5.3 予想を的中させる
●出題頻度の把握
出題頻度は過去問を整理すれば把握することができます。
上下水道部門の水道科目について、H26~R5年度までの10年間の過去問を集計して、出題頻度が高いテーマを調査しました。
以下のとおりです。
①管路(設計) 9回
②事業のあり方 7回
③水質管理(全体) 6回
④高度浄水処理 5回
⑤管路(維持管理) 5回
⑥設備 5回
これらのうち最も出題頻度が高いのは管路(設計)です。10年間で9回も出題されています。
ほぼ毎年のように出題されています。
水道施設の資産は7~8割が管路と言われていて、コンサルタントの主な業務は管路の設計です。
技術士はコンサルタントの資格であることを踏まえると、管路(設計)の出題傾向が高くなります。
必ず勉強するべきテーマです。
事業のあり方は、7回出題されています。水道の基盤強化を図るため水道法が改正されました。
広域連携、官民連携、資産管理の促進等を法令化したもので、水道界全体に関する大きなテーマであることから、今後も、引き続き、出題されると思われます。
水質管理(全体)は、6回出題されています。
R元年度の制度改正前は、専門科目は上水道及び工業用水道、下水道、水道環境の3科目ありました。
制度改正に伴い水環境は上水道及び工業用水道、下水道に統合されました。
水道環境と関係が深い水質管理(全体)に関する問題は、引き続き、出題される可能性が高いです。
高度浄水処理は5回出題されています。
これまでに示したテーマは、広範なものでしたが、高度浄水処理は、個別の単独テーマです。
中小事業体に至るまで導入が進んだ技術ではありません。
そうであるにも関わらず、出題頻度が高いわけですから、要注意です。
管路(維持管理)も5回出題されています。
管路(設計)の出題率が高くなるのと同じ理由で、管路(維持管理)も頻繁に出題されます。
設備も5回出題されています。
技術士試験では機械部門と電気部門が存在しますが、上下水道部門においても機械・電気設備に関する問題が出題されています。
また、更新に関する問題も毎年のように出題されています。
水道施設の老朽化が社会問題としてクローズアップさていることから、今後も引き続き、施設の機能診断、更新にあわせた施設の再編、アセットマネジメント等について出題される可能性があります。
●話題性の把握
話題性の高いテーマは、今日的なテーマです。
このため過去問を集計・整理しただけでは、話題性の高いテーマをクローズアップすることができません。
では、どうやって話題性の高いテーマを抽出するのでしょうか。
話題性について調査する方法としては、新聞、雑誌、ネット等を使うのが一般的です。
例えば、日本水道新聞、水道産業新聞、水道技術ジャーナル、水道公論等の媒体により調査する方法があります。
これらには最新の技術が掲載されていますので、こうした媒体から情報収集することも重要です。
しかしながら、技術士試験に話題性を把握する場合、もっと確実な方法があります。
そもそもですが、技術士は国家資格です。国が威厳と責任をもって試験を行うわけですから、研究段階、普及途上の最新技術ではなく、国が認定した最新技術を取り扱うことが前提になります。
つまり、技術士試験における話題性の高いテーマとは、国が通知・報告したことを確認すれば、自ずと見えてきます。
水道分野では、厚生労働省の水道課の通知・報告が重要になります。
(令和6年度以降、国土交通省に移管)
これまでに10年以上、試験問題の出題傾向を研究してきましたが、水道の技術士二次試験は、「通知・事務連絡」と「トピックス」で取り扱われたテーマから出題されたケースが多いです。
これらを確認することにより、話題性の高いテーマを把握することができます。
以下は、少し前のものですので、最新のものを確認してください。
R5年以降、「通知・事務連絡」、「トピックス」で取り上げられたテーマは、下表のとおりです。
表6.1 話題性の高いテーマについて(R6.3.15現在)
通知・事務連絡 |
テーマ |
【R6年3月1日】水道におけるPFOS及びPFOAへの対応について 【R5年7月31日】「PFOS、PFOAに関するQ&A集」の送付について 【R5年10月17日】PFOS及びPFOAの水質検査結果の確認及び水質検査の実施について |
水質管理 (全体) |
【R6年2月14日】水道施設台帳の作成及び保管の徹底について |
施設全体 (維持管理) |
【R5年12月25日】消防水利の基準の一部改正について |
管路 (設計) |
【R5年8月10日】「浄水処理対応困難物質の設定について」の一部改正について |
水質管理 (全体) |
【R5年7月31日】「運搬送水に係る留意事項」について |
施設全体 (維持管理) |
【R5年7月11日】水道の給水管に直結する非常用貯水槽の取扱いについて |
給水装置 |
【R5年7月6日】水道施設の更新に係る状況を踏まえた計画的な更新及び適正な水道料金の設定等の促進について |
施設全体更新 |
【R5年6月15日】ガソリンスタンドからのガソリン漏洩に伴うベンゼンの水質基準超過について |
管路 (設計) |
【R5年4月25日】水道事業における広域化の更なる推進等について |
事業のあり方 (広域化) |
【R5年3月31日】生活基盤施設耐震化等交付金の交付にあたりPPP/PFI の導入に関する民間提案を求めて適切な提案を採択する要件の導入について |
事業のあり方 (官民連携) |
【R5年3月31日】水道用次亜塩素酸ナトリウムの取扱い等の手引き(Q&A)第2版について |
消毒処理 |
【R5年3月24日】水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法等の一部改正について |
水質管理 (全体) |
【R5年3月22日】 水道法施行規則の一部改正について(水道施設の維持及び修繕関係) 水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドラインの改訂等について |
管路(維持管理) |
トピックス |
テーマ |
【R5年11月10日】ウォーターPPPについて、水道事業者等からの質問をもとに作成したQ&A集を公表しました。 |
事業のあり方 (官民連携) |
【R5年3月3日】 いま知りたい水道 |
事業のあり方 |
この表からテーマを抽出して、登場回数の高いものから順に並べると、下のようになります。
①事業のあり方
②水質管理(全体)
③管路(設計)
④施設全体(維持管理)
⑤消毒処理
⑥給水装置
⑦管路(維持管理)
令和6年度の試験では、事故災害対策、施設全体(更新・維持管理)、水質管理(全体)、管路(維持管理)、設備(電気)、給水装置が話題性の高いテーマになるわけです。
特に、事故災害対策と施設全体(更新・維持管理)は、登場回数が多いだけではなく、普遍的なテーマなので、内容を確認しておくべきです。
それから、水道法改正は水道における大きな変革でした。少し前の出来事ではありますが、R1年9月30日付けで多くのことが通知されています。
これらについてもチェックしておくと良いでしょう。
●選択科目に関する極めて重要なテーマの決定
筆記試験の出題テーマについて、出題頻度と話題性によってマトリックスを作ると下図のようになります。
出題頻度と話題性の両方が高い「極めて重要」なテーマは、マトリックスの右上欄のテーマです。
R6年度は、管路(設計)、事業のあり方、水質管理(全体)が該当します。
これら3つのテーマは確実に勉強をしてください。
国の通知・事務連絡を確認することはもちろんですが、設計指針、過去問を理解して、予想問題を2~4問くらい作って、しっかり解答を作成しておくべきです。
出題頻度、話題性のいずれかが高い「重要」なテーマは、マトリックスの右下欄と左上欄のテーマです。
R6年度は、高度浄水処理、管路(維持管理)、設備、施設全体(更新・維持管理)、消毒処理、給水装置が該当します。
これらについても勉強をしておくべきです。予想問題を1~2問くらい作って、解答を作成しておけば良いでしょう。
マトリックスでは左下の部分は「重要ではない」です。
極めて重要、重要について勉強した後、時間があれば、解答を作ればいいでしょう。
●必須科目に関する極めて重要なテーマの決定
必須は、上下水道共通です。水道にも下水道にも共通するテーマが出題されます。
つまり、出題されるテーマは、かなり絞り込まれるわけです。
過去に出題されたテーマは、概ね以下の4つです。
①事故災害対策
②事業のあり方
(広域連携・官民連携・AM)
③地球環境
④水循環
必須は2問で構成されるため、右の4つから2つをピックアップしていたら、出題されるテーマを容易に予想できるため、これらテーマ以外からの出題されるかもしれません。
しかしながら、共通テーマが限定されるわけですから、かなりの高い確率でこれらテーマから1問出題されるはずです。
このため、これら4つのテーマを勉強することで、必須科目は対応することができます。
特に、事業のあり方については、本質的なテーマですし、出題頻度が高いため、必ず勉強しておくべきです。
●必須科目に関する極めて重要なテーマ
必須科目は、法令や国が策定する計画の改正があったテーマが出題されています。
下表の通りです。
最近では令和4年度に「地球温暖化対策推進法」の一部改正が施行され、環境負荷の低減が出題されました。
つまり、必須科目では、法令・計画に改正のあったテーマが話題性の高いテーマであることを意味します。
R5年度、R6年度については、上下水道に関連する法令・計画の改正を確認することができませんでした。
少し前になりますが、R3年度に水循環基本法が一部改正になっているため、水循環が出題される可能性があります。
また、R4年度に「新下水道ビジョン加速戦略」が改訂になっているため、事業のあり方が出題される可能性があります。
R6年度から水道行政が厚生労働省から国土交通省に移管されます。
これに伴い、上下水道が全て国土交通省所管になります。
このため、R6年度の「国土交通白書」でクローズアップされたテーマも話題性が高くなるため、注意を払う必要があります。
実際、「国土交通白書」においてDXの記述が増え、R4年度にDX、令和5年度に維持管理情報が出題されています。
引き続き、ICT関連にも注意が必要です。
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●二次試験の過去問と解答例
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