アインシュタインの一般相対性理論では「重力波」が予言されている。
天体現象に伴う重力波がついに観測され、新聞の一面を飾った。

解説で「マット」を使った例えなんかがあって、まあまあ正しい例えですが、やはりぬるいといいますか、解説を欲しくなるかと思うので相対論を(雑に)紹介します。(雑なんで、ちゃんと勉強したかったら後ろで紹介する本などを参照ください)


1:時空が「曲がる」とは
まず気になるところはここでしょうか。
実はこれだけで結構複雑なんですが、その前に、普段、曲がってるなり直線なり、そういったことを認識するには「長さ」という概念を導入して、それで「座標」を引いてあげないと話にならないわけです。

1-1:長さと計量テンソル
ただし、物理屋にとってはただ普通の「長さ」を考えるだけでは足りなくて、「時間」も込みにしないといけないのです。それゆえ、時間と空間の両方を相応に「定義」します。この時「特殊相対性理論」を我々は認めることになるわけです。つまるところ、「特殊相対性理論」を満たすように、「時空」を捉えることができるのです。

それは速度の違う慣性系への移行(ローレンツ変換)を
ds^2=(cdt)^2-(dl)^2
を定数にする変換として定義するのですが、この時、この関係は観測者の原点近傍では正しいだろうが、遠い地点、つまり、遠い世界を見る時に、手元の物差しと現地に持って行った物差しが同じである保証はないわけで、うまい座標では上記の式は成り立つとしても、遠くの座標では成り立たないことを加味して
ds^2 = g_μν(x) dx^μ dx^ν
というように表記します。
この時のg_μνを「計量テンソル」と言います。
数学的には計量テンソルは「内積」と対応するものになります。

実は計量テンソルの形は時空間の幾何形状と対応します。
実際、デカルト座標ではg_μνはδ_μνに一致し、それを縮約とって計算すれば
ds^2=dx^2+dy^2+dz^2のような形となって、いわゆる「長さ」ですし、平面極座標では
ds^2=dr^2+(rdθ)^2のような形となるので、式の形は違うことがわかるだろう。実際、2つのパラメータrとθを単純にユークリッド型にノルムを作れば第二項は(dθ)^2で会って、余計なrの有無という、差がある。

このような計量テンソルの形の違いが実は重要なのです。

1-2:幾何的な量とアインシュタイン方程式
計量テンソルが位置に依存している場合、「微分」の定義が厄介になります。
まず、日常であれば、座標のいかんによらず、物体固有の値として「長さ」が一意に決まるが、このように、座標のいかんによらず一意に決まる数字を「スカラー」という。
内積はスカラーを生成するように定義されるもので、計量テンソルはベクトルの「内積」を生成する。
したがって、
d(g_μνA^μA^ν)=0
が要請されるが、そうすると、g_μνの微分の項が露わに出てくる。ユークリッド型であればg_μνは定数だから微分には影響しないが、一般相対論が考えるものではこれを定数だと思わないことが重要なのである。

詳細な説明は省くが、「共変微分」を構築することでこれをうまく対処することができる。

この対処の時に現れる「クリストッフェルシンボル」がある。クリストッフェルシンボルは通常の変微分と共変微分の差を表示する時に現れる。

ここまででも複雑で頭がおかしくなるだろうが、一般相対性理論というのは、このクリストッフェルシンボルを用いて定義された「曲率テンソル」を縮約して得られる「リッチテンソル」というものと、物質の分布に対応する「エネルギー運動量テンソル」に対して成立するべき関係性である。

したがってそれを丁寧に書くことはここではしない。



ただ、g_μνというのは、一回与えれば内積を決定づけるものであって、その微分もまた数学であって、幾何の分野であって、空間の「曲がり方」と対応のつくようなものだ、ということが大事である。
なんでそんなことになるのか、というのは、一般論はいくらか複雑だが、具体例を見ればある程度わかるだろう。先に述べた平面極座標のg_μνはどうなっているか、を見れば、dθにrが掛かっていることに着目すればg_μνは位置依存だとわかるだろう。そしてその座標は「平面極座標」すなわち「曲がった座標」なのだ。

そして、そういう、幾何学量が(複雑な計算プロセスを経ることは間違いないにしても)物質分布等と関係を持っている、ということがわかってもらえるとありがたいです。


2:重力波の媒質と検出の道具
通常の「波」はそれを伝える何かが必要です。重力波の場合には数学的には「リッチテンソル」と呼ばれるもので、位置と時間を変数にもつ、値がテンソルの関数です。

テンソルというのは代数で明確に定義するのは結構面倒というか、わかりにくいものなのですが、通常、ベクトル二つを内積をとるとスカラーになるが、そのベクトルに対してテンソルとは「内積」という操作を一般化した「縮約」という操作をすることで「ベクトル」を生成するようなものを言います。

g_μνが「計量テンソル」と言ったのは、これにベクトルを2つかけていますが、一つかけた時にテンソルがベクトルに変質し、それともう一回内積をとることで「スカラーになる」と考えている、そのようになっているのでこれは本当に「テンソル」なのです。

したがって、g_μνみたいなものを「テンソル」というわけです。実際に現象を見る時には例えば計量テンソルに現れるような形で「長さ」や「時間」の変質を見ることになります。

光は真空中ではds^2=0となる経路をたどることが知られているので、g_μνを反映した経路をたどってくれるので、うまい具合に重力波を捉える便利な道具になります。

3:重力波の生活への影響
ない。もともと、時空の幾何による力は日常レベルでは極めて小さい。
地球上で重力が大きいのは、重力は電磁気等と違って「打ち消す」作用がないためであって、とにかく小さいのが特徴である。

重力波はとても小さなもので「力」として物質の運動に影響を与えるにはとても小さい。


4:参考
一般相対論入門/日本評論社

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一般相対論の入門書としては一番易しいが、一般相対論はそもそもが学部4年程度のテーマであるため、そこまでで学ぶような前提知識はもちろん求められる。

第2版 シュッツ 相対論入門 Ⅱ 一般相対論/丸善

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洋書の特徴だが、一冊で充分勉強できる本のイメージが強い。(自分はこの本はほとんど手に取ったことがない)

一般相対性理論 (物理学選書 15)/裳華房

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日本人が書いた一般相対論の教科書。内山先生自身が研究した方向で詳しい本。古いが価値は高い。

場の古典論―電気力学,特殊および一般相対性理論 (ランダウ=リフシッツ理論物理学教程)/東京図書

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ランダウ・リフシッツのシリーズ。場の古典論なので、場の理論としての重力理論としての方向には力点が置かれているような気がするが、自身あまり読めていないのでよくわからん。

重力理論  Gravitation-古典力学から相対性理論まで、時空の幾何学から宇宙の構造へ/丸善出版

¥16,200
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一般相対論の辞書というか、電話帳というか。

General Relativity/Univ of Chicago Pr (Tx)

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程度の高い一般相対論の教科書。
一般相対論の「導出」よりは「応用」と「基礎論の発展」の方向で力の入った本。