健全な不健全さ/「波紋」を観た | そーす太郎の映画感想文

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  ​波紋




健全な不健全さ



荻上直子監督新作、「波紋」を観てきました。

めちゃくちゃおもしろかったし、けっこう今年ベスト級にグッときました。


感情の解放についての映画でした。


あらゆる抑圧を受けて、感情を押し殺していた専業主婦がそこから解放されて、喜怒哀楽を剥き出しにするまで。という感じ。


あの謎の新興宗教のおもしろさはもちろんなんですが、上手いなと思ったのは、よく考えれば当たり前なんだけど新興宗教にどっぷりハマってる間の主人公はとても幸せそうだし、心が落ち着いてるんですよね。ユートピア的というか。しかし、そこに出て行った夫が帰ってきて、不文律が入ってくることで日常の歯車が狂ってくる。負の感情が出てくる。でも、観ててそれが不思議と安心すらしてくるというのがおもしろい。


要所要所で主人公の感情のトリガーを引く木野花は影の主人公でしょう。


優しさ、ずるさ、醜さも含めて人間であるという意味で、「健全な不健全さ」に主人公が戻ったとも言えるラストは清々しかったです。優しさだけでは非人間的、醜さだけでもダメ。喜怒哀楽、優しさやずるさや、あらゆる感情があっての人間である。こうあらなければならない、という堅苦しい殻を破り、負の感情も含めて「私」になる、荻上直子なりのLet it go。わたしはとても素晴らしい映画だと思いました。