エントロピーの定義
ある後輩のブログを見つけたのでそれにつられてこのテーマですよ。熱力学系(多体系ですね)を考えます。この時、少なくとも平衡状態においては(というよりは、一度到達するとなぜか以下に述べるような関係を満たすような状態に落ち着くような状態として定義されると述べるべきか)、なぜかしら系の特徴は熱力学系全体の特徴を示す「示量変数のペア」によって特定の関係を持つことが知られている。したがって(U,V,N,...)を変数のペアにおいて熱力学系を特徴付けられる、と考えるわけですね。これを「状態空間」というわけです。平衡状態というのは系の特徴を状態変数で一意に表示できる、ということを今ここまでで述べたわけですが、具体的にはどういうことを指すのか、というと、「系のエネルギーの出入りを(示量変数の変化ないし、示量変数を変数にもつ関数を用いて)一意に表示できる」ということです。すなわち、dU=d'Q-PdV+μdN+...と表示されます。ここで出てきたd'Qのことを通常「熱」と言いますが要は実際にエネルギーの変化を見てみると他の示量変数の変化だけでどうも表示できない余り分が出てきてしまうのでそれをd'Qと書いておくわけです。あれ、「一意」って言ったことに反してね?って思ったそこのあなた。いえいえ。d'Q以外が一意に定まり、d'Qは他のすべての項に実際に値を代入すれば一応値は出てくるわけですから、一意には定るんです。さて、熱力学の面白いところはですね、上手い関数T(U,V,N,...)で両辺を割ってd'Q/Tと言うものを考えると任意経路(状態空間中)で積分した時に一周して0になる、ということなわけです。これを可積分条件というわけですが、これに対応する関数すなわちd'Q/T=dSなるS(U,V,N,...)をエントロピーというわけですよ。これが増大するっていうのはどうやって示すか、は熱力学第二法則を何らかの形で入れてあげないといけなくて今回は省略するとして、この「熱力学的エントロピー」と通常言われる「乱雑さ」としてのエントロピーすなわち「情報エントロピー」ないし「統計力学エントロピー」が「一致」するのは今までのところあらゆる検証された理論と実験の対応関係の間では成立しているが、どこにもそんな保証はないといえばない。とはいえ、新しいSIではk_Bを定数として定めることで温度を定義するということで、k_Bから温度を構成しようと思えば通常はカノニカル分布で温度を与えると考えられるので統計力学的エントロピーと熱力学的エントロピーの一致は当たり前ということか。まあ、温度のdefの問題はいろいろあって、理想気体を噛ませるかどうか(理想気体を考えることなしに温度を定義することもできる。ただし、k_Bを採用する場合、理想気体ないしそれを扱う統計力学を噛ませない手は私には思い当たらない。)