その98:あなたの子供のために~不妊、妊娠中、子育てにおいてできること~ | 肥満治療を行う外科医のブログ

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健康な身体を取り戻そう!

今回のブログは、100のコラムの中で、私の一番思い入れのあるブログになります。

子供のためにできること。誰かの何かしらのヒントになればいいな、、、と思いつつ。

 

不妊:

多くのカップルが不妊の問題に悩み、日々リプロ担当の先生方とご苦労を重ねていらっしゃると思います。皆さまに朗報が届くことを心からお祈りしています。

 

私の外来には、肥満症の術後しばらくたってから、「子供を授かりました!」と嬉しいニュースが届くことがあります。その日は特に幸せな気持ちになります。

 

そこで肥満症治療の観点から、不妊症治療の助けになることをまとめておきたいと思います。

不妊には多くの原因がありますので、肥満の観点からお話しします

 

 

肥満は不妊の原因になります。

BMI24以上だと、不妊や妊娠中の異常の確率が上がります。

 

不妊の原因としては(肥満がある場合)、

 

・ 皮下脂肪がつき過ぎると、脂肪細胞におけるエストロゲン産生が過剰になり、卵巣性エストロゲンの産生が抑制されます。

 

・ インスリン抵抗性高インスリン血症

➔ 卵巣が過剰な男性ホルモン(テストステロン)を作ります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)といって、肥満、多毛症(毛が濃い、髭など)、ニキビのみならず不妊の原因になります(流産も3倍に)。インスリン過多は、卵巣の働きを悪化させ、排卵障害や卵の質の低下を招きます。また着床障害の原因になります。

 

・ レプチン抵抗性 

➔ 本来、レプチンは視床下部に働きかけて性ホルモンの分泌を促進します。しかしレプチン抵抗性がある状態では、その効果が十分に発揮されないため、必要なホルモンが働いていない可能性があります。

 

・ 酸化ストレス 

➔卵巣のAGEsの蓄積から酸化ストレス発生→卵巣機能不全→無月経へ。また元気な精子を作るためには、亜鉛やDHAも必要ですが、酸化ストレスを抑えるのが大事です。

 

まとめると、とにもかくにも、

インスリンがたくさん出される状況を作らないことが大事!です。

すなわち、糖質は控えめに!

 

子供を作ろうと思った時から、お互い食事には注意したいものです。

 

 

妊娠中:

母親と子供は胎盤で栄養のやりとりを行っています。

近年、肥満の赤ちゃんが増えています。海外ではすでに大問題です。赤ちゃんは、自ら食べ過ぎることもありませんし、ましてや運動不足も自分では選択することはできません。赤ちゃんが太っているのは、やはり原因があるわけです。

 

子供が肥満になるかどうかは、母親で決まるといっても過言ではありません。母親からもらう腸内細菌もそうですが、やはり妊娠中の栄養は大きな要因になります。

 

・ 妊娠糖尿病

胎児に栄養を送るために、女性は妊娠するとインスリン抵抗性(インスリンの感受性が60% 低下)になり、また糖新生が活発(30% 上昇)になります。そのため、胎児は糖を多く受けとることができます(これは生存にとっては有利になります)。

 

しかし妊娠糖尿病になると、胎盤を通して、糖とインスリンが胎児にたくさん供給され、ベイビーは生まれながらに脂肪細胞数が多くなり、将来、肥満、糖尿病になる確率が3になります。

 

・ 果糖

母親の血中濃度よりも臍帯血の方が濃度が高いと言われています。もともとは貴重な栄養源である果糖を、子に分け与える機能だったのかもしれませんが、果糖はインスリン抵抗性を引き起こします。産後も果糖をたっぷり摂っていれば、母乳にも高濃度で移行し、赤ちゃんがそれを口にすることになります。

 

母親のお腹の中や新生児期にプログラミングされ、インスリン抵抗性は生じます。

「肥満へまっしぐら」となりかねません。糖質の摂りすぎにはやはり注意が必要です。

 

 

子育て編:

母乳と食育についてお話しします。

*母乳が出ずに苦労している方が多いのも理解しています。あくまでメカズムの説明ですから、参考に留めていただければと思います。

 

母乳が与えるもの

・ 乳糖(ラクトース)

乳糖は、ブドウ糖+ガラクトースで、赤ちゃんのエネルギー源になります。ガラクトースは肝臓でブドウ糖に変わりますが、血糖値への影響は小さいです。

 

・ DHA中鎖脂肪酸

人間の脳の発達にはDHAや中鎖脂肪酸が必要です。

 

・ オリゴ糖

消化はされませんが、善玉菌のエサになります。

 

・ ラクトフェリン

鉄と結合し抗菌作用を示します(細菌は生きていくために鉄が必要ですが、それを奪うわけです)

 

次に、子供の食育

日本で初めて食育を提唱した石塚左玄は「通俗食物養生法」の中で、

「学童を有する民は、躰育・智育・才育は即ち食育なりと観念せざるべけんや」と力説しています。

子供にとって一番必要で大事な教育は食育であり、食育は家庭教育であると説きました。

 

脂肪細胞の数が増える時期3回です。

1.胎児期

2.乳児期

(1.2.の時期の注意点については、上で述べました)

3.思春期(10-15歳)

性ホルモンの分泌が活発になる時期です。

ジャンクフード、スナック菓子、ジュースを多く摂っていると、血糖変動で心も落ち着かないだけではなく、インスリンが多く分泌されることになりますから脂肪細胞数が増えます

 

小児期の肥満は大人になってからも肥満である確率が高く

2型糖尿病や心血管疾患のリスクになります。

 

最近では、インスリン抵抗性をベースに、初潮が早くなる子供も増えています。早い初潮は、妊娠糖尿病のリスクも上げますし、乳がんリスクも高くなります(1年早まるごとに5%上昇)。

 

 

肥満になってからでは、生活指導をしても、減量は困難です

肥満にしないために、最もよい介入時期は、幼い子供の時です。

大きくなってくると、いやがうえにも、現代の「高糖質、低線維食・・肥満食」の世界に晒されてしまいます。親の言うことも聞いてくれなくなりますし。

 

食育は次の世代にも引き継がれる非常に大事な教育です

 

 

Pixabay

 

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