一から学ぶ東洋医学 No.21 生理物質と神(2) 気の生理 | 春月の『ちょこっと健康術』

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こんばんは ニコニコ

 

生理物質の最初は、基本物質中の基本物質、についてお届けしました。 

 

同じものを指しているのに、精だの、精気だの、腎気だのって、呼び方が違うのは困りますよねぇ。 別物なの?どうなの?って、戸惑ってしまいます。  鍼灸学校生だったときに、先生に確認しておけばよかったなぁ…なんて、今さらながら思ったりします。 

 

『黄帝内経(こうていだいけい)』は論文集みたいなものだから、その中でも表記が違ってることがあるし、他の古典も、名称の統一とかがないうちに成立してたりするから、しかたがないといえば、そうなんですけどねぇ…。

 

こうした用語についても、一から学ぶ東洋医学シリーズの中では、できる限り統一していきたい。 基本として『新版東洋医学概論』や『中医基本用語辞典』を踏襲します。 また、可能な限り裏付けを取り、説明を加えるようにしますが、「いや、それはちょっと…」というようなことがあれば、ご一報いただけるとうれしいです。

 

生理物質の2回目は、気の生理。 気については書くことがいっぱいあるので、生理と病理を分けます。 

 

1 気とは?

 

(a) 人体を構成し生命活動を維持する基本物質(生理物質)のひとつで、体内を流動する精微物質であり、先天の気と後天の気とがある。

(b) 先天の気は、先天の精から化生する原気(げんき)で、臓腑の生理機能を発揮させる原動力となる。

(c) 後天の気は、後天の精から化生する営気(えいき)と衛気(えき)、後天の精と天の清気からなる宗気(そうき)である。

(d) 気は身体に満ちて、絶え間なく運動し、昇・降・出・入という気機(気の機能活動)を発揮する。

(e) 臓腑や器官の生理機能を指すこともある。

 

気は物質であり、機能でもある。 またまた、ややこしいことを…と思いませんか?  これについては、『中医基本用語辞典』に、「臨床では、臓腑の機能失調によって起こる病状に関連して、気という言葉を用いることが多い。 たとえば、脾気不足、胃気不降などである。」とあります。 

 

そうか! ここで、はたと気づきました。 脾気不足は、脾の気が足りないんじゃなくて、脾気の機能が足りないのか! 胃気不降は、胃気が降りないんじゃなくて、胃気の降濁という作用が働かないことなのか! とすると、「女性は7年、男性は8年で節目が来る?」にある腎気は、腎精の機能を指しているのか! その違い、考えたこともなかった!

 

何てことを言っても、そんなに硬く分けて考える必要はないでしょう。 西洋医学的にも、細胞というときは、細胞というモノだけじゃなくて、細胞の働きも含めて考えますよね。 それと同じ。 気というときは、精微物質としての気であり、その気が発揮する機能も含むってことですよ。

 

2 気の働き(気の生理作用)

 

(a) 推動作用

 

人体の生理活動を推進する作用です。 気は絶えず運動して、エネルギーを生み出すので、人体に活力を与え、成長・発育を促します。 また、臓腑や組織・器官の働きを促し、それぞれの正常な生理機能を発揮させます。 なので、もし推動作用が強すぎれば生理機能は異常に亢進するし、弱すぎれば生理機能は減弱します。

 

血や津液などの陰液は、自らを動かすパワーを持ちませんから、体内を循環するのに、気の推動作用に頼っています。 推動作用が減弱すると、血や津液の流れは遅くなり、停滞するところや不足するところが出てきます。 汗や尿などの排泄は、出過ぎても困るし、出が悪くても困りますよね。 出過ぎないようにするのは、後述する固摂作用なんですが、ちゃんと出るようにするのは推動作用です。

 

(b) 固摂作用

 

生理物質をあるべき場所にとどめて、無駄に流失しないようにする作用です。 たとえば、血を固摂して、脈の外に漏れ出ないようにする。 腎精を固摂して、必要以上に腎から出ないように貯蔵する。 他にも、汗、唾液、尿、胃液、腸液、精液など、分泌量を調節しています。 

 

固摂作用が低下すれば、出血しやすくなり、遺精や早漏が生じ、暑くもないのに汗をかき、唾液や尿が漏れ、胃液の過剰や下痢を起こします。

 

推動作用は順調に出すように制御する作用。 これに対し、固摂作用は無駄に出さないように制御する作用。 相反するふたつの作用が働くことで、生理物質の循環や代謝がうまく維持されるようになっているのです。

 

(c) 温煦作用

 

血・津液・精が陰液であるのに対し、気は陽気ですから、温める作用を持っています。 気は運動し続けるからこそ、温める作用を持っているともいえますけどね。 

 

この作用がいかんなく発揮されるのは、体温の維持。 温煦作用が低下すれば、身体は寒さを感じやすくなり、手足が冷えます。 気のめぐりが悪くて、一か所に集まってしまうと、そこに熱が発生します。

 

そして、臓腑、組織、器官が温められることで、すべての生理機能が正常に、滑らかに、滞りなく働きます。 陰液も、温められることで、流れやすい状態となります。

 

(d) 防御作用

 

気は体表を保護して、外邪の侵入を防ぎます。 別の言い方をすれば、身体の抵抗力を支えている。 したがって、気の防御作用が低下してしまうと、外邪が侵入しやすくなり、病気にかかりやすくなります。

 

(e) 気化作用

 

気化とは、気が起こす変化のことであり、気機によって生じる物質代謝を指します。 たとえば、精からの気の化生、気から津液や血への転化、津液からの汗や尿などの生成、水穀の残渣から糟粕への変化などなど。 気化作用の低下は、そのまま生理物質の不足につながります。

 

これら5つの作用は、互いに影響し合い、共同して働いています。

 

3 気の化生

 

(a) 先天の精から化生し、先天の気となる。

(b) 後天の精(水穀の精微)から化生し、後天の気となる。

 

4 気の分類

 

(a) 由来による分類

 

① 先天の気(原気)

先天の精から化生した気で、原気(げんき)と呼ばれる。 臓腑、組織、器官に、それぞれの機能を発揮させ、生命活動の原動力となる。 

 

② 後天の気(営気、衛気、宗気)

後天の精から化生した気で、さらに営気(えいき)、衛気(えき)、宗気(そうき)に分けられる。

 

(b) 機能による分類

 

① 原気(げんき)

先天の精から化生される、人体で最も根本的な気である。 元気あるいは真気ともいう。

人体の成長や発育を促し、臓腑、組織、器官などの生理機能を始動させ、生命活動の原動力となる。

三焦(臓腑、組織、器官を除く領域で、生理物質の通り道)を通って、全身にくまなく分布する。

臓腑に配分された原気は臓腑の気となり、経絡に送られた原気は経絡の気となって、それぞれの生理活動を維持する。

 

臓腑の気には、五臓六腑の名称がつきます。 「気とは?」のところに出てきた脾気とか胃気とかがそれ。 脾や胃に送られた原気なんです。

 

② 宗気(そうき)

後天の精と天の清気が合わさって化生される。

胸中に集まり、胸中にある肺と心の活動を支える。

肺の呼吸を推動し、呼吸のリズムと強弱、発声や発語の強弱を調節する。

心の血を推動し、心拍のリズムと強弱を調節して、血の循環を制御する。

 

③ 営気(えいき)

後天の精から化生される。 豊かな栄養分を持つため、栄気ともいう。

血の一成分として、脈中に入り、血とともに全身をめぐる。

血と区別はできても、分離することはできないため、営血と呼ばれることが多い。

 

④ 衛気(えき)

後天の精から化生される。 活動性が高く、動きが速く、脈外をめぐる。 

全身にくまなく分布するが、昼夜で分布が異なり、昼間は体表部を25周し、夜間は体内部を25周する。

体表を保護して、外邪の侵入を防ぐ。 

皮膚・肌肉から臓腑まで、全身を温める。

腠理(そうり)の開闔(かいごう)によって発汗を調節し、体温を一定に保つ。

 

腠理は、毛孔や汗孔のようなもので、皮膚の収縮と弛緩によって開閉されます。 これを腠理の開闔といいます。 衛気は、その開閉を調節しているというワケ。 気の防御作用と温煦作用は、衛気が担っているんですね。

 

営気と衛気を比べると、その性質から、営気が陰性で、衛気が陽性とわかりますね。 『黄帝内経 素問 痺論篇』には、「営は水穀の精気なり…」「衛は水穀の悍気なり…」とあります。 水穀の精気は、水穀の精微のうちの陰性の物質。 水穀の悍気は、水穀の精微のうちの陽性の物質とされています。

 

(c) その他の気

 

① 邪気(じゃき)正気(しょうき)

邪気は、疾病の発病因子であり、病邪と呼ぶことが多い。

体外から来る病邪を外邪、体内に発生する病邪を内邪あるいは内生の邪という。

正気は、生理機能の総称としても使われるが、邪気に対立する概念として、病邪から身体を護る抵抗力や回復力として認識される場合が多い。

 

邪気と正気の状態は、疾病の程度や回復の度合いを反映します。 正気が強ければ、弱い病邪なら撃退できます。 強い病邪では、戦いは激しくなりますが、治る可能性は高いです。 正気が弱ければ、強い病邪には負けてしまうかもしれません。 弱い病邪では、負けないまでも、治るまで時間がかかります。

 

② 清気(せいき)濁気(だくき)

清気は、軽く清らかな成分、あるいは身体に必要な物質。

濁気は、重く濁った成分、あるいは身体に不要な物質。

 

たとえば、呼吸は、清気を吸い込み、濁気を吐き出すことです。 水穀の精微のうち、脾気の作用で小腸で吸収され、生理物質に化生されるのは清気。 これを脾気の昇清作用といいます。 吸収されなかった糟粕は濁気。 濁気は、胃気の作用で大腸へと送られます。 これを胃気の降濁作用といいます。 「気とは?」にあった胃気不降は、濁気を降ろせない状態なので、便秘が起こります。

 

③ 精気(せいき)
精気=精です。 ときに、精&気のことだったりもするのが、まためんどくさいところですが、そこは前後の文章から推察しましょう。 一から学ぶ東洋医学では「精」とします。

 

④ 四気(しき)

四気は、漢方薬の寒・熱・温・涼という四つの性質と作用。

 

5 気機(気の運動)

 

気は休むことなく動いていて、その運動を気機といい、気機には昇・降・出・入という4つの方向性があります。 昇と降、出と入は、それぞれ相反する運動の方向ですが、これが組み合わさることで、人体の生理機能のバランスがとれるようになっているのです。 詳しくは、蔵象のところで解説します。

 

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。 終わり良ければ総て良しですからね。

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