャリー・フィッシャー)に面会したポーは、作戦中止の命令を無視して独断で攻撃を続け爆撃部隊が全滅した事を叱責され中佐から大尉に降格させられてしまう。

 カイロ・レンとの対決で重傷を負い昏睡状態だったフィン(ジョン・ボイエガ)は回復後にレイ(デイジー・リドリー)がミレニアム・ファルコンで水の惑星オク=トーに向かった事を知る。オク=トーの孤島に到着したレイは失踪したジェダイ・マスターのルーク・スカイウォーカー(マーク・ハミル)と会いマズ・カナタ(ルピタ・ニョンゴ)が保管していた彼のライトセーバーを渡すがルークは断崖へ投げ捨ててしまう。レイはジェダイ騎士の修行を希望している事、レイアがルークの帰還を待っている事を告げ、最初は拒否していたルークもミレニアム・ファルコン号に同乗して来たチューバッカ(ヨーナス・スオタモ)やR2-D2と再会しハン・ソロ(ハリソン・フォード)が息子のカイロ・レン(アダム・ドライバー)に殺された事を知って心を動かされレイのジェダイ修行を始める決心をする。

 ハックス将軍の艦隊は追跡装置ハイパースペース・トラッキング・ナビゲーション・システムによりハイパースペース航行中のレジスタンス艦隊の追跡を続けていた。カイロ・レンは最高指導者スノーク(アンディ・サーキス)から心に迷いがあるからレイとの対決に負けたのだと叱責され、その怒りから愛用のマスクを破壊、TIEサイレンサーに乗り部隊を率いてレジスタンス艦隊の追撃に向かう。カイロ・レン率いるTIEファイター部隊の旗艦ラダスへの激しい攻撃によってレイアは艦外に投げ出されフォースの力で艦内へ戻るが昏睡状態に、代理の指揮官としてアミリン・ホルド提督(ローラ・ダーン)が就任、フィンの話からポー・ダメロンはスノークの旗艦メガ・スター・デストロイヤーに潜入し追跡装置を破壊する作戦を計画、防衛シールドの通過コードを解除出来るコードブレイカーが惑星カントニカのカジノにいるとマズ・カナタから教えられ、上官たちからの反対を避けるためにフィンとBB-8は追跡装置を解除出来る女性整備士のローズ・ティコ(ケリー・マリー・トラン)と共に極秘裏に小型シャトルでカジノ都市カント・バイトへと向かう。

 ルークの元で修行を続けていたレイはフォースの暗黒面について警告を受けていたが、レイのフォースに気づいたカイロ・レンと交信するようになり、ルークのジェダイらしからぬ行動やレイの両親は亡くなったという衝撃の事実を聞かされ動揺する。レイは暗黒面のフォースの強い鏡の洞窟で両親を探ろうとするが映し出されたのはレイ本人だった。カイロ・レンと交信した事で彼がまだ暗黒面に完全に堕ちたわけではないと確信したレイは、カイロ・レンを暗黒面から連れ戻すためにルークの制止も聞かずミレニアム・ファルコンで飛び立った…というお話。

 

 シリーズ再開作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)」の最大の功労者と言っても良いJ・J・エイブラムスが新シリーズ第2作から降板という情報を知って嫌な予感がしていたのだがその予感は的中してしまった(注1)。冒頭のドレッドノートとの戦闘で爆撃機(笑)が登場、無重力空間で爆弾投下ってどういう事?…誰かが上から押してやらないと落ちていかないよ。この場面を見て、マスクのみで宇宙遊泳(ホントに泳いでる)していた「宇宙からのメッセージ(1978)」レベルのやばい作品ではないかという恐怖が押し寄せる。ついでに旗艦ラダスの司令室が破壊され宇宙空間に吸い出された生身のレイアが生きていてドレスをなびかせながらフォースで移動し破損した司令室まで戻りドアを開けるシーンまで登場するに至っては呆れるしかなかった…なんでもアリなのかヨォ。シールド内だからOKという言い訳もあったらしいがレイアが浮遊しているのは旗艦ラダスのかなり上空…TIEファイターのミサイルが当たって壁面が破壊され乗組員や機材が吸い出されてるんだからシールドに穴が開いたのは確実だよね(注2)。

 観賞後にこんなに落胆したのも久しぶりだが、とにかくストーリーが致命的につまらない上に演出や編集も平凡で、ワクワク感が皆無の状態で脈略のない派手なだけの映像を次々見せられるという拷問…撮影前に穴だらけで統一感のない脚本に疑問を呈する人間はいなかったのか?。シリーズのスピン・オフ作品である「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016)」「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)」より見所も少なくつまらないってどういう事?(注3)。

 前作で提示された数多くの謎はその一部をあっさり処理しただけで残りは放置状態なのもファンの期待を裏切る結果になった。前作では全く描かれなかったルークの現在については詳細が明らかになったが、ファンの最大の関心は銀河の果てに雲隠れする事になった動機や心境で島での生活ぶりなんか見たくないのだヨ…マーク・ハミルが脚本に不満で出演を渋ったのも納得(注4)。

 そんな感じでファンの観たかった場面を描かず代わりにストーリー的には意味不明でだらだら長いカジノや追跡装置停止のエピソードを付け加え、前作で重要な役割を与えられていたキャラクターよりも新キャラクターに注力する等、脚本・監督のライアン・ジョンソンは真面目に前作を受け継ぐ続編としてシリーズを紡ぐ気が無かったのだろうと思ったのだ(注5)。

 ストーリーの稚拙さと共に気になったのが、レイを演じるデイジー・リドリーがシーンによってポッチャリしている事だ。スクリーンで観ているこちらが気がつくぐらいだから本人はもちろん監督やプロデューサー、撮影スタッフも当然気がついただろうに、何故撮影延期や撮り直し等をしなかったのか?(注6)。

 新主役トリオの一角として前作で人気者になった熱血漢のポー・ダメロンはハン・ソロに変わる大活躍が期待されたのに、目立った活躍は冒頭のシーンのみで中盤は逃亡する宇宙船内で右往左往するだけだし、クライマックスの戦闘シーンではポンコツ・V-4X-Dスキー・スピーダーのボディーを踏み抜くというお笑い担当。

 同じく新主役トリオのフィンは昏睡状態から回復し液体を撒き散らしながら大混乱の宇宙船内を彷徨し新キャラのローズ・ティコのおまけのような扱いで意味不明な冒険に出発、こちらもお笑い担当にされてしまった。

 ヨーダに匹敵するぐらい魅力的な謎多きキャラクターで続編での活躍が期待されたマズ・カナタ(ルピタ・ニョンゴ)はワン・シーンのみの登場…しかもホログラムという残念さ。こちらはルークのライトセイバーを保管するに至った経緯とその理由が知りたかったのに。

 全身シルバー・メタリックのストーム・トルーパーでキャラクター・フィギュア・マニアが狂喜乱舞したキャプテン・ファズマ(グェンドリン・クリスティー)もスヌーク同様にあっさり葬ってしまった。

 前作では休眠中のR2-D2に替わって大活躍したドロイドのBB-8は、活躍する場面はそれなりにあったがシーンのアイデアそのものが陳腐だし描写にも工夫が足りずあまり印象に残らなくてお気の毒(注7)。

 それではライアン・ジョンソンが生み出した初登場のキャラクターの皆さんは前作の人気キャラクターの登場場面を減らしてまで描きたくなるほど魅力的なのかというと…。

 中盤のカジノ攻略エピソードの中心となるレジスタンスの整備士ローズ・ティコは、冒頭のドレッドノートとの戦闘で殉死したペイジ・ティコの妹という設定で登場、TV俳優だという事は演技の特徴から登場した瞬間にわかったが、脚本上の描写不足や演出の不備でキャラクターそのものがストーリーに上手く組み込めていない上に最後までTV演技の癖が抜けず、他の俳優陣とのアンサンブルが最悪で浮き上がってしまっている。

 カジノの牢屋内で登場する自称コードブレイカーDJ(ベニチオ・デル・トロ)は、このシリーズとしては異質なキャラクターが作品世界に上手く溶け込んでいないので意外な展開が続くにもかかわらず違和感しか残らない。

 昏睡状態のレイアの代わりに登場するレジスタンスの新たな指揮官アミリン・ホルド提督(ローラ・ダーン)は、存在感抜群ながらこちらも華々しく散る最後まで浮いたままなのが勿体ない(注8)。

 本作最大のサプライズと言っても良いヨーダの登場もファン・サービス以上の意味が感じられずがっかり。わざわざ旧シリーズで操演&声優を担当したフランク・オズをキャスティングしたのに、シリーズ屈指の大人気キャラを無駄遣いしただけという結果に(注9)。

 全体的にはそれなりに良いシーンもあったが、演出や編集が演技を殺してしまっている場面も多く、ストーリーを語る上で必要なリズム感や高揚感が失われているのが残念…思いつきを羅列しただけでは「物語」とは言えないのだよ。それでもなんとか観られる作品になったのはキャスト&スタッフが与えられた仕事をきちんとこなした結果だろう。

 結局、脚本・監督のライアン・ジョンソンと製作のラム・バーグマンは、本家のスタッフ&キャストと大予算を使って「スター・ウォーズ」のパチモンを作っただけだったのだ。世界中のファンから支持され愛された再開第1作「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の続編なのに、「スター・ウォーズ(1977)」のヒットを受けて世界中で数多く製作されたパチモン群と変わらない完成度のトホホ作品にしてしまった責任は誰にあるのか?

…ディズニー側も予想していた興行成績に届かないという大失敗で初めて気づいたようだけどね。

 

●スタッフ

脚本・監督:ライアン・ジョンソン

原案:ジョージ・ルーカス

製作総指揮:J・J・エイブラムス、ジェイソン・マクガトリン、トム・カルノースキー

製作:キャスリーン・ケネディ、ラム・バーグマン

撮影:スティーヴ・イェドリン

特撮:ILM

音楽:ジョン・ウィリアムズ

 

●キャスト

マーク・ハミル、キャリー・フィッシャー、

デイジー・リドリー、アダム・ドライバー、

オスカー・アイザック、ジョン・ボイエガ、

アンディ・サーキス、ルピタ・ニョンゴ、

ドーナル・グリーソン、アンソニー・ダニエルズ、

グェンドリン・クリスティー、ケリー・マリー・トラン、

ローラ・ダーン、ベニチオ・デル・トロ、

フランク・オズ、ビリー・ラード、

ピーター・メイヒュー、ヨーナス・スオタモ、

ベロニカ・グゥ、ワーウィック・デイヴィス

 

◎注1;

 J・J・エイブラムスが降板した理由は、J・Jのスケジュールを把握していたはずのディズニー側が独断で本作の公開日を決めて発表してしまったのが発端だった。J・Jが製作を担当する「スター・トレック BEYOND(2016)」はすでに撮影開始していて、2作とも決められた公開日に間にあわせるのはスケジュール的に絶対不可能で、どちらかを降板するしかなかったのだ。脚本が未完成なのにディズニー側が公開日を決定したのは、自分たちの思惑通りにコントロール出来ない売れっ子のJ・Jを解雇したかったのではと想像している…ハリウッドの支配層は映画的才能や作家性よりも予算・スケジュールの厳守を優先するし基本的に「スタッフ&キャストの代わりはいくらでもいる」と考えているからね。脚本は前作製作中からライアン・ジョンソンが執筆を開始していたという話もあるがこれはマユツバ臭い。ディズニー側とJ・Jの間で水面下での交渉があったとは思うのだがディズニー側は公開日を変更せず結局J・Jは降板、本作には一切ノータッチだったにもかかわらず製作総指揮として名前が残った事から、J・Jは前作の製作・監督を引き受ける時に三部作の製作権も取得していたと思われる…そのあたりもディズニー側は面白くなかったのだろう。J・Jの降板で前作で製作の一翼を担っていたJ・Jの製作会社バッドロボットも製作から離脱している。J・Jの降板にいてはルーカス・フィルムのキャスリン・ケネディを筆頭にスタッフ・キャストからは不自然なくらい言及されなかった…ディズニー側から箝口令が敷かれていたのかも。

 

◎注2;

 宇宙を舞台にしたSci-Fi映画の場合、テーマやストーリーに関連して幾つかの設定とお約束の提示が必須で、それらを映画の冒頭で観客に納得させる必要がある。宇宙空間は真空なのはほとんどの作品で共通しているが、舞台となる惑星の大気、宇宙船内の重力等は個々の作品で違いがあり、リアリズムにこだわるとストーリー構成や演出に大きな負担となる。特に本作のようなシリーズ物ではそういった設定が重要で、ストーリーや演出の都合でコロコロ変えられると興ざめして作品世界に入り込めなくなってしまう。無重力空間での戦略兵器としてはありえない爆弾投下はSci-Fi映画史上初めてだと思うし、宇宙空間で装備ゼロの生身の人間が生存というのも前代未聞…無重力+真空中ではドレスはなびかないのだよ。こういうシチュエーションは科学やSci-Fiに精通している人間なら絶対に思いつかない(思いついてもやらない)のだが、脚本・監督のライアン・ジョンソンは映画史に残るSci-Fi映画シリーズでそれをやってしまったのだ…ILMには科学考証に詳しいスタッフがたくさんいそうだけど疑問に思わなかったのかねぇ。

 

◎注3; 

 本作には5人の脚本監修者たちがクレジットされているが、こんな杜撰な脚本にOKを出したとすればギャラを全額返金すべきだよね…脚本監修者という人種は仕事をしたと証明したいがために完成度の高い脚本にも手を入れさせて改悪して駄作に変貌させてしまう事も多いんだけどね。脚本家としてはライアン・ジョンソンの名前しかクレジットされていないから第三者によるリライトが行われなかった事がわかるが、おそらくディズニー側が公開日を決めた事でスケジュールがタイトになり脚本を練り直す時間が無かったのではと想像している。

 この脚本に対してはっきりと不満を表明したのはマーク・ハミルだけと言うのも不自然な感じ。さらに不自然な感じがしたのはルーカス・フィルムのキャスリーン・ケネディの動向だった。J・Jの降板もあっさり受け入れた感じだし、脚本・監督のライアン・ジョンソンと製作のラム・バーグマンのコンビについては歯の浮くようなお世辞コメントを残しただけで、このコンビとは意識的に距離を置いている感じ…ルーカス・フィルムの社主である自分を飛び越えてディズニー側に取り入ったコンビを良く思っていないのではと勘ぐってしまう。前作ではほとんどの撮影スタジオやロケ現場に同行しメイキング映像にも積極的に登場していたのだが、本作のメイキング映像には彼女の姿は皆無に近い…オフィスにいる姿が映ってるぐらいなんだよね。この時期の彼女はシリーズのスピン・オフ作品「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016)」が製作中で第2弾の「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)」は製作上の問題噴出、この2本以外にも実写によるTVシリーズ「マンダロリアン(2019」も始動していて超多忙だった…彼女はそれ以外にもスピルバーグの製作会社アンブリン・エンターティンメントと夫であるフランク・マーシャルのザ・ケネディ/マーシャル・カンパニーの仕事もしている。そんな状況から推測すると、彼女は本作を信頼しているJ・Jに一任する予定でスケジュールを組んでいたのではないかという事が見えてくる。J・Jの降板後もスケジュール変更はせずに予定通り仕事をこなしたのだろう。J・Jを降板させたディズニー側に対し反発する感情もあったとは思うが特に行動を起こしてはいない…映画史に残るシリーズを製作したルーカス・フィルムと言えどもディズニー側にとっては傘下の一製作会社に過ぎないのだと思わされたのだろう。公にされていないだけで何かトラブルもあっただろうと想像してしまうが、本作公開前にもかかわらずディズニー側からレイ三部作完結後の新シリーズもライアン・ジョンソンが担当するというコメントが出され、ファンの間では本作が大傑作でディズニー側がそれを高く評価したのではと噂になった。何故こんな不自然なタイミングでそれを発表したのかというのも大きな謎だった。

 本作公開後にスタッフのクレジットを見て色々繋がった。製作のラム・バーグマンがユニット・プロダクション・マネージャー(製作統括)も兼任していたのだが、要するにディズニー側はライアン・ジョンソンとラム・バーグマンのコンビに本作を丸投げしていたのだ。メイキング映像でふたりはスケジュールと予算の厳守の話ばかりしている事から、ディズニー側の要求をすべて飲んで全権を手に入れたのではないかと思われる…作品のクオリティーなんかどうでも良かったのかも。メジャー作品の脚本・監督は2本目で超大作は初めての新人ライアン・ジョンソンをディズニー側がそこまで高評価した理由は何か? …従順だったからなのかな。メイキング映像に登場するスタッフもライアン・ジョンソンとラム・バーグマンのコンビの心象を気にしているのか、スケジュールと予算の厳守の話ばかりしている印象で反発したら解雇されるのではと恐れているようにも見える。ベテランのコスチューム・デザイナーのマイケル・キャプランがカジノの登場人物の衣装だとライアン・ジョンソンから説明を受け怪訝な顔つきで「スター・ウォーズにカジノ…?」と何か言おうとして苦笑いしている映像が残っているし、キャストたちもライアン・ジョンソンの脚本や演出にはあえて言及しないようにしているようで、本心を悟られないように注意しているのかみんな歯切れが悪い…ディズニー側から全権を与えられたコンビには逆らえないという雰囲気が蔓延していたと想像出来るよね。

 ちなみにキャストたちの間では完結編となる次回作もライアン・ジョンソンが担当するだろうと諦めムードだったが、J・Jが再登板するとの知らせをオフィスで受けて号泣しすぐにJ・Jにメールして喜びを伝えたとデイジー・リドリーは語っていた。

 

◎注4; 

 ルークがレイから渡されたライトセイバーを断崖に投げ捨てたあたりで、ライアン・ジョンソンはルークのキャラクターやジェダイ騎士団、フォースについて理解していないのがよく解るし、追い打ちをかけるかのように島での生活ぶりとして乳搾りや魚獲りの様子が描かれる(笑)…そんなモノ誰が見たいのか。ボンクラ脚本家がキャラクターを掘り下げようとしてアイデアが湧かない時に犯す間違いがこれ。そんな蛇足的なシーンでお茶を濁した後に、同行して来たチューバッカの姿を見て初めてハンの死を知るという口あんぐりな展開…共に戦った親友で義兄弟の死をジェダイ・マスターが知らなかったなんて。その後も隠遁の理由が語られるが、そこには命をかけて暗黒面を拒否したルークの姿は無かった。そして細かい説明や経緯は放置したまま暗黒面に転向してしまった弟子の寝込みをライトセイバーを持ったルークが襲うという信じられないシーンが登場。ここはカイロ・レンと見解が違うという”プチ羅生門状態”なのだが、どちらにしてもジェダイ・マスターの行動ではないよね。そしてレイに語ったのは、結局ジェダイとシスはコインの裏表なのでこの島で最後のジェダイとして「死ぬ」つもりという茶舞台返しが…死期を待たずにオビ=ワンやヨーダのようにフォースと一体化すれば良いのにねぇ。そこまで達観したと語っていたのにジェダイの書物を残していたり保管してある大木を燃やすのを躊躇したりでよく解らないのだ。

 そもそもの隠遁の理由が、弟子が暗黒面に落ちた事に失望して雲隠れというあたりがライアン・ジョンソンのボンクラぶりがよく表れているのだが、フォースにバランスをもたらすと期待されたアナキンはオビ=ワンの指導の失敗で暗黒面に墜ち、ハン・ソロとレイアの息子ベン・ソロに可能性を見たルークは12人の弟子とともに寺院(なんだかねぇ)で訓練し始めるがベンが暗黒面に魅せられてカイロ・レンになってしまった。この二つは同じ事なのに、父アナキンを救うために命がけで暗黒面を否定したジェダイ・マスターのルークが、それくらいで世捨て人になってしまうのは理由も行動も薄っぺらでどう考えてもおかしい…オビ=ワンはルークの成長を見守りジェダイ騎士への道筋をつけた。また、レイがカイロ・レンを暗黒面から救おうとするのとルークが父アナキンを救おうとしたのは全く同じ行動なのに、暗黒面を拒否して父を救ったルークは何故か反対する。ライアン・ジョンソンの脚本や演出はキャラクター設定や心理表現がシーンに合わせて変わっているし、大きな勘違いをしたまま自らが新たに設定したジェダイ騎士団やフォースについての考察ですらもフラついていて観ていてイライラさせられる。暗黒面に対する考察も陳腐で、ルークが隠遁している島には何故か暗黒面に通じる穴が有って、何とレイが本当に暗黒面の穴に落ちるというトンデモ展開、思わせぶりなだけで真実は語らない鏡の洞窟という陳腐なアイデアまで登場したのには呆れるしかなかったのだ…暗黒面は精神的な意味の比喩なのは子供でも分かりそうなのにねぇ。映画のラストでルークはカイロ・レンとの対決のために分身として現れレイアたちが逃れる時間を稼ぐのだが、ライアンの妄想したスター・ウォーズ世界ではフォースの使用は寿命を縮めるほど体力を消耗させるようで、対決の後に最後のジェダイとして苦悶の表情を浮かべながら死ぬ(笑)…ライアンの妄想したスター・ウォーズ世界ではフォースとの一体化は激しい苦痛を伴うようだ。

 こんな勘違いだらけのトンデモ脚本を渡されたマーク・ハミルは、降板も視野に入れてディズニー側となんらかの交渉を行ったようだが、代役で撮影されるよりは出演してライアンにグチャグチャにされたルークの姿を少しでも自分が作り上げて来たキャラクターの方向に修正したかったのではないだろうか…脚本について納得していないというインタビュー映像がメイキングに残ったのも出演の条件闘争の結果だったのではないか。

 メイキングで勘違い野郎ライアン・ジョンソンはフォースを超能力と勘違いしている子供達に超能力では無いと言いたいと語っているが、そんな描写は全く登場せず、宇宙空間に生身で放り出されたのに自力で生還とか、超能力としか思えない場面ばかりなのは何故なんだろうなぁ…ラストに超能力少年も登場してるし。

 

◎注5; 

 ベン・ソロがダーク・サイドに魅了された理由には全く言及せず、強力なフォースが覚醒したレイはジェダイ騎士の末裔なのか、そのレイの両親については仲間にしようとするカイロ・レンの真実かどうか怪しい言葉として登場するのみ。謎に包まれたままのファースト・オーダー最高指導者スノーク(アンディ・サーキス)は、前作では巨大なフォログラム映像だけだったが、キンキラキンの衣装で玉座に座っているという通俗的で身も蓋もないスタイルであっさり御本人登場。しかも正体不明のままカイロ・レンの子供だましのトリックであっさり殺されるという情けなさ。シスの暗黒卿らしいのだがダース・シディアス=パルパティーンとの関係や何故ファーストオーダーを組織したのかとかについては放置されたままという最大の期待外れ。 

 

◎注6; 

 デイジー・リドリーがシーンによって太っているのは一目瞭然で、ルークに会うスケリング・マイケル島ロケでは前作同様にスッキリ・スリムなのだが、その後のシーンでは太ったり痩せたりしている。撮影した時期で体型が違うようで、太っているのは島での生活関連を撮影したアイルランド・ロケとパインウッド・スタジオでの撮影された一部のシーンだけのようだ。何故こんな事が起きたのか?

昔のハリウッドなら、このシーンを後回しにしてデイジーにスリムになる事を指示しスケジュールを変更して後日撮影しただろう。また、現在の技術ならとりあえず太ったまま撮影しておきポスト・プロダクション段階でスリムになった彼女だけを再撮影しCGで差し替える事も可能なのだが製作費やスケジュール的に余裕がなかったのかそれもしなかった。ディズニー側の要請通り製作費&スケジュール厳守で撮り直ししなかった結果として不自然な映像が作品に残ってしまったが、この辺りにも監督&プロデューサー・コンビの作品に対する姿勢が表れているように思う。

出演俳優たちの体型維持は契約にあると思うのでディズニー側からすれば契約違反になるが、そういう話もなかった事から問題にしてマスコミに根掘り葉掘り探られ騒がれるのを避けたかったのかも…完結編へのJ・Jの復帰に涙したというデイジーの逸話からJ・Jを降板させたディズニー側への彼女のささやかな抵抗だったのかもしれない。

 デイジーは各場面で熱演していてレイの強さや弱さをしっかり演じ分けていて演技そのものは悪くない…特に表情はどの場面も素晴らしい。カイロ・レンと共に戦うエリート・プレトリアン・ガードとの戦闘シーンでは彼女の素晴らしいアクション演技が見られます…殺陣は前作よりも派手で見栄えがするのだが少し様式的過ぎて昔の東映時代劇を見てるような気分になった。

 

◎注7; 

 ストーリーを進める上で重要な要素になるはずだったいくつかの謎を放置したまま、カジノ潜入から追跡装置の停止作戦までの緊張感のないダラダラしたエピソードを念入りに描くという暴挙…ストーリーにうまく組み込めていなくて完全に浮き上がってるし。しかもその任務は病み上がりな上に意味不明な動機(危機に直面している艦隊にレイが戻って来れないようにって何だよそれ)から逃亡を企てたフィンと新キャラクターの整備士ローズ・ティコに丸投げ。百歩譲ったとしてもポー・ダメロンとBB-8のコンビが活躍すべき場面だろうに…向こう見ずで猪突猛進のポーが困難な作戦をフィンと初対面の謎の整備士に譲るというのもねぇ。旗艦内の追跡装置の場所は何故か3Dの図面があって潜入さえすればすぐにたどり着けそうだし、自称整備士のローズ・ティコの追跡装置は解除出来るという根拠の希薄な話も簡単に信じちゃうのが不思議…ポーは前作ではこんなボンクラではなかった。魅力的な憎まれ役として人気だったキャプテン・ファズマも、ほとんど見せ場のないままうっかりミスでフィンに倒されてしまうという無駄遣い。

 

◎注8; 

 ローズ・ティコを演じたケリー・マリー・トランは登場した瞬間にTV女優だと分かる演技で他の俳優たちとの演技のアンサンブルが最悪…ちゃんと演出しない監督の責任なんだが。ラストでは一介の整備士なのにスキー・スピーダーに乗り戦闘に参加してベテラン・パイロットのようにスピーダーを操りフィンの自己犠牲を防ぐとか無茶苦茶…身についたTV演技の癖が最後まで抜けなかったし。熱烈ファンの一部からは駄作になった責任を彼女に押し付けるような非難が浴びせられたが作品をちゃんと観たなら責任を取るべきは監督・製作者コンビという事が解るはずだけどね。カント・バイトへ向かう映像の薄っぺらさには脱力感に襲われ、カジノでの泣きたくなるようなドタバタ、牢獄でのベニチオ・デル・トロ演じるDJの陳腐な登場…彼もストーリーから浮いているので3人の演技がバラバラ。こっそり逃げた方が上手く行きそうなのにわざわざ大騒ぎしてファジアーに乗って街中を逃亡、そして奪った宇宙船での脱出行…宇宙船内の3人の場面の演技は学芸会並み。挙げ句の果てに武器商人が双方に武器を売っていたというアホ設定も登場(ライアン君はアナキン三部作は観てないのかな)。DJによる通過コード解除で旗艦内へ潜入(後でレイのように捕虜になれば簡単に潜入出来る事が判明)、BB-8には箱をかぶせて偽装という驚愕の作戦、あっさり追跡装置にたどり着くが発見され捕虜に。数多くの映画でさんざん見せられたパターンな展開、陳腐な脚本と平凡な演出でサスペンスも何もないままDJの裏切りという笑えないコントに突入…ライアン・ジョンソンは、金目当ての悪人と思わせて実は良い奴、と見せかけて結局悪い奴にしたかったとメイキングで自慢げに語っていた。BB-8の偽装にファースト・オーダーのドロイドが気づき潜入が発覚してるのに、BB-8は何故か拘束されていない。そんな自由の身のBB-8の活躍で処刑を逃れ、フィンと因縁のあるキャプテン・ファズマの対決はあっさり決着がつきフィンたちは逃亡に成功する…このシークェンスは念入りに描かれているのに、主役であるはずのレイが破壊されたメガ・スター・デストロイヤーからどうやって脱出したかは台詞で語られるのみで詳しい描写はゼロ。演技のアンサンブルという意味では昏睡状態のレイアの代わりのローラ・ダーン演じる新たな指揮官アミリン・ホルド提督もお気の毒な一人。存在感や演技そのものは悪くないのだが陳腐な台詞と脚本の不備で上手くストーリーに組み込めていない上に、単調な演出とカメラワークからは魅力的に描こうという意欲が感じられないし印象に残るような場面が無いのが残念…華々しく散る最後まで浮いたままなのは勿体ないよね。

 

◎注9; 

 ヨーダの登場には一瞬「おっ!!!」っとなったが、その後のルークとのやりとりは「スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980)」の会話をなぞっただけで、ジェダイの在り方等の深い考察もなくジェダイ・マスター同士の会話とは程遠い残念なモノだった…ルークが弟子に戻っちゃってるんだよね。この会話がきっかけでルークがジェダイ・マスターらしさを取り戻したわけでもない。思わせぶりなだけで、まるまんまカットしてもストーリーに影響はないよね。他のキャラクターと同様に扱いが雑すぎて怒りがこみ上げてきますな。

 

◎蛇足; 

 クライマックスの石の惑星クレイトでの戦闘場面に「GODZILLA ゴジラ(2014)」「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016)」の監督のギャレス・エドワーズが塹壕で銃を構えるレジスタンス兵士の一人として出演してます。そして本作にはアジア系俳優やエキストラが多数参加しているが、アジアのマーケットを意識したディズニー側の要求だったと思われる。アメリカの一般的な映画ファンは自国の俳優が出ていない映画は観ないと言われているが、ディズニー側は他国にもその考え方を当てはめようとしたのかも。

 

◎反省; 

 「つぶやキネマ」なのに何なんだこの長文は。

 

 

★Facebook「Teruhiko Saitoh」

https://www.facebook.com/#!/teruhiko.saitoh.3