愛がなんだ/「幸せに、なりたいっすね」 | そーす太郎の映画感想文

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しれっとネタバレしたりするんで気をつけてください。

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愛がなんだ

 

 

「幸せに、なりたいっすね。」

上映時間: 123分

監督: 今泉力哉さん

出演:岸井ゆきのさん、成田凌さん、他

 

 

 

今泉監督の新作ということで観てきました。前作「パンとバスと2度目のハツコイ」も素晴らしかったですが、今回も超素晴らしかった…!!かなり好きな映画になりました。

 

 

金麦!!岸井ゆきのちゃんが飲む金麦がどうも印象に残る映画でした。成田凌が飲むのはプレモル、深川麻衣ちゃんが飲むのはエビス。そうなんだよなぁ、我々は第三のビール。ビールにはなりきれない。何かが足りない。そんな、立派なビールではない、第三のビール側の人間には刺さりに刺さる映画だったなぁと思います。

 

今泉監督って、言葉にできない関係性を描くのがうまいですよね。いやこれセフレじゃん、とか、これメンヘラじゃん、とか、表面上はそう見えてもおかしくないんだけど、映画を見てると、そんな簡単な言葉でカテゴライズできない、言葉にできないけどものすごく普遍的でいまそこにある絶妙な人間と人間の関係をすごく上手に描きますよね。だから終盤にテルコが、ナカハラが、江口のりこにキレる理由すげぇわかるんですよね。この言葉にできない関係性を簡単な言葉でカテゴライズしないでくれ!という叫びですよね。そんなんじゃないんだよ、愛がなんだってんだよ、と。

 

江口のりこが言うことって、確かに正論なんですよね。正しいんですよ、確かにそうなんですよね。でもさ、それが難しいんだよ~俺たちは~。正しくないとわかっていても、一生この関係性が続くわけはないことなんてわかってるけど、なんかよくわからない関係だけど、今となりにいる彼・彼女との距離に救われて、はかなくも楽しくて気持ちがいいときってあるじゃんというさ。超不器用だけど、ものすごく切実な恋愛映画だと思いますし、第三のビール側の人間にはものすごく普遍的で、確かにあったあの恋愛を思い出す1本でしたね。

 

 

だからこそ「幸せになりたいっすね」というナカハラの言葉はとてつもなく刺さるし、彼がその苦悩を芸術に昇華していく過程は、これこそ僕らのできる唯一の現実への抵抗だなと思いグッときました。個展にきた深川麻衣と相対したナカハラの表情も最高でした。ほんとさ~うまくいかねぇよな~がんばろう第三のビール!

 

個人的には今年トップレベルの映画でした。忘れがたい、美しい、せつない。幸せになりたい!