イギリス人の老人が流した涙が、一人の漆職人を生みました。 | お酒、グルメ、ときどき健康と雑学

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NHKの「世界はほししいモノにあふれてる」という番組で紹介された、
ナンシー シングルトン 八須さんは、
漆器に盛られた料理をはじめて口にしたときに感じた、それまで経験したことのない感覚の理由に近づくために、
漆職人の瀬戸さん訪ねました。

 

瀬戸は、40歳を過ぎてから職人の道に入ったそうです。

その前は、民芸店に勤めていたといいます。

1978年、バーナード リーチというイギリス人が能登を訪れたとき、
瀬戸さんは、案内役として運転手を務めたそうです。

バーナード リーチについては、
ウイキペディアにも詳しく載ってますから、そちらを参考にしてください。

リーチは、明治時代に来日し、日本の各地を巡り、
日用品の美を発掘している、世界的に有名な人です。

能登に来たときは、78年ですから、
リーチ最晩年のころです。

ある村で、
素朴な漆器を見たリーチは、
漆器を引き寄せ、じーっと見つめていた時、
大粒の涙を、ばらばらと流したそうです。

誰が作ったかわからない、
汚い黒いお椀に、
人を感動させる力があったのか、
こんなすごい世界があるのかと、瀬戸さんは疑問に思いましたが、
そう思うと、やってみたくなったそうです。

老人のリーチの涙は、
中年の男を揺さぶり、漆職人の道に誘い込みました。

瀬戸さんは、リーチの言葉を心にとどめてきたそうです。

「物というものは、毎日人と会話できるものなんだ。」

瀬戸さんの信条としている”毎日使える漆器”は、
リーチの言葉に応えている、瀬戸さんの職人としての答えなのかもしれません。

普段使いの、使い古した漆のお椀を見て、
その素朴な美しさに、涙した老人がいたかと思えば、
その涙の意味を知るために、漆の器を作り始めた中年男がいました。

”やる気なし”が服着て歩いているみたいなアル中ル氏には、
一生(といっても、残りいくばくもありませんが。)見ることのできない景色を、
二人は見ていたようです。