一から学ぶ東洋医学 No.55 病因病機(1) 病因(1) | 春月の『ちょこっと健康術』

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こんにちは ニコニコ

 

元号は平成から令和へ。 一から学ぶ東洋医学シリーズも新章に入ります。 ここは一気に進めて、なるべく早く四診に行かなくちゃとは思っていますが…。 今年の鍼灸国家試験問題と正答肢表も発表されたから、解説を書き始めないといけないし…。 この際、本業の仕事を減らしちゃおうっかなぁ…(笑)。

 

タイトルに「病因病機」とありますが、病機って聞きなれないですよね? 鍼灸学校の教科書でも、『新版東洋医学概論』になってから登場した用語。 中医学では「病因病機学」があるので、教科書改訂にあたって加えられたみたいです。

 

では、『新版東洋医学概論』に載っているものを軸に、東洋学術出版社の『中医病因病機学』を参考に、病因病機についてまとめていくことにしましょう。

 

1 病因とは?


病因は、疾病の原因。 

 

用語的には、西洋医学での使われ方と同じです。 ただ、範囲がすご~く広い。 自然や風土、生活、人間関係も、人体に影響するものすべて、病因になりうるという考え方。 近年では、成人病が生活習慣病と呼ばれるようになって、西洋医学が東洋医学に近づいてきている感じはありますけどね。

 

2 病因の分類

 

以前、私が鍼灸学校で習ったころ、病因は、外因(外邪)と内因(七情)、それら以外の不内外因(飲食・労倦)の3つに分類されていました。 教科書改訂で、病機という用語が登場したのに伴って、分類も外感病因内傷病因病理産物とその他の病因に変わっています。

 

病因の大分類について、『中医病因病機学』も含めて、比較表にしてみました。

 

『旧版東洋医学概論』としたのは、『新版東洋医学概論』に変わる前の教科書です。 旧版の病理産物のところ、空欄になっていますね。 それは、病因論の中には出ていなかったから。 で、どこにあったか?というと、気血津液の病理。 痰湿は津液の病理産物で、瘀血(おけつ)は血の病理産物だから。

 

痰湿と瘀血(おけつ)は、一から学ぶ東洋医学シリーズでも、すでに津液の生理と病理血の生理と病理をはじめとして、たびたび登場しています。 今さら説明しなくても…と思わなくもないけど、病因の中で改めて取り扱いますね。

 

ところで、『中医病因病機学』の表記は、なぜ〇〇要因で〇〇病因じゃないんでしょうか? それは、平常なら何の問題もなく、異常があったときに病因になるから…ということかと思います。

 

3 外感病因

 

外感病因は、文字通り、外界から人体に感作して、病を引き起こすもの。 外邪とも言いますが、前述の比較表にあるように、六淫(ろくいん、りくいんと読むこともある)と疫癘(えきれい)に分類されます。

 

(1) 六淫

 

六淫は、風邪・暑邪・火邪・湿邪・燥邪・寒邪という6種類の外邪の総称。 

 

もともと風・暑・火・湿・燥・寒は、自然界の五行にある五気に火を足した六気で、自然界の気候変化をさすものです。 それが、過激だったり時季はずれに現れたりと、異常な場合に六淫となります。 また、六気自体は平常な範囲にあっても、正気が弱っていると、相対的に六気が強くなるため、六淫と化します。 正気って何だったっけ?という方は、気の生理を復習してね。

 

六淫は、単独または複数で、皮毛や口、鼻など、体表から襲いかかります。 それぞれの特徴は、六気に元来備わった性質が誇張される感じ。 まとめると↓こうなります。

 

 

(a) 風邪

・ 四季を通じて現れる。 扇風機のような人工風でも、あたりすぎることで生じる。

・ 軽揚性があり、上へ外へと向かいやすく、人体の上部・体表部・五臓の肺に影響をおよぼす。

・ 開泄性があり、腠理(そうり)を開けて、衛気や津液を体外へもらす。

・ 遊走性があり、症状の出る部位や時間帯、病状が一定せず、変化しやすい。 

・ 腠理(そうり)を開くため、他邪を一緒に引き込みやすく、「百病の長」と呼ばれる。

 

(b) 暑邪

・ 夏季に限定して現れる熱邪。

・ 炎熱性があり、大熱(高熱)と大汗を出させ、津液を消耗させる。

・ 昇散性があり、腠理(そうり)を開けて、汗とともに気をもらす。

・ 夏季は湿度も高いため、湿邪を伴うことが多い。

 

(c) 火邪

・ 夏季以外に現れる熱邪、あるいは熱邪が強くなったもの。 他邪が長期間停滞して化火したもの。

・ 炎上性があり、人体の上部に熱症状をもたらし、心神に影響をおよぼす。

・ 炎熱性は暑邪より強く、津液と気を消耗させる。

・ 長く停滞すると、陰液の消耗が激しくなり、風を発生させ、血を動かす。

 

(d) 燥邪

・ 秋季に現れることが多いが、冬季の関東地方のように、乾燥した環境下でも生じる。

・ 乾燥性があり、津液を損傷しやすい。

・ 鼻や口から入りやすく、肺を損傷しやすい。

 

(e) 湿邪

・ 長夏に現れることが多い。 雨にぬれる、水に浸かる、湿地に住むなど、多湿な環境下でも生じる。

・ 重濁性があり、陽気を滞らせ、頭や身体を重だるくさせ、排泄物や分泌物を濁らせる。

・ 粘滞性があり、排泄物や分泌物を粘らせる。 また、気機を滞らせて、病を長引かせる。

・ 下注性があり、人体の下部に影響をおよぼす。

・ 脾を損傷しやすい。

 

(f) 寒邪

・ 冬季に現れることが多い。 冷房にあたすぎたり、雨や汗でぬれた後に冷えたりすることでも生じる。

・ 寒冷性があり、陽気を損傷して、身体を冷やす。

・ 凝滞性があり、気血の流れを滞らせ、疼痛を発生させる。

・ 収引性があり、腠理(そうり)や経脈、筋などを収縮させる。

 

ここまで読んできて、肝の病証(1)に出てきた内風とか、肝の病証(2)の肝火、心の病証(1)の心火、臓腑兼証(1)にあった内寒などに思い至った方々、よく読みこんでくださってますね~。 これらは、六淫そっくりですけど、外から来たものじゃなくて、体内でできたもの。 六淫と分けるため、内生五邪と言います。 なぜ六じゃなくて五かというと、暑邪は内生しないから。

 

内生五邪の性質というか、特徴は六淫に瓜二つ。 だったら、内生五邪も病因になるんじゃないの? 私も鍼灸学校生の頃はそう思ってました。 でも、よく考えると、内生五邪って、病になったことで生じるものなんですよね。 だから、『新版東洋医学概論』でも、『中医病因病機学』でも、病機のところに出てくる。

 

ところが、『新版東洋医学概論』で、病因を図にしたものの中で、病理産物とその他の病因に、内生五邪が入っていることを発見しちゃいました~。 本文の記述には入ってないのにね。 まぎらわしい。 ただ、内生五邪ができたことで、新たな症状が出てきて、病証が変化することはあるから、ある意味、病因になりうるってことかも…。 ん~、ややこしくなるので、病機に入れることにします。

 

(2) 疫癘

 

疫癘は、強力な伝染性と流行性を持つ外邪。 六淫よりも発病が急で、症状は重篤になりやすく、老若男女を問わず、患者の病状が似ます。 かつては伝染病とか、疫病とか呼ばれていましたけど、感染症のことですね。

 

疫癘は、戻気(れいき)、癘気(れいき)、瘟疫(おんえき)、疫毒、異気、毒気、乖戻(かいれい)の気など、いろんな呼び方をされてきました。 戻気の「戻」は、「もどる」じゃなくて、「強烈」とか「ひどい」という意味です。

 

具体的には、↓下記のようなものがあります。

鼠疫(そえき): ペスト

霍乱(かくらん): コレラ

蝦蟇瘟(がまおん): 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

大頭瘟(だいずおん): 丹毒

天花(てんか): 天然痘

痢疾(りしつ): 赤痢など、細菌によって引き起こされるひどい下痢を主症状とするもの

 

病因について、一気に終わらせたかったんですけど、思ったより長くなったので、今日はこのへんで。

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。

 

 

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