ワルシャワから、４００キロほど離れた、グダインスクの海が見たいと、思った、、、
結婚前の心理的な不安定から、家を出た、、、
一昼夜を歩いて、８０キロほど歩き、小さな街に着いた、、、
道路脇の少し凹んだ草むらの溝に、横たわり、少し眠った、、、
すると、警察官が僕を起こし、身分証明書を調べた、、、
異常が見られないことを知ると、警察官は、僕を置き去りにして、パトカーで走り去った、、、
僕は、その時、改めて、この国ポーランドで、自分が、異国人であることを思い出した、、、
「うちに、帰らなければ、、、」
家を出た時は、海を見たいと思った、、、
けれど、今、僕は、うちに帰る、、、
脳裏に、結婚間近の自分の伴侶のことを、思った、、、
彼女の、愛らしい瞳と笑顔を思った、、、
あれから、２２年が経った、、、
あの時、僕は、なぜ、海を見たかったのだろう、、、ワルシャワから４００キロ離れた
グダインスクへ、徒歩で本気で行くつもりだったのだろうか、、、
ただ、グダインスクの松林と、白い砂浜を見るために、４００キロの道のりを、、、
僕は、海が、見たかった、、、
もしかしたら、このはち切れそうな気持ちを、海を眺めることで、沈めたかったのかも
しれない、、、
僕は、海を、見たかった、、、
あの、返事を決してしない、寄せては返す、波打ち際を、ひとり静かに、歩きたかったのかも
知れない、、、
それ以上は、どこへも行けない海に向かって、、、
それ以上は、どこにも行けない、、、海に向かって、、、
僕は、、、
ひとりに、なりたかったのかも、知れない、、、
それ以上は、どこへも行けない、、、海に、向かって、、、
鬼武彦 拝
