瀬戸内寂聴さんは、年が明けて、数え百歳。
毎月、朝日新聞に連載されているエッセイを読んでいるが、
その健筆に衰えはない。
その寂聴さんが、仏教にまつわる謹言至言から選んだことばをまとめた本がある。さらにその中からいくつかのことばを紹介する。
●心暗きときは、すなわち遇うところ、ことごとく禍なり。
眼(まなこ)明らかなれば、途(みち)に触れて皆宝なり(空海)
~暗い気持ちでいれば不安や不運が集まる。
明るい気持ちでいれば、すべていい方向に進む。
●過去を追うな。未来を願うな。
今なすべきことをなせ(インドの経典)
~過去を悔やまない。未来を思い煩わない。今を切に生きる。
●山水に得失なし。得失は人の心にあり(夢窓疎石)
~山水はありのままにあるばかり。
いいとか悪いとは決めるのは人の心。
●矢の走ることは弓の力。雲の行くことは竜の力。
男のしわざは女の力(日蓮)
~これは説明はいらないだろう。男子は女子の掌中にあり。
●火は物を焦がすと、その火は知らず。
水は物を潤すと、その水は知らず。
仏は慈悲して慈悲を知らず。(江戸時代の禅僧・至道無難)
~人は火や自ら恩恵を受けているが、火や水にその自覚はない。
仏の慈悲も無心無償の行為。
●この世は美しい。人の命は甘美である。
~釈尊が最後の旅で呟いた。この世は苦だと言っていた釈尊は、
最後には、この世も人間も肯定した。