星流の二番目のたな

星流の二番目のたな

デジモンフロンティアおよびデジモンアドベンチャー02の二次創作(小説)中心に稼働します。たまに検証や物理的な制作もします。
続き物、二次創作の苦手な方はご注意くださいませ。

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この小説は、「デジモンノベルコンペティション」に応募したものです。

 

 ―――――

 私が鱗竜国(きりゅうのくに)の守護役を継いだ日、私はまだ十歳だった。
 春のうららかな日差しの中、私は菜の花色の小袖姿で、屋敷の廊下を歩いていた。
 父上の部屋の前で膝をつく。
「父上、望(のぞみ)が参りました」
「お入りなさい」
 返ってきた声はミタマモンのものだった。
 私はふすまを開けて部屋に入った。
 板敷の部屋の中心に、布団が敷かれている。そこに父上が横になっていた。
 顔の彫りは深く、その肌は髪と同じくらい黒い。他国の貴族からは「貴族というより漁師のようだ」と言われていた。
しかし、今の父上にかつての覇気は無い。手足の筋肉は落ちてやせ細り、肌は青黒い。
持病が悪化して、この三日程は床に臥せっていた。
 守護役の印であるデジヴァイスも、枕元でうっすら埃を被っている。
 その周りを守るように、ミタマモンが長い体を横たえている。その体は部屋よりも大きいが、半透明の竜の体は、不思議と壁や天井をすり抜けている。
 私が父上に近づくと、父上が目を開けた。
「父上、今日も村の見回りに行って参ります」
「そうか……。すまんな。私が行けぬばかりに、お前には迷惑をかける」
 その声は弱弱しく、しゃがれている。
「とんでもございません」
 私は父上を安心させるように微笑む。
「国を守るのが貴族の務め。私も鱗竜家の子ですから」
「ミタマモン、私は良い。望についてやってくれ」
 父上がミタマモンに目を向けた。ミタマモンは困ったように父上と私を見比べる。
「しかし、私の《鏡花水月》の癒しが無ければ、あなたの体は」
 私はミタマモンに顔を向けて頷いた。
「お気になさらないでください。安全な村の中を歩くだけですから」
「分かりました。お気をつけて」
 ミタマモンと父上に一礼して、私は部屋を出た。
 廊下を歩きながら、私は唇を噛んだ。
「姫様」
 廊下の向こうから、水神(みずかみ)満信(みつのぶ)が早足で寄ってきた。年は十八歳。日頃から鍛錬を積んでいる体は引き締まって日焼けしている。来ている茶色の小袖もあって、木造の建物に溶け込んで見える。従兄にあたるが、私と違って目鼻は小さく、顔だけ見れば女のようだ。
「お父上のご様子はいかがでしたか」
 満信の言葉に、私は顔を曇らせて、首を横に振った。
「あの様子では、もう長くないかと思います。何より、ミタマモンが父上の傍を離れたがりません」
「もうそこまで……」
 満信が両手を握り震わせた。
 癒しの力を持つミタマモンは、父上の相方であり最高の侍医でもあった。
 それが父上の傍を離れないということは、父上の命が尽きかけていることを意味する。
 満信が表情を引き締めた。
「私は鋭刃国(えいじんのくに)に加勢に出ている両親を急ぎ呼び戻します。姫様は村へ顔を見せにお行きください。姫様の顔を見れば、民も安心しましょう」

 屋敷の門を出る。
 父上の病状とは裏腹に、鱗竜国は晴れ渡り、遠くまでよく見える。
 鱗竜湖が日の光できらめいていた。今日のように天気が良い日でも、対岸や離れ小島がかすんで見えるほど広い。この水が、田畑だけでなく湖の幸ももたらしてくれる。
 少し歩くと、漁師達が船着き場に集まっていた。
 私を見つけると、我先にと駆け寄ってくる。
「姫様、守護役様のお加減は」
「ミタマモンが、看病してくれていますので」
 そう言って微笑もうとするが、唇が震える。
 そんな私を見て、漁師達も不安そうに顔を見合わせた。
 私に口々に訴えてくる。
「では、水神のご夫妻は戻られませんか」
「ミタマモン様がお姿を見せられないので、湖のデジモンが船を襲うようになりまして」
「貴族の皆様のデジモンがいなければ、漁ができなくなってしまいます」
 私は鱗竜湖に目を向けた。
 湖には、野生のデジモンも多く生息している。
 これまではミタマモン達が見回り、時には戦い、人の生活圏に入り込まないようにしていた。
 けれど、ミタマモンは看病にかかりきりになり、残る満信の両親とそのデジモンは隣国の戦に加勢するため国を離れている。
 桟橋につけられた船の中には、傷がついていたり、折れたりしているものもある。
 このままでは、国の平和が保てない。
 そこに、大声が響いた。
「姫様! 姫様!」
 振り返ると、転びそうな勢いで人が走ってくる。屋敷の使用人だ。
 使用人は私の元まで来ると、息を切らせながら訴えた。
「姫様……すぐに屋敷に、お戻りください! 急変でございます!」
 その言葉だけで、私は全てを察した。
「父上!」
 私は一目散に屋敷へと走った。

 日暮れに、父上は息を引き取った。
 枕元で嗚咽を漏らす私の肩に、ミタマモンが触れた。
「待っています」
 その声に顔を上げても、ミタマモンはいない。
 半透明の体だから見えないのではない。相方の父上が亡くなったから、ミタマモンも消えたのだ。
 青白い父上の顔に、満信が白い布をかける。
 そして、正座して私に向き直った。
「姫様。お父上を亡くしてお辛いところ申し訳ございません。が、すぐに継承の儀を行っていただきとうございます。せめて私の両親が戻るまで、この国を守るデジモンが必要です」
 私はミタマモンが触れた肩に、指を当てた。指が震えているのが分かる。
 父上の病気が悪くなった頃から、心を決めたつもりでいた。
 それなのに、父上がいなくなった今、守護役を継げる自信がまるで無い。
「満信では駄目なのですか」
 思わず弱音が漏れる。涙を流しながら、顔を上げて満信を見る。
「鱗竜家の血を引いていて、まだデジモンと盟約を結んでいない者ならば、満信でも良いはずです。私より年上で、しっかりしていて、よほど上手く国を治められます」
 満信は辛そうに息を吐いた。首を横に振る。
「……次に誰と盟約を結ぶかは、ミタマモンが決めることです。私が姫様の名代になることを望んだとしても、ミタマモンが認めなければ意味がありません」
 ミタマモンは、最後に「待っています」と言った。
 私が継承の儀を行い、ミタマモンのデジタマを呼ぶのを待っている、と。
 私はさすっていた肩をつかんだ。指が食い込むほど強く。
 自信は無い。
 けれど、ミタマモンが私を選ぶのなら、私は応えなければならない。
 私は父上に深く頭を下げて、その枕元からデジヴァイスを手に取った。四角の四隅が欠けた不思議な形だ。白地に青い波のような模様がついている。
 腹の下に力を入れて、声を張る。
「湖で禊(みそぎ)をしてきます。継承の儀の用意をしてください」
「かしこまりました」
 満信は一礼した。

 禊を済ませ、白の小袖の上に白の打掛を羽織る。日は落ちて、月明かりだけが頼りだ。
 神棚のある部屋に入ると、既に満信がろうそくを灯して控えていた。私と目が合うと、小さく礼をして、手のひらで神棚を指し示した。
 神棚に歩み寄り、畳に座る。
 机に祝詞(のりと)の巻物が広げられている。神棚には、まだ空の小さな台――三方(さんぽう)が置かれている。
 父上のデジヴァイスを三方に置く。
 両手を組み合わせ、深呼吸する。
 吸った息を吐きながら、祝詞を読み上げる。
「我が名は鱗竜望。守護役の初めたる始祖帝の娘にして、プレシオモンと盟約を結び、鱗竜家を興した末姫の血を引くものなり。人とデジモンを結びし竜戦士よ、我が血筋と盟約を結びし鱗竜よ、我が言葉を聞き届け給え」
 ろうそくの灯が揺れる。
「末姫より千年の長きに渡り、我が血筋は鱗竜と共にあり。今ここに、我、先代の意思を継ぎ、鱗竜と盟約を結ぶことを求む。我が前に現れ、盟約を結び給え」
 三方に置いたデジヴァイスの中心から、光があふれ出た。それは昼間のように部屋を照らし出す。
 デジヴァイスの中から、一抱えほどの卵が現れた。デジヴァイスと同じように、白地に青い波のような模様がついている。
 鱗竜の卵。代々鱗竜家と盟約を結んできたデジモンの卵。ミタマモンが生まれ変わった卵。
 私は膝立ちになり、卵に手を触れた。温かく、脈を打っている。
 卵に呼びかける。
「鱗竜よ、我と共にこの国を守り給え!」
 卵の殻にひびが入った。
 殻は一瞬で飛び散り、光の粒となって消えた。
 私の手の中には、卵と同じくらいの大きさのデジモンがいた。
 背中は茶色、腹と手は青い毛で覆われている。足は無く、雲のようにあいまいになっている。
 顔には銀の仮面がついていて、ミタマモンの名残が感じられる。
 その目が開いた。青く丸い目が、私を見据える。
「我が名はバクモン。鱗竜望と盟約を結びし者。共にこの国を守ることを誓う者なり」
 私の肩の力が抜ける。
 継承の儀は成功して、私はバクモンを受け継いだ。
 けれど、これは始まりでしかないのだ。

 その夜、私は父上の夢を見た。
 病床で苦しむ父上の夢だ。
 そこにはミタマモンも満信もいなくて、私一人が必死に看病をしている。
「父上、私を一人にしないでください。置いていかないでください」
 私が涙ながらに訴えても、父上の肌は冷たくなっていく。
 と、その姿が靄のように崩れた。風が吹いてきて、靄が奥へと流れていく。
 そこには、バクモンがいた。私の悪夢は靄になって、バクモンの口の中に消えていく。
 バクモンは最後に飲み込むしぐさをして、私に微笑んだ。
「可愛い姫様。その胸にあふれそうな不安を受け止めるため、この姿になりました。これから辛いことも多いでしょうが、あなたの傍には常に私がいることを忘れないでください」
「……はい」
 バクモンの言葉に、私は体の力が抜けた。
 バクモンが私に寄り添ってくれる。抱きしめると、夢の中なのに温かい。
 バクモンが短い手を伸ばし、涙に濡れた頬を撫でてくれる。
 目が覚めるまで、私はバクモンを抱いて泣いた。

 翌日、父上の葬儀が行われた。
 民の混乱を避けるため、屋敷の者だけで、内々に済まされた。
 葬儀の後、満信が私の元に来た。
「お父上の死のことを、書簡にしたためて隣国の両親に知らせました。昨日送った重篤を知らせる書簡もありますし、あと三日もすれば両親も帰ってくるでしょう」
 満信は私に告げた。
 隣国への加勢は、外交において重要な役目だ。それを、この国を守る戦力が足りないばかりに、呼び戻さなければならない。
「申し訳ありません。私の力が足りないばかりに」
 私は胸に下げたデジヴァイスを握りしめる。
 私の膝に、バクモンがそっと寄り添う。
「望、あなたは十分やっています。私を成長期の姿で生み出しただけでも素晴らしい素質です。同じ年頃の者は大抵、幼年期でしか生み出せないのですから」
「ありがとうございます」
 バクモンの背の毛を撫でる。指通りの良い毛並みを撫でていると、少し、気持ちが落ち着く。

 鋭刃国からの使者が来たのは、二日後のことだった。
 知らせを聞いてすぐに、屋敷の物見やぐらに登り、山の方へ目を凝らす。
 川に沿って二十人ほどの鎧侍が歩いてくる。
 ただし、先頭を歩く二人のうち、一人はデジモンだ。外見は人間の鎧侍に似ているが、その体は、人の二倍はある。
 私の横で、バクモンも目を凝らす。
「鋭刃国の貴族、鋭刃豪三郎とその相方であるムシャモンですね。当代の三男坊で、ムシャモンは彼の叔父から継いだデジモンです」
「叔父上と叔母上の姿はありませんね」
 私は肩を落とす。
 使者の一団は、山から出てすぐのところで足を止めた。
 そのうちの一人が坂を下ってくる。
 私が物見やぐらを降りてすぐ、満信が駆け寄ってきた。
 満信が口を開く。
「姫様、使者が姫様へのお目通りを求めています。鱗竜国の守りについて、ご相談があると」
 そう言いつつも、満信の表情は冴えない。満信も両親が帰ってくることを期待していたのだ。
「ひとまず、屋敷に通して話を聞きましょう」
 バクモンがため息交じりに言った。

 私は正装に着替えて座り、使者が来るのを待った。
 国土を流れる青木川や鱗竜湖、そして代々のデジモンの姿が刺繍されている打掛だ。亡くなった母上の物を私の背丈に合わせて直したので、模様がやや不格好だ。
 緊張でしびれる手を開閉して気を紛らわせる。
 私の横で、バクモンがささやいた。
「使者との話は私がします。望は堂々と座っていなさい」
「は、はい」
 じきに、床板を踏む大きな足音が聞こえてきた。一歩ごとに何かを引きずる音がする。
 満信に案内されて現れたのは、赤い鎧を着た人間と、同じく赤い鎧のデジモンだ。
 人間の方は三十歳くらい。髪も髭もぼさぼさで、どこからが髭なのか分からない。人間としては大柄で、武士らしく筋肉質だ。けれど右足は引きずっていて、包帯が巻かれている。これが鋭刃豪三郎か。
 デジモンの方も使い込まれた鎧を身にまとっているが、物静かだ。人には目もくれず、庭を興味無さそうに眺めている。
 鋭刃豪三郎が私の前に腰を下ろした。包帯の巻かれた右足は伸ばしたままだ。満信は壁際に寄り、私と豪三郎の間辺りに座った。
 豪三郎が口を開く。
「先代殿が亡くなられたと聞き、急ぎ鋭刃国より参った。本来ならば水神家のお二人をお返しするべきところだが、戦が激しく一人でも戦力が欲しい状況じゃ。わしはこのとおり足に傷を負って戦線を退いている故、この国を守る代理として遣わされた」
 見た目にたがわず、腹の底から出てくるような大声だ。
「まずは、お悔やみ申し上げる」
 そう言って頭を下げてくる。
「ご足労いただき、感謝いたします」
 バクモンが淡々とした声音で返す。
 豪三郎が懐から書簡を取り出した。
「これは我が当主より預かってきた書簡じゃ」
 満信が受け取り、私の元へ運んでくる。
 書簡を開いて目を通す。
 父上のご病気を気遣っていること、水神家の二人を鱗竜国に戻せず申し訳ないこと、取り急ぎ豪三郎を遣わすとのことが書かれている。
 私と共に書簡を読んだバクモンが、豪三郎に目を向ける。
「私どもとしても、鋭刃国とは良き友人であり続けたいと思っております。水神家の二人が戻るまで、この国の守りをご助力いただけるとのこと、ありがたく思います」
 豪三郎は満足げに鼻を鳴らした。
「ところで」
 バクモンの声が固くなる。
「この書簡では、我が先代の病気のことは書かれていますが、亡くなったことは書いていないようです。私達は亡くなった旨の書簡も出したはずですが、お受け取りではないのですか」
 豪三郎が、ああ、と言いながら瞬きした。
「わしが鋭刃国を出たのは最初の書簡が来た直後じゃ。この国に向かう途中で二通目の書簡を持った使者に会い、亡くなったことを聞かされたのじゃ。その書簡はわしの侍が預かり、鋭刃国に戻った。今頃、鋭刃国に着いている頃じゃろう」
「そうですか。それなら良いのですが」
 バクモンは少し不満そうな声を出しながらも引き下がった。
 満信が声を上げる。
「鋭刃国の方々が逗留される部屋をご用意せよ!」
 使用人が駆けつけて、豪三郎とムシャモンを案内する。
 豪三郎は右足をかばいながら立ち上がり、使用人の後を歩いていった。
 豪三郎が去ってから、私はほっと息を吐いた。
「良い話で安心しました。これで、バクモンだけにこの国の守りを任せずに済みます」
 そう言ってバクモンと満信を見る。
 私とは対照的に、二人の表情は冴えない。
 バクモンが満信を手招きして、近寄らせた。私達にだけ聞こえるささやき声で話す。
「他国の使者の書簡を預かって運ぶなど、よほどのことがなければあり得ません。それも、国の守護役が亡くなったという大事な書簡を」
 満信も頷く。
「一つ、ツテがあります。書簡の行方を調べてみます」
「ツテ、ですか?」
 私は首を傾げた。満信に他国の状況を調べるツテなどあっただろうか。
 私の疑問に、満信は少し申し訳なさそうに肩をすくめた。
「情報が集まり次第、お二人にはお話しします」

 それから三日。
 豪三郎とムシャモンは精力的に村を回り、野生のデジモンを退治して回った。
 民からは、父上の死を惜しみつつも豪三郎に感謝する声が上がっている。
 鋭刃国の侍達は屋敷の各所に配備された。
 私の部屋の外にも一人置かれて、食事に行くのにも厠(かわや)に行くのにもついてくる。
バクモンはともかく、満信や屋敷の者達と会う時は室内の声の聞こえる場所に侍がいる。
「万が一にも屋敷の皆様に何かあってはなりませんので」
 豪三郎はそう言っていた。話の筋は通っているが、自分の屋敷なのに居心地が悪い。
 豪三郎のいる部屋の方からは、上機嫌の大声が聞こえてくる。屋敷の者が言うには、屋敷の酒が目減りする勢いで飲んでいるらしい。
 国を守ってもらっている以上、もてなすのは当然だし、注意もしづらい。
 複雑な気持ちを抱えながら、自分の部屋に戻る。ついてきた侍は、ふすまの外で立ち止まり待機する。
「姫様」
 満信のささやき声が聞こえた。部屋を見回し、声の出所を探す。満信の姿はどこにも無い。
 バクモンが押し入れを手で示した。
 押し入れを開けて覗き込むと、天井板からこちらを覗く目があった。
 悲鳴を上げたくなるのを押し殺す。
 胸を押さえて、あれは満信だと自分に言い聞かせる。
 改めて覗き込むと、満信と知らないデジモンがいるのが分かった。
 バクモンと同じくらいの大きさのデジモンだ。栗に手足が生えたような姿をしている。
「何者ですか」
 私の問いかけに満信が、お静かに、と指を唇の前に立てる。外にいる侍に聞かれてはいけない。
 現れたデジモンは、膝を突いて私達に頭を下げた。
「望姫様、バクモン様、このような場所から失礼。お初にお目にかかる。拙者、イガモンと申す者。半年前にこの満信と盟約を結んだデジモンでござる」
「満信が⁉」
 私は目を丸くして満信を見た。
 満信は恐縮したように肩を狭くして、深く頭を下げる。
「姫様、ご報告をせず申し訳ございません。お父上が病に倒れられてから、私なりに姫様のお役に立つ術を探しておりました。風のうわさに、忍びとして優れたデジモンがいると聞き、秘かにこのイガモンを探し当て、盟約を結んでおりました」
 満信が懐からデジヴァイスを取り出す。その色はイガモンと同じ焦げ茶色だ。
「何故、すぐに教えてくれなかったのですか」
 私は顔をしかめた。
 今の鱗竜国には、ミタマモンしか頼れるデジモンがいないのだと思っていた。だからこそ、それを受け継ぐ私に国を守る全責任があると思っていた。
 満信とイガモンのことを早くに知っていれば、もっと気が楽になったのに。
 満信がミタマモンの継承を断ったのも納得できる。既にイガモンと盟約を結んでいるならば、ミタマモンとは盟約を結べない。
「拙者が満信に、このことは伏せるようにと言っていたのでござる」
 答えたのはイガモンだった。
「忍びは影となって動くもの。大事があるまでは、満信と拙者の関係は誰にも知られず動きたかったのでござる」
 バクモンが静かに口を開いた。
「ということは、その大事が起きたということですね」
 イガモンが頷いた。
「左様。満信に言われて、書簡を持った使者の後をつけていたのでござる。豪三郎の侍が書簡を預かった様子も見ていたでござる」
 イガモンが私達を見回した。
「豪三郎の侍は、書簡を鋭刃国に届けておらぬ」
「何ですって⁉」
 私は叫びそうになり、慌てて口に手を当てて押し殺した。
 父上が亡くなったという書簡が鋭刃国に届いていないということか。
 バクモンがイガモンの方へ身を乗り出す。
「何故、そのようなことを」
「豪三郎は戦で足を負傷し、手柄を立てられない状況にある。そこで、鱗竜国の守護役が亡くなったという情報を遅らせ、自分ができるだけ長く鱗竜国を守っていたいのでござる。他国を手助けしたならば、功績と言えるでござろう」
 私はあごに手を当てて、考えを巡らせる。
「つまり、私達がいつまで待っても、鋭刃国や叔父上達に父上の死が伝わらないということですね」
 バクモンがため息を吐く。
「そのとおりです。そして、日数が経つほど豪三郎のこの国での地位は高まっていくでしょう。何しろ、鱗竜家のデジモンは未熟な成長期。水神家の両親は戻ってこない。頼れるのは豪三郎だけなのですから」
 私は唇を噛んだ。このままではいけない。
「何とかして、書簡を取り返さなければ」
「それならば――っ」
 イガモンが急に姿を消した。
 直後、私の部屋のふすまが勢いよく開けられる。
「先程から妙な声が聞こえると思えば!」
 鋭刃国の侍が私達を見て大声を上げた。
「豪三郎様! 姫君の部屋に曲者です!」
「しまった!」
 満信が慌てて天井裏を這って逃げようとする。
 私は押し入れの前で手を広げて、侍の前に立ちはだかる。
 けれど、鍛えられた侍に肩をつかまれて、あっさり突き飛ばされた。
 侍が押し入れによじ登り、満信の足をつかんで引きずり出す。抵抗して激しい音を立てながら、満信が転がり落ちた。
 そうしている間に足音がして、豪三郎や他の侍達が駆けつけてきた。
 豪三郎は顔を真っ赤にしているが、それは酒のせいだけではない。
 目は見開かれて、怒りに燃えていた。
「これは姫君にバクモン殿、そして家臣の満信殿。これは一体どういうことかな?」
「こ、これは」
 私は頭が真っ白になって、言葉が出てこない。ただ、胸元のデジヴァイスを握りしめる。
 バクモンが私の前に出た。
「あなたに言われる筋合いはありません。今しがた、満信から聞きました。先代が亡くなったという書簡を、鋭刃国に届けていないと。我が国に対する反逆行為です」
 豪三郎は目を丸くした。が、すぐに髭の奥で笑みを浮かべる。
「それは間違いじゃ。大方、わしの侍が途中で野生のデジモンにでも襲われ、書簡の届くのが遅れているのじゃろう」
「何を言うか! 鱗竜国と鋭刃国を結ぶ街道に、侍の手に負えないデジモンが出るなど聞いたことが無い!」
 満信が怒鳴りつける。けれど、侍に床に組み伏せられ、腕を捻りあげられて苦悶の声を上げる。
 豪三郎があご髭を手でしごく。
「何事にも例外はつきものじゃ。そんな言いがかりをつけ、わしに隠れて密談をしているお主らこそ、鋭刃国に対する謀反を企てているのじゃろう」
「そ、そんなことはありません!」
 私は勇気を振り絞って声を上げた。
 精一杯背筋を伸ばして、豪三郎に近寄る。
「書簡が届いていないというのならば、改めて私が書簡を出します。そして、満信に鋭刃国まで届けさせます。異論がありますか」
 私が背伸びをしても、豪三郎の胸までしか届かない。
 そんな私を見下ろして、豪三郎はにやりと笑った。
「この屋敷はわしの侍が見張っておる。満信殿は屋敷から出しませんぞ」
「それなら」
 イガモンが、と言いそうになって、慌てて飲み込んだ。
 イガモンが一人で逃げた理由が分かった。
 豪三郎に、イガモンの存在を知られてはいけない。
 私は黙り込んでうつむく。
 豪三郎が侍を見回した。
「満信殿を縛って閉じ込めよ! 姫君とバクモンはこの部屋にいていただき、室内に見張りを置いておけ」
 侍が満信を縛り上げて、連れ出していく。
 満信と目が合う。満信は黙って天井に視線を向けた。
 イガモンを信じろ、ということか。
 部屋に残った私とバクモンの前に、豪三郎が立ちはだかる。
「デジヴァイスをお預かりいたす。万が一にも、バクモン殿に進化されては困るのでな」
 そう言って、私の首に下げたデジヴァイスを奪い取った。
 父上から受け継いだばかりのデジヴァイスを、こんな相手に渡すなんて。
「返して!」
 豪三郎にすがりつこうとする私の腕を、バクモンがつかむ。
「望、いけません!」
「さすがは千年を生きる鱗竜家のデジモン。勝てない相手を心得ていらっしゃる」
 豪三郎は豪快に笑って、私のデジヴァイスを懐にしまった。

 その日も悪夢を見た。
 デジヴァイスを失った私を、父上が、バクモンが、民が見下して陰口を言うという夢だ。
『望は私が託した国を守れないのか』
『次の守護役に望を選んだのは間違いでした』
『姫様は守護役として何の役にも立ちませんなあ』
 泣いて謝っても、耳をふさいでも声はやまない。
 不意に、その姿や声が、霞になった。
 気づくとバクモンがいて、霞をみんな吸い込んでいく。
 バクモンは私に優しい笑顔を向けてくれた。
「私はあんなひどいことは言いませんよ。望はこの国の守護役にふさわしい強さを持っています。豪三郎に面と向かって反論した姿は凛々しかったです」
 私はその笑顔がまぶしくて、うつむいた。
「でも、結局私は何もできていません」
 バクモンが私の手を取った。
「そんなことはありません。今頃、イガモンが鋭刃国に向かっているはず。満信が選んだデジモンならば、きっと書簡を取り返してくれるでしょう。私達も、できることをしましょう」
「私達に、できることなど残っているのですか?」
 私の問いに、バクモンは頷いた。
「まずは私のデジヴァイスを取り返しましょう。あれは鱗竜国の守護役の証。あの男が持っていて良いものではありません」
「しかし、豪三郎は話して聞くような相手ではありません。それに荒事となれば、ムシャモンに勝てるとは思えません」
 悩む私に対して、バクモンが身を乗り出した。
「私に考えがあります」

 寝床の中で目を開けると、傍らにいるバクモンと目が合った。
 バクモンが音も無く空中を飛び、ふすまの向こうにいる侍に近寄る。
 その口から靄を噴き出す。その色は青黒い。
 靄はふすまの隙間を抜けて、侍を取り巻く。
 侍は小さなうめき声を上げて、その場にへたりこんだ。
 私は寝床を抜け出して、ふすまをそっと開ける。
 侍はふすまに寄りかかって眠り込んでいた。その顔はゆがんでいて、悪い夢を見ているようだ。
「本当に寝てる」
 私のつぶやきに、バクモンは自慢げに胸を張った。
「これが私の技、《ナイトメアシンドローム》です。望の悪夢を何日も食べていましたから、まだまだ使えますよ」
 私の悪夢が元になっている、ということは、この侍は私の見た悪夢を見ているのだろうか。
 少し、恥ずかしい。
「さあ、他の侍に気づかれる前に行きますよ」
 バクモンが私を小突いて促した。
 物陰を利用して、豪三郎のいる部屋を目指す。
 侍はあちこちに立っているが、屋敷の構造なら私達の方がよく知っている。
 できるだけ侍のいる場所は避け、避けられない時はバクモンの《ナイトメアシンドローム》で眠らせて進む。
 じきに、豪三郎がいる部屋に辿り着いた。
 部屋の前の侍を眠らせた後、バクモンは《ナイトメアシンドローム》の靄を部屋の中に送り込んだ。
 しばらく待ってから、ふすまを開ける。
 豪三郎はいびきを掻いて眠っていた。《ナイトメアシンドローム》など必要なかったかもしれない、と拍子抜けするほどだ。
 その奥には、ムシャモンが壁に寄りかかって眠っている。
 私は豪三郎に近づいた。酒臭さに顔をしかめながら、懐に手を入れる。
 見慣れたデジヴァイスを引き出す。自分の手元に戻ってきたことに、ほっと息を吐く。
 そして顔を上げたところで、ムシャモンと目が合った。
「ひっ」
 私は悲鳴を上げて、庭へと後ずさる。バクモンが私をかばうように前に出た。
「《ナイトメアシンドローム》!」
 バクモンが青黒い靄を吐く。
 しかし、ムシャモンが刀を振ると、靄は散って消えた。
 バクモンの技が効いていない。
 ムシャモンが刀を向けると、バクモンと私の前に切っ先が突きつけられた。
 降参したい。
 でも、ここで降参したら、二度とデジヴァイスを取り返す機会は無い。
 それに――。
 私はデジヴァイスを握りしめた。
 足に力を入れて、ムシャモンをまっすぐに睨み据える。
「我が名は鱗竜望! 守護役の初めたる始祖帝の娘にして、プレシオモンと盟約を結び鱗竜家を興した末姫の血を引くものなり! この国を侵す者相手に、退くことはできない!」
 その言葉に応えて、デジヴァイスの中心から光があふれた。継承の儀の時と同じ、昼間のように明るい光だ。
 その光はバクモンの体に流れ込み、その体をまばゆく照らす。
 バクモンの体が急激に膨れ上がった。
 四つ足が伸び、地面を踏みしめる。
 その胴は私が見上げるほどの高さになり、首も長く伸びる。
 ムシャモンがその首に刀を振り下ろした。
 しかし、高い金属音と共に跳ね返される。
 バクモンと同じような金属の防具が、体の随所を守っている。
 しかし、デジヴァイスの光に照らされた体毛は湖のような深い青だ。
 そのデジモンは、首を高くもたげて、声高に名乗りを上げる。
「我が名はバルキモン! 鱗竜望と盟約を結びし者! 共にこの国を守ることを誓う者なり!」
 進化、した。
 私はバルキモンを見上げて呆然としていた。
 盟約を結んだデジモンは、人間の成長に応じてより強い姿に変わるという。
 それが、デジモンを受け継いで五日で起きるなんて。
 バルキモンが一歩踏み出した。額の仮面についた赤い宝石が光る。
「《サイキックチェーン》!」
 宝石から赤い鎖が飛び出した。
 鎖は生き物のように動き、ムシャモンの四肢を縛り上げる。
 バルキモンが膝を曲げて腰を落とした。
「望、乗って!」
「はい!」
 私はバルキモンの体毛をつかんで、背によじ登った。
 バルキモンの脇腹から、靄が噴き上がった。それが翼のような形を取る。
 バルキモンの体が空中へと浮かび上がった。屋敷が一望できる高さまで上がる。
 私は目を丸くして、バルキモンの首にしがみつく。
「バク……バルキモン、どうするつもりですか⁉」
「屋敷を占拠する方々に、お引越ししていただきます」
 眼下ではムシャモンが鎖を振りほどき、こちらを忌々しそうに睨みつけている。
 ようやく目覚めたのか、豪三郎も目をこすりながら庭に出てきた。
 バルキモンは大きく息を吸って、白い靄を吐きだした。
 それはバルキモンや屋敷を包み込み、視界が全く効かなくなる。
 あちこちで混乱した侍の大声が聞こえてくる。
「姫君がデジモンと逃げたぞ!」
「追え! 捕まえろ!」
 靄の中で、侍達の足音が響く。
 しばらくして、靄が晴れた時。
 ムシャモンや侍達は、湖の離れ小島にいた。草木もろくに生えていない、島と言うより岩と言った方がふさわしいような小さな島だ。
「どうしてこんなところにいるんだ⁉」
 混乱する豪三郎達を上空から見下ろして、バルキモンが笑った。
「私の《クラウドビジョン》の力です。幻覚を見せて、この島まで移動してもらいました」
 そう言われて、ムシャモンが湖へと歩を進める。
 が、一歩目で胸まで水に沈み込み、慌てて四つん這いになって陸に戻る。どうやら泳げないようだ。
 バルキモンが言葉を投げかける。
「《クラウドビジョン》が消えた以上、歩いて戻ることはできません。まあ、泳いで戻るのも難しいでしょうが」
 私は湖を見回した。
 この離れ小島は人間の生活圏から遠い。水中に野生のデジモン達の姿が見え隠れしている。人間やムシャモンが無傷で泳ぎ切ることはできないだろう。
 私は豪三郎達に向けて大声を上げた。
「鋭刃国が迎えをよこすまで、あなた方にはその島にいていただきます!」
 島から悲鳴と抗議の声が上がる。食べ物も無いこの島で寝起きするのは、数日でも辛いだろう。
「私は、あなた方が湖の上を歩いている時に《クラウドビジョン》を解くこともできたんですよ?」
 バルキモンがそう言うと、抗議は収まった。

 四日後、鋭刃国から別の侍達がやってきて、豪三郎達を引き取っていった。
 侍の代表が床板に頭を擦るほどに、深く頭を下げる。
「このたびは、我が国の貴族がご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。水神家のご夫妻もこの国に戻る手はずを整えております。一両日中にはお戻りになるでしょう」
 私は背筋を伸ばして答える。
「鋭刃豪三郎殿にはしかるべき処分をしてくださいますよう、お願いいたします。私達としても、この件で鋭刃国との関係にひびが入るのは避けたいと考えておりますので」
「ご当主の寛大なるお心、痛み入ります」
 侍は再度深く頭を下げて、去っていった。
 私の傍らに伏せているバルキモンが、嬉しそうに笑った。
「この数日でたくましく成長しましたね。私が代わりに話さなくても、十分当主としてやっていけます」
「ありがとうございます。でも、まだまだバルキモンには沢山教わりたいことがあります」
 微笑みあう私達とは対照的に、満信は背を丸くしてため息を吐いていた。
「満信は、何をそんなに落ち込んでいるのですか?」
 私の問いに、満信は申し訳なさそうな顔を向けてきた。
「私はほとんど姫様の役に立てませんでした」
「そのようなことはござらん」
 いつの間にかイガモンが、満信の横に座っている。
「満信はこのような事態に備えて、拙者を説得し、盟約を結んでいたでござる。それ故、拙者は鱗竜国のために情報を集め、書簡を取り返しに向かったのでござる」
「しかし、イガモンが逃げた時に私は逃げきれず、捕まってしまいました」
 そう言って満信が顔をしかめ、こぶしを握る。
 そんな満信の背を、イガモンが叩いた。
「ええい! そんなに言うのならば、拙者が厳しく忍びとしての修行をつけるでござる! さあ、立つでござる!」
「ああ、はい!」
 満信はイガモンに急かされながら、庭へと出ていく。
 私も立ち上がって、バルキモンに声をかける。
「私達も出かけましょう。村の見回りをする時間です」
 私とバルキモンは連れ立って、屋敷の門へと向かった。
 

おわり

 

 ―――――

 

普通のパートナー物だと応募作品の中で埋もれる気がして、違うパートナー制度を考えた結果こうなりました。

特別な血族だけがデジモンと関係性を結んで、それを代々継いでいくという形です。

最初は日本の人間がこの世界に迷い込む展開とか、血族ではない人間がデジモンを得てしまう展開とか考えてたんですが、これやり始めると10万字以内にオチまで持っていけないな、と思い、一国のミニマムな話になりました。あと、デジモンで和物やりたかった。

書いてて、つくづく自分の描写力が落ちているなと痛感しました……。スポーツで言うと筋力的な。

日々書くの大事ですね。そのためには疲れやすい体調を改善しないとな……やっぱり筋力か、運動なのか。

この小説は、以下の短編を増補改訂(具体的には「三」を追加)し、「デジモンノベルコンペティション」に応募したものです。

お正月特別編 おやつの恨み | 星流の二番目のたな (ameblo.jp)
全てはおやつのために | 星流の二番目のたな (ameblo.jp)
 

 ―――――



 目を覚ました瞬間、あたしは跳ね起きた。
 あたしは知らない河原に倒れてた。小石の上に寝てたせいで、体が痛い。絶対あざできてるやつじゃん、これぇ。
 唇を尖らせながら、右腕を見て。
「うぇ⁉」
 腕にバカでっかいピンクの籠手がついてるのに気づいた。二本のひづめもついている。それが左腕にも、右足にも左足にもっ⁉
 嫌な予感がして、川に駆け寄り水面をのぞく。
 そこには、バカみたいに大きなブタの着ぐるみを着たあたしが映っていた。
「な、なにこれ⁉ ダサい! くっそダサい!」
 どピンクだし、ブタの顔は傷だらけだし、何か変なお札も張り付いてるし⁉ しかもこの鎧、引っ張っても外せないんだけど!
 そこでやっと、あたしをこんな目に遭わせた奴を思い出す。
 勢いよく立ち上がって、空に向かって叫ぶ。
「オファニモンのバカぁっっ! 地上界に落とされた上にこのカッコ何なの⁉ あたしがオファニモンのプリンつまみ食いしたからって、そんな怒ることないじゃん! あたしだって、地上界イチおいしいデスメラモン亭のプリン食べたかったんだもん! 天界に届けられる分はオファニモンしか食べれないっていう時点でおかしいし! そんなに食い意地張ってると、その内ぷくぷくに太っちゃうんだから! オファニモンのケチ! でーべそーっ‼」
 って、言ってる間に空から何か降ってきた。あたしの背丈くらいある、先の尖ったクリスタル!
 あたしの周りに、それがザクザクと突き刺さる。あたしは「きをつけ」の姿勢になって、その中心でガタガタ震える。
『誰がでべそですって?』
 天から降ってくる雷のような声に、あたしは肩をすくめて答える。
「じょ、じょーだんですぅ。オファニモン様は、天界イチ美しい天使様ですぅ」
 短気天使め、むき出しのお腹冷やして腹痛になっちゃえっ! ……って言うのは心の中だけにする。
 咳払いの後、改めてオファニモンの穏やかな声が降ってくる。
『貴方の悪行をすすぐため、試練を与えます。修行の旅をしている僧に会い、その者が天界に至るのを手助けしなさい。その者と天界にたどり着いたあかつきには、貴方を元の姿に戻し、再び天界に住まわせましょう』
 うわ、めんどくさ。
 ってのは心の中にしまっておいて、あたしは無邪気な笑顔を空に向ける。
「えっと、そのお坊さんってなんて名前で、どこに行けば会えるんですかぁ?」
『川下の村を目指しなさい。会えばその者と分かるでしょう』
 なんて雑な説明だ。名前くらい教えろ。これも嫌がらせ……じゃない、修行だっていうのか。
 あたしは仕方なく、ダサい鎧をうるさく鳴らしながら、川下に向かって歩き出した。

 お、おなかすいた……。
 川沿いに歩いて三日。まだ村は見つからない。
 ずっと天界にいたあたしは、地上界のどれが食べられるのか分からない。色んな草や葉っぱを食べてみたけど、全部まずくて食べられない。
 川の水を飲んで飢えをごまかしていたけど、もうムリ。川がそうめんに、太陽が目玉焼きに見えてくる。
 と、行く先の方からいい匂いが漂ってきた。
 これは、私も知っている。肉リンゴの焼ける匂い!
 天界に捧げられる食べ物でも一番ポピュラーな食べ物。しかもこの匂いは、あたしの好きなショウガ焼き!
 がぜん気合いが入った。ふらふらしてた体の中から、エネルギーが炎のように沸きだす。
 鼻息荒く走り、滝に飛び込み、渦巻く川を泳いで下る。
 川のほとりにたき火と肉リンゴが見えた。
 川から這い上がり、体から水蒸気を上げながら歩み寄る。
 たき火の横にいた馬デジモンが、がばっと跳ね起きた。白くて額に角のあるデジモンだ。
「な、なんですか⁉」
「にぃくリィンゴぉぉぉ‼」
 あたしは馬デジモンを尻目に、こんがり焼けた肉リンゴをつかみ、かぶりついた。舌に、あまじょっぱい肉汁が広がる。
「やめてください! 僕達のお昼ごはんですよ⁉」
「うるさい!」
「ひゃん!」
 しがみついてくる馬デジモンを払いのける。今のあたしを止められる奴なんて誰も――。
「喝(かああああっつ)!」
 脳天に一撃。くらくらして、あたしは地面にぶっ倒れる。すぐさま、のどに何かを突き付けられた。
「よぉ馬、無事みたいだな」
 不良っぽい口調の声に、馬デジモンが答えるのが聞こえる。
「肉リンゴをほとんど食べられたの以外は、ですけどね……。あと、何度も言ってるんですけど馬じゃなくてユニモンって呼んでください」
「おう、馬」
 そんな会話を聞いているうちに、あたしの頭と視界もはっきりしてきた。
 あたしに長い武器を突き付けている猿デジモンがいる。顔いかついし、黒ジャケットなんか着てるし、いかにも不良って感じ。
「さて、この野生のブタどうするか」
 カチン。
「野生でもないしブタでもないからっ! あたしは元々プリティーな天使デジモンなの! ちょっとトチって天界から落とされて、こんなカッコになってるだけなの!」
「……さっき殴ったせいで頭がおかしくなったか」
 猿が哀れみの目であたしを見てくる。本当に純粋に正直に真実なんだけど⁉
 そこに、優しい声が聞こえてきた。
「ゴクウモン、離してあげなさい。施しも善行の一つですよ」
「へーへー、サンゾモン様のゆー通り」
 猿が不満そうにあたしから武器を離した。
 白い着物を着た人型デジモンが歩いてきた。金色の袈裟をたくし上げて、肉リンゴを大量に抱えてきている。
 パンパカパーン、パパパ、パンパカパーン!
 突然あたしの頭のブタからファンファーレが響いた。全員がビクッと反応する。
 ブタの鼻からポンっと筒状の紙が出てくる。広げてみると、オファニモンの字が書かれている。
『おめでとう、目の前にいるのが貴方の探していた僧です。その者が天界に至るのを手助けしなさい。
追伸:村に着く前に出会えたのは予想外でした。貴方の食欲も役に立つ時があるのですね』
 うわー、この追伸の文章、オファニモンの奴まだプリンのこと根に持ってるっぽい。
「どうかしたんですか?」
 馬に聞かれて、あたしはそうっと手を挙げる。
「あの、みなさんに確認したいんですけど、もしかして、天界目指してたりします?」
 猿と馬が微妙そうな顔で、僧が満面の笑みで頷く。
「天界には悟りを開くための経典があると聞いています。それを手に入れるために旅をしているのです」
 プリン食べられただけでキレる大天使様がいるところだけどね。
「俺は暴れた罰を帳消しにしてくれって言いに行きたいだけだけどな。このままだと罪重すぎて転生できないらしいから」
 猿が面倒くさそうに頭を掻く。どんだけ悪いことしたのよ、あんた。
「僕は迷子で行くところないのでなんとなくついてきてます」 
 馬はそう言ってあくびをした。
 ……あたしが言うのもなんだけど、見てて不安になる御一行様だわ。
 あたしは咳払いをして、改めて話す。
「そーゆーことなら、あたしが天界まで案内してあげる。さっきこの猿には言ったけど、あたし天界の天使だから☆」
「わー、うさんくせー」
 あたしのとっておきの笑顔に、猿が白けた目を向けてくる。馬はあたしを見て「おなかすいたなー」とつぶやいている。あたしは食べ物じゃない。
 そんなふたりと違って、僧はキラキラした笑顔でうんうんと頷いた。
「ありがとうございます! 貴方のような澄んだ目の素直な方なら信用できます!」
 僧があたしのひづめを手に取って、幸せそうに微笑む。ちょっと、天使のあたしでも不安になる純粋さだ。
 彼らを引率して天界に戻るのは簡単じゃなさそうだ。……でも、厳しい天界で暮らすより楽しいかも。
 あたしはこのヘンテコ御一行様に興味が湧きだしていた。


 二

 サンゾモン御一行様に会ってしばらく。まだ天界は見えない。
 道行く人に聞いたら、天界までは徒歩であと二か月もかかるらしい。
 まったくオファニモンってば、どんだけ遠くまで飛ばしてるのよ!
「ああ、早く元のプリティーな天使デジモンに戻って、思う存分天界のごちそうを食べたーい」
 あたしの心からの願いを、ゴクウモンがせせら笑った。
「一番食い意地張ってるお前が、『プリティーな天使デジモン』とは思えねえな」
「むうう、そんなこと言って、あたしが元の姿に戻った時に、美しさで目が潰れても知らないんだからね!」
 あたしは思いっきり舌を出してやった。
 あたし達の後ろをポクポク歩いているユニモンが、ため息をついた。
「二人とも、口喧嘩ばかりしていないで、まじめにサンゾモン様を警護してください」
 この発言には、あたしもゴクウモンも眉根を寄せてユニモンの顔を見る。
「いやお前こそ、盗賊に襲われると、すーぐ逃げるじゃねえか」
「そうそう、あたしに会った時も、ずっとビビってたじゃない」
 当のユニモンは、悪びれもせずに小首を傾げる。
「僕の役目は、戦うことじゃなくて、サンゾモン様を安全にお運びすることですから。普段はこうしてサンゾモン様を乗せて歩いて、戦いの時には安全な場所までお連れしてるんですよ」
 よくもまあ、もっともらしい言い訳ができること。
 あたしが更に言おうとすると、ユニモンの背でサンゾモンが和やかに口を開く。
「そこまでですよ、チョ・ハッカイモン。ユニモンはユニモンにできることを精一杯やっているのです。デジモンには誰しもそれぞれの役割があるということです」
 サンゾモンの「ザ・無邪気」な発言に、あたしは若干の不満を覚えながらも引き下がる。サンゾモンみたいに何でもプラスに考えられたら気楽だろうけどさあ。
 
 と、サンゾモンが背筋を伸ばし、道の先に目をこらした。
「皆さん、茶屋が見えてきました。一休みできそうですよ」
 その言葉に、全員の目が輝く。あたしはみたらし団子の匂いでもしないかと鼻をひくつかせる。
 微かな甘い匂いがする。でも、みたらしじゃない。これは、この少し焦げた甘ったるいカラメルの匂いは――。
「ま、まさか!」
 あたしはみんなを置いて全速力で駆けだした。坂を越え、茶屋の前で転げるように止まる。
 茶屋に架けられたのれんに書かれた屋号は、「デスメラモン亭」。
 あたしはその字に釘付けになった。
「一体どうしたんですか、急に」
 慌てて追いかけてきたユニモンが、息を上げながら聞いてくる。
 あたしは我に返って叫んだ。
「かの有名なデスメラモン亭よ! 地上界のみならず天界の天使達の心までとろかす、メラメラプリンのお店! 朝から夕方まで、店の前には行列ができる超有名店! その甘さたるや、当時プリティー天使だったあたしが、禁を犯してオファニモンに献上されたものを盗み食いしちゃったほどなの!」
「でも、その割に誰も並んでないぜ」
 ゴクウモンに言われて、辺りを見回す。店の戸は閉ざされ、客は誰もいない。
 店の戸には、張り紙があり、震えた字が書かれている。
『お客様へ
昨今、デジモンさらいを繰り返している悪党により、とうとう我が店の看板娘がさらわれてしまいました。
店主は意気消沈しており、とてもプリン作りができる状態ではありません。
そのため、看板娘が帰ってくるまで、お店は閉めさせていただきます。  店主』
「なんということだ……」
「なんということでしょう……」
 あたしとサンゾモンが同時につぶやく。あたしが振り向くと、サンゾモンの固い決意を秘めた目と目が合った。
「チョ・ハッカイモン、これは由々しき事態です!」
「そのとおりね、サンゾモン!」
「何としてもその看板娘さんを取り戻してあげなければ! (悲しむ店主のために!)」
「ええ、このままにしていい訳がないわ! (またプリンを作ってもらうために!)」
 ゴクウモンとユニモンが呆れた目を向けてくるが、見なかったことにする。
 あたしとサンゾモンは店の戸を勢いよく開けた。
「たのもー‼」
「デジモンさらいの話、詳しく聞かせてください‼」
 板の間に座り込み、うなだれていたデジモンが顔を上げた。鉄仮面に青いツンツン頭、体には何十にも巻き付いたチェーン。外見のヤバさはゴクウモンといい勝負だ。
 でも今はすっかり背中を丸めていて、覇気は全くない。
「あんた達は……? 店なら休みだが」
「我々は、デジモン助けをしながら旅をしている者です」
「娘さんは、あたし達が助けだします!」
 あたし達は板の間に勢いよく上がりこんで、正座した。
 店主は数秒呆然としていたけど、すがりつくようにあたし達の手を取った。
「た、頼む! 悪党のカッパは北の山に住みついていて、里に下りてきては美しいデジモンや可愛いデジモンをさらっていくんだ。先週、ついにうちの愛娘であるキャンドモンが、うっうっ」
 そこで涙が込み上げてきて、店主は仮面越しに目を拭った。
 あたし達は深く頷いた。
「キャンドモンちゃんも、さらわれたデジモン達も、必ず連れ戻します!」

 その夜。
 ゴクウモンがあたしに話しかけてくる。
「でも、悪党の住み家がどこか、詳しくは誰にも分からないと」
 うんうん。
「それで、可愛いデジモンを餌にして、その悪党をおびき出すと」
 そのとおり。あたしってばナイスアイディア。
「で、何でお前が一番目立つところに座ってるんだ?」
「あたしが、その餌である可愛いデジモンだからに決まってるでしょうが!」
 あたしの渾身の裏手ツッコミは、ぎりぎりのところで避けられた。ちっ。
 そろそろ真夜中。あたしは店の縁側にお行儀よく座って「大人しい可愛いデジモン」として振る舞っている。ゴクウモンは、目につかないよう戸の裏に隠れている。
 サンゾモンとユニモンは、荒事に巻き込まれないよう奥の家の一室に泊めてもらっている。
 さあ、来るなら来なさい、悪党め。あたしがメタメタのギッタンギッタンにして、さらったみんなの居場所を吐かせてやるんだから。

 突然、大きな物音がした。
 奥の家の方から。
 そして聞こえてくるサンゾモンの悲鳴。
 ま、まさか。
 あたしとゴクウモンは、それぞれの武器を手に奥の家へ走る。
 サンゾモンの部屋から庭へと、一体のデジモンが飛び出してきた。暗がりでも、丸い頭に長い手足をしているのが分かる。三日月型の槍を握る手にはのっぺりした水掻きがついている。
 そして、肩に気絶したサンゾモンをかついでいる。
 あたしとゴクウモンは、悪党カッパに武器を向けた。
「こらあんた! あたしを差し置いてサンゾモンを狙うなんてどういうつもりよ!」
「何だ? ブサイクに用はねえ! ハアッ!」
 悪党カッパが、槍を地面に突き立てた。
 そこから大量の水が噴き出し、あたし達に降り注ぐ。その重量に耐え切れず、膝をつく。
 悪党カッパはそのまま北の山へと跳び去った。
 すぐに水も降りやむ。あたしは震える膝を押さえながら立ち上がった。
「は、早く追わないと」
「ああ。でもその前に」
 ゴクウモンはサンゾモンのいた部屋に上がりこんだ。押入れの戸を勢いよく開ける。
 中にはユニモンがうずくまっていた。
「お前、ひとりだけ隠れてやがったな」
 ゴクウモンがどすの効いた声を出す。けど、ユニモンはぺろっと舌を出した。
「だって、あの悪党は強そうでしたから。僕が戦っても倒されるだけでしたよ。それに、ちゃんと成果はありました」
 ユニモンが押入れから出て、北の山に目を向ける。
「悪党がサンゾモン様に、『キレイな滝と虹の見える家に住ませてやる』って言ってるのを聞いたんですよ。だから、川をさかのぼって滝のある場所を探せば、住み家を見つけられます」
 それはすごい成果だ!
「たまにはやるじゃない!」
 あたしがユニモンの背を勢いよく叩く。ユニモンはゲホゲホと咳きこんだ。

 川をさかのぼっていくと、涼しげな水の流れ落ちる音が聞こえてきた。
 じきに視界が開けて、目の前に滝つぼが現れた。デスメラモン亭がすっぽり入るくらい大きな滝つぼだ。その上には、うっすらと虹がかかっている。あたしが住んでた天界ほどじゃないけど、まあまあキレイな場所だ。
 この辺りに悪党の住み家がありそうなもんだけど。辺りを見回しても、それらしい建物はない。
「っ、そこか!」
 突然ゴクウモンが、滝に如意(にょい)金(きん)箍(こ)棒(ぼう)を向けた。瞬時に棒が伸び、滝を突き破る。
 キンと金属音がして、滝から三日月型の槍が突き出し、棒を弾いた。
「なるほど、仲間達か」
 その声とともに、滝の中から悪党カッパが現れる。
 よく見れば、滝の向こうに洞穴が見える。滝の中に住んでるってわけね。悪党カッパらしい隠れ場所だわ。
 ゴクウモンが如意金箍棒の長さを戻し、先を悪党カッパに向ける。
「そのとーりだ。さあ、調子に乗るのもここまでだぜ」
 ゴクウモンの不敵な笑みに、悪党カッパが静かに武器を構える。
「じゃあ僕は、おふたりが戦ってる隙に、サンゾモン様達を助けに行きますね」
 ユニモンが体よく言って、あたし達から離れる。……まあ、ひとりで逃げないだけマシだと思っておこう。
 あたしも自分の武器――ハンマーの先に棘のついたクソダサ武器――を構える。
 先に動いたのは悪党カッパだった。
「《降妖杖(こうようじょう)・渦紋の陣(かもんのじん)》!」
 滝つぼの水が吹きあがり、渦を巻く。見上げんばかりの水の竜巻が、あたし達にのしかかってくる。
「へっ、同じ攻撃二度も食らうかよ!」
 ゴクウモンが如意金箍棒を地面に突き、天高く伸びあがって避ける。
 あたしはその場に残り、両手に握った武器を後ろに引く。ゆっくりと息を吐き、力を溜める。
「はああっ! 《強振砲舞乱(きょうしんホームラン)》っ ‼」
 全力で振った武器が、竜巻を真っ二つに切り裂いた。
 大量の水が、豪雨のように滝つぼへ降る。
 が、その向こうに悪党カッパの姿はなかった。
 どこへ、と目をやる暇もなく、目の前の滝つぼから悪党カッパが飛び出した。
「ふんっ!」
 水滴とともに、三日月槍を突いてくる。あたしはとっさに武器で受け止めた。それでも勢いを殺しきれず、体が押された。足の爪が地面をえぐる。
 やるじゃない、あたしの怪力相手にここまで押してくるなんて。
「でも、あたしをブサイク呼ばわりした罪は重いんだからね!」
 渾身の力を込めて、武器ごと体当たりをかます。悪党カッパはもんどりうって滝つぼに落ちた。
 その姿が見えたのは一瞬で、魚のように優雅に泳ぎ、水の中に消えた。
 直後、地面が揺れた。
 あたしの足元の地面が裂け、水が噴き出した。
 裂け目は見る間に広がって、あたしは足を滑らせた。頭まで水に飲みこまれる。
 必死にもがくけど、ブタの鎧が重くて思うように動けない。口からあぶくが漏れ出す。
 まずい。水の中は敵のテリトリーなのに!

 水の向こうから、ゴクウモンの声が聞こえた。
『ちょっと痛いけど我慢しろよ!』
 あ、なんか嫌な予感。
 揺れる水面の向こうで、ゴクウモンが動くのが見える。
『秘儀! 《超帯電雷光砲(ちょうたいでんらいこうほう)》!』
 天から、輝く雷の球が放たれた。
 それは水面に触れるとともに、水中へ一気に広がった。
「ひぎゃぎゃぎゃやああ‼」
 全身を駆け巡る電流に、あたしは悲鳴を上げた。
 電気が消えると同時に体の力が抜けて、あたしは水面に浮き上がる。
 それをゴクウモンがつかんで、地上に引き上げた。
 あたしは震える腕でゴクウモンをつかんだ。
「し、しぬかと思ったじゃない!」
「お前、前にうっかり食らった時も、数分後にはぴんぴんしてたじゃねえか」
 しれっと答えるゴクウモン。
「だからって、気軽に巻き込むんじゃないわよぉ!」
 乙女の抗議には耳を貸さず、ゴクウモンは水面をしげしげと眺めた。
「俺の攻撃は水棲デジモンに効果抜群だからな。さすがにカッパもただじゃ済まないだろ」
「確かに、大した攻撃だった」
 その言葉とともに、悪党カッパが水面に顔を出した。ゴクウモンとあたしの顔がこわばる。
「おい嘘だろ」
 ゴクウモンが思わずこぼした。
 悪党カッパが地上に上がってくる。その動きに、さっきまでの精細はない。それでも、武器を落とすことなく、こちらを注意深く見る動きに隙はない。
 あたしは改めて身構えた。
「ただの悪党カッパじゃないわよ、こいつ」
「それはこちらのせりふだ。お主達こそ、ただ者ではあるまい」
 悪党カッパは背筋を伸ばし、正々堂々とこちらに問いかけてきた。

「ゴクウモンさーん! チョ・ハッカイモンさーん! みんなを助けましたよ!」
 間延びした声がして、緊迫が薄れた。
 見ると、滝をくぐってユニモンが出てきた。その後ろからは、サンゾモンやさらわれたデジモン達。
 サンゾモンが嬉しそうにあたし達に手を振った。
「貴方方が助けてくれると信じていました!」
 その笑顔に、あたしはほっとして手を振り返し、ゴクウモンは気恥ずかしそうにそっぽを向いた。
 一方で、悪党カッパは怪訝そうにあたし達とサンゾモン達を見比べた。
「お主達、悪党の仲間ではなかったのか」
「はあ?」
 あたしはきょとんとして聞き返した。
「あんたこそ、サンゾモン達をさらった悪党カッパでしょ?」
 あたしの言葉に、悪党カッパは、ああ、とひとり納得したような声を出した。
「もしや、あの岩陰に倒れている奴のことか」
 指さす方を見れば、岩陰で気絶している一体のカッパ。もしかして……これが悪党カッパ(真)?
 見比べてみると、悪党カッパ(違)は緑で、悪党カッパ(真)は青。でもパッと見はどっちもカッパだし、武器もそっくりだ。暗がりで見たんじゃ区別がつかないだろう。
 悪党カッパ(違)が口を開く。
「私は旅の途中、デジモンさらいがいるという噂を聞きつけ、ここを探し当てたのだ。それを討伐したところにお主達が来たので、てっきりデジモンさらいの仲間かと思ってしまった。すまない」
 丁寧に頭を下げる悪党カッパ(違)に、あたしはぶんぶんと手を振った。
「い、いやこっちこそ話を聞かずに攻撃しちゃってごめん!」
 サンゾモンが、嬉しそうに両手を合わせる。
「では、貴方も我々を助けるために来てくださったんですね。私のお供をふたりも相手取るとは、名のある方とお見受けいたします」
 その言葉に、悪党カッパ(違)は少し困ったように頭を掻いた。
「今の私はただのシャウジンモンだ。元は力あるデジモンだったのだが、故あって呪いを受け、今の姿に退化してしまった。その呪いを解くために、天界を目指しているところなのだ」
「じゃあ、あんたも俺達と行き先は同じってわけだ」
 ゴクウモンがにっと笑った。
「なあ、俺達と一緒に行かないか? あんたと修行すれば、俺はもっと強くなれる気がする」
「確かに、一緒に来てくれれば頼もしいわね!」
 あたしも期待の目で悪党カッパ(違)改めシャウジンモンを見る。
 ユニモンがサンゾモンを見上げる。サンゾモンは無邪気な笑顔でうんうんと頷いている。
 あたし達を見回して、シャウジンモンは「了承した」と答えた。
「旅は道連れという。天界までは長い。私も共に行こう」

 悪党を捕まえ、さらわれた里のデジモン達もみんな戻ってきた。
 里のデジモン達は大喜び。特にデスメラモン亭の店主は店を貸し切りにしてくれて、プリンづくりの腕を振るってくれることになった。
 厨房から漂ってくるカラメルソースの香りに、あたしはうっとりとする。
 一方、あたしの前に座っているシャウジンモンは、顔をしかめている。
「ずいぶん甘ったるい匂いだな」
「もしかして甘い物苦手なんですか?」
 ユニモンに聞かれて、シャウジンモンは仏頂面で頷く。
「えー、こんな世の中で最っ高においしいものが苦手だなんてもったいない!」
 あたしは唇を尖らせた。でも、こんな強いデジモンに苦手なものがあるのは、ちょっと可愛い。
 厨房からキャンドモンが出てきた。
「ハイお待ち! 当店名物、メラメラプリンだよ!」
 お盆に乗せたプリンが、手早くそれぞれの目の前に配られる。
 あたしはすぐさまスプーンを手に取り、プリンをすくいあげる。
「いっただっきまーす‼」
 プリンがあたしの口に入る、その瞬間。
 シュッと音がして、視界が真っ暗になった。
「え?」
 驚いてスプーンを下ろす。
 シュッと視界が開ける。
 スプーンを上げる。
 視界が暗くなる。
 スプーンを下ろす。
 視界が開ける。
 ふと見ると、あたしの太ももに貼ってあるお札が光っている。何か書いてある。
『デスメラモン亭のプリンを食べようとすると鎧の口が閉まって食べられなくなる呪い』
「オ、オファニモンめぇぇぇぇっっ‼ なんつー具体的な呪いをぉぉぉっ‼」
 あたしの絶叫が店内に響き渡る。
 お札の文字を見たユニモンが、心底同情する目を向けた。
「ご愁傷様です。あなたのプリンは、代わりに僕が食べておきますね」
「ああっ、だめ、プリン!」
 プリンのお皿にすがりつこうとするけど、シュッと視界が閉じて見えなくなった。
 あたしはしくしくと泣き、机に突っ伏す。 
 ああ、早く元の姿に戻ってプリンが食べたい!


 三

 デスメラモン亭での悲しい哀しいプリンとのお別れから二か月ちょっと。
 いよいよ懐かしの天界にたどり着いた!
 美しき白亜の神殿! 清らかな空気!
 私は大きく深呼吸して、我が家の匂いに浸る。

「えっと、ご案内してもよろしいでしょうか」
 気づくと、門番のエンジェモンが戸惑ったようにこっちを見ている。しまった、つい自分の世界に入り込んでいた。
 あたしは慌ててお上品な笑顔を向ける。
「も、もちろんですぅ」
 エンジェモンが、長い白亜の廊下を先導する。
 サンゾモンが背筋を伸ばして、深呼吸した。
「いよいよ、オファニモン様にお目通りが叶うのですね……緊張してきました」
 横を歩くユニモンが、サンゾモンを頭の角で小突く。
「サンゾモン様なら大丈夫ですよ。ゴクウモンさんやチョ・ハッカイモンさんと違って、礼儀正しいですから」
「おい、聞こえてるぞ、馬」
 ゴクウモンがユニモンの尻尾をつかむ。
 あたしも手のひづめでユニモンのお尻をつつく。
「あたし、ジモティの天使なんだけど、そこんとこ分かってる?」
 最後尾からため息が聞こえた。シャウジンモンだ。
「お前達、こんなところで騒ぐな。喧嘩の声がオファニモンに聞こえたら、赦しをもらえなくなるぞ」
「ちっ」
「喧嘩してるつもりじゃ……」
 あたしとゴクウモンは渋々、ユニモンに絡むのをやめる。
 先頭に立つエンジェモンが咳払いして、立ち止まった。
 目の前には、両開きの黄金の扉がそびえ立っている。
「この謁見の間で、オファニモン様がお待ちです」
 エンジェモンが扉を引いた。

 中は広間になっていて、細かな彫りが施された白亜の柱が並んでいる。
 その奥、一段上がったところに、オファニモンが立っていた。
 そして、広間の中心に見覚えのある悪党カッパ(真)がいた。
「って、何であんたがここにいるのよ⁉」
 あたしの爆速ツッコミに、オファニモンと悪党カッパが目線を向ける。
「良いところに来ました! このサゴモンという者が、経典を盗みに来たのです!」
 オファニモンが悪党カッパを指さす。もう一方の手はかばうように広げられていて、その後ろには経机に乗った巻物の山がある。
 悪党カッパはオファニモンとあたし達を見比べて、口を尖らせ、両手を挙げた。
「こりゃ参った。天界イチ美しい天使サマだけじゃなく、べっぴんさんまで来たんじゃ勝ち目ないわ」
「なんてこと、世界一美しい天使だなんて」
「あらやだ、まぶしくて目が潰れそうなべっぴんさんだなんて」
 悪党カッパの言葉に、オファニモンとあたしが頬を赤くする。
「いまだ! 《降妖杖(こうようじょう)・滝の陣(たきのじん)》!」
 悪党カッパが杖を床に叩きつけた。
 床が割れ、激流が噴き出す。広間はみるみるうちに渦巻く水に埋もれた。あたし達は水に足を取られて身動きが取れない。
「経典が!」
 オファニモンが伸ばす手の向こうへ、経典が流れていく。
 それを手に取り、悪党カッパが悪い笑みを浮かべた。
「こいつはもらっていくぜ!」
 そう言って壁をかち割り、悪党カッパは外に飛び出していった。
「あー、チョ・ハッカイモン!」
 オファニモンに名前を呼ばれて、あたしは視線を向けた。
 オファニモンは頭までずぶ濡れになり、乱れた金髪から水が滴っている。
それでもどうにか立ち上がり、髪を掻き上げ、背を伸ばした。
「貴方とお仲間達に、最後の試練を与えます。あの不埒者を退治し、奪われた経典を取り返してくるのです。さすれば、貴方達全員の願いを聞き届けましょう」
「いや、オファニモンがあのカッパに隙を見せたのが悪いんでしょ⁉」
「貴方だって、一緒になって顔を赤くしてたじゃないですか! あと、『べっぴんさん』と言われたのは貴方じゃなくてサンゾモンだと思います!」
「こんな見た目にしたのはオファニモンでしょ⁉ 元のあたしは目が潰れそうなくらいプリティーな」
「はいはい、そこまでです」
 あたし達の言い争いに、ユニモンが割って入った。
 サンゾモンがあたしの肩に手を置く。
「ゴクウモンとシャウジンモンが悪党を追っていきました。今は、経典を悪用されないよう止めるのが先決です」
「んもう! 分かったわよ!」
 あたしは膨れっ面をしながら、壊れた壁の外へ駆け出した。

 ゴクウモン達が派手な音を立てて戦っているおかげで、行き先はすぐに分かった。
 来た道を駆け戻り、天界の入口である川に向かう。地上界からの貢物が届けられる場所でもあり、橋の向こうにある倉庫には、今日の貢物が収められているはずだ。
 天界側の岸に、ゴクウモンがいた。
「遅いぞ」
 あたしに一瞥くれて、ゴクウモンは川に目を戻す。
 そこには、水に腰まで浸かったシャウジンモンと悪党カッパが向かい合っていた。
「《降妖杖(こうようじょう)・渦紋の陣(かもんのじん)》!」
「《降妖杖(こうようじょう)・渦紋の陣(かもんのじん)》!」
 ふたりの周りで水が噴き上がり、激突する。その勢いは互角だ。
 けど、悪党カッパの懐で何かが光った。
 途端に悪党カッパの技の勢いが増す。シャウジンモンが水圧に押し潰されていく。
「あいつ、経典の力を使ってる!」
 あたしの言葉に、ゴクウモンが舌打ちした。
 ゴクウモンが欄干によじ登る。
「出でよ筋斗雲!」
 見る間にゴクウモンの足元に白雲が集まり、ゴクウモンが飛び乗る。
 その勢いのまま川に降り、シャウジンモンを片手で引っ掴んだ。
 もう一方の手で如意金箍棒を悪党カッパに向け、雷の球を乱射する。
 悪党カッパと川が雷に包まれる。橋の上にいるあたしでさえ、肌がピリつくほどだ。
 だけど、経典の力に包まれた悪党カッパは不敵に笑って杖を振った。
「《降妖杖(こうようじょう)・渦紋の陣(かもんのじん)》!」
 雷に包まれた奔流が、空を飛ぶゴクウモン達を襲う。ゴクウモン達はたまらずに空高くへと避難する。
 まずい、ただでさえ水場で悪党カッパに有利なのに、経典の力まで使われたらキンカクモンに金棒だ。
 なんとか悪党カッパを水から出すか、経典を手放させるかしないと。
 あたしにできること、何かないか何かないか。
「あ」
 一つだけ、とってもいい作戦を思いついた。
 でも絶対痛い。
 でもやるっきゃない!
 あたしは自分の武器を地面に突き立て、その柄にまたがった。
「発射ぁ!」
 武器のブースターを全開にして、あたしは飛んだ!
 水を蹴散らしながら川面を切り、一直線に悪党カッパの元へ!
「何⁉」
 驚く悪党カッパに抱きついて、そのまま反対岸まで飛んだ。
 豚の石頭が倉庫の壁を突き破り、あたし達は揃って貢物の中に突っ込んだ。
 あたしから逃れようと、悪党カッパが身動きする。
「水から出したところで、お前みたいなブサイク一匹、この経典さえあれば」
「ブサイクって言うなあ!」
 あたしの全身から、怒りの炎が噴き出した。それはあたしもろとも、悪党カッパを焼く炎。
「あ、あちい! おいらごと経典を焼く気か!」
 逃げようとする悪党カッパに、あたしは全力でしがみつく。悪党カッパの懐から、紙の焼ける臭いがする。
 あたしも自分の体が焼けて痛い。
 でも。
「経典を焼き尽くすまでは、絶対に離さないいいい‼」
 あたしの発する炎は勢いを増して、倉庫中を火の海に変えた。

 気づくと、そこは布団の上だった。
「目を覚まされたのですね!」
 サンゾモンが嬉しそうに顔をのぞきこんできた。
「あれだけの大技を出したのに、もう目が覚めるとは。さすがの回復力ですね」
 横でユニモンが感心している。
 あたしは体を起こして、周りを見回す。救護室のようで、ゴクウモンも、シャウジンモンもいる。
「お前のおかげで、経典は消し炭。悪党カッパは捕まったよ」
 ゴクウモンが説明してくれた。
そっか、あたしの捨て身の作戦、上手くいったんだ。肩の力が抜ける。
 シャウジンモンが立ち上がり、あたしにまっすぐに頭を下げる。
「水場での戦いならば同族に負けることはないと過信していたが、お主の機転がなければ賊を取り逃がすところだった。感謝する」
「そんなに丁寧にお礼を言われたら、照れるって」
 あたしは頬を緩ませて、体をくねらせる。
 扉を開けて、オファニモンが入ってきた。ずぶ濡れだった鎧は磨き上げられて、すっかり威厳を取り戻している。
 オファニモンは私を見下ろして、優しい笑顔を向けた。
「チョ・ハッカイモン、よくやってくれました。貴方の自己を犠牲にしてでも経典を悪用から守った精神、感激しました。修行をさせたかいがあったというものです」
「あ、はい……」
 あちこちから褒められて、あたしもこそばゆい。
 オファニモンが言葉を続ける。
「約束したとおり、貴方にかけた呪いは解いて差し上げます。まずは何よりこれですね」
 そう言って、あたしの太ももに触れる。
 そこに貼られていた『デスメラモン亭のプリンを食べようとすると鎧の口が閉まって食べられなくなる呪い』のお札が光になって消えた。
 と、いうことは。
「貴方の頑張りに応えて、デスメラモン亭のメラメラプリンを与えます。ちょうど貢物として届いていますので、今持ってこさせています」
「オファニモン様! ありがとうございます!」
 感激の涙で視界がかすむ。なんだかんだ言って、天界イチお優しい天使様だ!
 これで、これでやっとデスメラモン亭のプリンが食べられる!
 ドアをノックする音がした。あたしはすぐさま目を向ける。
「プリン!」
 あたしの声に、ドアを開けたエンジェモンがビクッとした。その表情は冴えない。
 エンジェモンが、恐る恐るオファニモンに目を向ける。
「オファニモン様、デスメラモン亭のメラメラプリンなのですが……チョ・ハッカイモン様が倉庫を丸焼きにしてしまったので、一緒に消し炭になってしまいまして」
「えっ」
「はあ⁉」
 オファニモンの絶句と、あたしの絶叫が被った。
 あたしは布団から転がり出て、エンジェモンにすがりつく。
「じゃあ、あたしのプリンはどうなるの⁉」
「つ、次に貢がれるのが半年後の予定なので、それまでお待ちいただくことになります」
「そんなあ……」
 あたしは床にへたりこんだ。視界がかすんでいるのは感激の涙のせいじゃない、悲しみと空腹のせいだ!
 サンゾモンが優しくあたしの背中をさする。
「落ち着いてください。半年待てないのなら、デスメラモン亭まで食べに行けば良いではないですか」
「サンゾモン様、天界からデスメラモン亭まで、二か月はかかりますよ」
 ユニモンがそっと指摘する。
「ぐずっ、あたしは、今すぐ食べたいのに‼」
 サンゾモンに背中をさすられながら泣きじゃくる。
「あたしのプリンー‼」

おわり

池袋サンシャインシティで開催のデジモンアドベンチャー展に行ってきました!
毎度おなじみの友人と2人で行ってきました。
池袋駅からの道中、あちこちにポスターがあって、早くもテンション上がります!

 

 

 
会場に入るとすぐに、展示のロゴと集合絵が!

 
更に角を曲がると、今回のメインである無印キャラの大きなパネルがお出迎え。

 
その向かいにはアグモンの立像が。

なんとこのアグモン、ご挨拶もしてくれました!(声が出るとは思わず、友人が飛びのく勢いで驚いていました)
「もうじき案内があると思うから待っててね」と言っていたので、開催直後はここに待機列を作っていたんだろうな、と思いました。
星流は1週間ほどした平日に行ったので、スムーズに入れました!
それでも展示物を見るのに多少待つくらいには混んでいました。
 
展示物の写真を挙げているとキリがないので、星流が特にテンション上がったのを載せていきます。
 
入ってすぐに、各キャラVer.のデジヴァイスの玩具が飾られていました。
それぞれケースに入っていて、壁に設置されていました。

 
展示の前半はデジモンアドベンチャーのストーリーに沿って展開していて、各所に立体物やパネルが置かれていて臨場感ありました。

 
立体物と言えば、光子郎のパイナップルのパソコンも立体物でありました。
光子郎好きの友人は嬉々として撮りまくっていました(笑)

 
そして、パソコンの上にはデジモンアナライザーの画像が盛りだくさん。
物語の軌跡を感じられていいですね。

 
太一の家や周辺環境の地図もありました。
太一の家って、結構フジテレビ付近だったんですね。

 
パネルの中には、手書きコメントが書き足されているものもありました。

 
星流はこの手書きコメントを見てにやにやしていました。
渋谷系デジモン出てましたねー、フロンティアBDBOXのドラマCD。
 
ピンクのうんちは、積極的に入れたわけじゃなかったんですね。
何かデジモン作品の割と定番のイメージでいました(笑)

 
ピンクのうんちを持ってガーベモンになり切れるフォトスポット(笑)

 
こちらは肩に立って写真が撮れるオメガモン立像。

こんな感じで、フォトスポットがいくつもありました。

唯一星流が「惜しいなー」と思ってしまったのは、シェルモンの海岸にあった電話ボックスのフォトスポットでしたね。

電話ボックスの外観(アクリルパネル)はあったんですけど、肝心の公衆電話が無くて……。ちょっと惜しかったです。

 

当時のCDのパッケージも展示されていました。
この小さめのCDのパッケージ、星流の世代(1990年生まれ)的にめっちゃ懐かしいですね。
デジモンじゃないけど、この形のCD持ってたなー。
 
「keep on」の表情一覧もありました。ころころ変わるイメージありますけど、こんなにあったんですね。
 
後半には、他のデジモンアニメシリーズが展示されていました。
02映画の台本に、ビギニングのも並んでて新旧コラボ感があってほっこり。
 
当然のようにデジモンフロンティアだけ撮影枚数が増える星流(笑)
 
当時のデジヴァイスに玩具に台本! 最高ですね!
 
こんな感じで、各作品の1話や印象的なシーンのページが開かれていました。
台本ってこういう時でないと見る機会がないから貴重ですよね。修正の後があるのも良き。

これが、デジフェス2022でキャストの皆さんが語っていた手書き台本か……!

落書きされて輝一が輝二にされていたやつか!

 

設定絵見るのも楽しいですね!


ラフイラストではルーチェモンと対峙しているのがグレイモンとガルルモンだったんですね。
更に推しのアップも撮る星流←
 
そして数歩行って、アプモンでも同じことを繰り返す星流(笑)
 
 
台本の文字が活字になっても、修正は手書きなんですね。
 
設定絵はキャラの色んな表情がまとめて見られるのもいいですよね。

 
絆の台本の表紙で、デジモン達がお正月&映画仕様になっているのを発見しました!
可愛い!
 
各シリーズの展示の後には、なんと各作品の進化シーンをまとめた動画が流れていました。
しかも横6×縦5=30画面が同時に流れるという豪華ぶり!
内訳としては無印4、024、テイマーズ2、フロンティア2、セイバーズ2、クロウォ2、時駆け2、アプモン4、アドコロ4、ゴスゲ3という構成でした。
写真撮影禁止だったので写真に残せなかったのですが、星流と友人はここで一番テンションが上がりました!
なにしろ、2,30分も画面の前にいましたからね(笑)
(あ、ちゃんと他の人の邪魔にならないようにしてましたよ!)
進化バンクはそれだけでも見てて楽しいのに、それが30画面で同時展開されるから、目が追いつきません。
一つ一つに注目して見ようとしても、別の画面で熱い進化バンクが流れていると視線が逸れてしまう……。嬉しい悲鳴です。
進化バンクと言いつつ、テイマーズではベルゼブモンブラストモードの覚醒シーンも入っていてにやりとしました。
 
ようやく満足がいき、デジモンコミックの展示のコーナーへ。
入場者特典で紙版のコミックももらいましたし、今後の展開楽しみですね!
 
最後にショップがあり、デジモンカードも売っていないながら展示されていました。
 
そして、友人と一緒にグッズを買いあさり、星流の展示見学は終了!
星流達は2時間半くらいで全部を見終わりました。
我々は進化バンク前で30分費やしたので、スムーズに見たら約2時間だと思います(笑)
 
ここからは購入グッズと、入場者特典の紹介です。
まずはアクリルキーホルダー付きカラビナ。
拓也&アグニモンと、ハル&ガッチモンを購入。
 
アクリルキーホルダーの方も、同じ組み合わせで買いました!
 
それから、集合絵のクリアファイル。
 
CDも結構充実していました。
実は持っていなかった、フロンティアのCDドラマをゲットできました!
 
それから、ランダムの缶バッジ。
星流は5枚買いました。
1枚はヤマト&ガブモンだったんですが、当日中に他の方と交換していただき、拓也&アグニモンをゲットできました!
友達は51種ランダムのマグネットにも挑戦していました。
星流は、さすがに51種ランダムは当たる気がしなさすぎて手が出ませんでした……。
 
そして、入場者特典。
デジモンカードは、どちらになるかランダムでしたが、星流がガブモン、友人がアグモンをもらいました。
広告のカードも4枚同封されていました。
それから、デジモンコミックの紙版ももらいました。
帰り道の電車内で一気読みしてしまいましたー。
 
以上、これは今年デジフェスが開催されなかったのも無理ないな……と思えるくらい盛りだくさんの展示でした。
とても楽しい時間を過ごせました!
ありがとうございました!
すっかり遅くなってしまいましたが、レポートを書いていきます!
 
会場はユナイテッドシネマ アクアシティお台場。

個人的には、2018年のデジモン感謝祭以来。久しぶりに行ってきました!

そして案の定迷子になりました!(笑)

おかしいなあ、同じビル内のフードコートで夕飯食べて、時間に余裕を持って動いてたつもりだったんですけど、ビル内で迷った……。(安定の方向音痴)

15分ほど前にやっと会場に到着。

映画を見る長丁場ということもあり、売店にはファンの長蛇の列ができていました。

迷ったのですが、さすがに飲み物なしで舞台挨拶+映画2本はしんどいので、頑張って並んで買いました。

そうこうしているうちに、開演の18時30分に。

急ぎ足で会場に向かうと、ちょうどAiMさんの「スタンド・バイ・ミー ~ひと夏の冒険~」が始まったところでした。

配信のアーカイブを見返したところ、最初にアグモンの挨拶があったんですね。生で聞きたかった!

 

 

デジモンアニメ25周年記念 ~8月1日お台場大集合~ 特別配信 (youtube.com)※期間限定の公式配信

「デジモン映画2本立てリバイバル先行上映〜お台場大集合ver.~」舞台あいさつ (youtube.com)※東京ニュース通信社のニュース動画

 

AiMさんの歌の後は、坂本千夏さん、松井 伸太郎さん、関 弘美さんも登壇されてトークショーへ。

坂本さんが小さいミミの帽子を自作していて可愛かったですね!

関さんが話してましたが、「Stand by me」って本当に映画の『Stand by me』が発祥なんですね。

あと、松井さんが02の頃にやっていたサンリオピューロランドのコラボレースの注意喚起画面で出演していたとのこと。会場でもちらほら手が挙がっていて驚きました。

星流は当時ド田舎のチビッ子だったから全然分かんない(泣)

 

それから、デジモンアドベンチャー展の紹介もされていました。

入場者にはチラシも配られていました!

星流も近々行く予定なので、とっても楽しみです!

福井県の関さんの実家の自宅から出てきた貴重資料、気になる……。

 

ヤマトのアルバムの発売が発表されたときは、会場から驚き兼笑いと拍手が起きていました。

何ででしょうね、ヤマトの歌の話が出てくるとちょっと笑っちゃうの。

風間勇刀さんの楽曲ということで、楽しみですね。

 

25周年PVも大画面で上映されました!

新宿のアルタで先行公開したのを見た方も多かったようですね。(星流は仕事でムリでした)

子ども達とデジモンの出会いのシーンが足されてるの良かったですね! 星流は見ながらちょっと混乱しました。見たような気がするのに、見たことがない不思議なシーンです。

あと、初代に出てきたデジモン全部入ってるとか……すごいですね。

あ、トークの最中に19時に映像が流れだしたのはミスっぽいです(笑)映画が19時に設定されていて流れ出しちゃったのかな?

 

あと、15周年の際にもお台場でイベントがあったとのこと。

星流はちゃんと聞き取れなくて、てっきり2018年のイベントのことかと思って手を挙げてしまいました(汗)

で、そこから和田さんの話題になり、まさかの「Butter-Fly」のTVサイズの合唱という話に!

この日はずっと座ってトークを聞いたり映画を見たりするだけだと思っていたので、サプライズを受けました。

いやもちろん歌いますとも!

で、ここでまさかの映像は流れるけど音声が流れないというトラブルが!

映像でだいたい入りは分かるけど、歌う?どうする!?って焦りましたね(笑)

音声が入ってからは、みんな手拍子しながら大声で歌ってました。

(ちなみに配信で会場が映った時に、星流も歌ってるの映ってます。すごく小さいので、多分星流の顔分かってる方でも見つけられないでしょうけど(笑))

 

最後のあいさつでは、AiMさんが実際にハワイで「ハワイはいいわー!」と言えたとの話などがありました。

そしてトークショーは終了して皆さん降壇されました。

 

その後は映画の上映に。

応援上映ではなかったので基本皆さん静かだったんですが、目立った反応をメモしておきますね。

 『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』

・光子郎がウーロン茶を飲むたびに笑いが起きる

・島根のパソコンの下りで爆笑

・ミミの「ハワイはいいわー!」でちょっと漏れる笑い

 

『デジモンアドベンチャー02 前編 デジモンハリケーン上陸!!/後編 超絶進化!!黄金のデジメンタル』 

・こちらはしっとりした作品なのもあって割と静か

・個人的には、グミモンの「暑い暑い暑い暑い」に心底共感したり(東京の夏暑すぎ)、ディグモンの苦労した割に地味な登場に吹き出したりしていました。

 

上映後は普通の映画と同じように、流れ解散でした。

 

入場者特典のフィルムブックマーカーは、ウォーゲームのヤマトのシーンを引きました!

フィルム風で色味が淡いので、上手く撮れない(汗)

 

ということで、ざっくりですが先行上映のレポートでした!

楽しかったです!

開催していただきありがとうございました!

本日6/22店頭発売開始の、eeo store池袋本店のデジモンフロンティアグッズを買いに行ってきました!

まずは店内写真をどうぞ。

(ちょうど純平の上あたりにライトがあって、これが写真の限界でした)

池袋ロフトのパジャマverデジフェス2022の時も思いましたが、フロは劇中でほとんど衣装が変わらなかったので、グッズで色んな服装が見られるの本当に嬉しいです。

ちょうど暑くなってきた時期に、マリン衣装がよく合いますね。

それに、今回は書き下ろし柄とGraffArt柄の2種類があるので2度おいしい。

物販として、全てのランダムグッズにコンプリートボックスがあるのも本当に嬉しい! グッズ個数分の額を払ってきっちりコンプリートできると分かっていると、安心して買えます。(と、思いながらせっせとコンプリートボックスを買い物かごに入れる星流)

 

というわけで、今回星流が購入したグッズがこちら!

まずはA3クリアポスター!

背景が透き通っているのが分かるでしょうか?

後ろにどんな柄を置くかでイメージを変えられそうで、面白いデザインです。

 

続いてはGraffArt柄のデカキャラミラー!

 

これまで鏡のグッズは買っていなかったのですが、今回買いました。

いや、星流は正直あんまり美容興味ないのですが、先日ファンデーションケースの鏡がぶっ壊れまして(汗)さすがに持ち歩きの鏡がないのは困るかな、という理由の元、買っちゃいました。

 

続いては、(嬉々として買った)コンプリートボックス!

GraffArtのアクリルぷちスタンドを買いました。

ぷちスタンドとデフォルメキャラのサイズ感の相性がいいですね!

実物を目の前にすると、本当にちっこくて可愛いです。

 

コンプリートボックスもう一丁!

書き下ろし柄の缶バッジ!

おそろいのマリン柄と思いきや、輝二と友樹だけキャプテンっぽい帽子なんですよね。

この二人が被るの割と珍しくて新鮮。そして二人とも似合ってる!

みんなが帽子選びをしてる様子見たい。

 

最後に、書き下ろし柄のアクリルスタンド!

友樹は友達に頼まれた分なので、後日引き渡します。

で、今これを読んでいる人、

「あーやっぱり星流は輝一が好きなのね。だから一人だけアクリルスタンド買ったのね」

って思ったでしょう!

ちょっと言い訳させてください!

このショップ、2200円ごとにポストカード1枚がランダムでもらえるんですよ。

ポストカード、全部で8種なんですよ。

レジに行く前に計算したら、8枚分に1000円ちょっと足りない値段だったんですよ。

アクリルスタンド、1815円なんですよ。

輝一のアクリルスタンド買うと、お値段がちょうど良かったんです。

ただそれだけです、ええ!(目が泳いでいる)(あとこれ購入額モロバレだな)

 

……コホン。

というわけで、無事にポストカード8枚がもらえました。

このポストカードも、被りなく全種類もらえる仕組みなのありがたいです!!

 

以上、今回のグッズレポートでした!!

 

……さて、ノベコンの応募小説書かなきゃ。