ウィークエンド・シンデレラ ◇19 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 いつもありがとうございます、一葉です。

 弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、はるやまち様からお与かりした記念リクエストの第二部続きをお届け致します。


 オレンジカラー・ナンバリングは二部の意。

 前話こちら【101112131415161718


■ ウィークエンド・シンデレラ ◇19 ■





 社交ダンス大会のノービスクラスは、ベーシックステップという決まったステップのみしか使用できない。


 キョーコが覚えたという10ダンスの足型はその既定のものに過ぎず、つまるところキョーコはやっとボールルームの入り口から一歩進んだというレベルだった。



「 さて。晴れてD級になれた所で新しいステップを体得してもらうわけだけど 」


「 はい 」


「 まずは姿勢を伸ばして。体にまっすぐな針金を通したイメージで 」


「 はい 」




 競技会で審査される項目は、ポスチャー、ムーブメント、ミュージックの3つだ。

 特に初心者のうちはポスチャー、つまり姿勢が重要視されている。


 スタンダードでは姿勢を伸ばしてきっちり相手をホールドしながら動けることが望ましく、また自由に動けるラテンにおいても首と背筋を伸ばした状態で踊ることが望ましいとされていた。



 どちらもきれいにできるようになるには通常かなりの時間を要する。それをキョーコがたった二ヶ月で習得したのは素晴らしいことで、常日頃からのキョーコの姿勢の良さが呼び込んだ結果だと言っても決して過言ではなかった。


 昇級するための競技会は毎週どこかで開催されている。二人の次の出場は、社が定めた2ヶ月後。

 つまり新たなステップルーティンを覚えるのにそれぐらいは最低かかるという目測だった。



 とはいえ、競技会において特に予選のうちは、男性の力量に左右されることが知られている。なぜなら上手なリードがあると、パートナーはステップを知らなくても踊れてしまうからだ。

 その点に関して蓮は非常に優秀なリーダーであると言えた。


 その証拠に、先日蓮と出場したノービスの競技会で、キョーコと蓮はあっさり優勝をかっさらっていた。



「 その姿勢のままおさらいしよう。この前の競技会では運よく優勝できたけど、間違えている所があったからね 」


「 はい、すみません! 」


「 ベーシックステップには角度、回転量、方向、上下動、手足の使い方まで細かく規定されている。それを間違わずに実践できなきゃまずいよ 」


「 はいぃぃぃ!! 」



 ちなみにムーブメントではいかに滑らかに動けるか、いかに移動距離が出ているか、いかにボディアクションで踊れているかを見られる。

 姿勢を崩すことが出来ないスタンダードでは特に、動きの滑らかさや移動量などが肝要で、カップルが組まない状態で踊ったり、ある程度姿勢を崩したりできるラテンでも、やはり移動の仕方やアクションが重要だと言われていた。


 また競技会で使用される音楽は主催者側が選ぶため、出場する誰もがぶっつけ本番となる。そんな状態でどれだけリズムを正確にとれているかも審査対象になっていた。



 社交ダンスや競技ダンスはメロディーラインでは踊らない。なぜなら競技会の曲は毎回違うものがかかるから。

 そのため大切なのはメロディーではなく、正確にリズムが取れるかどうかが審査対象で、例えば同じリズムの取り方でもいかに他と違った表現で個性を出せるかが昇級への鍵でもあった。


 とはいってもさすがにキョーコはまだまだこのレベルには達していないのだが。



「 そう。うん、出来るじゃないか 」


「 練習では出来るんです。練習では。でも、これが本番だって考えると緊張しちゃっていました。前日の夜に眠れなかったこともあって余計に頭が真っ白になっちゃってて 」


「 ・・真っ白になった人の踊りじゃなかった気がするけど 」


「 本当ですか?でも実はよく覚えていないんです 」



 ところで、キョーコでも出場できたようにプロの競技会に出場するのに特別な資格などは必要ない。

 どんな人でもプロのノービスという競技会に出場し、決勝に残るなどの条件を満たせばプロの選手であると認められるのだ。


 つまりこの時点でキョーコはプロの社交ダンサーになっていた。

 しかし講師の資格を持っていないため、教える仕事は出来ないが。



「 いいことだよ、それは。頭じゃなくて自然と身体が踊ってくれるなら言うことなし。じゃ、少しずつ新しいことをやって行こう。まず、この形から、腰を捻って左足をここに降ろして? 」


「 えええっっ?!! 」


「 ええ、じゃない。次、上げた右足をこっちに置いて、体重移動でゆっくりゆっくり動作する 」


「 うう、姿勢が苦しい 」


「 もっと腰を捻る!! 」


「 折れちゃいますよ!! 」


「 君なら出来る! 」


「 うぇええええ・・・・っ 」


「 そこまで行って左足を上げて、今度はこっち。そう、そのあと右足をここ。・・・うん。ま、最初はこんなもんだろうね。じゃ、今のそれに手の動きを加えて100回ぐらい繰り返そうか 」


「 はあぁぁぁ?もう、どんだけダンス好き!! 」






「 ・・・・・・敦賀さん、もうダメ 」


「 そう?100回ぐらいやったかな。もうちょっと筋肉がつくともっと楽に優美に動けるようになると思うけど 」


「 優美ですか、優美…。はっきり言ってそんな余裕全然ないですけど 」


「 みたいだね。練習の時だから大目に見るけど、そもそもダンスでは表情も大切なんだ。だからそんなしかめっ面しない!シンデレラは常に笑顔なんだろ 」



 人差し指で額をつんと突っつかれ、キョーコは両手でおでこを覆った。



「 そんな昔の言葉を引き合いに出さないでくださいよ 」


「 ちっとも昔じゃないよ。君はシンデレラの気分を味わいたいんだろ。フロア中の視線を集めて、あのお嬢様は誰ですかって囁かれるような女性に 」


「 それ、まだだいぶ険しそう。・・・・私、思うんですけど、パートナーの皆さんって本当にこんな動きが出来るんですか? 」


「 出来るからC級に上がれるんだろう 」


「 私、無理な気がする 」


「 どうした。出来るよ、君なら 」


「 どうして?どうしてそんな風に思うんですか。敦賀さんがそう思う根拠を教えてくださいよ 」


「 根拠?そんなのないよ。ただ君なら出来ると信じているだけ 」


「 ・・・っっ・・・そんな生殺しなセリフ…っ 」


「 なに? 」


「 なんでもないです!! 」


「 そ。疲れたんだろ?少し休憩しようか。待ってて、ドリンク作って持ってくるから 」


「 ふぁい 」



 蓮が言ったドリンクとは、プロテイン飲料のことだ。

 以前ひどい筋肉痛になって、蓮にどうぞと勧められ、痛みが消えた魔法の飲み物。


 蓮は体の大きさに反してやけに食が細いけれど、にもかかわらず筋肉質な体型でいられるのはプロテインのおかげだと思われた。



 ダンスをしている時の蓮はすごい。

 とにかく凄いの一言しか出てこない。

 それこそ、上尾に教わった通りに・・・・。




「 はい、持って来たわよ、ダンス雑誌! 」



 出場した競技会のノービスクラスで優勝を飾った数日後の火曜日、約束通り上尾がダンス雑誌のバックナンバーを持ってきてくれた。

 特集されていたのはB級からA級に上がる可能性を秘めた注目の選手たち8名で、その一ページを蓮が飾っているものだった。



「 わ、本当に敦賀さん・・・。いまよりちょっと若い感じ 」


「 そりゃそうよ。そろそろ二年近く前になるもの 」



 上尾の談とその雑誌の紙面によると、そもそもプロアマ問わずC級、D級に属するペアはかなり多く、競技会によっては250組程が出場することもあるらしい。

 だがB級ともなると途端に人数は絞られ、場合によっては出場者が少なすぎるために競技会自体を縮小する団体まであるとか。



 そうか、こんな特集に載っちゃうような人だったのか、敦賀さんは。



 一人でトイレで唸っていたり、ダンスがしたいんだと言って壁ドンして来たり、あるいは床ドンしちゃったり、挙句の果てには鍵を閉めて自分を閉じ込めようとしたり。そんなことをしちゃう人が、ダンス界の凄い人。



 もちろん自分もそれを薄々感じていた。

 ダンスのダの字も知らなかった自分がやってみてもいいかも、と自分に思わせたのは蓮のダンスだったのだ。

 でも実際にあんなものを目の当たりにしてしまうと、蓮が酷く遠い存在のように感じられた。



「 最上さん、お待たせ。今日はブルーベリー味にしてみた 」


「 ありがとうございます 」


「 この酸味が美味しいよな 」


「 そうですね 」


「 ?・・・どうかした? 」



 こんな事を聞くのは今さらな気もするけれど。



「 敦賀さんって、思い込んだら一直線ってタイプだったりするんですか? 」


「 俺?そんなことないと思うけど 」


「 じゃあ、どうして私をパートナーに?私、わからなくなっちゃった 」


「 その理由に関しては何度となく君に話していると思うけど 」


「 だから、余計に判らなくなっちゃったんです。私はただ、シンデレラ気分を味わいたいってだけですよ。でも敦賀さんは違ったんですよね?社交としてのダンスじゃなくて、競技としてのダンスがしたかった。それなら、私じゃなくてもっと適した人を選ぶべきだったのに 」


「 どうして? 」


「 だって、私の筋肉痛が酷かったのを覚えていますよね?ちょっと踊ったぐらいでヘロヘロになっちゃった私じゃなくて、せめて経験者さんから選ぼうとは思わなかったんですか? 」


「 正直に言うと最初はちょっと思っていたんだけど、すぐやめた。だいたい、社交ダンス愛好家の平均年齢は60代後半で、熟練した人たちの中から選ぼうとしたら上は目指せないし。なんてったって競技ダンスは踊りの強さやスピードや技、表現力を競うものだからね 」


「 別に年配者を選ばなくてもいいじゃないですか。この前の競技会だって私と似たような年の人がいっぱい出場していたじゃないですか 」


「 そうだね。でもそういう人だとそれなりに型が出来ちゃっているから嫌だと思ったんだよ。あのね、最上さん。少なくとも俺は初心者の君よりずっとボールルームを理解しているつもりだ。長く踊り続けていた人が必ず上手いとは言い切れないように、たとえ俺と同じような志を持った相手を見つけられたとしても、踊りやすいかどうかは別問題。

 他のスポーツの事は知らないけど、ダンスに限っては経験年数にそれほど深い意味はないんだ。20歳でターンプロになった人が、たった数年でトップにまで駆け上がる事だってあるんだから。それこそシンデレラのように。君だってその可能性を十二分に秘めている 」


「 それって、社さんのことですよね? 」


「 あれ。もしかしたら誰かから聞いた?社さんからってことはないだろうし 」


「 この前、会場で偶然出会った上尾さんが・・・ 」


「 ああ、そうか。なるほどね 」


「 そもそも、ターンプロってなんですか? 」


「 くす。そこから?ターンプロって言うのは、学生ダンスをやっていた人が、卒業して一般になったのを機にプロに転向することを言うんだ 」



 実は、社交ダンスに級制度があるのは日本独自のもので、競技ダンスが盛んなアメリカ・ドイツ・イタリアなどではその順位だけがレベルの判断となっている。

 例えば○○という競技会で3位に入賞したレベル、という具合だ。


 そのため、外国の場合はアマチュア選手のレベルが高く、トップクラスのアマチュアがプロよりレベルが上、ということは特に珍しいことではなかった。


 しかし日本では総じてプロ>アマの図式が成り立つ。

 分かりやすく言うと2段落ちと言われていて、日本のアマチュアA級が、プロのC級レベルだと言われている。


 しかし近年、アマチュアA級には子供の頃からダンスを始めているジュニア出身者がいることも多く、そうしたトップクラスのアマチュア選手の場合だとプロに転向してすぐ全日本クラスに入ることもしばしばで、近年は一概に2クラス下・・・という認識は薄れてきていた。



 そんな中、学生ダンスからターンプロに転向してたった数年でA級に駆け上がったという社のそれは、非常に素晴らしい快挙だった。



「 そんな社さんも君を認めているんだ。最上さんはきっとシンデレラになれる 」


「 ・・・・ 」


「 ちなみに言うとね、俺が君をパートナーにしたいと思ったもう一つの理由に、俺が常に心に抱いている進取の気性を失いたくないという思いも関係している 」


「 シンシュのキショウ? 」


「 そう。新しいものを取り入れる進取の気性を失ってはスキルはそこで停滞する。俺はそんなダンサーにはなりたくない。常に前を、常に上を目指していたいから 」


「 すごい気迫 」


「 でね、単純に俺は君というパートナーをとても気に入っているよ。特に、指導しているだけなのに腰に触れただけで一瞬のけぞっちゃうところとか、無防備に潔いターンを決めたあとで、スカートの下の様子が見えたかどうかを確認しようとするところとか? 」


「 っっっ 」


「 今日は柄付きじゃないんだね? 」


「 っっ%&#$&#%$&!!! 」


「 あ、ごめん。なに言ってるんだか判らない 」


「 やっぱり見えていたんですね、この変態王子っ!!! 」


「 ぷっ 」



 あはははは、と蓮が笑い出したタイミングで社が顔をのぞかせた。



「 お前ら、まだ遊んでいるのか。ドリンク取りに来てから10分は経っているはずだろ。無駄に競技会に出場する気が無いなら練習しろ 」


「「 はいっ 」」



 パートナーとしての自分を気に入っていると蓮から言ってもらえたことは単純に嬉しかった。


 だからこそ胸につかえたもう一つが気になる。

 いつかそれを聞ける日は来るだろうか。



 どうして前のパートナーとセパレートしたんですか?という、そのたった一言を。



 見せてもらった雑誌には、息の合ったペアだと絶賛されていたのに。






 ⇒◇20 に続く


ちょっと長くなったw



⇒ウィークエンド・シンデレラ◇19・拍手

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