明認方法に関して、判例は、未分離のみかん・桑葉・稲立毛にも認めています。すなわち、いずれも明認方法を施すことによって、独立のものとしての取り扱いを承認しているのです。

 

不動産以外のものは、すべて動産です。仮植中の植木などのように、土地に不着していても、定着物でないものは動産です。樹木も伐採されると動産になります。しかし、理論上は動産とみるべきであっても、船舶・自動車などのように、特別法によって、一般の動産の取り扱いを区別している場合があります。

 

特殊の動産について検討します。

無記名債権、たとえば無記名公社債・商品券・乗車券・劇場鑑賞券などのように、証券に債権者を表示せず、債権の成立・存続・行使がすべて証券によってなされる債権です。債権は有体物ではないから、物には含まれないはずですが、無記名債権の場合は、債権が証券に化体され、債権の取引はすべて証券によってなされるので、民法は証券の面からとらえて、無記名債権を動産とみなしています。

 

その結果として、無記名債権の譲渡は、証券の引渡しをもって対抗要件とし、さらに民法192条の即時取得の適用をも受けることになります。しかしながら、現在、有価証券に関する諸制度や理論が著しく整備、発展して、有価証券取引の迅速性や安全性は、動産以上に保護されています。したがって、無記名債権の動産擬制は、もはや実際上の機能を喪失したとみて差し支えないようです。