能登半島にある一軒の宿で目にした漆器について知るために、
和の台所用品のすばらしさを世界に紹介し続け入るナンシーさんは、
宿の漆器を作った、輪島市にある漆職人の店に向かいました。
ナンシーさんは、3年前にも訪れていたところだそうです。
早速、漆器は油に弱いのでないかとナンシーさんが聞くと、
瀬戸さんという漆職人さんは即座に否定、
油につけておいても大丈夫、と、
冗談っぽい応えを返してきました。
漆器は傷みにくい丈夫な器であり、
”毎日使える漆器”が、
漆器作りをしている瀬戸さんの信条だそうです。
なぜ丈夫なのかは、造り方を見ればわかると、
工房に案内してくれました。
瀬戸さんは、
最初にやることが大事といいます。
漆器作りで最初にすることは、木地固めだそうです。
木地に漆を塗りこめ、木の繊維にしみ込ませます。
まんべんなく塗り込んだら、数日乾燥させ、
乾いたら、また塗り込む。
これを7~8回繰り返します。
木地の繊維の隅々まで漆がしみ込み、
いわば漆が飽和状態になったら、木地作りの完成です。
木地固めには数か月かかりますが、
こういう状態になったら、
毎日使っても傷まない、丈夫な器になっているそうです。
輪島市といえば、輪島塗の本場です。
瀬戸さんは、
若いころから、漆器職人として、先輩の職人さんたちに鍛えられたのか思いきや、
漆器作りはずぶの素人で、独学で勉強したとのことです。
輪島塗ばかりではなく、
ほかの古来の漆も研究し、
独自にスタイルで、漆器を作っているそうです。
しかも職人になったのは、40歳を過ぎてから。
素人の、四十にもなった中年男が、
突然漆職人になろうとし、なったのです。
ホンマかい、と思わず突っ込みたくなりますが、
もちろん、それには、理由がありました。
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