ウィークエンド・シンデレラ ◇26 | 有限実践組-skipbeat-

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 いつもありがとうございます、一葉です。

 弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、はるやまち様からお与かりした記念リクエストの第二部続きをお届け致します。


 オレンジカラー・ナンバリングは二部の意。

 前話こちら【10111213141516171819202122232425


■ ウィークエンド・シンデレラ ◇26 ■





 水森都は低迷し続けている社交ダンス界の中で、特に若手育成に力を入れている人物だ。

 現役時代に日本の頂点に達した彼女は、意気揚々と世界大会に挑んだ。結果は惨敗。日本のレベルの低さを痛恨するのみにとどまった。


 以降、幾度も挑戦したもののやはり入選することすら叶わず。


 改めて世界の壁の高さを知り、その厚みを知った彼女は潔く現役を退く。そしてそのまま若手育成へ。



 彼女の指導姿勢はやる気と実力さえあれば来るものを拒むことは無かった。

 ジュニアだろうと学連出身だろうと一切差別をすることなく。

 その話を聞いて、社は迷わず水森の門を叩いていた。


 そう。社は水森都のバックアップを得てターンプロに転身していたのである。


 プロとなって間もなく、足を故障してしまったことで社もまた現役を退くに至ったが、水森都から受け継いだ精神は社の中にも息づいている。


 社が蓮と出会うことになったのは、水森都を師と仰いだことで必然的に所属することになった団体に蓮も所属していたからだ。

 しかしそちらに関しては本編と直接かかわりがないので、これ以上は割愛しておく。



 その水森都が主宰する舞踏会・・・正式名称は鎖国プロアマ選手権というのだが・・・は、間違いなくスキップ・ビート選手権の前哨という意味合いを持っていた。


 ホテル系パーティ会場に到着したキョーコは、異様な熱気に包まれた雰囲気をすぐに肌で感じ取り、目と口を大きく見開いた。



「 え。この人たちみんなが参加者なんですか。100人以上はいそうですけど 」


「 それだけ若手に期待をかけているってこと。とはいえ、現役選手は半分もいないかな 」


「 ですよね。だって若手育成を目的としているはずなのに、あちらこちらに年配者が・・・ 」


「 それはね、もともと水森は世界に通用するプロダンサーを輩出したいと考えているからだよ 」



 日本における社交ダンスの歴史は長い。

 しかし世界の社交ダンス界に飛び込んだ時、その人物がたとえ日本のトップクラスだったとしても赤子同然に違いなかった。

 どんなに頑張ってみたところで、日本は20位にも届かない。


 そんな世界の強さ、世界の高さ、世界の凄さを語れるのは経験者のみだから。



「 だから水森は、先輩から後輩へ。知識と経験を若手に託せる場を設けようと考えたんだ。彼女がこの選手権を主催し続けている理由がそれ 」


「 でも、だったらどうして普通の競技会と同じように申請をして、お金を払って参加するシステムなんですか。私たち、招待された側なのに 」


「 申請できるのは招待された人間だけに限られているけど、参加するのにお金を払うのは、そうじゃなければ運営し続けるなんて無理だからだよ。場所の手配、人の手配、警備の手配、プログラムの構成や音の準備。やらなきゃならない事は相当ある。それを個人が全て担うのは到底無理だ。たとえそういうノウハウを持っていたとしてもね。個人の財力だけで選手権を開くなんて到底できることじゃない 」


「 そう、ですよね。しかも、選手権って名前なのに成績には出来ないんですよね? 」


「 そ。公式じゃないからね 」



 なのにわざわざここに来たんだ。大切な試合の前なのに。

 その理由が最初、キョーコにはまるで判らなかった。



「 それで?お前は何に登録したんだ、蓮。キョーコちゃんと何に出る? 」


「 ペア年齢別とランキングに出ます。もちろんラテンの。ランキングのここ、見てくださいよ 」


「 なんと、貴島&琴南ペアがいるじゃないか。いや、当たり前って言えば当たり前か。二人は水森の秘蔵っ子だ 」


「 え?あのペアが今日、ここで踊るんですか? 」


「 それだけじゃないよ、最上さん。順調に残ることが出来たら、俺達は二人と一緒のフロアで踊る事になる 」


「 うそっ?!一緒のフロアで私たちが?うわぁ、すごいドキドキするぅ! 」


「 ちなみにこのランキング、ファイナルまで残ると一組ずつコールされて、スポットライトを浴びながらフロアに出ることになるんだ。その快感は体験したものにしか分からない。あれを味わったら君、もうやめられなくなるよ 」


「 ・・・それは、楽しみですね 」


「 クス。良い顔するようになったね、キョーコちゃん。たくましい 」


「 え。それってふつうは頼もしいって言いませんか 」


「 ん?俺、何か言い間違えた? 」


「 あー!!社さん、発見!!カナエちゃん、いたよ。大先輩の社さんとモダンの帝王、敦賀くんが 」


「「 ・・・っっ貴島、噂をすれば 」」


「 えっ 」


「 やぁ、やぁ、やぁ、久しぶり!今年は敦賀くんと社さんが登録してきたって水森さんから聞いて嬉しくなっちゃって、会場中を探し回っちゃったよね、俺。あ、もしかしたらこの子が敦賀くんのまぁまぁなパートナーちゃんってこと?! 」


「 貴島っ!! 」


「 どうも初めまして、最上キョーコです。少し前から敦賀さんのまぁまぁなパートナーを務めさせていただいております 」


「 あはははは、面白いね、この子。自分からまぁまぁって言っちゃうんだ 」


「 本当のことなので 」


「 ふふん?そうなんだー。なるほど、敦賀くんが頑張っちゃう訳だよねー。ねぇ、君は知ってる?敦賀くんってモダンの帝王って呼ばれているんだけど、それは強いって意味じゃないって 」


「 え? 」



 あ、そういえば。

 以前、敦賀さん自身がそれを目指してるって言っていたような?



そのあだ名がついたのはね、ただ単に仏頂面が高じただけなんだよ~ぷぷぷ 」


「 俺に聞こえないようにコソコソ話すのやめてもらえるかな?貴島くん 」


「 でも、敦賀さんがモダンの帝王って話自体は的を外してはいないと私は思っていますよ 」


「 はい、来ました。彼女が俺の極上のパートナー、琴南奏江ちゃんです 」


「 初めまして・・・と、お久しぶりです。琴南奏江です 」


「 は・初めまして!!最上キョーコです。感激です!ホテルパーティでお二人のダンスを拝見したときから私はお二人のファンで、とても素敵で何度も繰り返しDVDで拝見しました! 」


「 あららら。ということは、もう俺達ライバル視されちゃっているってことかなぁ?それは光栄。それは楽しみ 」


「 いえ、そういう意味じゃなくて、私は本当に・・ 」


「 私もとても楽しみにしています。パートナーが変わってからの敦賀さん、とにかく凄いって噂をうかがっていましたから 」


「 どうも 」


「 …すごい?すごいって具体的にどういう?・・・それって、パートナーがまぁまぁなのに凄いって話? 」


「 それ 」


「 ドキ! 」


「 知りたいのなら前のパートナーと自分のそれを見比べてみればいいと思うわ。一目瞭然だから 」


「 ・・・っっ 」



 どうして見ないようにしていたのに、いまさらそんな酷なことを。



「 それじゃ、社さん、敦賀さん、もちろんファイナルまでいらっしゃるおつもりなんですよね。楽しみにしています。もちろんお二人のダンスも 」


「 こちらこそ。久しぶりにお手並み拝見させていただきます 」



 皆は顔見知りだったのね。



 自分が憧れたペアと、当たり前のように普通に言葉を交わす蓮を見て、やはり蓮は凄いダンサーだったのだ、と改めてキョーコは思った。



「 つまり、私が今日ここに来られたのは敦賀さんのおまけってことか 」


「 それは違うよ、キョーコちゃん。二人はペアで認められたんだ。水森はそんな甘い指導者じゃない。だから胸を張っていいよ 」


「 ・・・あの、話は変わりますけど、私、社さんの燕尾服姿って初めて見ました。素敵ですね 」


「 最上さん。知らないだろうから教えてあげるけど、社さんは現役時代、この姿で女性たちからとにかくキャーキャー言われていたんだ。学連の社って言えば並のアイドルより有名だったんだからね 」


「 へー、そうだったんですね!!だから今日、燕尾服姿なんですか?!わくわく 」


「 お前!そういうことを面白そうにキョーコちゃんに話すなよ! 」


「 いいじゃないですか。本当のことですし。昨年は参加しなかったし、だから今年は去年の分も合わせて二年分の歓声をもらうことになるだろうね 」


「 え? 」


「 つまり今日、社さんが燕尾服なのは、社さんも踊るからなんだ。つまり社さんも参加するってこと。選手権に 」


「 ええ、うそ?!相手はどなたなんですか?種目はなに?社さんが踊るのって、私、初めて見るかも! 」


「 お前!なんでばらすんだよ、せっかく内緒にしていたのに!! 」


「 はい、はい、いずれバレることなんですから。あ、相手は俺 」


「 はい? 」


「 社さんと踊るのは俺だよ、最上さん。社交ダンスには男女ペアの他に、ダブルスっていうのがあるんだ。まぁ、正式種目ではないから完全にお遊びなんだけど。なかなか見どころあると思うから楽しみにしてて。何しろ燕尾服の男二人が踊るんだから注目度は確実だよ。ちなみにデモだからフロア独占で踊るから 」

※デモンストレーション・・3分間の演技披露。演目に合わせた照明などの演出も施される


「 ええええっっっ?!!何それ、眼福必死じゃないですか!私、絶対拝見しますね、社さん! 」


「 いや、そんな力を入れてくれなくていいよ。なんてったってただの遊びなんだし。・・・俺は出たくなかったんだけど、水森さんたってのお願いで仕方なく踊るだけだし。3分だけなら何とかって思って


「 だからこそ見るんじゃないですか!このパーティの話を聞いたときはヒートダンス選手権の前に正気ですかって、本気で思いましたけど 」


「 この選手権は本番前のリラックスの場なんだ。選手同士が事前に顔合わせできる場でもあり、選手たちの緊張を互いに解きほぐすっていう目的も含まれている 」



 ああ、だから。

 こんな雰囲気なのかと思った。


 蓮の言葉通り、システム自体は競技会と変わりないように見えたけれど、キョーコの印象では中身は大人の大運動会という感じだった。

 ちなみに会場内で振る舞われる食事は、そのOB、OGたちの寸志で賄われているらしい。


 自分たちよりもっと大人の観客で埋め尽くされたここでは、誰もがはしゃいだ笑顔を浮かべていた。


 会場全体は和やかムードに包まれていて、この空間にいるだけでただ楽しいと思えた。



 だからだろうか。それともこれが公式な選手権ではないと分かっているからか。

 雑誌でまぁまぁなパートナーというあの言葉を見つけてからずっと不調を引きずっていたけれど、蓮とフロアに立っても不思議とキョーコにプレッシャーは無かった。



 蓮の言葉通り、二人はファイナルまで進んだ。もちろん、貴島&琴南ペアと一緒に。

 最終戦で一組ずつコールされ、スポットライトを浴びながらフロアに出たときには快感のあまりめまいを覚えた。

 背筋がゾクゾクと震えて、ほんの少しだけシンデレラになれた気がした。


 これをもっと味わいたい。

 不覚にもそう思ってしまった。それこそ蓮の思惑通りに。



 残念ながら、表彰台は逃したけれど

 強い手ごたえを感じることも出来た。

 それだけでだいぶ前向きになれた気がする。


 さて、そして・・・。



「 きゃー!!敦賀さん、社さん、素敵っっ!!! 」



 蓮と社のダブルスは会場内を虜にした。

 まるで二人の王子の饗宴のごとく。


 選手権が終わる頃にはくたくたで、笑顔を作り過ぎて頬に痛みを覚えるほど、とても楽しい一日だった。



 だから見てみる気になれたと思うのだ。


 琴南奏江にお勧めされた

 蓮と前のパートナーのダンス映像を。





 ⇒◇27 に続く


世界における日本の順位がうろ覚えで、取り敢えず20位に手が届かないと書いたのですけど、実際はそれよりさらに下だったという記憶があります。検証するのが面倒だったのでしなかったのですが、ご興味がある方はご自身でお願いします。


ちなみに男性同士のダブルスも本当にあります。正式種目ではないはずですが、こちらも未検証です。そのダンスシーンを私はYouTube動画で拝見しました。素敵すぎて身悶えました♡



⇒ウィークエンド・シンデレラ◇26・拍手

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