超久しぶりの投稿です。

 

研究所でSpringerの本を落とせるので時々おとすということで本代を節約できるようになってきた身分ですが、学部時代はアホみたいに教科書を買ってました。

 

教科書とか物理の分野のレビューを何回かしていこうかな、って思います。

 

・力学

力学は高校から始まって物理を学ぶところでは1番最初のイメージがある。

なぜ1番最初にこれなんだろうということを考えてみると、物理の歴史上1番最初に成立した分野で、これを元に物理の概念を整理したからだと思う。

 

つまるところ、人間が生きていて「雑に」概念を習得して、日常を生きるぶんにはどんな分野のどの概念からいこうがいいのですが、歴史的に新しい分野だとすでに整理された概念をベースに定義を進めていくので雑な日常で身につけた概念から始めるには敷居が高い。一方で、古い力学はそもそもできた当時は雑な概念しかなかった時にできたものだから、1番敷居が低い、というところだろう。

 

個人的に興味があるのは、物理という学問を学ぶにあたって、粗雑な理解でも一定範囲では正しい枠組みを作って理解することができるが、その粗雑な理解を精密化していくことで理解できる範囲を広げていける、ということに注目してほしい。

 

これは一見当たり前なのかもしれないが、実際はそうではない。教育の現場でよく「基礎」から「応用」という順序で勉強をするという経験を誰しもしているはずである。その基礎とか応用という言葉を使って先のことを整理すると

「基礎が雑でも(一定範囲では)応用ができる」

ということを示唆しているのである。基礎が雑でも応用はできるが、その雑さを精密化するほど裾野を広げられる、というのは物理学が「徐々に」発展するというこれまでの流れに非常にマッチした性質だが、自然の理屈がそうである必要など果たしてあるのだろうか、と私は疑問に思わなくもない。

 

さて、いずれにせよである。このような背景を知っていただくと、学部最初の力学で勉強するべきなのは力学という学問の知識というよりは、物理で必要な最初の概念である。力学の運動法則に乗っけられるあらゆる概念や、力学で成立したあらゆる概念が異なる分野に共通する物理の言語となってくる。特にエネルギーという単語は物理のキーとなる概念だが、定義を与えてくれるのがこの力学だろう。

 

というわけで個人的には力学の概念を一通り押さえて、まあ、微分方程式とかその辺の話は話半分でもまあいいんじゃないかって思うことはあるけれど、それはそれでメッセージがあって、物理学という分野が他の知識と結びついて初めて成果を出せる、すなわち、数学との強い親和性を語ってくれている。

 

とりあえず力学の基本的な枠組みが出てくるといろいろな問題が出てくる。それらは基本的には単なる「例題」である。例題であるから、力学という学問的にはそれをどう適用するのかを学ぶ問題と思ってくれればいいだろう。

 

なのではあるが、そこで提示される議論はこれまたやはり他の分野の中で大きな遺恨を残してくれる。例えば重力を考えると、ニュートンの重力公式は点同士に対して適用されるべき式だが、実は点ではなくて球対称な密度分布を与えた物体だとしても成り立つことが示される。しかも、点同士について成り立つべき式だという前提から導くことができる。

 

この類の技法は後々の場の量子論で出てくるような「くりこみ」にも通づる基本的発想である。また、近似という概念を提示しているとも言える。

 

したがって、切り口を変えれば、やっぱり重要性の高い深い内容を紹介する盛りだくさんの学問が力学である。

 

それだけにおそらく「どれも大事」っていうことにまあ、なってしまう。

その意味で力学の教科書は見通しが悪い。

 

個人的には教科書は

(1)とりあえず見通しを立てる

(2)一通りの論理を組み立ててある程度議論できるようになる

(3)新しい発見として別の側面をみていく

というながれくらいであるべきだと思う。特に、(1)というのは向き合っていくために大事なポイントで、その意味で大事にしたい点である。

 

しかし残念なことに、ここを上手く書いた教科書を私はよく知らない。

さらに残念なことに力学の教科書についてはそういう思想を持つ前にとりあえずかいつまんで読んでいるうちにある程度身についてしまったのでレビューという観点で見ることができなかった。改めて読むつもりもあまり起きない。ということで入門書のレビューができないので本の紹介は次記事かな?