愛知県瀬戸市の瀬戸蔵ミュージアムを訪ねて館内展示を振り返っておりましたら、何とも長くなってしまい…(苦笑)。最後の最後、落穂拾い的に瀬戸のやきものの祖のお話と六古窯の紹介に触れておくことにいたそうかと。
陶器づくりに始まり、やがて磁器生産も始めた瀬戸にはやきものの祖と言われる人物が二人いるのですな。一人は「陶祖」と呼ばれる加藤四郎左衛門景正、略して藤四郎と呼びならわされていることは瀬戸の産土神である深川神社を訪ねた際にも触れておりました。
その際、「南宋に渡って陶業技法を学び瀬戸に伝えたとされる」ことには触れましたですが、単身渡海というはずもなく「曹洞宗の開祖道元と共に中国へ」という伝説があるのだとか。ま、存在自体が伝説ではあるようですが…。
でもって、もう一人の方は瀬戸に磁器製法をもたらして「磁祖」と呼ばれている加藤民吉という人物ですな。こちらについても、窯垣の小径資料館を訪ねたり折に触れるところがありましたが、この二人の「祖」によって本業焼(陶器)、新製焼(磁器)の両刀使いで大量生産を可能とした「せともの」の町となっていくわけで。
とまあ、先人の努力によって瀬戸はやきものの代名詞ともなっていくのですけれど、一方で「日本六古窯」の一つにカテゴライズされることによっても有難がられることになりますな。まあ、六古窯に数えられた中では最も出自が古いということもありますが。
展示では六古窯それぞれが生み出すやきものの特徴を説明してありましたので、以下にちとまとめておこうと思います。まずは瀬戸焼から。
瀬戸焼の特徴(愛知県瀬戸市)
瀬戸焼は白く美しい素地が特徴です。白さを生かして、いろいろな色の釉薬をつかったやきものが生み出されr、瀬戸焼の特徴のひとつとなりました。白い素地に青色(呉須)で絵をかき、そのうえに透明な釉薬をかけて焼く「瀬戸染付」は瀬戸市の代表的な技のひとつです。
常滑焼の特徴(愛知県常滑市)
常滑焼は釉薬をつかわない「焼締(やきしめ)」によるやきものが特徴です。貴族や社寺向けの祭器や日用品を生産していましたが、地元の需要に応えてつぼなどの日用品もつくるようになりました。また、鉄分が多く、低い温度でもしっかり焼ける土の性質を持っているため、大きなやきものをつくるのに適しています。
信楽焼の特徴(滋賀県甲賀市)
伝統的な信楽焼は釉薬をつかわず焼くため、土のざっくりとしたところや、焼くときに生地がへんかすることで印象深い見た目になることが特徴です。とれる土は火に強く、タイルから大きなものまで対応できる、いろいろ作ることができる土です。
備前焼の特徴(岡山県備前市)
備前焼は絵付けや釉薬をつかわず、土の質や成分が焼いたときに色や質のちがい(景色)となってあらわれることが特徴。景色には「胡麻」「緋襷」「牡丹餅」などたくさんの種類があります。また、1,200度以上で約2週間かけて焼くため、ほかのやきものと比べても固く割れにくいのも特徴です。
丹波焼の特徴(兵庫県丹波篠山市)
丹波焼はひとつの技法にとらわれず、人々がほしいものにきづき、さまざまな生活用の器をつくり続けています。丹波焼は焼くときにかかる灰による明るい自然な色がきれいな飾りとなるのが魅力のひとつです。そのほかにも登窯をつかうようになってから考えられた木の灰の釉薬などいろいろな材料の釉薬を使用しています。
越前焼の特徴(福井県越前町)
越前焼はシンプルで強いつくり、温かみのある土と灰を使った釉薬の美しさが特徴。越前の土は鉄分を含み、火に強く細かくて粘りが強いため、こまかな形をつくることができます。また、ガラス成分を多く含むため、焼いたときに土の隙間にガラス成分がはいり隙間を埋め、固く仕上がります。
ということで、展示解説でもって日本六古窯それぞれの特徴を振り返りましたですが、解説文にやたらひらがなが多いのは子供向けを意識していたのかも(漢字には悉くルビがふってありましたし)。その分、いささか特徴の説明としては食い足りない気がしないでもないものの、個人的な指向のほどは再確認できたような。取り分け惹かれるのは備前焼と越前焼…となれば、その傾向も想像がつくところでしょうなあ、きっと。
とまれ、振り返るのに長く掛かった分、実際の滞在時間も長かった瀬戸蔵ミュージアム。やきものの町としての瀬戸は、瀬戸焼そばを食した店のおじさんの話ではありませんが、どうも斜陽化しておると見えるところながら、このミュージアムの力の入れ具合には底力のようなものを感じたものなのでありました。