シンポジウム「河鍋暁斎とジョサイア・コンドル―海外における評価と受容」! | とんとん・にっき

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画鬼・暁斎展 記念シンポジウム

「河鍋暁斎とジョサイア・コンドル―海外における評価と受容」

2015年7月4日(土)


講師:及川茂(日本女子大学名誉教授)

    河鍋楠美(河鍋暁斎曾孫・河鍋暁斎記念美術館館長)

    タイモン・スクリーチ(ロンドン大学アジア・アフリカ研究所)

    山口静一(埼玉大学名誉教授)

    野口玲一(三菱一号館美術館学芸グループ長)

司会:クリストフ・マルケ(日仏会館フランス事務所・日本研究センター所長)

主催:三菱一号館美術館、日仏会館フランス事務所

協力:(公財)河鍋暁斎記念美術館

後援:明治美術学会、ジャポニスム学会


プログラム(予定にかかわらず、実際には大幅に時間超過)

14:00 司会:クリストフ・マルケ(日仏会館フランス事務所・日本研究センター所長)

14:05 冒頭挨拶:高橋明也(三菱一号館美術館館長)

14:10 講演1:野口玲一(三菱一号館美術館学芸グループ長)

          画鬼・暁斎展の紹介を中心に

14:40 講演2:山口静一(埼玉大学名誉教授)

          暁斎とコンドルについて

15:10 休憩

15:25 トークセッション

     司会:クリストフ・マルケ

     登壇者:及川茂(日本女子大学名誉教授)

          河鍋楠美(河鍋暁斎曾孫・河鍋暁斎記念美術館館長)

          タイモン・スクリーチ(ロンドン大学アジア・アフリカ研究所)

          山口静一(埼玉大学名誉教授)

          野口玲一(三菱一号館美術館学芸グループ長)

16:30 終了

(敬称略)



以下、文責tonton

司会:クリストフ・マルケ

なぜ日仏会館で講演会が開催されたのか?

1911年、フランスでコンドルの英文の本が出されたこと。

この本により、暁斎がヨーロッパで評価されました。

1881年(明治14年)、コンドルが弟子入りします。

1883年(明治16年)、師暁斎より暁英の号を授けられます。

2012年に暁斎の遺作、6mもあるものをシルクスクリーンでつくります。

ジャポニスム以来、130年ぶりに日本の美術が評価されました。

高橋明也館長の挨拶

三菱一号館の開館は2010年、開館記念展はマネでした。

その半年前に建物ができました。(復元)

そのときのシンポジウムで、コンドルの建物だから、

この建物で、暁斎展を開くべきとの話が出ました。

5年経ってやっと実現しました。

残念ながらヨーロッパでは暁斎展はまだありません。

先週までヨーロッパにいましたが、

暁斎展をぜひ開催したいという声が多かった。


講演1:野口玲一 画鬼・暁斎展の紹介を中心に

三菱一号館美術館は、開館5周年。

ジョサイヤ・コンドルは、お雇い外国人。

建築家として鹿鳴館(1883年、明治16年)、三菱一号館(1894年、明治27年)。

工部大学校で建築家を育て、建築家として実作で後進の指導を。

他に、日本の研究、生け花や着物。そして日本の絵画の研究。

コンドルは暁斎に入門する。2年後に暁英という名前。

暁斎は狩野派の絵師でありながら、戯画も描いた。

天保8年(1837年)歌川国芳に入門。

享保12年(1841年)駿河台狩野派に入門。

安政5年(1858年)惺々狂斎と号し、狂画を描き始める。

文久3年(1863年)「暁斎百図」浮世絵を多作、戯画の人気作家に。

明治3年(1870年)書画会の戯画により投獄される。

明治4年(1871年)暁斎と改める。

明治9年(1876年)ギメの訪問を受ける。「日本散策」

明治14年(1881年)第二回内国勧業博覧会で妙技二等賞。

      「100円カラス」と言われた。

明治22年(1889年)歿


博覧会がきっかけで、コンドルが入門。

三菱一号館美術館は「東西交流」をテーマにしている。

「東京名所之内 上野山内一覧之図」明治14年(1881年)、

この図の一番奥にコンドルが設計した「上野博物館」がある。

サラセン様式、インドのイスラム様式

「枯木寒鴉図」明治14年(1881年)

毎週土曜日に出稽古。二人で日光へ行ったりもした。

「山と美人図屏風」明治17-18年(1884-85年)

「うずくまる猿図」明治21年(1888年)頃、メトロポリタン美術館所蔵

「蛙を捕まえる猫図」明治20年(1887年)頃、英国人画帖下絵

「釈迦降魔図画帖」

春画「はなこよみ」元治元年、等々、多彩な作例。

「横たわる美人に猫図」明治前半、類型化されていない。

同時代の女性、決して美人ではないが、女性の内面を描いた。

近代的な女性画の先駆者。

今回の展覧会の図録は、多彩な論文が載っている。


講演2:山口静一 暁斎とコンドルについて

(山口氏はフェノロサの研究では第一人者。

コンドルの著書である「河鍋暁斎」の翻訳者。)

お渡ししたレジメは、1時間30分のもの。30分にしてお話しします。

コンドルについては、どのような経緯で日本にやってきたのか、

まったくわかっていない。また、どうしてこんなにも日本文化に

興味を持っていたのかも、まったくわかっていない。

「日本衣裳史」「庭園」「生け花」等々、書物にして残している。

歌舞伎や落語に興味を持ち、面白い人だなと、私は思っている。


今日は、二つのことを話そうと思っている。

なぜコンドルは、暁斎を日本の師として選んだのか。

コンドルは山口融(とおる)に、暁斎を紹介してもらったという。

暁斎は写実と違って、気分や雰囲気までをも描き出すから。

コンドルは選んで入門した。実際は「鴉」ではなく、もっと前から。

ギメの「旅行記」のなかに、「レザメ図」がある。

コンドルは暁斎をわがものにしていた。8年間、信頼しきっていた。

8年間、コンドルは暁斎に学んだ。暁斎もコンドルから多くを学んだ。

暁斎は、現代における北斎だ。暁斎は、戯画や狂画ではなく、

最後の8年間、コンドルを弟子にとってから、日本画をたくさん残した。

「蛇、雉を巻く図」東博所蔵、

「枯木寒鴉図」日本橋栄太郎蔵、100円の値段を付けた。

「暁斎出稽古」(暁斎絵日記)


コンドルはサウス・ケンジントンのアートスクールで、水彩画を学んでいた。

暁斎の印章をつくる。コンドル筆「日光の旅館での暁斎」

「大和美人出来」(暁斎絵日記より)

「大和美人図」暁斎、「もず図」コンドル。

コンドル印章(モンティマー・メンピスと会談)



クリストフ・マルケ「暁斎とフランス」

エミール・ギメ著フェリックス・レガメ挿絵「日本散策」

暁斎は、画家にして罪人、絵を描いていないときには牢屋にいる。

「決闘」、暁斎とコンドル、二人の絵師がお互いを描く。

ルイ・ゴンス著「日本美術」1883年


河鍋楠美「絵日記からみる暁斎とコンドル」

(スライド多数)

暁斎は、昭和49年を境に美術史から突然消えた。


タイモン・スクリーチ「江戸時代の専門家」イギリス人

狩野素川筆「手毬図」、印、素川は暁斎が絵を学んだ頃の人。

狩野派は、200年以上続いたアカデミー。

新しい発想は禁じられていた。画家の印がただの遊び?

狩野派は、政治的にも力が無くなっていた。


質疑応答:

・なぜ、美術史の中から消えたのか?

明治以降の東京美術学校は、狩野芳崖や橋本雅邦ら主導権を。

芸大が始まる4月には、暁斎は病気になっていた。

昭和49年のブリタニカに載っていたのが、日本語になると消えていた。

教科書からも消えた。日本と外国のギャップがあった。

日本の悪いところ、流派で考える。

日本では一つだけ秀でていればよい。暁斎はあれもこれもできちゃった。

26年前、外国では認められていたので、イギリスでは向こうからやってくれと。

・暁斎の春画について。

暁斎の「藤娘」をテーマに。登場人物。

スタイルとして、主題として。

・工房の絵、左下の屋根の上の鴉について。

左下の屋根と鴉は、立体感を出すため。

鯉を描いた後、兄弟子たちは食おうとしたが、

鯉が飛び跳ねたので川へ返した。

・コンドルからの影響は?

「西洋歌舞伎」、オペラ座の前に男女が立っている。

今回の講演会、この絵をテーマの画像にした。

暁斎は、何らかの方法で、洋画を学んだ。

写真などのスクラップを作っていた。

暁斎は海外へは行ったことがない。

向こうからの情報で、ガイコツを躍らせたり、精子と卵子なども描いている。


「暁斎展」、展覧会は9月6日までです。

静嘉堂文庫の「地獄極楽図」は7月12日まで。



とんとん・にっき-kon1 ジョサイア・コンドル

明治10年、工部大学校の教授として、ロンドンから24歳のコンドルが、日本へやってきました。彼の教えを受け、明治12年卒業の第1回生から19年の8回生まで、21人の学生が工部大学校造家学科を卒業し、彼らが日本の建築界の礎となっていきます。永住を決意した明治20年から日本の土に還る大正9年までがコンドルの後半生に当たります。三菱一号館はコンドルの仕事の中期(明治20年~34年)に当たります。(藤森輝信著:日本の近代建築より)

コンドルは明治14年に51歳の異端の画家・河鍋暁斎に入門します。2年後、「暁英」の号を与えられます。


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