〔15〕ジャンクション大喧嘩 | 星流の二番目のたな

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デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

 快晴の元、線路沿いに歩く子ども達。

「でさ、俺がそこに反則ギリギリのスライディングで突っ込んで」

「大輔のポジションはトップ下だろ? よくゴール前まで戻れたな」

「俺、ダッシュには自信あるんだ。MFもやってみたいけど、持久力がまだイマイチなんだよ~」

 先頭で活発に語り合っているのは大輔と拓也だ。今朝全員を叩き起こした時からヤッカイな絆の臭いがしたが、案の定意気投合してしまったらしい。

 二人ともサッカークラブに入っている事まで判明し、さっきからサッカーの話で大盛り上がりしている。

 その後ろで、一生懸命話についていこうとするブイモンと友樹。

 残りはその更に数歩後を、静かに歩いている。静かな訳はずばり、寝不足だ。

 泉は恨めし気な顔で大輔達を凝視している。

「こっちは野宿で疲れてるし朝早く起こされて眠いのに……一体あの二人はどこから元気が湧いてくるのかしら」

 止めどなくあふれてくる文句に、純平がフォローを入れる。

「心配することないよ、泉ちゃん。あいつらも泉ちゃんと同じ五年生なんだからさ、その内『もう疲れたー!』とか言い出すに決まってるよ。その点俺は六年生だし体力はあるし――」

 後半から聞き流されている事に、純平は気づいていない。むしろ、気づいていなくて幸せかもしれない。

 泉はますます不機嫌な表情になり、大輔達を睨んでいた。

「あの二人がそう簡単に疲れてくれるなら、悩まなくていいんだけど」

「え?」

 聞き返してきた純平を、泉は黙殺した。


 昼前に、進む先を選ぶ事になった。

 線路が二手に分かれていたからである。

 一方は左。今までと変わらない荒れ地の中へ。

 一方は右。森の木漏れ日の中へ。

 泉達が追いついた時には、大輔と拓也が頭を突き合わせて相談していた。

「何か、嫌な予感がするんじゃが」

 ボコモンの言葉通り、大輔と拓也が爽やかな笑顔で振り向いた。

「よしみんな!」

「今度は左に行くぞ!」

 そして答えも待たずに歩き出す。

「って! ちょっと待てよ!」

 純平が慌てて駆け寄って、二人は不思議そうに足を止めた。

 ため息まじりの息を吐いて、純平が口をとがらせる。

「勝手に決めるなよ。大体、何で左なんだ?」

「俺の勘だ!」

「何となくだ!」

 即答する大輔と拓也。言葉は違うが言ってる事は同じである。しかもそろって胸を張る。

 呆れて絶句する純平の隣に、今度は泉が割り込む。

「あんた達、勘とか何となくでみんなを引きずり回すつもり!? もし間違ってたらどうするのよ!?」

 拓也が面倒臭そうに頬をかく。

「その時は戻ってくればいいじゃんか」

 純平が文句を言おうと口を開く。

 が、泉の方が速い。

「あっそう。だったら拓也も大輔も左に行ったら? 私はついてかないから!」

 そう言ってさっさと右に歩き出す泉。

「勝手に動くなよ! デジモンに襲われたらどうするんだー?」

 大輔が叫ぶが、泉は足を止めない。純平があたふたと後を追う。

「今日の泉、まるで京みたいだな……」

 ブイモンがぽつりとつぶやいた。大輔も大きく頷く。

「ホントだよな。あんなやつほっといて、さっさと行こうぜ」

 拓也が大きく頷く。

「そうだな。行くぞ、友樹! ほら、ボコモンとネーモンも!」

 拓也が戸惑う友樹の背中を押し、大輔がボコモンを、ブイモンがネーモンを引きずって、一行は左に進んだ。




 線路沿いに進み、森へと入っていく泉と純平。

 しかめ面の泉に、純平が積極的に話しかける。

「大輔達についてかなくて正解だったよ。あのコンビについていったら何が起こるか分からないからな」

「うん」

「俺もこの道で合ってるとおもうぜ。だって目指すは『森のターミナル』だろ? だったら森の中にあるに決まってるじゃん」

「うん」

「おなかすいてない? 俺とチョコ半分こにしようよ!」

 泉が立ち止まった。勢いよく純平に顔を向ける。その顔ときたら、目は吊り上がり、口は一文字に結ばれている。

 後に続くのは叩きつけるような言葉。

「黙っててくれる? 私、今おしゃべりしたい気分じゃないの」

「……はい」

 乱暴な早足で歩く泉に、純平は黙って従った。




「本当に、こっちの道でいいのかな……」

 どこまでも変わらない景色に、友樹が弱音を吐く。

 その両肩を、同時に二人の手がつかんだ。

 左から大輔が。

「心配すんなって友樹!」

 右から拓也が。

「俺達がついてるって!」

 根拠のない自信が両側からあふれだしている。

 ネーモンがのんびりと首を傾げた。
「ホントに大丈夫かなぁ?」


 直後、友樹の足元にひびが入った。

 足をどける暇もなく、地面が崩れ出す。

 友樹が悲鳴を上げながら、谷底に落ちていく。

 大輔と拓也が、友樹の両手をつかむ。

 しかし、二人の足元も崩れ去る。

 今度は大輔の足をブイモンが、拓也の足をボコモンとネーモンがつかむ。

 ただ残念なことに。

 デジモン三人には子ども三人を支えるだけの力がなかった。


 結果。


「うわあああああ!」

 全員が悲鳴を上げながら、谷底へと落ちていった。



◇◆◇◆◇◆




アニメ4話相当の話に入りました。

大輔&拓也が暴走するのは、アニメで純平が言ってた「もし拓也が二人いたら」を実際にやってみた結果です。しかも、この時点だとまだ輝二がパーティーに加わっていないので、ストッパーが誰もいないという恐ろしい事に……。