「基礎」は応用のために必要な前提知識で「簡単」という認識が強いところだろうが、理論の基礎づけはむしろ現象を見て、それに無矛盾な説明を作るためのストーリー作りであって、極めて精緻なものであって、簡単ではない。

のではあるが、「とりあえず」の説明を作れればそれでいい、という主義はもちろんあって、実際の所ニュートン理論も相対論も量子論も「とりあえず応用する」という技術をたくさん学ぶことが多い。

基礎理論部分においての問題を無視するのはいささか問題があるが実際にはそれがあからさまな問題を出すことなしにうまくいく部分が多いからそのようなことをするわけで、このような立場を応用中心主義とでも呼ぶこととしよう。

基礎論はもちろんながら応用が可能になってもそこの自己論理矛盾であったり、無定義語の存在だったり、応用上の便利不便だったり、様々な疑問点ないし着眼点をもとにさらなる研究対象として研究されてきた。

これらの研究は大半が応用中心主義的な立場からは「無駄」と思われることもしばしばだが、残念ながら、しかし当然に、無駄なこういった研究ほどコペルニクス的転回が可能なのである。

さてと、物理の基礎論では物理的な定義を重視する立場と数理的定義を重視する立場がよく見られる。
例えば、熱力学や力学では第n法則のような形で法則が幾らか提示されている。これらには数学的にdefされているわけではない。数式は含むかもしれないが、そこに数学的特徴すなわち「線型性」や「凸性」などと言った言葉は含まれていない。物理的になされる「操作」が基本的に現れる。これを操作主義とでも言おう。

力学については例えば
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熱力学については
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あたりを参考にすればある程度見えるだろうか。

一方で、量子力学は数式ないし数学用語が定式化の中心にある。
例えば
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を参照するといいだろう。

熱力学や力学でも実はこういった定式化はある。
実際熱力学では
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で見られるような定式化はまさに数式的な定式化で、操作的ではない。

しかし、量子論では操作的な定式化が明白に今のところ考えられていない。
これはある意味で量子論の難しさを感じさせる原因かもしれない。

ただ、こういった類の定式化問題についても実はある意味で近接作用論と遠隔作用論の対立や粒子と波の対立の場合と似たような構図になっていうるのではないか。

すなわち、近接作用であれ遠隔作用であれ、それを「場」という概念を導入し、遠隔作用ではミクロ構造を「なしに」力が伝播することを言っていたのをそうではなく、ミクロな構造を使うべきだというのが決着をつけたのはやはり科学の進展あってできたことなのであったし、あるいはそのような進展のもとに「粒子」と「波」の対立自体がそもそもどちらもある意味で本質的ながらある意味で非本質的なもので、どちらでもないという決着を見るというような形態を取っている。

すなわち、操作主義と数理主義はある種の相補的な関係を取りうるが、そもそもの量子論のフォーマリズムをいずれの立場に取るべきということもそもそもわからない、ということが言えるだろう。

ただし、近接作用論は観測能力の向上によって実在をより確実なものにした場の概念を見て初めて勝利しえたのであって、見る以前にはどちらの立場も有利不利をつけることはできなかった。

ただし、いずれの立場も実験的根拠を見たとき、厳しすぎる解釈をしたか、創作をしたかの2通りになる。

おそらく、いろいろな可能性を見るべきなのであろう。