民法第90条は、「公の秩序」「善良の風俗」を別々の意味を持つかのように規定しています。しかし、両者は合して公序良俗と略称され、行為の社会的妥当性を意味する総合的抽象的概念だと解されています。

 

公序良俗違反の判断基準に関し、判例は法律行為がなされた時点を基準として判断しています。この点に関し、契約成立時に公序良俗違反であったが、履行時点で公序良俗違反ではないとされる場合があります。この場合、契約締結時を基準に無効でよいが、契約成立時には公序良俗に反しなかった行為が履行時点で公序良俗違反とされる場合には、履行時を基準に無効と解する立場もあります。

 

憲法の私人的効力に関しては、我が国では、司法の一般条項を媒介として、憲法が適用されるとする間接適用説が通説となっており、本条がその媒介としての役割を果たすことになります。

 

判例も、「就業規則中、女子の定年年齢を男子より低く定めた部分は、民法90条の規定により無効である」とされています。

 

また判例は、「ユニオン・ショップ協定のうち、締結組合以外の他の労働組合に加入している者および締結組合から脱退しまたは除名されたが、他の労働組合に加入しまたは、新たな労働組合を結成した者について、使用者の解雇義務を定める部分は、民法90条の規定により、これを無効と解すべきである」と、しています。