民法第90条

公の秩序または善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

 

 

本条は、法律行為の目的が、反社会性を帯びるとき、すなわち「公の秩序または善良の風俗」に反するときはその効力を認めず、無効とすることによって、法律行為の社会的妥当性を要求しているのです。

 

この法理は、私権の公共性・信義誠実の原則・権利濫用とともに、社会性を意識した民法の統一的指導理念を構成するものと解されています。

 

法律行為(契約)は、自由だといっても、それが社会の一般的利益や倫理的秩序、すなわち公の秩序・善良の風俗に反すれば、法律行為としての効力を否定されねばならないのは当然だと言えます。

 

強行法規(強行規定)の存在理由もここにありますが、法律行為の内容が、法秩序全体の目的に照らして是認できるものかどうかを、すべて個別具体的に、あらかじめ定めておくことは難しいことです。

 

そこで、法律は個別的な強行法規の他に、一般的・包括的な法の根本理念として、公序良俗という一般条項を設けました。そして、各個の法律行為の内容が、社会的に妥当であるかどうかを判断させる基準にしたのです。

 

したがって、裁判官は、具体的内容において千差万別な各種の法律行為の有効・無効を、公序良俗という基準に照らして判断しなければなりません。