東京ステーションギャラリーで「河鍋暁斎の底力」を観た! | とんとん・にっき

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「河鍋暁斎の底力」チラシ
 

「東京ステーションギャラリー」

 

東京ステーションギャラリーで「河鍋暁斎の底力」を観てきました。観に行ったのは、11月29日のことでした。

 

僕が暁斎と初めて出会ったのが、ステーションギャラリーでした。観るものすべてが驚きの連続でした。特に「新富座妖怪引幕」を観たときは、腰を抜かさんばかりの驚きました。

ステーションギャラリーの受付を通り、階段で2階へ上り展示室に入ると、もうそこは別世界です。高さ4m、幅17mの「新富座妖怪引幕」、おどろおどろしい妖怪が13人、これには圧倒されます。酒を飲みながら僅か4時間で描き上げたということが、過去のコメントに書いてありました。

国芳暁斎なんでもこいッ展だィ!

 

それ以降、暁斎にはまり、次々に展覧会へ行き、そして図録を買いました。以下はその一部です。今回は図録は買いませんでした。(最近、図録が高くなり、買えませんでした、といったほうが…)。

「手持ちの図録など」

 

初公開多数。下絵だけじゃだめでっすか?

展示するのは、河鍋暁斎記念美術館の充実した収蔵品から厳選した素描、下絵、画稿、宴席などにおいて即興で描かれた席画、絵手本など、暁斎の生の筆づかいが感じられる作品ばかりです。

 

なんだ、なんだ、下絵だけか、

と思いきや、これが凄い。

 

ほぼ史上初!(当館調べ)

 100%暁斎の展覧会
河鍋暁斎[かわなべ きょうさい/1831(天保2)~1889(明治22)]は、毎年のように展覧会が開かれる人気の絵師ですが、これまでの展覧会とは違って、本展では暁斎の本画(下絵を描き彩色を施した完成作品)を一切展示しません。展示するのは、河鍋暁斎記念美術館の充実した収蔵品から厳選した素描、下絵、画稿、宴席などにおいて即興で描かれた席画、絵手本など、暁斎の生の筆づかいが感じられる作品ばかりです。本画は完成度が高い一方で、筆勢が抑制された、いわばお行儀のいい作品と言え、彩色などには時に弟子の手が入ることもありました。また、暁斎には多くの版画作品がありますが、これらは暁斎の原画を、彫師と摺師、すなわち他人の協力を得て完成させたものです。これに対して下絵や画稿類は100%暁斎の手になり、その卓越した筆力をまざまざと感じることができます。本展は、あえて本画を展示せず、暁斎の描写と表現の力量のみを、存分に味わっていただこう、というチャレンジングな試みなのです。
 

《日本武尊の熊襲退治 下絵》
1879年 河鍋暁斎記念美術館蔵

                    《幽霊図 下絵》河鍋暁斎記念美術館蔵

 

《象 写生》1863年 河鍋暁斎記念美術館蔵
 

《能狂言面之地取画巻》(部分)
1853-85年 河鍋暁斎記念美術館蔵

 

《骸骨の茶の湯 画稿》河鍋暁斎記念美術館蔵

 

筆の勢い、対象の把握、執拗な描き込み! 

どれをとっても破格の画稿類
暁斎の下絵や画稿は、本画にはない独自の魅力に満ちています。暁斎は一度その対象を把握してしまえば、実物を前にしなくとも、あらゆる方向から見た、どんなポーズの姿でも描くことができたのです。画稿類には、この能力がいかんなく発揮され、数々の驚くべき群像表現を見ることができます。そして画面を埋め尽くすように描き込まれた無数の線描の迫力・筆の勢いも、見どころのひとつです。衣服の襞や髪の毛、顔や身体の皺など、本画では整理されてしまう細部が、画稿では執拗に描かれます。それがかえって、本画では薄められてしまった迫力とダイナミックな動きを表現しており、尽きせぬ魅力となっているのです。

 

《河竹黙阿弥作『漂流奇譚西洋劇』
米国砂漠原野の場 下絵》1879年 河鍋暁斎記念美術館蔵

 

《女人群像 下絵》河鍋暁斎記念美術館蔵

 

即興のパフォーマンス! 

席画に見る暁斎の実力
席画とは、客を前にして即興で描かれる絵のこと。江戸から明治にかけて、多くの客を集めた書画会で、絵師たちが腕前を披露するといったことがしばしば行われました。たくさんの人が見ている前で、下描きもなしに、その場で完成させる席画は、絵師の実力を如実に表します。暁斎も頻繁に書画会を行っていたようで、多くの席画が残されていますが、その守備範囲の広さとクオリティの高さは、暁斎の絵師としての力がずば抜けていたことを示しています。入念に下絵を作り、時間をかけて描かれる本画に比べると、即興的に短時間で描かれる席画は軽く見られがちですが、絵師の本当の力(=底力)は、案外席画の方に表れているのかもしれません。

 

《松上一烏之図》1885年 河鍋暁斎記念美術館蔵

《書画展覧余興之図》1881年頃 河鍋暁斎記念美術館蔵

[展示期間:1/2~2/7]

 

新発見! 《猫又と狸》の失われていたピース
《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》は、暁斎の画稿の中でも、そのユニークな画題やユーモアあふれる描写によってよく知られています。この作品の失われていたピースが発見され、本展で初公開されます。新発見のピースは、《猫又と狸》の画面の上に続く部分で、木の梢からぶら下がる鼠たちが描かれています。

 

《鳥獣戯画 猫又と狸 下絵》
河鍋暁斎記念美術館蔵

 

河鍋暁斎:

河鍋暁斎[かわなべ きょうさい/1831(天保2)~1889(明治22)]は、毎年のように展覧会が開かれる人気の絵師ですが、これまでの展覧会とは違って、本展では暁斎の本画(下絵を描き彩色を施した完成作品)を一切展示しません。展示するのは、河鍋暁斎記念美術館の充実した収蔵品から厳選した素描、下絵、画稿、宴席などにおいて即興で描かれた席画、絵手本など、暁斎の生の筆づかいが感じられる作品ばかりです。本画は完成度が高い一方で、筆勢が抑制された、いわばお行儀のいい作品と言え、彩色などには時に弟子の手が入ることもありました。また、暁斎には多くの版画作品がありますが、これらは暁斎の原画を、彫師と摺師、すなわち他人の協力を得て完成させたものです。これに対して下絵や画稿類は100%暁斎の手になり、その卓越した筆力をまざまざと感じることができます。本展は、あえて本画を展示せず、暁斎の描写と表現の力量のみを、存分に味わっていただこう、というチャレンジングな試みなのです。

 

東京ステーションギャラリー (ejrcf.or.jp)

 

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朝日新聞:2021年1月12日