R6必須-技術士予想問題の解答[Q15 事業の基盤強化] | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

Q15【必須】事業の基盤強化 1800字

人口減少に伴う収入の減少と上下水道施設の老朽化に伴い、上下水道事業の基盤強化が必要になっている。このことを踏まえ、①上下水道共通の技術的課題を3つ抽出し、②最重要と考える課題を1つ挙げ、それに対する複数の技術的な解決策を示した上で、③解決策に共通して新たに生じうるリスクとその対策、④業務遂行において必要な要件を技術者倫理、社会の持続可能性の観点から述べよ。

 

 

【解答例】

1 上下水道における事業の持続可能性に関する課題

(1)人口減少等に伴う水需要減少への対応

人口減少、水需要減少により収入が減少している。さらに上下水道施設の更新需要の増大、物価の高騰等により支出が増大している。このため、事業の経営戦略を見直すことが課題になっている。

(2)上下水道施設の老朽化への対応

高度成長期に建設した上下水道施設の老朽化が進んでいる。上下水道施設の事故は、市民生活に甚大な影響を及ぼす。このため、上下水道施設の維持・修繕と計画的な更新を適切に実施することが課題になっている。

(3)深刻化する人材不足への対応

人口減少により上下水道事業に従事する技術者が減少している。このため、上下水道施設の運転管理や維持管理を将来に渡って適切に実施できるよう、必要な人員を確保するとともに、省力化に繋がる取組みを推進することが課題になっている。

 

2 最重要課題とその解決策

前述の課題のうち、人口減少等に伴う水需要減少への対応は、事業経営を継続する上で不可欠であることから、これを最重要と位置付けて解決策を示す。

(1)アセットマネジメントの推進

上下水道施設を良好な状態に維持するため、維持・修繕を行う。管路、構築物、設備の定期的な点検を行い、能力低下、機能不全、劣化、漏水等の有無を確認する。機能評価を行い、修繕の必要性を判断した上で速やかに修繕を行う。耐震性が不明の水道施設は耐震診断を行い、適宜、耐震補強を実施する。

老朽化した上下水道施設を適切に更新する。具体的には、施設の経過年数、材料材質、設置環境、機能評価の結果等を踏まえて更新の必要性と実施時期を見極める。施設の重要性、事故時の影響等を踏まえて更新優先順位を決定する。その上で、システムとして機能を維持できるよう、適切な範囲で更新を行う。

また、将来的に必要となる上下水道施設の維持・修繕・更新等の費用、水需要の減少や料金改定の必要性・実現性を踏まえた料金収入等を考慮し、適切にアセットマネジメントを実施する。

(2)広域連携の推進

施設の共同化を図る。具体的には、水源、取水場、浄水場、下水処理場、水質試験センター等の共同設置・共同利用を行う。広域連携する地域の水需要予測、施設が有すべき供給能力等の検討を行った上で、地域間を結ぶ連絡管等を整備し、施設の統廃合を進める。

管理の一体化を図る。具体的には、施設の運転管理、維持管理、水質管理、総務系事務等に係る業務を共同で実施する。浄水場や下水処理場において遠方監視制御装置や監視カメラの設置・改造を行い、複数の施設の運転管理を1か所で集中管理する。施設の点検、水質検査、各種システムの開発・運用等の業務委託を共同で実施する。

(3)官民連携の推進

民間事業者が有する技術と人材を最大限に活用し、執行体制の強化と業務の効率化を図る。具体的には、DBO方式やPFI方式を採用し、水道施設の設計、建設から運転管理、維持管理までの一連の業務を民間事業者に委ねる。安定的で自由度の高い事業運営を民間事業者に委ねる場合は、ウォーターPPPを実施する。

 

3 解決策により生じるリスクと対策

解決策を実施した後、急激な人口流出等の想定外の事象により、事業運営が困難になる可能性がある。このため、一連の解決策をPDCAサイクルにより継続的に改善し、潜在的なリスクを予見した上で適切な予防策を実施する必要がある。

また、解決策に携わる技術者の不正や法令違反により、公衆の安全や健康が損なわれる可能性がある。このため、倫理研修等を実施し、組織内で技術者倫理を周知徹底する必要がある。

 

4 業務遂行において必要な要件

分析、評価、計画、設計、施工、維持管理等、業務遂行の全段階において、公衆の安全、健康及び福利を最優先にする必要がある。また、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、持続可能性を勘案して業務を進める必要がある。

 

【ポイント】

上下水道分野の必須科目は、従前は、以下の3つが頻出テーマでした。

①災害事故

②地球環境

③水循環

しかし、最近は、水循環よりも事業の基盤強化の方が出題頻度が高くなっています。

事業の基盤強化については、アセットマネジメント、広域連携、官民連携について、原稿用紙1枚半くらいで述べることができるよう、準備しておく必要があります。

また、これら3項目の1つがDXになっても対応できるように準備をしておけば、事業の基盤強化はクリアーできると思います。

 

【上述以外で勉強するべき事柄】

・事業の基盤強化についてDX、広域連携、官民連携の観点から説明して実施時の留意点を述べる

 

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