天龍寺かぁ...
その日、京都嵯峨は天龍寺を目指したのには理由があった
最終文にいたく感動したからだ
察する所二十一年も孤独で生きていた間に在りし日の春琴とは全く違った春琴を作り上げ愈々鮮やかにその姿を見せていたであろう佐助が自ら眼を突いた話を天龍寺の峩山和尚が聞いて、転瞬の間に内外を断じ醜を美に回した禅機を賞し達人の所為に庶幾しと云ったと云うが読者緒賢は首肯せらるるや否や
峩山和尚とは、
橋本峩山老師のことだが、まったくの創作であるところの本作にあって、実在の時の名僧と知られた老師か出てくることにびっくり (漱石の小説にもその名が) 、明治三十二年に天龍寺の管長になられ、師を助け天龍寺再建につくした方でもある
その峩山老師の師が由利(理)滴水老師で、山岡鉄舟居士に印可を与えた老師としても知られるが、明治五年(1872年)には大教正となり、禅宗三派(臨済宗/曹洞宗/黄檗宗)の管長に選任された方だ
禅宗は纏めて一宗と勘定され、慥か天龍寺の貫首が初代管長になったはず。
鉄鼠の檻 / 京極夏彦
そう、その方
また、
滴水老師は、岡山の曹源寺(岡山藩池田家菩提寺で鳥取の池田家ともここでつながるわけね✨)で修行されていた頃の逸話も興味深く、そもそも 滴水 とは「曹源の一滴水」の禅語にまつわる
と、
書きつつ、、
話をもどし、、、
「春琴抄」で一番感動したのは、この最終文にあるところの以下
「在りし日の春琴とは全く違った春琴を作り上げ 愈々鮮やかに その姿を見せていたであろう」
たかだか七十数頁の小品
最終文前段で象徴的な「突く」という行為に心が行きがちだとは思うけれど、また、初読の折りには、「美しい」ということは「恐い/怖い」ということと根本的には同じなのか?と思ったりもしたけれど
時が経ち いま読むと、
それは表層に過ぎないんだなぁ、、
また、
醜を美に とある
悲を含んだ美というか、慈というか、、醜がそのままにして美であるというか
じつに仏教的というか、禅的というか、
凛とした崇高さというか、、
「100分de名著」で谷崎潤一郎を特集していた、無人島に持っていく五冊のなかの一冊でもあり 今回、加筆にて
※無人島に持っていく五冊
・シャーロック・ホームズの冒険
・トム・ソーヤの冒険
・モンテ・クリスト伯
・草枕
・春琴抄
「あれを見ろ。あの堂を見ろ。峨山と云う坊主は一椀の托鉢だけであの本堂を再建したと云うじゃないか。しかも死んだのは五十になるか、ならんうちだ。やろうと思わなければ、横に寝た箸を縦にする事も出来ん」
虞美人草 / 夏目漱石
■関連ブログ■
読書遍歴:ひとはなぜ 物語 を読むのか? 2018-11-28
・特に好きな日本の作家さん
・無人島に持っていく五冊
・そして死ぬまでに、XXX を読み終えたい、、
・2018年は、こんな本を読んできた ( ひとはなぜ 物語 を読むのか? (2018のまとめ) ) 2019-01-08
・2019年は、こんな本を読んできた ( ひとはなぜ 物語 を読むのか? (2019のまとめ) ) 2020-01-18
・** あなたにとって読書とはなんですか? **
死ねば大好きだったこの大切な本のページはめくれず、
読み終えたかったという願いは叶わない。
二都物語 / C.ディケンズ
※2020年に読んだ文庫本など
・今昔百鬼拾遺 天狗 / 京極夏彦
・神はいつ問われるのか / 森博嗣
・ヴォイド・シェイパ / 森博嗣 再読
・ブラッド・スクーパ / 森博嗣 再読
・スカル・ブレーカ / 森博嗣 再読
・フォグ・ハイダ / 森博嗣 再読
・マインド・クァンチャ / 森博嗣 再読
・暗い越流 / 若竹七海
・楽園のカンヴァス / 原田マハ
・沈黙 / 遠藤周作
・一本の道 / 平山郁夫
・007 カジノ・ロワイヤル [新訳] / I.フレミング
・イッツ•オンリー•トーク / 絲山秋子
・羊と鋼の森 / 宮下奈都
・ペスト / A.カミュ
・蝶々殺人事件 / 横溝正史
・さよならの手口 / 若竹七海
・キャサリンはどのように子供を産んだのか? / 森博嗣
・幽霊を創出したのは誰か? / 森博嗣
・もういちどベートーヴェン / 中山七里
・首都消失 (上下) / 小松左京
・日本庭園の秘密 / E.クイーン
・命ある限り歩き続ける / 五木寛之、横田南嶺
・半沢直樹3, 4 / 池井戸潤
・機龍警察 暗黒市場 / 月村了衛
・機龍警察 未亡旅団 / 月村了衛
・薔薇の名前 上 / U.エーコ
「アラユルモノノウチニ安ラギヲ求メタガ、ドコニモ見出セナカッタ。
タダ片隅デ書物ト共ニイルトキヲ除イテハ」
薔薇の名前 上 / U.エーコ