一から学ぶ東洋医学 No.59 病因病機(3) 病機(2) | 春月の『ちょこっと健康術』

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こんにちは ニコニコ

 

昨年に比べると、梅雨らしく雨の日も多い今年。 ただ、急に気温が10度も下がったり、突然大風大雨になったりするのは、困りものですね。 こまめに服装を調節して、体調管理に気をつけましょう。

 

今回は内生五邪についてお届けします。 それぞれの成り立ちについて、あらためて考察していたら、頭がごちゃごちゃしちゃって、まとめるのに時間がかかってしまいました。

 

5 内生五邪

 

内生五邪は、内風、内火(内熱)、内湿、内燥、内寒。 体内に生じる病理的変化で、六淫が引き起こすものに類似した病態を示します。

 

六淫は体外から襲ってくるものですが、内生五邪は病になることで生じるもの、体内の陰陽・生理物質・臓腑機能の失調で体内に発生するものです。 なので、病機として取り上げられる…と、病因(1)でお届けました。

 

『全訳中医基礎理論』(たにぐち書店)には、「内生五邪は発病要因ではなく、気血津液や臓腑などの生理機能が失調したために起きた総合的な病機変化である」と書かれています。 教科書の『新版東洋医学概論』は、これをもとに構成されたんでしょう。

 

(1) 内風

 

内風は、体内の陽気が変動する病態。 風気内動ともいう。 肝と関係が深く、肝風とも呼ばれる。

 

(a) 内風による症状

 

痙攣、振戦、眩暈など、ピクピクしたり、震えたり、揺れたり…と、動くつもりはないのに動いてしまうような症状を引き起こします。 陽気が本来の動きを失って変動するためで、これは、六淫の風邪が持つ遊走性に通じます。 遊走性は、変化しやすい、動きやすいってことですからね。

 

(b) 内風が生じる過程

 

肝の病証(3)でご紹介した肝風内動証が、内風が生じたことで起こる病証です。 その病態と原因のところにもありますが、なぜ内風が生じるのか、もう少し詳しく書いておきたいと思います。

 

① 肝陽化風

 

肝陽の上昇が抑えられなくなったとき、文字通り、肝陽が風と化すことで生じます。 肝陽の上昇が激しくなるのは、肝陽の亢進を肝陰が制御できないからで、その基礎病態として肝腎陰虚があります。 つまり、陰が弱く、陽が強くなりすぎて、内風が生じるってことですね。

 

軽度であれば、手足のしびれやふるえ程度でおさまりますが、重度になると、卒倒して、口眼歪斜(顔面の片麻痺)や半身不随の症状をきたす。 まさに脳卒中となりますから、肝陽上亢あるいはその手前の肝腎陰虚のうちに、肝陽化風とならないように、手当てしたいものです。

 

では、そもそも肝腎陰虚はどうして起きるのでしょうか? 肝陰虚+腎陰虚ですから、肝の病証(3)の肝陰虚証や腎の病証の腎陰虚証にあげられているようなことが原因となります。 

 

復習を兼ねて、改めてまとめると、

・ 肝鬱気滞 → 肝鬱化火=肝火上炎 → 陰液損傷

・ 大病・久病・老化など → 陰液消耗

・ 熱病・房事過度など → 陰液損傷

・ 先天の精の不足 → 体質的な腎陰の不足

 

陰虚は、陰液が不足している状態で、陰液を十分につくることができないか、陰液が減少してしまっているか、ですよね。 陰陽の医学への応用でお伝えしたように、陰の不足は相対的に陽を強くします。 そんなアンバランスな状態が長引けば、あるいはさらに陽を強くするような誘因が加われば、陰液の損傷や消耗がますます進んで、陽気はますます亢進し、内風が生じるという次第です。

 

② 熱極生風

 

熱極生風は熱甚動風ともいいます。 これもまた文字通り、熱が極限まで甚大となり、陽気が変動して、風が生じる。 熱病による高熱が続き、陰液が損傷され、肝経が焼かれることで肝風が生じるもので、高熱、意識不明、うわごと、項部のこわばり、四肢の引きつりなどを起こします。

 

肝の病証(3)では、外感温熱病によるとしていますが、内熱が激しく上昇し高熱となって生じることもあります。 この場合、肝陽化風との違いはどこにあるのか? 一つは熱の高さ、熱極は「熱の極み」ですからね。 二つめは、肝陽上亢の既往が無いこと。 そして、症状の違いです。 

 

③ 陰虚風動

 

陰虚動風ともいいますが、陰虚の重症例となります。 陰虚が長引くことで、血と津液の消耗が大きく、筋脈への滋養ができないために、手足が引きつってピクピク動きます。 さらに、陰陽の生理と病理にあるような陰虚症状を伴います。

 

動風する原理は、肝陽化風と同様ですが、出てくる症状は軽めです。 陰虚による熱が、肝陽化風ではブワ~ッと頭部まで上昇します。 陰虚風動では、滋養不良となっている筋脈で、ホワホワッと小さく回っている感じでしょうか。

 

そう、すでにお気づきかと思いますが、「内風」というくくりになってはいても、肝陽、熱極、陰虚と見れば、「熱」が絡んでいることは明らか。 そもそも、陽気の変動ですし、内風が生じるのは、陽を抑制できていない状態なんですから。 地面が温められると、上昇気流が生じて、竜巻ができたりしますよね? それが内風のイメージかな…と思います。

 

④ 血虚生風

 

肝血虚の進行による一証候で、肝血の不足によって、筋脈を滋養できなくなったことで生じます。 手足が引きつってピクピク動くという症状は、陰虚風動と同様ですが、血虚生風では陰虚の症状はみられず、肝血虚の症状を伴います。

 

血虚で「熱」は出ていないのに、「風」は生じるの? ですよねぇ…。 血虚生風は、肝風内動としては軽症だけど、肝血虚としては重症です。 なので、陰虚になる寸前くらいになっていて、筋脈の潤いがかなり失われたために、小さな肝風が生じたと考えれば、つじつまは合うかな…と思います。 

 

ところが、慢驚風という小児に好発する内風の中には、脾腎陽虚によるものもあります。 この場合は虚寒証ですから、熱どころじゃなくて冷えですよ。 なのに、風が生じる。 どういうことなんでしょうね? 『針灸学 臨床篇』(東洋学術出版社)によると、「陽気が亡脱して虚風が内動する」とあります。

 

陽気亡脱(亡陽)は、陽気が急に抜けたために、ひどく身体が衰弱した病理状態。 子どもの陰陽バランスは、成長していくために、おとなに比べて陽が強め。 それが脾腎陽虚となると、陽気の不足は深刻です。 上へ外へと向きがちな陽が、力尽きて、体内にとどまることもできず、風となって抜け出る。 そんな感じでしょうか。

 

脾腎陽虚による慢驚風では、手足がピクピクして、額から冷たい汗が出て、手足は冷え切って、精神は衰弱し、眠ってばかりいるようになります。 慢驚風には、他に脾虚肝旺による肝旺風動、肝腎陰虚による陰虚風動があります。

 

慢驚風があるなら、急驚風もあるのでは? その通り! 外感六淫(特に風邪や暑邪)によるもの、痰熱によるもの、驚恐によるものがあり、いずれも幼くデリケートで、陽が強めの小児ならではの病証です。 小児の驚風については、ここではあくまで参考に。 いずれ別途取り上げることもあるかと…。

 

(2) 内火(内熱)

 

内火(内熱)は、体内の陰陽が失調して、陽が強くなった病態。 火熱内生ともいう。

 

火熱内生は、2文字で表現する場合、六淫の火邪に対応する形で、内火と総称されますが、比較的強い熱が出て、頭顔面部に炎上した症状がある場合が内火、それ以外が内熱です。 とは言え、基本的には同じもの。 内熱も、長引いたり、熱を強くする誘因を受けたりすれば、内火となります。

 

(a) 内火(内熱)による症状

 

どんな火熱なのか、その成因や熱の強さによって多少異なりますが、顔面紅潮、発汗、口やのどの渇き、舌質紅、脈数(さく)など、何らかの熱症状が出ます。

 

(b) 内火(内熱)が生じる過程

 

火熱内生は、体内の陰陽バランスが崩れて、陽が有余になるか、陰が不足することで起こります。 陰陽学説の医学ヘの応用にもあるように、陽の有余すなわち陽の偏盛で生じるのは実熱、陰の不足すなわち陰の偏衰で生じるのは虚熱です。 

 

火熱が内生する原因には、病因(2)でご紹介している内傷病因(飲食不節、労倦安逸、房事過度、情志の失調)や病理産物の鬱滞があげられます。 それらによって、陽盛化火、五志化火、邪鬱化火や陰虚となることで、火熱が生じます。

 

① 陽盛化火

 

陽が有余で盛んになり過ぎて、火熱が生じます。 厳密には、内火が生じることを化火、内熱が生じることを化熱といいますが、代表して化火と呼ばれることが多いようです。

 

陽が有余になるのは、

・ 熱性の外邪が臓腑に達したとき

・ 寒性の外邪が熱に変わって臓腑に入り込んだとき

・ 辛いもの、脂っこいもの、甘いもの、味の濃いものを食べ過ぎたとき

・ 飲酒が過ぎたとき

・ 温補薬を必要以上に取り過ぎたとき

など。 肺の病証(1)にある熱邪壅肺や胃の生理と病理・病証にある胃鬱熱は、陽盛化火の典型例といえそうです。

 

② 五志化火

 

五志化火となっていますが、情志化火というべきかもしれません。 情志の失調が長期化して化火する場合、つまり肝の病証(2)にある肝火上炎や、情志が激しすぎて化火する場合、つまり心の病証(1)にある心火亢盛などの病機となります。


③ 邪鬱化火

 

痰湿や瘀血(おけつ)、六淫などの病邪や 食滞によって、陽気が鬱滞することで生じます。 陽気は、本来温かいもので、滞ることなく動くはずのもの。 そんな陽気が鬱滞すれば、鬱滞したところに熱が生まれることは、予想に難くないですよね?

 

心の病証(2)にある痰火擾心や脾の病証にある脾胃湿熱、胆の生理と病理・病証にある肝胆湿熱などが、邪鬱化火の例になりそうです。

 

④ 陰虚火旺

 

陰虚で、陽の亢進を抑えられない状態です。 陰虚陽亢とか、陰虚内熱とも言います。 陰陽の生理と病理の陰虚証や腎の病証の腎陰虚証などにあるように、過労や大病、久病、房事過度などで陰液を損傷したり消耗したりすることで起こります。

 

(3) 内湿

 

内湿は、痰湿が停滞した病態。 湿濁内生ともいう。 特に脾と関係が深く、脾虚生湿とも呼ばれる。

 

湿濁内生の濁は、気の生理の清気と濁気に書かれているように、身体に不要であることを表します。 津液の生理と病理にあるように、津液が停滞して、本来の生理作用を発揮できなくなると、痰湿となります。 生理作用を発揮できないなら、もはや身体には必要ない。 ということは、湿濁内生は、痰湿内生と言い換えてもかまわない? だったら、痰湿と内湿を分けることもない?

 

痰湿と内湿。 ん~、どうでしょう。 同じようで、やっぱり同じとは言えないか…。 痰湿は病理産物で、内湿は病機ですからねぇ…。 内湿病機があって、痰湿ができあがる。 内湿は痰湿ができるきっかけ。 でも、内湿となると、痰湿ができてしまうので、出てくる症状は同じだし、結果的には同じかなぁ…。

 

(a) 内湿による症状

 

湿濁内生したのが、皮下ならば浮腫、経脈ならば頭が重いとか肢体が重だるいとかで、上焦ならば粘っこい咳が出る、中焦ならば食欲不振、下焦ならば大便溏薄(軟便)などの症状を引き起こします。 

 

六淫の湿邪と同様に、重濁性や粘滞性を帯びるため、気機を滞らせやすく、解消しにくいという特徴があります。 また、下注性があるために、身体の上部から下部へと移行することがあります。

 

(b) 内湿が生じる過程

 

まずは、一般的に湿気ている状態を想像してみましょう。 まさに今、梅雨時のように、水分の供給が多いとき。 梅雨時でなくても、締め切ったお風呂場のように、空気の流れがなくて、蒸気が排出されない場合も。 ジトジト、ジメジメ。 そんな状態に陥ったところが、体内に発生する。 それが内湿です。

 

湿濁内生は、痰湿が生じる過程と同じ。 正常な水液である津液が、体内でつくられて、生理物質として正常に機能して循環し、再利用されたり排泄されたりすれば、これは正常な水液代謝です。 そのいずれかで、何らかの異常が起きて、津液が停滞することで生じるのが痰湿でしたね。

 

ということで、内湿病機は、津液の生理と病理にある津液の病理過程や、病因(2)にある痰湿が生じる過程の復習にもなります。

 

① 水液代謝障害

 

津液を化生して肺へ運ぶのは脾、水の上源として津液を全身へと送り出すのは肺、水を主り津液を分別するのは腎、そして津液の通路となるのが三焦。 そのいずれかで、何らかの障害が起これば、正常な水液代謝が阻害されて、津液が停滞し、内湿が生じます。

 

脾の病証にある脾虚湿盛、肺の病証(2)にある痰湿阻肺、腎の病証にある腎陽虚など、六淫の湿邪(外湿)が病因として絡むこともありますが、機能失調があることで水液代謝が障害されて起こります。 三焦は通路なので、膀胱・三焦の生理と病理・病証にあるとおりです。

 

肝気鬱結による気滞でも、津液の流れが停滞して、痰湿を生じることがありますが、たいていは一時的なもの。 問題は、肝気鬱結から肝気犯脾になった場合です。 こうなると、脾気虚を引き起こすので、内湿が生じやすくなります。 また、肝の疏泄は、臓腑の気機をバックアップする機能を持っていますから、脾・肺・腎の水液代謝機能を悪化させる誘因になる可能性もあります。

 

② 水分の過剰摂取

 

多量摂取した水分が、そのまま内湿となるワケではありません。 これには、脾胃の特性が関係します。 胃は喜湿悪燥なので、水分を溜め込みやすい傾向にあります。 ところが、脾は喜燥悪湿なので、水分を過剰に摂取してしまうと、脾陽(脾の陽気)の働きが弱って、運化を失調させてしまうのです。

 

③ 寒涼性のもの(冷たいもの、生もの)の偏食

 

寒涼性のものばかり摂取すると、脾胃を冷やしてしまうため、脾胃の陽気を弱らせます。 かき氷やスイカなどの食べ過ぎで、消化や便通が悪くなることってありますよね? 胃だけなら、降濁しにくくなって、便秘がちになるところですが、脾まで冷えると、昇清しにくくなって、下痢がちになり、運化も失調します。

 

寒涼性のもので冷えるなら、内寒じゃないの? はい、後述しますが、確かに内寒も生じやすい。 内湿と重なると、寒湿となります。 その場合は、腹部の冷痛とか、手足の冷えとか、陽虚の症状を伴ってくる。 で、冷え症状があったら寒湿、なければ内湿とします。

 

④ 肥甘厚味のもの(脂っこいもの、甘いもの、味の濃いもの)の偏食

 

病因(2)の飲食不節では、ひとまとめにしていますが、脂っこいものや味の濃いものは熱を生じやすく、甘いものは中焦(脾胃)を塞ぎやすいという特徴があります。 しかも、某CMにもあるように、美味しいものは脂肪と糖でできているので、ついつい食べ過ぎちゃう。 味の濃いものは、主食を増やしがち。

 

ということで、肥甘厚味のものは過食につながりやすく、脾胃の昇降機能に影響して、運化を失調させ、内湿から、痰湿を生じます。 蓄積しやすいので、内火のところで述べた邪鬱化火につながって、湿熱・痰熱に変わる。 しかも、治りにくい。 やっかいです。

 

ところで、内湿が脾虚生湿とも呼ばれるワケは、もうお分かりですよね? 上記の②~④はすべて、脾の運化を失調させる。 ①には肺や腎も入ってるけど、最も起こりやすいのは脾虚ですからね。 脾は湿に弱く、湿を発生させやすいんです。

 

(4) 内燥

 

内燥は、陰液(主に津液)が不足して、臓腑や組織・器官が潤いを失った病態。 津傷化燥ともいう。

 

(a) 内燥による症状

 

皮膚が乾燥してツヤがない、口や鼻が乾く、唇がひび割れる、のどがガサガサして乾いた咳が出る、目が乾いてショボショボする、大便の水分が少なくて便秘する、尿の色が濃くて量が少ないなど、陰液による潤いと滋養を失ったことによって、種々の乾燥症状をきたします。

 

(b) 内燥が生じる過程

 

一般的に乾燥した状態は、たとえば砂漠地帯のように、水の供給がとても少ないか、熱によって水がすぐに蒸発してしてしまうか。 津液の病理過程で、津液が過剰な場合は内湿でしたが、津液が不足する場合が内燥ということになります。 

 

そう、内燥の主体は、陰液というより、津液の不足にあります。 だから、津傷化燥。 とはいえ、生理物質の関係にあるように、血も精も、津液と互いに支え合い、化生し合いますから、血の不足も、精の不足も、津液の不足につながるので、総合的に「陰液の不足」となるんです。

 

でも、陰陽の生理と病理にあるように、陰液の不足は陰虚。 陰虚証は虚熱証だから、内熱になるんじゃないの? そうなんですよねぇ…。 内熱によって、陰液が蒸発していって、枯渇してくると、内燥になる。  つまり、虚熱症状が主体ならば陰虚ですが、乾燥症状が主体になると内燥ってことです。

 

陰液(主として津液)の不足は、どんなときに生じるか? 陰虚や津液不足の原因と病理過程に通じますが、あらためてまとめると、↓下記のようになります。

・ 大病や久病、過労などで消耗した。

・ 過剰な発汗、出血、嘔吐、下痢、多尿などで流出した。

・ 火熱によって損傷された。

・ 老化による臓腑機能低下で十分に化生できない。

 

六淫の火邪でも、内火(内熱)でも、火熱によって陰液(主として津液)が損傷された場合は、燥熱となります。 燥熱が強くなると、さらに陰液の喪失が進み、乾燥症状が悪化するだけでなく、やがて陽気も陰液の滋養を失って、陽気も損傷されることになります。

 

老化による臓腑機能低下や久病、過労などで、陽虚がある場合は、後述するように内寒が生じます。 内寒は、六淫の寒邪と同様に、寒冷性があるために陽気の機能を低下させ、収引性・凝滞性があるために陰液の流れを阻害して、陰液の供給を減少させる。 その結果の内燥は、冷燥となります。

 

内燥が生じやすく、それによって傷つきやすい臓腑は、肺、胃と大腸。 肺の病証(2)にある肺陰虚や胃の生理と病理・病証にある胃陰虚の病機となります。 小腸・大腸の生理と病理・病証には載せていませんが、大腸液虧(えきき)も津液の不足による病証です。

 

肺は、肺の生理と病理にあるように、華蓋(かがい)であり、嬌臓(きょうぞう)なので、六淫に侵襲されやすく、特に燥邪に弱いという特性がありましたね。 種々の病因によって津傷化燥すると、肺の宣発粛降が失調して、燥傷肺気となります。 つまり、内燥は、肺気虚の病機にもなる。

 

大腸液虧の虧(き)は「欠ける」という意味。 東洋医学では、虧損とか虧虚という使い方をします。 このシリーズでは使ってきませんでしたが、津液不足を津液虧虚と言って、2文字に短縮する場合、液虧または津虚とします。

 

『全訳中医診断学』(たにぐち書店)や『中医弁証学』(東洋学術出版社)では大腸液虧、『針灸学基礎編』(東洋学術出版社)では大腸津虚となっていますが、縮め方が違うだけで、同じものを指しているんですね。 となると、液虧より津虚のほうがわかりやすいかも。

 

(5) 内寒

 

内寒は、陽気が衰弱して、陽気の温煦機能が減退した病態。 寒従中生ともいう。

 

(a) 内寒による症状

 

どこがどの程度冷えているかによって異なりますが、拒冷喜温、四肢の冷え、畏寒、小便清長(尿の色が澄んで量が多い)、水様便、筋脈や関節の冷痛など、何らかの冷え症状を生じます。

 

(b) 内寒が生じる過程

 

陽気の衰弱した病態は、陽虚ですよね。 陽虚の原因は、陰陽の生理と病理にありますが、大病や久病、過労などで陽気を消耗した、寒涼薬を飲み過ぎた、生ものや冷たいものを過食した、六淫の寒邪が裏(臓腑)に入った、老化によって腎陽が弱ったなど。 脾の病証にある脾陽虚、腎の病証にある腎陽虚などもご参考に。

 

陽虚の状態が続くと、虚寒が内生します(陽虚内寒)。 それが改善されなければ、内寒は悪化して陰盛(実寒)となります(陰寒内盛)。 気化作用の減退も進み、水液代謝が悪化して痰湿を生じ、寒湿となります。

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。

 

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