「不動産登記規則もあと少しなんだけど、
ここでちょっと、商業法人登記の閉鎖
登記簿の請求のしかたについて,
説明したいんだけど」
「いいよ。
でも、なんで?」
「商業法人のコンピュータ化前の
閉鎖登記簿を請求したい、
っていう声は多いんだよね。
でも、実は、コンピュータ化前の
商業の閉鎖登記簿を請求するのは
少し知識が必要なんだ」
「どういうこと?」
「その話をするには商業法人登記の
歴史を語らないといけない」
「え~と、明治時代まで遡るのかな」
「そう」
「いや、おそらく、皆が請求したいのは
そんな古い登記簿じゃないと思うん
だよね。
そんな歴史の古い会社は、
そうそうないから。
たとえば、戦後くらいの会社で、
役員の履歴がほしいとか...。
じゃ、ざっくりとで、
コンピュータ化前の横書きの
登記簿の様式になって以降の
ことを教えて」
「なるほど。
それが一番実用的だもんね。
コンピュータ化前の横書きの
登記簿の様式になったのは、
昭和39年の商業登記規則の
改正だね」
「ということは、昭和39年以降の
閉鎖登記簿で、コンピュータ化前の
登記簿謄本を取ろうと思ったら、
という設定で、閉鎖登記簿謄本を
教えて」
「わかった。
昭和39年以降で、コンピュータ化
前の閉鎖登記簿謄本であれば、
そうだね...。
登記用紙が各欄ごとに別々の用紙に
分かれてたんだ」
「登記用紙が欄ごとに分かれてた...?」
「そう、商号資本欄、目的欄、役員欄、
予備欄、支店欄、と別々の用紙に
なってたんだ」
「あ~、今の登記簿もなんだか
その名残があるよね」
「そう。その登記事項欄ごとに用紙が
分かれてて、その用紙ごとに用紙を
閉鎖してたんだ」
「どういうこと?」
「たとえば、株式会社の役員は
2年ごとに改選されてたから、
役員欄は2年ごとに閉鎖されてる。
でも、商号資本欄は、商号とか
本店の所在とかはそうそう変わら
ないから、ほとんど閉鎖にならない」
「不動産とは全然違うんだね」
「そう。
不動産は、移記閉鎖するときは
全部を閉鎖して、新しい用紙に
移し替えるけど、商業法人は
各欄の各用紙ごとに閉鎖される。
だから、役員欄は1丁、2丁、3丁と
どんどん新しい用紙に変わっていく
けど、商号資本欄なんかは1丁の
まま、という感じ」
「つまり、役員欄の閉鎖登記簿は
いっぱいあるし、商号資本欄なんかは
閉鎖登記簿が1枚しかなかったり
する可能性があるってことね」
「そういうこと。
だから、ここが大事なんだけど、
閉鎖登記簿謄本を請求するときに
ただ単に閉鎖登記簿謄本がほしい、
と言っても、法務局はどの閉鎖
登記簿を謄本を作ったらいいのか
わからない、ということになる」
「なるほど。
どの用紙のいつごろの閉鎖登記簿か、
を指定しないと閉鎖登記簿謄本が
作れない、ということか」
「そういうこと。
だから、いつごろの役員欄が必要とか、
取締役〇〇の就任年月日が記載
されてるもの、とか、○○の退任年月日
が記載されたもの、とか、
本店が○○から××に移転した日付が
記載されたもの、とか、請求内容を
具体的に書かないといけない」
「なるほどね~。
なんとなくわかった」
「昭和39年以前の事情は、またちょっと違う」
「いろいろありそうだね。
でも、たぶん、皆が知りたいのは
昭和39年以降で十分だと思うよ」
「わかった。
また何かあったら遠慮なく質問してね」