一から学ぶ東洋医学 No.34 蔵象(3)心 心の病証(1) | 春月の『ちょこっと健康術』

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おはようございます ニコニコ

 

昨日は、阪神淡路大震災から23年という日でしたね。 肝の病証がらみではありましたが、東日本大震災を思い出したのも、そういう日だったからかもしれません。 阪神淡路のときは、3か月後に神戸在住の友人を訪ねているので、自分で見て知った街の様子、よく覚えています。 今年は神戸にも行こう。

 

前回、心の生理と病理で、『黄帝内経』の夏の養生法をご紹介しました。 夏の3か月は、立夏から大暑までの六節気ですから、今年は5月5日から8月6日までですね。

 

夏の養生法に関連して、「脾を養って梅雨~夏を乗り切ろう」「心を助けて猛暑日のからだを守ろう」

の2本を書いています。 なぜ2本立てかというと、四季は4つしかないけど、五臓は5つだから。 五行の色体表では、脾のには長夏が配当されてるけど、『黄帝内経』には、長夏の養生法はないの。 残念。

 

さて、今回は心の病証で、まずは病機から。

 

1 心病(心の病証)の病機

 

心陽・心気の失調と、心陰・心血の失調に大別されます。 心は、心包に護られてますし、外邪の影響を直に受けることはありませんが、津液の病理産物である痰湿が原因となるものがあり、これを別枠としますね。

 

(1) 心陽・心気の失調

 

温煦作用が前面に出ている場合に心陽、それ以外の気の作用が中心となる場合に心気と使い分けされます。 これは、他臓でも同じ。 肝陽と肝気もそうだったでしょ? 肝と違うのは、心の場合、陽虚もあること。

 

心陽・心気の失調には、陽の偏盛と偏衰、気の虚衰があります。

・ 心陽の偏盛 = 心陽の亢進、心火上炎 → 心火亢盛証 実ねつ

・ 心陽の偏衰 = 心陽の衰弱、心陽不振 → 心陽虚証 虚きょかん

・ 心気の虚衰 = 心気の衰弱、心気虚弱 → 心気虚証 虚

・ 心陽・心気の突然の極度の虚脱 → 心陽暴脱証 虚きょかん

 

参考書によって、異なる表現が用いられているので、並べてみました。 意味は同じで、単語の選び方の違いですね。

 

(2) 心陰・心血の失調

 

血だけでなく精や津液も含めた陰液の病証である場合に心陰、血の病証である場合に心血と使い分けられます。 これは、肝陰・肝血の場合と同じ。 ちなみに、他の三臓(脾・肺・腎)は、心血・肝血みたいに○血というのはないので、陰だけです。

 

心陰・心血の失調には、陰の偏衰、血の虚衰、血の阻滞があります。

・ 心陰の偏衰 = 心陰の虚損、心陰不足 → 心陰虚証 虚きょかん

・ 心血の虚衰 = 心血不足 → 心血虚証 虚

・ 心血の阻滞 = 心血の瘀滞(おたい)、心脈瘀阻(おそ) → 心血瘀阻(おそ)証 実

 

(3) 痰湿によるもの

 

痰湿の阻滞が影響するものとして、肝の病証では、肝鬱気滞の一症状として、梅核気(ばいかくき)がありました。 痰湿が心に悪さをする場合は、心が詰まるんだもの、もっと深刻な状況に陥りそうだって想像つきますね。 

 

津液の生理と病理にあるとおり、痰湿は、密度の薄い順に、湿、水、飲、痰となりますが、心に悪さをするのは一番密度が濃くて、塊になりやすい痰。 痰濁とも呼ばれます。 これが、心竅や心を滋養する血脈をふさいだり、心包を覆いつくしたりすると、重篤な痰阻心竅となります。

 

・ 痰阻心竅 → 痰迷心竅証 実

・ 痰阻心竅+火 → 痰火擾心証 実ねつ

 

2 心陽・心気の失調による病証

 

(1) 心火亢盛証 実ねつ虚きょねつ

 

(a) 病態

心陽が亢進して心火となって炎上し、主血や主神志の失調が起こる状態。

 

(b) 原因

・ 火熱邪の侵入

・ 五志化火

・ 痰火の内生

・ 肝火の波及

・ 陰虚火旺による虚火内盛

 

上の4つは実火です。 火熱の邪は、温熱性の外邪や他の外邪が化火したもの。 五志化火は、五志が過激になって化火したもの。 痰火は、鬱滞した痰湿が化火したもの。 肝火の原因に入っていた飲酒・喫煙・辛い飲食物摂取の過剰も、直接心火となる可能性は無きにしも非ずだけど、これは肝火の波及ってことでいいかな。

 

陰虚火旺は、本態は陰虚にあって、虚熱を通り越して虚火になった状態。 この分を(虚きょねつ)で示しておきました。 心は熱しやすいので、虚熱は虚火になりやすいんです。 

 

実火は陰液を損傷しやすいので、陰虚の原因となります。 そして、陰虚がひどくなると、虚火が生じる。 虚火が生じると、上半身では実火のように強い症状が出て、上実下虚となる。 すると、実火も炎上しやすくなる。 こんなふうに、実火と虚火は、互いに転化しあうことがしばしば起こります。

 

(c) 症状

 

① 主血・主神志の失調症状

・ 心悸、重症ならば怔忡(せいちゅう)

・ 不眠、多夢、重症ならば言動の異常や意識不明

 

② 熱症状

・ 顔面紅潮、口渇、胸部の煩熱

・ 小便短赤、大便乾結

・ 口腔粘膜や舌のびらん・潰瘍

・ 吐血、衄血

 

③ 舌脈所見: 舌尖紅絳、脈数有力

 

心の病態は、舌の尖端に出やすいため、舌尖が赤くなります。 心火の場合は、熱が強いので、赤みも強くなって絳(こう)になりやすく、紅または絳で紅絳という表現になります。 詳しくは舌診で。

 

(d) 進行と波及

・ 心火によって痰が形成されると、痰火擾心証となる。

・ 心火が陰液を損傷すると、心陰虚証となる。 

・ 心火によって生じた熱が、表裏関係にある小腸に影響すると、小腸実熱証となる。

・ 心火が腎陰を損傷して、心火亢盛と腎陰虚が合併すると、心腎不交証となる。

・ 心火が肝火を誘発すると、心肝火旺証となる。

 

(2) 心気虚証 虚

 

(a) 病態

心の機能が減退して、全身性の気虚症状を呈する状態。 心は臓腑を統括していますから、心気虚はすべての臓腑の機能に影響します。

 

心気の虚衰は、心拍が弱るので、血の推動に直接影響します。 すると、血脈は血で充足されないため、臓腑や組織・器官への血の到達が悪くなって、滋養の状態が全身性に低下します。 その結果、臓腑や組織・器官の機能も低下して、全身性の気虚証となるのです。

 

(b) 原因

・ 大病や久病(長患い)、過労などによる気の消耗

・ 加齢に伴う臓腑の機能減退

・ 先天的な虚弱体質

・ 肺・脾・腎などの気虚や陽虚の波及

 

大病、久病、過労は、気だけでなく、血も消耗しますから、身体に対するダメージは大きく、必ず臓腑の機能減退につながります。


心気の源泉は、先天の精から化生される原気と、後天の精と天の清気から化生される宗気です。 あれれ? 臓腑の気は原気だけじゃないの? 宗気は何をしてましたっけ? 気の生理にありますが、心血の推動。 で、血を拍出して全身へ送るのは心気の主血。 つまり、宗気は心気の一部として働いているってことです。 宗気は、肺の呼吸にも関与してましたから、肺気の一部にもなるってことです。

 

ということは、先天の精を貯蔵する腎や、後天の精を飲食物から消化吸収する脾、天の清気を吸い込む肺の状態が、原気や宗気の化生に影響するので、心気に影響が及びます。 加齢や虚弱体質で、臓腑機能が低い場合も同様です。 

 

(c) 症状

 

① 主血の失調による症状

・ 心悸、重症ならば怔忡(せいちゅう)

・ 顔面蒼白

 

② 気虚症状

・ 胸悶、息切れ(宗気の機能低下)

・ 易疲労、倦怠感、無力感

・ 自汗

・ 活動すると症状悪化

 

③ 舌脈所見: 舌質淡、舌苔白、脈細弱

 

(d) 進行と波及

・ 温煦作用も低下すると、心陽虚証となる。

・ 陰血に影響すると、心気心陰両虚証または心気心血両虚証となる。

・ 他臓に波及すると、他臓の気虚証を合併する。

・ 血の推動が悪化すると血瘀(けつお)証、津液の推動が悪化すると痰湿証を引き起こす。

 

(3) 心陽虚証 虚きょかん

 

(a) 病態

心陽が虚衰して、拍動が無力となり、虚寒が内生した状態。

 

(b) 原因

・ 長期にわたる心気虚

・ 大病や久病(長患い)、過労などによる陽の損傷

 

(c) 症状

 

① 主血の失調による症状

・ 心悸、重症ならば怔忡(せいちゅう)

・ 顔面蒼白

 

② 気虚症状

・ 胸悶、息切れ(宗気の機能低下)

・ 易疲労、倦怠感、無力感

・ 自汗

・ 活動すると症状悪化

 

③ 虚寒症状

・ 胸部の絞痛(絞られるような痛み)

・ 畏寒、四肢の冷え

 

④ 舌脈所見: 舌質淡胖、舌苔白、脈弱細

 

舌質淡胖の胖とは、胖大舌のことで、舌がぼてっと大きくなった状態。 陽虚によって、津液の代謝が悪くなり、舌が水っぽくなるために生じます。 詳しくは舌診で。

 

(d) 進行と波及

・ 進行は緩慢で反復することが多いが、急激に悪化すると、心陽暴脱証となる。

・ 虚寒が強くなると、瘀血(おけつ)を生じて、心脈瘀阻(おそ)証を引き起こすことがある。

・ 陽損及陰になる(陽気の損傷が、陰液に波及する)と、心陰心陽両虚証となる。

・ 肺に影響して、肺気虚証を引き起こすことがある。

 

(4) 心陽暴脱証 虚きょかん

 

(a) 病態

心陽・心気が極度に衰退して、突然虚脱し、意識がもうろうとする状態。 

 

(b) 原因

・ 心陽虚が進行して限界に達した。

・ 慢性的な心陽虚に、強い寒邪が侵入。

・ 慢性的な心陽虚に、瘀血(おけつ)や痰濁が心竅を塞ぐ。

・ 慢性的な心陽虚に、突然の大量出血。

 

(c) 症状

・ 事前に陽虚の症状がある。

・ 突然冷や汗がタラタラと流れて、呼吸が微弱になる。

・ 顔面から血の気がなくなり、唇が紫色になる。

・ 激しい胸痛が起こることもある。

・ 意識がもうろうとする。 ひどいときは昏睡状態となる。

・ 舌脈所見: 舌質紫暗・胖大、脈微弱

 

(d) 進行と波及

・ 危篤状態であり、救命救急しないと、陰陽が離脱して死に至る。

・ 治療によって、脱証から抜けられれば、心陽虚証に戻る。

 

続きは、また明日~。

 

一天一笑、今日も笑顔でいい一日にしましょう。

 

 

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