暑い暑いと言っているうちに9月になった。欧米では6月が月見の季節らしく、歌詞にJuneと入っているので「ムーンライト・セレナーデ(月光夜想曲)」と「月光値千金(Get Out And Get Under The Moon)」は6月の歌として紹介した。でも日本では“中秋の名月”、お月見は涼しい夜に縁側でススキを愛でながらとなるだろう

 


【Photo by Shadiaさん from 写真ac

 

月の歌のスタンダードといえば「ブルー・ムーン(Blue Moon)」、ロジャース/ハート・コンビ(ローレンツ・ハート作詞、リチャード・ロジャース作曲)の名曲である。原詞は歌詞専門Webに譲るとして、ナンチャッテ和訳をすると次の様な感じだろうか。AABA形式の最初と最後のAの後半が同じなのに逆の意味になるのが凄い。

 

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ブルー・ムーン(1934年)

 

ブルームーンよ、心に夢もなく愛も持たない私が、独りぼっちで佇んでいるのを、貴方は見た


ブルームーンよ、想う人のために祈る言葉を聴き、私がそこに居た意味を、貴方は知った

 

そして突然、唯一私が得たいものが眼前に現われ「私を崇めて」と囁く声を聞いた途端、貴方がゴールドに変わるのを、私は見た


ブルームーンよ、今はもう心に夢もなく愛も持たない独りぼっちの私じゃない

 

(translated by Saigottimo)

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英語で「blue」は「青色」の他に「寂しい、悲しい」という意味もあるので「♪月がとっても青いから遠回りして帰ろう♪」という我々と違って欧米人にとって「Blue Moon」はもの悲しい風景なのだろう。なのでサビ(AABAのB)では求めていた恋人の囁きを聴いた途端、月の色までゴールドに変わってしまう(terned to gold)のである。

 

この“ロジャース/ハート”コンビについては「Thou Swell」という曲の記事でも紹介したが、彼等はアーヴィング・バーリンやコール・ポーターと並んで“3大ミュージカルメーカー”と呼ばれた。そしてローレンツ・ハート亡き後は、オスカー・ハマースタイン二世とのロジャース/ハマースタイン”コンビで「南太平洋」などを手掛けた。

 

♪Blue Moon…2000年10月13日、田無・RUIでの和田バンドライブにて♪

 

Saigottimo

私が所属する朗読グループ「5Thanks(サンクサンクス)」では2015年の結成以来、毎年2回以上は朗読コンサートを主催してきたが、ここ2年間はコロナ禍で開催できない。その代わりネット上で朗読動画コンテンツなどを制作してきた。といっても企画から制作、編集などは全て代表の前尾津也子さん頼みだが…。

 

出版社や書店とのコラボということで期間限定公開となった作品としては「きつねの電話ボックス」「つきよのくじら」などがあったが、これらは既に公開期間が終了している。公開期限のない5Thanksの動画コンテンツとしては宮沢賢治の「やまなし」があるが、今回新たに絵手紙と詩手紙の朗読動画を制作し公開した。

 

【朗読】絵手紙・詩手紙「風のように花のように(パート1)」

↑クリック!(前尾さんのブログから動画にアクセス可)

●絵手紙:浅田美知子

●詩と詩手紙:鈴木信夫

●朗読::前尾津也子久木崎なお江中田真由美雪乃、Saigottimo、大幡(おおばん)かおり(登場順)

●音楽:ななえ

●企画・制作:朗読ユニット「5Thanks(サンク・サンクス)」

 

7歳の時に筋ジストロフィーと診断された鈴木信夫さんは30歳を前に詩作を始めたとのこと。39歳になる2010年に「絵手紙・詩手紙 風のように花のように」 (浅田美知子、鈴木信夫、日貿出版社)を出版。鈴木さんはその翌年亡くなられているので、今回はお母様の許諾を得て動画公開する事ができた。感謝である。

 

Saigottimo

石貫慎太郎さんの新作オーディオ・ドラマ「夕闇トンネルの幻」に出演させて戴いた。今回の物語は「キューピッドは雪女」の続編のようでもあり、また「海沿いの夜行列車」の続編のようでもあるが、暑い季節にピッタリの“ちょっと怖い話”と言えるかも知れない。ただ、一昔前ならともかく現代に怪談はあまり流行らないだろう。

 

むしろ、どこにでもある日常に潜む、ちょっと不思議な現象の中に、我々現代人もドキッとする異次元の世界が隣接しているものだ。今回の物語は30年間の時をまたいで展開するのだが、現実の世界からちょっと足を踏み入れるとそこは異界、そんなストーリーを、石貫組のプロフェッショナル・ワークで楽しんで戴きたい。

 

●「夕闇トンネルの幻」【40分間】 ←クリック!

 

■スタッフ
脚本・作曲・制作:石貫慎太郎

ギター:石貫慎太郎

ヴァイオリンとピアノ:Au Bonheur(オーボヌール)

■キャスト

ナレーション:​山木梨花

翔太:能登洋宇

ユミ:中田真由美

女性店員:南春奈

老人:Saigottimo

 

今回の私の役柄はストレートに「老人」、なのでなんの役作りも必要なく、うん、これは実年齢で行けるぞ、とすんなりと演らせて戴いた。今回は山木さんのナレーションに能登さん中田さんの30年間の経過も聴きどころ。出来上がりを聴いたら女性店員の南さんの声があまりに可愛く、実際に傍で聴けなかったのが残念だ。

 

Saigottimo

先日(8/24)、アーティゾン美術館に初めて行った。聴いた事の無い美術館だったので「一体どんな美術館だろう?」とネットで調べたら、公益法人石橋財団の運営とある。ここは2015年5月から休館していた旧•ブリヂストン美術館がリニューアルオープン(2020年1月)したものだったなーんだ、そうだったのか!

 

同館のWebによると、「ARTIZON」(アーティゾン)とは「ART」(アート)と「HORIZON」(ホライゾン:地平)を組合わせた造語らしい。ブリヂストン美術館なら休館前に行ったことがあるが、セザンヌの山の絵が看板になっていて、なーんか暗いイメージしかなかったが、新しい美術館はビル自体を建て直したので明るく美しい。

 

【地下鉄・京橋駅から至近の立地】

 

【9/5までは新収蔵作品展示】

 

この美術館は、キュビズムを中心にカンディンスキーやミロ、クレー、ウーキー、デュシャンなどの現代美術、特に抽象絵画作品には定評があったが、セザンヌやゴッホ、そしてモネやルノワール、シスレーのような印象派作品もカバーしているし、今回のリニューアルもそうだし新収蔵作品も多く、意欲的な姿勢が素晴らしい。

 

【パンフ表紙はカンディンスキーの作品】

 

これもブリヂストンの創業者、石橋正二郎氏の偉大さだろう。彼は一代で福岡・久留米の仕立屋からタイヤのトップメーカーを興した経営手腕だけでも凄いのに、そこで得た資金を美術品の個人コレクションに充て、さらにそれを公益財団にして一般に公開した。彼が日本の文化レベル向上に果たした功績は計り知れない

 

【ビルの構造自体がアートとして楽しめる】

 

【木と金と石の「ソノトキ音楽ガキコエハジメタ」田中信太郎・作】

 

【展示品と同じ椅子で休憩もできる】

 

緊急事態宣言下ということだからかウェブ予約のみでのチケット販売だが予約なしでも空きがあれば受付でネット予約すればOKのようである。1人1200円だが、広い展示エリアを3フロア分堪能できるし制約はあるが撮影もOK!京橋だから東京駅からも銀座からも近く、ここは都内でも超おススメの文化スポットだ。

 

Saigottimo

ミャンマーでは今年2月にクーデターが起き、軍と市民の間で内戦状態が続いているようだが、アフガニスタンも8月末の米軍撤退に伴ってタリバンが政権を掌握し一気にキナ臭くなってきた。NHK-BSの「ワールドニュース」を観ていると、こうした国家統治の不安定さは中東やアフリカ諸国にも広がる気配を見せている。

 

国や社会が荒ぶ事で最終的に被害を被るのは、古今東西いつも「子供たち」である。親兄弟など家族を失い、時に自らの心身にも危害を受け、広場や学校など友人と遊ぶ場や学ぶ機会を失う。子供は社会的に自立していないから、自らの意志に関係なく親や大人の言いなりで過酷な運命に引きずり回されるのだ。

 

こんな状況でも「何かしたい」と思う有志が“日本発!アジアへ世界へ届け!平和を願う歌のプロジェクト”を立ち上げ、この活動は8/1朝のNHKニュース「おはよう日本」でも採り上げられた。

NHK ニュース公式 Twitter:

NHK ニュース公式Facebook:

 

完成した動画コンテンツ←クリック!

 

まずは上の行をクリックして動画コンテンツを見て戴きたい。日本在住のミャンマー、アメリカ、ネパール等様々な国籍の子どもたちによる「We are One(私たちは一つ)」という歌と踊りである。3分間足らずの短い動画だが、完成までにはコロナ禍での緊急事態宣言発出による撮影延期など大変なご苦労があっただろう。

 

私はこの話から、ドイツの詩人で児童文学者、E・ケストナーの「動物会議」を思い出す。この物語は、戦争や紛争に明け暮れる人間(の大人)達の愚かさに業を煮やした世界中の動物たちが集まって「(人間の)子供のために」会議を開いて奇想天外な策を講じて人間(の大人達)にキツいお灸をすえるという痛快な話である。

 

【岩波書店版の大型絵本の表紙】

 

「(人種や国家を問わず)子どもはみんな賢く物分かりが良いのに、どうして大人になるとあんなに分からず屋になってしまうのだろう?」という動物たちの問いはケストナーの全作品に流れる根源的な思想であり、私は彼の作品を読んで「自分は一生、子供でいよう!」と心に誓い、そのまま生きてきたという自負もある。

 

同プロジェクト代表の佐藤華子さんは行政書士としてこれまで仕事等を通じてミャンマーと日本の交流に携わってこられた。私も縁あって何度かお話をする機会を得たが若く美しく聡明で物静かだがパワフルな女性だ。この動画を第一歩として活動を本格化するだろう。私も何かお手伝い出来ることは無いかと考えている。


【お問合せ】We are One We ONE project (有志代表・佐藤華子)

hanako.sato@silkroad-intl.jp / 090-6135-7550

 

Saigottimo

8月9日(祝)、すみだトリフォニーホールで、東京オリンピック開会式でも演奏した日本を代表するジャズピアニスト、上原ひろみ*1と新日本フィルのコンサートを聴いた。有難いことに私の元同僚からご招待戴いたのだが、当初は5月に予定されていたのがコロナ禍で8月に延期され、でも結局は緊急事態宣言下での開催となった。

 

第1部はレナード・バーンスタインの2曲に挟んで上原ひろみの管弦合奏曲「Legend of The Purple Valley」、第2部は全編、上原ひろみのオリジナル曲をフィーチャーした構成だが、コンサートのタイトルは、「新日本フィル・シンフォニック・ジャズ・コンサート Special Guest 上原ひろみ」となっている。

 

 

「シンフォニック・ジャズ」とは、クラシックのオーケストラが演奏するジャズのことで、その起源はジョージ・ガーシュインの「ラプソディ・イン・ブルーで、それを引き継ぐのが、バーンスタインということだ。だからタイトルの意味は「新日本フィルがジャズを演奏するコンサートに上原ひろみさんが客演します」ということである。

 

そして上原ひろみはオーケストラと一緒に演奏するジャズピアニストであると同時に“オーケストラが演奏できるジャズを作曲するジャズミュージシャン”ということになる。つまり“ジャズとクラシックのコラボ”には違いないが、今回のコンサートは“クラシックのオーケストラがジャズを演奏する”という主旨なのだ。

 

クラシック音楽とは、古い音楽ではなく“どんな時代にも愛好され、いつまでも残る良い音楽”という定義からすれば、20世紀初頭に生まれたジャズもクラシックは当然採りこんでいくべきだろうし、それを演奏するオーケストラは、ガーシュインやドボルジャークに限らずバーンスタインや上原ひろみの作品も演奏すべきだろう。

 

今回のコンサートとは違って“クラシックの曲をジャズで演奏する”試みはビル・エバンスサラ・ヴォーンが行っているし、ジャズ・ミュージシャンが“クラシックの曲をクラシックとして演奏する”試みも、キース・ジャレットやチック・コリアなどがオーケストラと一緒にモーツアルトやバッハのピアノ協奏曲を演奏したりしている。

 

因みに「ラプソディ・イン・ブルー」を作曲したガーシュインは、「Summertime」「The Man I Love」「But Not For Me」等、ジャズスタンダードを多数作曲しているが、クラシック音楽を勉強しようとラヴェルに教えを請うたところ「貴方は既に一流のガーシュウィンなのだから二流のラヴェルになる必要はない」と断られたという。

 

*1:上原ひろみは米・バークリー音楽大学を首席で卒業した(小曽根真以来の快挙)という。(Wikipedia)

 

Saigottimo

石貫慎太郎氏の新作「夏の夜空を見上げて」に出演させて戴いた。今回はナレーションが無く主人公の一人称の語りで物語が進行する。石貫さんは幼い頃によくラジオドラマを聴いていたそうで、今回のドラマ制作にあたっては「そのラジオドラマを自分たちで制作する日が来るなんて…感無量です」とのこと。


物語は、何やら訳アリな大学生が北海道で自転車旅行を始めるシーンからスタートする。これは石貫さん自身が北海道を自転車旅行した際の経験をもとに創作されたのだそうだ。先日、多摩センターで石貫さんや共演者の皆さんとお会いしたので、今回はお互いの顔を思い浮かべながら共演することができた

 

真夏の北海道に実際に居るような、爽やかな空気感溢れるSE(効果音)やさりげないギターのBGMも、まるでラジオドラマのようだ。そして今回もエンドロールではAu Bonheur(オーボヌール)の演奏動画が流れる。エンディングテーマは石貫さんのオリジナル曲「ひとりぼっちの夏休み」、とてもしみじみとした曲で幕が閉じる。

 

●「夏の夜空を見上げて」【40分間】 ←クリック!

 

■スタッフ
脚本・作曲・制作:石貫慎太郎

ギター:石貫慎太郎

ヴァイオリンとピアノ:Au Bonheur(オーボヌール)

■キャスト

涼太:能登洋宇

アカリ:​山木梨花

母親、主婦:中田真由美

みゆき:南春奈

ムーさん:Saigottimo

 

前回の「コケノコの旅立ち」では江戸っ子な北風と優しいお月さんの二役を演じた能登さんが、今回は主人公の涼太として一人称の進行まで大活躍する。そして活発であっけらかんとしたキャラを好演する山木さんに、いつも胸キュンな可愛い声の南さん、そして何でもこなす中田さん、つまり私以外はプロで固めた石貫組だ

 

石貫作品には、これまで「キューピッドは雪女」「海沿いの夜行列車」「桃太郎達の焚火を囲む会」「コケノコの旅立ち」に参加させて戴いた私はこれが石貫作品5作目の出演となる。今回は日本語を話す中年のトルコ人役で、石貫さんの脚本にはただ一言「のんびりした性格」とだけ記されていた。

 

早速、Youtubeで日本語を話すトルコ人を検索したが日本語が上手過ぎて参考にならない。仕方がないので、これまで渋谷や自由が丘で食べに行ったことのあるトルコ料理屋の店員さん達を思い浮かべながらムーさんの役作りをした。因みにトルコ語の「さよなら(Güle güle)」は複数の翻訳サイトで発音も確認してみた。

 

日本語が話せるトルコ人の方がこのドラマを聴いたら「いやいや、ちょっとイントネーション違うネ」とお𠮟りを受けそうで怖い。トルコは世界でも有数の親日国だけに、どうか私のせいでご気分を悪くされないよう、最初に謝っておきたい。トルコ人の皆さん、下手でスミマセン、でも私、トルコの人達もトルコ料理も大好きなんです!

 

Saigottimo

地球温暖化の影響か日本でも猛暑日が頻出しているが、私が夏になると思い出すのは代々木「オリエンタル・ムーン」というジャズスポットでのヴォーカルセッションだ。ヴォーカルを始めた20年程前、マスターの城石さんから“夏に因んだ選曲”をして来てねと言われて「う~ん、どうしようか」と困った事である。

 

前年(1999年)10月にヴォーカルデビューしたばかりの私には、そもそもジャズのレパートリーが殆ど無い。夏らしいボサノヴァなど1曲も歌えないので、せめて大好きなビリー・ヴォーン楽団お得意のハワイアンから何か1曲歌えるようにしてくるとしても、もう1曲はジャズスタンダードが歌いたい

 

そこで思いついたのは連想ゲームのように曲紹介のMCで“自分が歌える曲を無理やり夏にこじつける”という方法だ。カミさんに“口先小手先男”と呼ばれている私としては、ここは何とか口先で誤魔化すしかないと思って辿り付いたのが、「グリーン・ドルフィン・ストリート(On Green Dolphin Street)」だった

 

 

この曲は1947年に製作されたイギリス映画の挿入歌だそうで、マイルス・デイビズの演奏(1958年)によってスタンダードになったそうで夏のイメージなどどこにもないが、「“夏”と言えば海、“海”と言えばイルカ、“イルカ”と言えば緑イルカですよね?」とか何とか苦しい曲紹介をしてこの曲に結び付けた。

 

♪On Green Dolphin Street…2000年8月27日、代々木「オリエンタル・ムーン」でのセッションにて♪

 

この曲はマイルス以外にビル・エバンス盤も有名で、ジャズスポットでよく演奏される定番曲だが、いつも譜面を渡すと「え、この曲、ヴァースがあるんですか?」と聞かれる。私がこの曲を知ったマーク・マーフィー盤(1961年)では、主旋律(コーラス)からでなくヴァース(前歌)から歌っているので私もヴァースから歌うのだ。

 

そして同日の2巡目はハワイアンに持ち込んで「ハワイの結婚の歌(Hawaiian Wedding Song)」を選曲。但しまだ“ジャズのお約束”も知らなかったので1コーラスで歌い終えるつもりだった。でも伴奏は2コーラス目に突入したので、仕方なくもう一度エンディングを歌うと、ピアニストがデュエット風に応じてくれるではないか。

 

♪Hawaiian Wedding Song…2000年8月27日、代々木「オリエンタル・ムーン」でのセッションにて♪

 

あとで知ったのだが、この時ピアノ伴奏をしてくれたのは、多くのお弟子さんを持つ日本を代表するプロのジャズシンガー、加藤アオイさんだった。恐らくこのセッションには遊びに来ていたのだろう。加藤さんはエルヴィス盤アンディ・ウィリアムス盤等でこの曲もご存じだったので女性パートを歌ってくれたのだろう

 

もう代々木「オリエンタル・ムーン」も無いし、私自身も積極的にヴォーカル・セッションに参加する機会も少なくなった。仮に季節に因んだ選曲縛りがあったとしても、この20年間でレパートリーも増えたし面の皮も厚くなったので困るという事も無くなった。という事で、8月の猛暑以外は全て“今は昔の物語”である。

 

Saigottimo

リンゴというと日本では青森や長野など“寒い地方で秋冬に収穫する果物”というイメージだが、開花時期は4~5月だし収穫期も品種によっては8月以降だから、真夏でもリンゴを収穫していることになる。ジャズスタンダード「リンゴの木の下で(In The Shade Of The Old Apple Tree)」の季節感も見直す必要があろう。

 

この曲はスタンダードの中でも古い曲だが「ラバーズ・コンチェルト」のようなクラシック由来(実はバッハのメヌエット)でも、「ダニー・ボーイ」のような民謡由来(曲はアイルランド・エアー)でもない。20世紀初頭の1905年、米国のHarry Williams & Egbert Van Alstyne作で、“ポピュラーソング最古のヒット曲”ではないだろうかと思う。

 

ヒット曲といってもその時代にはまだアナログレコードも蓄音機も普及していないのでレコードが売れる訳ではないし、ラジオ放送もまだ始まってないので電リク(ラジオ局への電話リクエスト)もない。では、どうやってヒットしたのかというと「楽譜の売上」だ。書籍のように楽譜がベストセラーになればヒット曲になるのである。

 

【1905年出版の楽譜(Wikipediaより)】

 

「○○という曲が良いらしいぞ」と聞くや書店で楽譜を買い、楽器が弾ける人に演奏してもらって「イイね!」となるとその演奏を聴いた人が口コミで伝えたり地元の新聞等で広まって、地域の書店に楽譜の注文が入る、というのが当時のヒット曲誕生のプロセスだったというから全米中でヒットするのに何年間もかかったらしい。

 

原詞(歌詞専門サイトご参照)にはリンゴの花(blossom)は出て来るが果実は出てこないので楽譜の表紙絵にあるように季節としては“春”だ。しかし、この歌は日本では柏木みのるの作詞で「深紅に燃ゆる想い、リンゴの実のように」と歌われており、リンゴの果実が出てくるので、ついつい“秋冬“を連想してしまう

 

昭和12年(1937年)にはディック・ミネが歌ってヒットしているので、年配の方々にとっては“日本の古い流行歌”としてお馴染みである。また1979年以降は舞台「上海バンスキング」でも代表的な往年の戦前ジャズ歌謡として吉田日出子が歌っているので、年配者のみならず戦後の若い世代にもよく知られている曲だ。

 

と私は思っていたのだが数年前、銀座の歌えるバーでこの曲を歌ったことがあり、20代と思しき若い女性ピアニストが伴奏してくれた。歌い終わり、さすが超スタンダードだけに伴奏も手慣れたものだなと思ったら「私、この曲、知りませんでした」と言われ絶句した。え?そうか、う~ん、もうそういう時代かぁ…。

 

♪リンゴの木の下で…2003年7月11日、渋谷SEABIRD第二金曜ライブにて♪ 

※この時は元・東京ユニオンの深田悟氏(tb.)が参加され、ディキシーランドスタイルのソロで大いに盛り上げてくれた。

 

Saigottimo

連日のメダルラッシュに湧く五輪(TOKYO2020)が開催されている東京はパンデミック第5波に襲われ緊急事態宣言下だから普段は私も大人しくステイホームしている。最近は散歩くらいしか外出しないのだが、7月24日(土)は久しぶりに電車に乗って多摩センターまで足を運んでコンサートを楽しんだ

 

コンサートの内容は、朗読作品「コケノコの旅立ち」に演奏で参加しているバイオリンとピアノの美人デュオ・ユニット「Au Bonheur(オーボヌール)*1」の演奏を、陶芸教室もしている里山の窯元で楽しもうという企画で、彼女達にオリジナル楽曲を提供している石貫慎太郎さんのプロデュースである。

 

 

最近声で作品に参加している私も、この日初めて石貫さんにお会いした。会場に入ると「コケノコ~」でお月様役をされた能登洋宇さん「海沿いの夜行列車」では乗務員役で私と共演した南春奈さん、そして「キューピッドは雪女」では私と父娘役で「桃太郎達の焚火を囲む会」ではかぐや姫役の山木梨花さんにも会えた。

 

今回は多くの作品でナレーション役をされている中田真由美さんがご都合で参加されなかったが、オーボヌールを含めて中田さん以外の石貫組(黒澤明監督作品のスタッフや常連キャストを「黒澤組」と呼ぶのに倣って)が勢揃いしたことになる。私は皆さん全員と初対面だが他の方々もお互いほぼ初対面だった様子だ

 

【南さん、能登さん、石貫さん、山木さん、私】

 

お互い挨拶をしながらも「いやあ、いろんな作品で共演しているのに『はじめまして』というのも、な~んか不思議ですねえ」というのが皆の正直な感想だ。よく映画やTVでは絡み(共演シーン)がない相手とは撮影で一緒にならないという事は聴くが、会話などでバリバリ絡みがある共演をしているのに、である。

 

従来ならライブ会場等お客様の前やスタジオ等に皆が集まって録音をする。でも現状のコロナ禍ではそれも叶わないので各人が自分の台詞などを録音して音声ファイルを石貫さんに送って編集してもらいアップされるので、こうした不思議なことになる。これも石貫さんが上手に編集してくれるからである。

 

今回、彼女達のCDも購入したが、CDに収録された16曲全てが石貫さんのオリジナル曲だった。こんなに美しい曲を幾つも創造できるなんてまるでジブリ映画の久石譲のようだ。石貫さんは作曲や演奏などが活動のメインらしいが、朗読作品も書き下ろし、音声も画像も編集してしまうのだから本当に凄い!

 

さて、コンサートは2部構成で、前半はモンティ、ショスタコービッチ、プーランク、ドビュッシー、フランクといったクラシック系で、後半は映画音楽やピアゾラ、そして石貫さんのオリジナル作品を散りばめ、最後は「情熱大陸」のテーマ。クラシックの技量に裏打ちされたカジュアルさで、見事に息の合ったデュオの演奏だった。

 

途中、石貫さんがギターで1曲参加したのは「ヴォラーレ」。この

曲は別記事で記したように私もレパートリーにしているカンツオーネだが、やはりギターだけにオリジナル版ではなく、ジプシー・キングス版で石貫さんの速弾きがカッコ良かった。アンコールは窯元オーナーの娘さんがヴォーカルで「You Raise Me Up」を熱唱。

 

【石貫さんもギターで1曲参加】

 

今回の柏葉窯でのコンサートは、後日YouTubeに(第一部)(第二部)ともアップされているのでお楽しみ戴きたい。また、来たる8月11日18時から彼女達の大学時代の先輩方とのコラボ演奏が下記にて配信されるとのことなので、よかったら是非、ご視聴下さい!

*1:Au Bonheur…フランス語で「幸福へ」という意味

 

Saigottimo