内縁と公序良俗違反
かっては内縁関係は法の認めない不倫な関係とされていましたが、後にその不当破棄につき損害賠償の請求を認めるにいたって、有効性が確保されました。依頼、内縁が不倫な関係とみられることはなく、積極的に準婚としてその実質的内容が認められています。また、重婚的内縁についても、必ずしも公序良俗違反とはされず、重複している一方の法律婚が破綻している場合は、内縁関係を保護する法理が確立されつつあります。これらのことは、公序良俗の観念が社会の倫理思想の転化を顧慮して決定されねばならないことを示す適例です。親子・夫婦間の常軌に反する行為も公序良俗違反となります。判例上、成年に達した子が父と別居するにあたり、離婚した母と同居しないことを約し、その違反につき違約金の定めをすることは無効としたものがあります。また男性が、女性に将来妻と離婚したら婚姻することを約し、その予約に基づいて、男性より女性に扶養料を支払うことを約するのは無効としたものはあります。これに対し、婚姻中の夫婦間で将来離婚する際の金銭交付を約する契約は、婚姻関係の永続を図ろうとするもので、別に公序良俗違反というにあたらず有効とする判例があります。近年、代理母(妻以外の女性に夫の精子を人工授精して出産させるもの、また夫の精子と妻以外の女性の卵子を用いてさらに別の女性に移植して出産させるもの)による出産も可能となっています。現行民法の解釈としては、出生した子を懐胎し、出産した女性をその子の母親と解せざるをえません。懐胎・出産をしていないが卵子を提供した女性とその子ども間に、親子関係の成立を認める外国裁判所の裁判は、公の秩序に反するとされたものがあります。