「考える変人」が日本を救う | 村上信夫 オフィシャルブログ ことばの種まき

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元NHKエグゼクティブアナウンサー、村上信夫のオフィシャルブログです。

出口版『学問のすすめ』。

福澤諭吉が『学問のススメ』を初めに世に問うたのは、明治5(1872)年。以来、およそ150年ぶりに、現代の碩学、出口治明さんが著した。

 

出口さんの考えは、簡にして要を得ている。わかりやすい。

学びとは「人に会う、本を読む、旅をするといった実体験を通して、知識や考える型、発想のパターンなどを吸収(インプット)し、咀嚼した結果をアウトプットすることによって、自分のものにしていくこと」。

学びの最終目的は、「考える力を養成すること」。数字・ファクト、ロジック、すなわちエビデンスの裏付けが必要だ。インプットしたことを、自分のことばで置き換えて伝えることが大事だ。

 

いかに自分に刺激を与えてくれる人と出会えるか。人脈を漫然と広げるだけでは意味がない。「その人と一緒にいると楽しいか。面白いか」。

「素直で、我慢強くて、偏差値が平均的に高くて、協調性があって、上の人のいうことをよく聞く人材」はいらないと出口さんは断言する。

IQやテストで数値化出来るものを「認知能力」と呼ぶが、出口さんはそういう能力に重きを置かない。

大事なのは「非認知能力」。最後までやり抜く力、感情をコントロールする力、他人と関わる力…テストなどで測定出来ない内面的な能力。

非認知能力を高めるには、多様性の中で、自己肯定感を高め、好きなことを徹底的に追求することだ。テストで点が取れることが重要という風潮は同質社会を生むだけだ。根拠なき精神論を振りかざしていては、この社会はよくならない。他人に何かを言われて潰れてしまう人は、「周囲の評価で出来上がっている人」だ。世間がよしとしている価値観でなく、自分の感性を大事にする。「考える変人」こそが日本を救うのだ。社会を変えるのは少数派だ。

 

実際に動いて、考えて、失敗して、逃げたり立ち止まったりしてきた心身の経験こそが、何ものにも勝る「学び」になる。死ぬまで「生きる」という学びをしていくことになる。