いつもありがとうございます、一葉です。
弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、はるやまち様からお与かりした記念リクエストの第二部続きをお届け致します。
オレンジカラー・ナンバリングは二部の意。
前話こちら【1 ・2 ・3 ・4 ・5 ・6 ・7 ・8 ・9 ・10 ・11 ・12 ・13 ・14 ・15 ・16 ・17 ・18 ・19 ・20 ・21 ・22 】
■ ウィークエンド・シンデレラ ◇23 ■
キョーコと待ち合わせたコーヒーショップに蓮が到着したのは、約束から20分ほど遅れた頃だった。
テーブルで15卓。カウンターが10程度。合計70席ほどの店内利用率は目算で7割と言った所か。
ガラス越しにすぐキョーコの姿を見つけた蓮は、即座に店に飛び込むような真似はしなかった。
自分で選んだそれだろうに、コーヒーを口に含んだ途端に、苦~い・・・という顔をしたキョーコを見て微笑を浮かべる。
そんな仕草でさえ可愛いと思わせるなんて、かなり罪作りではないだろうか。
こんな風に待ち合わせるのは初めてだっただけに、少々気持ちが浮ついた。
「 いらっしゃいませ。ご注文がお決まりでしたらどうぞ 」
「 えっと、これを・・ 」
声に出さずにメニュー表で注文を指し示す。お金を払って注文品を受け取り、キョーコの対面に蓮が座ると、キョーコがじろりと蓮を睨んだ。
「 お待たせ、最上さん 」
「 ・・・なんで自分は現金払いなんですか? 」
「 うん?なんでって……ていうか、見てたのか 」
「 すぐ分かりましたよ。敦賀さんが来たって 」
「 そう。そんなに入り口を見つめてくれていたんだ。ごめんね、待たせて。待ちわびちゃった? 」
「 別に。ショップのプリペイドカードがここにあるんですから取りにくればいいじゃないですか 」
「 …それは君にプレゼントしたものだから。そこに入金されている分だけ待ち合わせが出来るだろ。それを削るような真似はしたくない。ところで、何を飲んでるの? 」
「 コーヒーですけど 」
「 そう。もしかしたらミルクも砂糖も入れずに? 」
「 っ?!・・・ミルクはともかく、砂糖が入っていないってどうして分かるんですか 」
「 だって、トレーにスティックシュガーの抜け殻が無いし、さっき一口含んだ途端に苦~いって顔をしてただろ。だから 」
「 見てたんですか!?悪趣味 」
「 見えちゃったんだよ。それで、そんな顔でさえ可愛いと思わせるなんて罪深いなって思った 」
「 ベタ惚れか 」
「 かもね 」
蓮の後ろを通り過ぎた一人の男がボソッと呟いたそれに、当たり前顔で呟いた蓮に、キョーコがすかさずツッコミを入れた。
「 誰に返事をしているんですか 」
「 いま通りすがりに呟いて行った人 」
「 それ、聞こえてないですよ。あっちの席に行っちゃいました 」
「 クス。なんだ、そうなんだ。残念 」
微笑を浮かべながら自分が注文した抹茶オーレの紙コップを持ち上げた蓮は、それに口をつけることはせず、もう一方の手でキョーコのコーヒーコップを持ち上げるとその場に抹茶オーレを置いて、キョーコのコーヒーに口をつけた。
「 あっ!? 」
「 こっちは俺がもらうよ。ところで、聞いてもいいかな 」
「 なんですか 」
「 この前から、何をそんなにいら立ってるの? 」
「 ・・・・別に 」
「 イラついてない?それならそれでいいけど。でも、自分が不調だってことは理解しているよね? 」
「 それは・・・はい、分かっています。すみません、言われた通りに上手に踊ることが出来なくて 」
「 上手に?なにそれ。そんなこと考えていたんだ。なんで? 」
「 はぁ?なんでって、当たり前じゃないですか。だって敦賀さんがB級に上がるためにはヒートダンス選手権で準決勝に進めなきゃいけないんですから! 」
「 そうだね。だから、なんで? 」
「 なんでって聞く方がおかしいでしょ!!だからB級に上がるためには・・ 」
「 それは今聞いた。だからなんでって聞いているんだよ。君が俺とペアを組んでくれたのは、もともとシンデレラ気分を味わうためだったよね?俺のためにB級に、なんて考える必要ないじゃないか 」
「 ・・・っっ!!そっちこそ。なんで、いまさらそんなこと言って来るんですか 」
「 ごめん。質問の意味が判らない 」
「 どうしてよ。敦賀さんはスキップビート選手権を目指していたんじゃないんですか?そのためにパートナーが欲しかったんですよね!? 」
「 ・・・・・違うよ?俺がパートナーを求めたのは踊りたかったからだ。君にはずっとそう言っているよね? 」
「 でも、目指していたんですよね、2年前は!!でも出場できなかったんですよね、予選に落ちて。あんなに期待されていたのに!だから、それを知ったから私は・・・ 」
「 ん・・・なにそれ。ちょっと待って、それも誰かから聞いた?あ、ひょっとしたら競技会の時に偶然会ったっていうあの女性から? 」
「 そうですね。正確には、その方からお借りしたバックナンバーにざっと目を通して知ったんですけど。前のパートナーさんとはとても息の合ったペアだったそうですね。注目選手として誰もが敦賀さんペアの活躍を期待しているとまで書いてありました 」
「 ・・・・そうだね。そう言えばそんなこともあったかも 」
もうずいぶん昔のことのような気がする。
「 残念でしたね。期待に応えることが出来なくて 」
「 それがその時の実力だったってことだよ 」
「 それで、ここに来る前、敦賀さんはどちらに行ってらしたんですか 」
「 ん? 」
「 もしかしたら前のパートナーさんの所とか? 」
「 違うけど。なんで? 」
「 だって、水森都ダンススタジオってところに入って行ったじゃないですか 」
「 …っっ?もしかして君、俺のあとを? 」
「 そうですか。前のパートナーさんの所じゃないとしたら、新しいパートナーさん候補でもいらっしゃるところでしょうか。そうなりますよね、やっぱり。やっぱり私じゃダメだって。そう思ったんですよね。だから敦賀さんは今日それを私に言うために・・・ 」
暗い顔、暗い声、いじけた様子。
それだけは手に取るようにわかった。
だからって意地悪を言うつもりはなかったけれど、試そうとは思ったかも。
だって知りたかったから。
彼女がどうしてこんな事を突然言い出したのか
その理由が知りたいと思った。
「 そんなつもりもないけど。でも仮にもしそうだって俺が言ったら、君は俺のパートナーを降りてくれるのか? 」
瞬間、キョーコの目から涙がこぼれて、蓮は目を見張った。
自身のそれに驚いたのか、勢い立ち上がって駆け出そうとしたキョーコを慌てて立ち上がった蓮が抱き止めた。
「 ごめん!!嘘だよ。そんなショックを受けるなんて思わなかった。嘘だよ、ごめん 」
「 いいです、もうどうでも!!降りて欲しいなら今すぐ降ります!言われたことだって満足に出来ないようなまぁまぁなパートナーなんて要らないですもんね!! 」
周囲の視線が一斉に集まる。
けれど手を緩めるわけにはいかなかった。
少しでも油断したら、そのまま逃げられてしまう気がした。
「 ・・・最上さん、それ何の話? 」
「 この前の雑誌にそう書いてありました!新しいパートナーさんとはどうですか?って質問に、まぁまぁですって答えたんですよね!すみませんね、まぁ、まぁで!!だから、言ったじゃないですか。最初から私なんてパートナーにしなきゃよかったのに!! 」
「 いや待って。もしかしてそれで?それで俺が前のパートナーの所に行ったって想像したの? 」
「 そうです、でも違ったんですよね!!間違えました。新しいパートナーさん候補の所ですよね! 」
「 違うから!!っていうか、なに、それ。それってあれだよね。ヤキモチ妬いたってことだよな?君が?俺に? 」
「 違います!!って、なに笑ってるんですか敦賀さん!失礼にもほどがあります!! 」
「 そうだね、分かってる。少なくとも現時点で俺達が周りの人たちに多大な迷惑をかけているってことは 」
「 ・・・はぁっ?? 」
「 すみません、お騒がせして。ちょうど二人で立ち上がった所ですし、このまま俺達は外に出ますので・・ 」
「 っっっ、あっ、すみませんっ!! 」
「 はい、自分の荷物とコーヒーを持って、行こう。失礼しました 」
「 ししし失礼しましたっ!! 」
キョーコの肩を抱いて急いで外に出た刹那
蓮は思いっきりキョーコを抱きしめたくなってしまった。
どう抵抗しようとも口元が緩んでゆく。
もちろん、店内からの視線をまだビンビンに感じていたから
それは出来なかったのだけれど。
⇒◇24 に続く
水森都でピンとくる人、いますでしょうか。
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