不動産の一筆の土地の一部について、実際の取引においては、分筆手続前に一筆の土地を、当事者が事実上区分して、その一部を売買する例が、少なからず存在します。

 

判例は、当初これを否定的に解し、買主は所有権を取得し得ないものとしていました。しかし、後に改め、その部分が当事者間において、具体的に特定している限り、買主の所有権取得を有効と解しています。

 

また、一筆の土地の一部について、他人の取得時効が完成し得るか、という問題に関しても判例は、時効取得はもっぱら占有だけを基礎とし、公示方法たる登記とは無関係に認められているとの理由をもって、これを肯定的にとらえています。

 

満潮時には海水下に没し、干潮時には地表を海水上にあらわす干潟の土地所有権が問題になったケースにつき、判例は、海はいわゆる公共用物であって、特定人による排他的支配は許されないから、そのままの状態では、所有権の客体たる土地にあたらないとしています。

 

公有水面埋立法に基づく埋め立て免許を受けて埋め立て工事が完成したのち、竣工認可がされていない埋立地が土地所有権の客体となるかが争われたケースがあります。

 

この点について、判例は長年にわたり当該埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置され、公共用財産としての形態、機能を完全に喪失し、その上に他人の平穏かつ公然の占有が継続したが、そのため実際上公の目的が害されるようなこともなく、これを公共用財産として維持すべき理由がなくなり、同法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった場合には、土地として私法上所有権の客体となるとしています。