かっちゃんの民法総則案内ブログ
  • 05Jul
    • 内縁と公序良俗違反

      かっては内縁関係は法の認めない不倫な関係とされていましたが、後にその不当破棄につき損害賠償の請求を認めるにいたって、有効性が確保されました。依頼、内縁が不倫な関係とみられることはなく、積極的に準婚としてその実質的内容が認められています。また、重婚的内縁についても、必ずしも公序良俗違反とはされず、重複している一方の法律婚が破綻している場合は、内縁関係を保護する法理が確立されつつあります。これらのことは、公序良俗の観念が社会の倫理思想の転化を顧慮して決定されねばならないことを示す適例です。親子・夫婦間の常軌に反する行為も公序良俗違反となります。判例上、成年に達した子が父と別居するにあたり、離婚した母と同居しないことを約し、その違反につき違約金の定めをすることは無効としたものがあります。また男性が、女性に将来妻と離婚したら婚姻することを約し、その予約に基づいて、男性より女性に扶養料を支払うことを約するのは無効としたものはあります。これに対し、婚姻中の夫婦間で将来離婚する際の金銭交付を約する契約は、婚姻関係の永続を図ろうとするもので、別に公序良俗違反というにあたらず有効とする判例があります。近年、代理母(妻以外の女性に夫の精子を人工授精して出産させるもの、また夫の精子と妻以外の女性の卵子を用いてさらに別の女性に移植して出産させるもの)による出産も可能となっています。現行民法の解釈としては、出生した子を懐胎し、出産した女性をその子の母親と解せざるをえません。懐胎・出産をしていないが卵子を提供した女性とその子ども間に、親子関係の成立を認める外国裁判所の裁判は、公の秩序に反するとされたものがあります。

  • 07Jun
    • 公序良俗違反(人倫に反する行為)

      公序良俗の具体的意味・内容が問題になりますが、判例の検討、学者による研究により、その具体的内容が比較的明確になっています。公序良俗違反行為の類型として、まず人倫に反する行為があります。めかけ関係・私通・姦通など性的不倫関係を意図する契約は、公序良俗違反として無効になります。一夫一妻制が現在のわが国社会の倫理思想の根本として支持される限り、これにもとる前記の男女関係にもとづく行為(手当支給、金銭贈与、貸与契約など)は人倫に反するものとして無効と解するのは当然です。たとえば、私通関係が存続する限り貸金の返金を請求しないが、それが断絶したときは、ただちにこれを請求する旨の特約や、不倫な関係にある女性に対して包括遺贈する旨の遺言は、公序良俗に違反し無効です。もっとも、このような不倫関係を断絶するために手切れ金として金銭を贈与する契約は公序良俗違反ではなく、有効だとされます。また私通やめかけ関係にもとづく限り、それから生じた子などの養育費や生活費(認知があれば別である)も、当該不倫関係の継続と不可分であれば無効と解するのが判例の態度でした。しかし、めかけの生存や子の成長に関することでもあり、一概に無効とすることには学説の批判がありました。その後判例は、妻子と以前から別居している男性が、半同棲約7年におよぶ愛人に、遺産三分の一を包括遺贈する旨の遺言に関し、不倫関係の維持継続を目的とするものではなく、その生活保全のためである場合には、公序良俗に反せず有効であるとしました。

  • 10May
    • 公の秩序と善良の風俗

      民法第90条は、「公の秩序」「善良の風俗」を別々の意味を持つかのように規定しています。しかし、両者は合して公序良俗と略称され、行為の社会的妥当性を意味する総合的抽象的概念だと解されています。公序良俗違反の判断基準に関し、判例は法律行為がなされた時点を基準として判断しています。この点に関し、契約成立時に公序良俗違反であったが、履行時点で公序良俗違反ではないとされる場合があります。この場合、契約締結時を基準に無効でよいが、契約成立時には公序良俗に反しなかった行為が履行時点で公序良俗違反とされる場合には、履行時を基準に無効と解する立場もあります。憲法の私人的効力に関しては、我が国では、司法の一般条項を媒介として、憲法が適用されるとする間接適用説が通説となっており、本条がその媒介としての役割を果たすことになります。判例も、「就業規則中、女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、民法90条の規定により無効である」とされています。また判例は、「ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者および締結組合から脱退しまたは除名されたが、他の労働組合に加入しまたは、新たな労働組合を結成した者について、使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである」と、しています。

  • 12Apr
    • 公序良俗

      民法第90条公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。本条は、法律行為の目的が、反社会性を帯びるとき、すなわち「公の秩序または善良の風俗」に反するときはその効力を認めず、無効とすることによって、法律行為の社会的妥当性を要求しているのです。この法理は、私権の公共性・信義誠実の原則・権利濫用とともに、社会性を意識した民法の統一的指導理念を構成するものと解されています。法律行為(契約)は、自由だといっても、それが社会の一般的利益や倫理的秩序、すなわち公の秩序・善良の風俗に反すれば、法律行為としての効力を否定されねばならないのは当然だと言えます。強行法規(強行規定)の存在理由もここにありますが、法律行為の内容が、法秩序全体の目的に照らして是認できるものかどうかを、すべて個別具体的に、あらかじめ定めておくことは難しいことです。そこで、法律は個別的な強行法規の他に、一般的・包括的な法の根本理念として、公序良俗という一般条項を設けました。そして、各個の法律行為の内容が、社会的に妥当であるかどうかを判断させる基準にしたのです。したがって、裁判官は、具体的内容において千差万別な各種の法律行為の有効・無効を、公序良俗という基準に照らして判断しなければなりません。

  • 15Mar
    • 果実の収取権者

      利息に関しては問題があります。利息を法定果実に含めることに関しては、争いのないところです。しかし、利息は元物とみられる特定の貨幣の収益ではなく、元本債権の収益なのであるから、厳格にいえば、民法上の法定果実にあたらないものと言わなければなりません。けれども、これと本質を異にするものではないから、法定果実の分配に関する、民法第89条2項(法定果実はこれを収取する権利の存続期間に応じて、日割計算によりこれを取得する。)の規定を、これに類推適用するのは、差し支えないと言うべきでしょう。なお、株主に対する会社の利益配当が株式の法定果実であるかが質権との関係で一時問題にされましたが、現在では立法上解決を見ています。天然果実は元物より分離するときにこれを収取する権利を有する者に帰属します。天然果実は元物から分離しない限り、元物の一部として元物所有権の内容を成すものと考えられますし、その上、果実の産出に尽くした努力の多少を定めることも困難です。かつ、分割することが不適当なことが多いという理由に基づいています。収取権者は、元物の所有者、善意占有者、地上権者、永小作権者、賃借権者、不動産質権者などですが、当事者の特約によって別に定めることは差し支えありません。なお、未分離の天然果実は元物の一部であって独立のものではないが、これを独立の客体とした場合には、取得者に所有権の成立を認めることができます。法定果実は、これを収取する権利の存続期間にしたがい、日割をもってこれを取得します。すなわち、賃貸家屋の所有者、消費貸借の債権者などに変更があった場合には、賃料や利息などは所有者や元本債権などの存続期間にしたがって、日割計算で分配する趣旨です。この原則は、賃料や利息など年あるいは月をもって計算される場合にも適用されます。ただし、これと異なる特約あるいは慣習は有効です。

  • 15Feb
    • 天然果実および法定果実

      民法第88条物の用法に従い、収取する産出物を天然果実とする。2 物の使用の対価として受けるべき金銭その他のものを法定果実とする。物より生ずる経済的収益を果実と言い、果実を生ずるものを元物と言います。果実は、収益者の収入に帰すべきものであるが、果実の観念および果実の生ずるまでに収益権者に移動があった場合の果実の分配について、争いを生ずるおそれがあるので、これを防ぐため民法は定められました。天然果実とは、「物の用法に従い収取する産出物」を言います。「用法に従い」とは物(元物)の経済的用途に従ってという意味です。したがって、たとえば、果樹からとれる果実は、言うまでもなく天然果実です。盆栽の身は天然果実とは言えません。「産出物」とは、牛乳・羊毛・野菜などのように、元物から有機的に産出されるものだけを指すのではなく、鉱区から採掘される鉱物のように、元物たる土地から無機的に産出されるものであっても、一定の施業方法に従って元物を消耗せずに継続的に取得せられる場合には、これをも含むと解されています。法定果実とは、「物の使用の対価として受けるべき金銭その他のもの」を言います。土地使用の対価である地代、家屋使用の対価である家賃などがこれにあたります。労働の対価は、ものの使用の対価ではないから法定果実ではありません。また、元物の対価としての売買代金などは、使用の対価ではないから、法定果実ではありません。

  • 18Jan
    • 主物・従物の対抗要件

      主物についての処分の対抗要件は、主物の対抗要件によって従物にも及ぶとみられています。たとえば、建物の譲渡やそのうえの抵当権設定の効力が、従物たる畳・建具にも及ぶ場合には、建物の登記さえあれば、右従物についても対抗力を具備したというべきであります。また、同様に土地についての抵当権の設定は、その土地の従物であった石燈篭および庭石にも及び、抵当権設定登記による対抗力は、右従物についても生ずることになります。従物と言えども独立のものですから、当事者が、主物と切り離してこれだけ処分することも、もちろん可能です。従物のみを強制執行の対象となしうるかについては、説が分かれるが、これを否定する理由はないようです。本条は、物に関する規定ですが、同様の関係は権利についても生じえます。たとえば、元本債権と利息債権の間とか、建物と敷地賃借権の間などです。このような場合には、本条の趣旨を類推適用すべきでしょう。判例もこの理を認めています。判例をご紹介します。石燈篭および取り外しのできる庭石などは宅地の従物である、とされました。また、地下タンク、ノンスペース型計量機、洗車機などは、ガソリンスタンド用建物の従物である、とされました。

  • 11Dec
    • 主物の処分

      従物は、主物の処分に従います。これは、主物と従物が、法律的運命をともにすることを意味しています。ただし、当事者間に、別段の意思表示がある場合には、この限りではありません。ここに主物の「処分」とは、広く主物に関して権利・義務の変動を生じさせる一切の法律行為を指します。債権行為であるか物権行為であるかを問いません。したがって、売買・貸借がなされたときは、別段の意思表示がない限り、従物をも包含するとみられます。つまり、主物について、所有権譲渡・地上権設定があれば、従物についても、譲渡あるいは設定があったものとみられます。ただ、質権設定のように、目的物の引渡しを要する法律行為においては、質権の効力が従物に及ぶか否かは、従物の引渡しの有無によって定まるのであって、本条二項の適用の余地はありません。主物についての抵当権の効力は、設定当時の従物に及ぶが、設定後に付加された従物にも及ぶか否かについては、争いがあります。一部の学説はこれを否定していますが、多くの学説は、理由付けに相違こそあれ、これにも及ぶものと解しています。主物についての物権的処分の効力が、従物にも及ぶとみられる場合に、その処分の対抗要件は原則として、主物の対抗要件によってすべてがカバーされるとみて差し支えありません。

  • 27Nov
    • 従物の要件

      従物の第二の要件として、従物は特定の主物に附属すると認められる程度の、場所的関係にあることが必要です。従物の第三の要件として、従物は独立したものであることが必要です。二個の物のうち、一方が他方の構成部分となり、または両者合して単一の物と認められるような場合には、主物・従物の観念は生じません。したがって、たとえば、料理店に配置された石燈篭や五重塔は、土地の従物となりえます。しかし、土地の構成部分と認められるほどに密着符合させられた石や砂利とか、あるいは既存建物を物理的に拡大ないし延長した増築部分などは、それぞれ土地あるいは建物の従物ということはできません。なお、主物・従物はともに、動産であるか不動産であるかを問わないから、二個の不動産の間にもこの関係は成立します。したがって、物理的には離れている納屋・便所・湯殿なども、他の不動産に対する従物となりえます。従物の第四の要件として、主物と同一の所有者に属することが必要です。二個の物の法律的運命を共通にさせることがこの制度の趣旨であることから、これによって第三者の権利が不当に害されることになってはなりません。そこでこの要件が、設けられたとみるべきです。このような趣旨、すなわち、第三者の権利を不当に害しないようなら、所有者を異にする二個の物の間にも、主物・従物の関係の成立を認め、ただ、他人の権利を害しない範囲において、従物は主物の法律的運命に従うものと考えることも可能となるでしょう。そこで、一部の学説は本条一項の趣旨を拡張して、債権関係にこの理を認め、また、他人の所有に属する従物も即時取得の要件を満たせば、主物とともに物権取得の客体となりうると解しています。

  • 13Nov
    • 主物と従物

      第87条① 物の所有者が、その者の常用に供するため、自己の所有に属する他のものをこれに附属させたときは、その付属させたものを従物とする。② 従物は、主物の処分に従う。民法は、個々の独立の物は処分の場合においても、それぞれ独立になされることを原則としています。しかし、母屋と物置、家屋と畳・建具、鞄と鍵などのように、二個の物の間に、客観的・経済的な主従結合関係があるとき、これを法律的運命においても、同一に取り扱い、その結合を破壊しないよう要請される場合が多いのです。この要請に応じて、設けられたのが、主物・従物の制度であり、民法第87条は、これを規定したものです。従物の意義については、本条第一項に規定されています。これを分説すれば、次のようになります。まず、従物は、主物の常用に供せられることが必要です。社会観念上、継続して主物の効用を全うさせる動きをすると認められなければなりません。主物の効用を助けるためであっても、一時的に付加されるようなものは、従物とはなり得ません。主物の常用に供せられるか否かは、一般取引上の観念によって定まるべき客観的標準に従って決めるべきで、附属させるものの意思はなんら影響を与えるものではないというべきでしょう。

  • 30Oct
    • 先取特権・質権などの客体

      不動産と動産の差異について、先取特権における違いがあります。不動産の先取特権は債務者の特定不動産のうえに成立するのに対し、動産の先取特権は債務者の特定動産のうえに成立します。前者は、登記を要件とするが、後者は占有を要件とせず、しかもその動産が第三者に引き渡された後は、先取特権の効力は、これに及び得ないなどの相違が生じます。質権における差異もあります。質権には、動産を目的とするもの(動産質)と、不動産を目的とするもの(不動産質)とがあるが、両者が要件を異にします。すなわち、前者は質物の占有移転をもって質権の成立要件とし、占有の継続をもって対抗要件とします。一方後者は、占有移転を質権の成立要件とする点では前者とは異ならないが、登記をもって対抗要件とする点で相違します。抵当権は目的物の占有移転を伴わないものであるから、抵当権の客体となりうるものは、登記・登録の可能なものに限られます。したがって、不動産には抵当権の設定が認められるのに対し、動産には原則としてそれが認められません。もっとも、戦後における一連の動産抵当立法は、農業用動産・自動車・航空機など、一部の動産について抵当化の道を開くに至っています。その他、無主物の帰属や符合についての法律効果を異にすること、用益物権や買戻し制度は不動産についてしか認められません。また、不動産に限って裁判管轄につき、特別の規定があること、不動産と動産とで強制執行の方法や担保権の実行としての競売手続きが異なることなど、その数は極めて多いです。

  • 17Oct
    • 動産の公信力

      不動産と動産とを区別する前記(不動産と動産(その7))の二つの理由のうち、第二の理由は、現在なおその意義を有していますが、第一の理由はもはやその社会的意義を失ってよいでしょう。(前記の第一の理由は、不動産は財産的価値においてはるかに動産に勝るという点です。)近代資本主義の発達は、有価証券という財産権を表象・化体する証券を生じさせ、今日ではこれらの証券が財産上重要な地位を占めています。そのうえ航空機・船舶などの効果な動産が現れるに至っては、不動産だけを重要な価値ある財産として保護することは、不適当だからです。かくして、現代の法制においては、むしろ公示方法を異にする点に、両者の区別の重点をおかなければならなくなったと言えます。不動産と動産の法律上の取り扱いを差異について、公示方法における差異があります。不動産の物権変動の公示方法は、登記であるのに対し、動産のそれは、引渡しです。公示方法に関し、我が民法は対抗要件主義を採用しているから、物件変動を第三者に対抗するためには、不動産の場合には登記を、また、動産の場合には引渡しを必要とします。次に、公信力における差異があります。動産の占有には、公信力が与えられていますが、不動産登記にはそれが与えられていません。動産には引渡しという公示方法が採られているが、動産の移転性から言って、それによって第三者に物権変動を明確に認識せしめうることは困難です。そこで、この欠陥を補う方法として、動産の占有に公信力を付与する必要が生じます。即時取得(民法192条)の制度が、これにあたります。なお、不動産登記には公信力が与えられていませんが、これを与えるべきだという積極的見解が一部において、主張されるにいたっているので、注意を要すると言われています。

  • 10Oct
    • 不動産と動産の区別

      貨幣は、法的支払手段としての価値表象物であり、貨幣の取得はそれによって表象されている一定数額の価値の取得にすぎません。したがって、貨幣は動産の一種ではあるが、通常、ものとしての個性を有せず、価値そのものと考えるべきであって、動産に適用される規定の多くは、貨幣には適用されないと解すべきです。不動産と動産とを区別することは、程度の差こそあれ、古くからすべての法制の等しく認めるところです。その理由としては、一般に次の理由が挙げられます。第一の理由は、不動産は財産的価値において、はるかに動産に勝るということです。歴史的にみても、封建時代においては、土地は宗家の世襲財産として特に重要なる社会的価値を有して、法律上特殊の保護を必要としました。民法が、「不動産その他重要な財産」という文字を用い、不動産をもって当然に重要な財産として、これに関する権利の得喪変更を特に厳格に扱っているのは、このような理由に基づくものでしょう。第二の理由は、不動産の不動性、動産の動性、という性質の差異に由来するという点です。すなわち、動産は、常にその場所を転々とするのに反し、不動産は、容易にその場所を変えないので、そのうえに存する権利を、他人に公示する方法を、異にする必要があります。近世の立法が不動産については登記制度を採用し、その権利の得喪変更すべてを公簿のうえに記載して公示しているのに対し、動産については占有、つまりそのものの事実的支配を公示方法としているのは、このような理由に基づくものです。

  • 03Oct
    • 動産

      明認方法に関して、判例は、未分離のみかん・桑葉・稲立毛にも認めています。すなわち、いずれも明認方法を施すことによって、独立のものとしての取り扱いを承認しているのです。不動産以外のものは、すべて動産です。仮植中の植木などのように、土地に不着していても、定着物でないものは動産です。樹木も伐採されると動産になります。しかし、理論上は動産とみるべきであっても、船舶・自動車などのように、特別法によって、一般の動産の取り扱いを区別している場合があります。特殊の動産について検討します。無記名債権、たとえば無記名公社債・商品券・乗車券・劇場鑑賞券などのように、証券に債権者を表示せず、債権の成立・存続・行使がすべて証券によってなされる債権です。債権は有体物ではないから、物には含まれないはずですが、無記名債権の場合は、債権が証券に化体され、債権の取引はすべて証券によってなされるので、民法は証券の面からとらえて、無記名債権を動産とみなしています。その結果として、無記名債権の譲渡は、証券の引渡しをもって対抗要件とし、さらに民法192条の即時取得の適用をも受けることになります。しかしながら、現在、有価証券に関する諸制度や理論が著しく整備、発展して、有価証券取引の迅速性や安全性は、動産以上に保護されています。したがって、無記名債権の動産擬制は、もはや実際上の機能を喪失したとみて差し支えないようです。

  • 26Sep
    • 樹木の扱い

      建物の戸数に関してですが、一戸の建物として登記簿上記載されていても事実上分割して二戸の建物とすれば、二つの建物として所有権の客体となるのですが、その標準としては、建物の物理的構造だけでなく、周囲の建物との接着の程度、連絡の設備、所有者の意思などをも考慮すべきでしょう。判例は、増築部分が独立の不動産となるか否かが争われた事件につき、増築部分を除くと既設部分が経済上の独立性を失う場合には、増築部分を独立の不動産とすることはできないとしています。樹木は、本来、土地の構成部分として、土地所有権と一体をなすものであるが、実際には樹木のみを土地から独立したものとして、取引の目的物とする慣習が、古くから存在していました。しかし、それにも関わらず、法律はこれを土地と一体となすものとみて、登記法上も特別の登記を認めませんでした。その後、立木法が制定されました。この法律によれば、一定の樹木の集団について、土地とは別個に独立して所有権保存登記の道が開かれており、この登記をした樹木の集団は独立の不動産とみなされることになっています。したがって、その条件を満たした流木は、土地から完全に独立した不動産となります。それ以外の樹木の集団や個々の樹木は、明認方法(たとえば、樹皮を削り、あるいは標木を立てて、これに所有者の墨書をするなどして所有権の所在を公示すること)を施して、独立の取引の目的とする慣行が広く行われており、判例も承認しています。したがって、これを施せば土地とは別個の独立したものとして、扱われます。

  • 19Sep
    • 建築中の建物

      建築中の建物がいつから独立の不動産となるかは、建築中の建物についての権利の変動に際し、重要な問題を生じます。裁判例は、木材を組み立てて地上に定着させ屋根をふき上げただけでは、未だ法律上の建物とは言えないとしています。しかし、建物はその使用の目的に応じて、構造を異にするのであるから、建物の目的からみて使用に適する構造部分を具備する程度になれば建物と言うことができ、完成以前でも登記ができます。また、住宅用でないものは、屋根および囲壁ができれば、床や天井ができていなくても、建物とみることができるとしています。建物が崩壊すれば、もはや不動産ではなくなります。したがって、建物の上に、抵当権が設定されていた場合は、その抵当権は消滅します。ただし、改築をしたり、場所を引き移しても、必ずしも建物の同一性を失わしめるものではありません。同一性を失うとすれば、従前の登記が効力を持たなくなり、その上の抵当権も消滅するから、その決定は慎重になすことを要します。建物の構成部分と解せられる、ひさし・湯屋の洗い場の如きは、建物の一部であって独立のものをなすものではありません。建物の戸数は、土地と異なり、登記簿によるのではなく、社会観念によって決せられます。したがって、登記簿上一戸の建物として一用紙に記載されていても、事実上分割して二戸の建物とすれば、二つの建物として、それぞれ所有権の客体となります。

  • 12Sep
    • 土地の定着物

      土地の定着物も不動産とされています。土地の定着物とは、継続的に土地に固着し、しかも固着して使用されることが、その物の取引上の性質と認められるものを言います。定着物のうち、最も代表的なものは建物です。その他、樹木、石垣・沓脱石の類い、さらには機械も、それが土地または建物に造りつけられたときは、定着物となります。しかし、造り付けの程度は、具体的な場合に即して決しなければならず、工場内においてコンクリートの土台にボルトで固着させられた程度では定着物とは言えません。樹木は、一般に定着物ですが、仮植中のものは、定着物ではなく、動産です。定着物はすべて不動産ですが、その不動産としての取り扱いには差異があります。その差異により、①石垣・沓脱石のように、土地の一部として土地の権利の変動に当然に従い、独立の不動産とは認められないもの、②建物のように、土地とは別個独立の不動産として扱われるもの、③樹木のように両者の中間に位するもの、の3種に分けることができます。建物は、土地の定着物ですが、土地とは別に登記の制度が設けられ、独立の所有権の客体となります。したがって、建物はいかなる場合にも、その土地の上の所有権、その他の権利に吸収されることはありません。同一人が、土地とその上の建物を有する場合にも、土地と建物とは、別個の所有権の客体となります。

  • 15Aug
    • 土地の一部の取引

      不動産の一筆の土地の一部について、実際の取引においては、分筆手続前に一筆の土地を、当事者が事実上区分して、その一部を売買する例が、少なからず存在します。判例は、当初これを否定的に解し、買主は所有権を取得し得ないものとしていました。しかし、後に改め、その部分が当事者間において、具体的に特定している限り、買主の所有権取得を有効と解しています。また、一筆の土地の一部について、他人の取得時効が完成し得るか、という問題に関しても判例は、時効取得はもっぱら占有だけを基礎とし、公示方法たる登記とは無関係に認められているとの理由をもって、これを肯定的にとらえています。満潮時には海水下に没し、干潮時には地表を海水上にあらわす干潟の土地所有権が問題になったケースにつき、判例は、海はいわゆる公共用物であって、特定人による排他的支配は許されないから、そのままの状態では、所有権の客体たる土地にあたらないとしています。公有水面埋立法に基づく埋め立て免許を受けて埋め立て工事が完成したのち、竣工認可がされていない埋立地が土地所有権の客体となるかが争われたケースがあります。この点について、判例は長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され、公共用財産としての形態、機能を完全に喪失し、その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、これを公共用財産として維持すべき理由がなくなり、同法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった場合には、土地として私法上所有権の客体となるとしています。

  • 15Jul
    • 不動産

      第86条① 土地及びその定着物は不動産とする。② 不動産以外のものは、すべて動産とする。③ 無記名債権は、動産とみなす。本条は、物を、不動産と動産に分類した規定です。後述のように、民法は不動産と動産とでその取扱いに著しい差異を設けているため、特に規定されたものです。本条一項は、土地を独立の不動産としています。土地とは、地表を中心として人の支配及び利用の可能な範囲内で、その上下に及ぶ立体的存在です。したがって、地中の岩石・土砂は土地の構成部分をなすものであって、土地と別個のものではありません。ただ、鉱業法は一定の種類の未採掘の鉱物に関して、その採掘取得の権能を国に留保しています。よって、その適応を受ける鉱物は土地所有権の内容に含まれません。土地は、本来、物理的に無限に連続しているものでありますが、便宜上これを人為的に区分し、一筆ごとに地番を付して登記簿(登記記録)の表題部に登記し、その個数を計算しています。一物一件主義の建前からすれば、土地の所有権は、一筆の土地に一個成立するのみで、一筆の土地の一部については成立し得ません。したがって、一筆の土地の一部の処分も、またなしえないものと言わなければなりません。このような場合には、分筆をして二個の土地として処分するべきでしょう。

  • 15Jun
    • 物の定義

      第85条この法律において「物」とは、有体物を言う。① 法律上、排他的支配の可能なものであるという点では、発明・意匠・著作物などの、いわゆる無体物としての性格を持つ知的創作物も、有体物となんら異なるところはありません。② だが、この無体物を民法上の「物」としてこれに所有権を認めたとしても、それが具有する性質上の特殊性のゆえに、その法的内容は、民法の所有権に関する規定によってそのまま規律されるのに適せず、それぞれ特許権、意匠権、著作権として特別の規定により復せしめなければならないこととなり、法技術的にはまったく無意味なものとなってしまいます。③ そこで、本条は民法上の「物」を有体物に限定したものです。以上の趣旨から明らかなように、本条は、物権・特に所有権との関連において、異議を有するものです。④ 本条に言う、有体物とは、空間の一部を占める外界の物質、すなわち固体・液体・気体のすべてを含むというのが通説です。有体物であっても、生きている人の身体は、権利の客体とはならないから物ではない。ただし、身体から分離した歯・毛髪・血液などの人体の一部は公序良俗に反しない限り、物として取り扱われます。⑤ 法律上、物として取り扱われるのは、人の支配が可能なものでなければなりません。太陽とか星などの天体は、有体物ではあっても、民法上での物ではありません。また、空気とか海洋のように、誰でも自由に支配し利用し得るものも、物とは言えません。