不動産と動産の差異について、先取特権における違いがあります。不動産の先取特権は債務者の特定不動産のうえに成立するのに対し、動産の先取特権は債務者の特定動産のうえに成立します。前者は、登記を要件とするが、後者は占有を要件とせず、しかもその動産が第三者に引き渡された後は、先取特権の効力は、これに及び得ないなどの相違が生じます。

 

質権における差異もあります。質権には、動産を目的とするもの(動産質)と、不動産を目的とするもの(不動産質)とがあるが、両者が要件を異にします。すなわち、前者は質物の占有移転をもって質権の成立要件とし、占有の継続をもって対抗要件とします。一方後者は、占有移転を質権の成立要件とする点では前者とは異ならないが、登記をもって対抗要件とする点で相違します。

 

抵当権は目的物の占有移転を伴わないものであるから、抵当権の客体となりうるものは、登記・登録の可能なものに限られます。したがって、不動産には抵当権の設定が認められるのに対し、動産には原則としてそれが認められません。もっとも、戦後における一連の動産抵当立法は、農業用動産・自動車・航空機など、一部の動産について抵当化の道を開くに至っています。

 

その他、無主物の帰属や符合についての法律効果を異にすること、用益物権や買戻し制度は不動産についてしか認められません。また、不動産に限って裁判管轄につき、特別の規定があること、不動産と動産とで強制執行の方法や担保権の実行としての競売手続きが異なることなど、その数は極めて多いです。